ビギナーズラック・オンライン   作:ももいっぷ

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天の国 ヒンメル

 

1.ヒンメル/城門前

 

 

 天の国ヒンメル――船を降りて私たちが最初に辿り着いた町はそう呼ばれていた。

 名の通り『天国』をイメージしたその町は、街灯・ベンチに噴水……ふわふわした雲を使って出来たオブジェクトがいくつも置いてある。

 

 大きな西洋風の建物がいくつも立ち並び、飛空艇が空を飛ぶ……スライズやシルバーキャットでは決して見られなかった光景に目を奪われ、思わず立ち尽くしてしまう。

 

「壮観だな……」

 

「地上にいるのにまるで空にいるみたいですねー!」

 

「みるです。この街、床が雲でできてるです」

 

 口々に感想を述べる。スイちゃんは床の雲を「わたあめみたいです」と言って口に運び、表情は変えずに青い顔をしていた。この胆力、見習わなくては……。

 

「きれいな街ですね……こんなの初めてみました」

 

 一方でフィンは誰よりも落ち着いた様子だ。子供でありながらそれなりに達観した精神を持ち合わせているのだろう。

 さて、私たちの目的は薬の素材【天使の羽】を探すこと。それにフィンの言っていた『綺麗な花』の採取となる。早速行動に移したいところだが……。

 

 ミカンさんによると【天使の羽】はこの街に住むNPCたちの依頼を一定数こなすことで貰えるらしい。なるほど、現地人たちはみな背中に羽があり天使らしい恰好をしている。

 

「すまない。何か私たちに手伝えることは無いか?」

 

「おお! 冒険者さんか。丁度良い、実は……」

 

 この調子でいくつかの依頼を請け負う。周辺のモンスター討伐に特定の素材集め、誰々に荷物を届けて欲しい……その内容は様々だった。とりあえず全部受ける。

 

 さて、どれから消化していくか……悩んでいたその時『くぅ~』と謎の音が聞こえた。

 

「あっ、ご、ごめんなさい……」

 

 それはお腹の鳴る音だった。音の主であるフィンは恥ずかしそうに頬を赤らめ、両手で静かにお腹を押さえている。

 思えばここに来るまで何も食べていない。我々は味覚こそあれど食べなくていいかもしれない。が、彼女はお腹が減っていることだろう。ふむ。

 

「どうだろう? ここで一旦休憩するというのは」

 

「長い船旅に歩き回って疲れましたもんね。賛成です!」

 

「ごはん、です」

 

 二人は賛成なようだ。

 

「え、えっと、でも」

 

「なに、気にするな。根を詰めすぎても仕方ないんだ」

 

 そう言うとフィンもおずおずと頷く。決まりだ。

 とりあえず周囲を散策し、見つけた適当な店に入ることにする。

 

 

 

2.ヒンメル/レストラン【潮風】

 

 

 入ったのは青と白をベースとしたお洒落な雰囲気のレストラン。

 そこは飲食スペースがテラス席のようになっていて、どこまでも広がる大海原が見渡せる。ロケーションは最高だ。

 

 さて。私は戦闘に役立つバフの掛かる料理を注文し、フィンには好きな物を選ばせることにしよう。「お金が無いから」と遠慮していたが、そこは私の方が大人だ。

 当然彼女の会計は私が持つつもりで――

 

「そうですか。では……これとこれとこれとこれとこれ、よろです」

 

「あはは……じゃあ私は【栗モミジの高級プリン】で」

 

「え」

 

 運ばれてくる大量の料理。

 ……いや、いいんだ。彼女たちにも義理があるから……。

 

 それに遠慮のない二人の姿を見たからか、フィンもようやく「じゃあ……おさかなください」とメニューを決めてくれた。彼女のペットであるちゃっぴーには【ペットの餌】という専用アイテムを。

 しばらくして届いた魚料理を前にごくりと喉を鳴らすフィン。「どうぞ」と言うとおずおずと食べ始めた。

 

「……お、おいしいっ! こんなおいしいもの、はじめて食べました……」

 

 それは良かった。目を輝かせて丁寧に食事している姿を見るとこちらも嬉しくなる。

 

「おかわり」

 

 スイちゃんは遠慮が無かった。この小さい身体のどこに入っているのだ……? MMOはまだまだ不思議がいっぱいだ。

 

 ……そうして楽しい食事の時間を過ごし、また親睦を深める。店を出るころにはすっかり足取りも財布も軽くなり、いざクエストに臨むのだった。

 

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