強殖装甲が斬る!   作:Yunnan

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第2話

イブキSide

 「はぁぁ……3年たっても変わらねぇな帝都は」

 俺は帝都を見上げながら何気なくぼやく。

 よっす。イブキだぜ。あの後とても大変だった。何が大変だったかだって? すっかり転生させてくれるのかと思いきや、なぜかそこには知らない男が2人いて、修行の場と称し俺を徹底的に鍛え上げられた(・・・・・・・)。そしてその2人から合格を頂き、ようやく転生できたのだが……何故か俺は赤子になっていて帝都から少し離れた村に拾われ育てられた。その時に名前を付けてもらい、今ではイブキと名乗っている。

 俺を拾ってくれた人は、俺が5歳になると流行り病で他界してしまった。こういう時代ってのは医療技術があまり進歩していないもんだから、病が末恐ろしいもんだな。

 その後は仲のいい村人たちから生きる術を色々と教えてくれた。その後、俺は15になってから村を出て帝都で色んな仕事をやりくりしながら生活し、3年前にちょっとしたことがあって、一度帝都を出て今戻ってきたってところだ。あ。ちなみにだがこの世界じゃ15は大人の仲間入りらしい。世界が違うと色々と価値観が違うね。

 そして特典についてだが、それは強殖装甲ガイバーにでてくるガイバーⅠだった。そして特典以外に俺を鍛えてくれた2人が教えてくれたのは、長刀を用いた剣術、倭刀術と中国拳法の八極拳にその他諸々。……まぁその後独自に色々覚えたんだけど。あと顔隠しに蘭陵王のお面も送られていた。何故に?

 ろくな特典もんじゃねぇとあのクソジジィに怒りをぶつけてやりたかったが、以外にも倭刀術と八極拳は帝都での暗殺家業にピッタリだった。

 何せこの帝都は腐りきった権力者が数多くいて地方から来た人、もしくは身分の低い人間を弄んだり、遊びと称し弄り殺すやつらが多い。それを知った俺はガイバーの能力で、そういった奴らを暗殺していた。そして3年前ほど、少しやりすぎたのか莫大な懸賞金をかけられ指名手配され俺の首を狙う奴らが後を絶たなかったため、一度帝都を出る以外なかったってわけだ。

 ちなみにガイバーで人を殺めた時はやばかった。人差し指で軽く小突いただけで頭部の半分が消し飛び、腕を軽く引っ張れば引きちぎれ、ビンタしただけで頭部が消えた。人に対し強力すぎるな。

 しかし、俺はこの世界で始めて人を殺したのにもかかわらず、罪悪感がなかった(・・・・・・・・)。おそらくだがこの世界の現状に馴染んでしまったのだろう。まったく。慣れとは恐ろしい。これも人間の性と言う奴なのだろうか。

 

 「は―! すげ―っ! ここが帝都かぁ!!」

 いつの間にかバックを背負った少年が隣にいた……俺より7歳年下だろう。帝都を見る目が輝いている。この様子からじゃ地方からきたのか。いかにも帝都で出世してやるぜ! といった感じが彼から感じられる。しかし、帝都に隠れている闇を知ればどうなるやら……。

 

 「こりゃ出世すりぁ村ごと買えるな。さっそく兵舎に行かねーと」

 そういうと軽快な足取りで兵舎に向かおうとする少年。

 ちょうどいい。一緒についていくか。

 

 「おい少年。兵舎に向かうなら俺が案内してやろう」

 「お! 本当ですか! ならお願いします!! 俺はタツミっていいます!」

 「元気がいいな少年……いや。タツミ。俺はイブキだ。それと敬語は不要だ。タメ口でいい」

 「そう「タメ口」……分かった。よろしくな、イブキ!」

 「ああ。兵舎はこっちだ」

 タツミを連れて兵舎に向かおうとしたが、さっきから気になっている(・・・・・・・・・・・・)氣配がする方を振り返る(・・・・・・・・・・・)。視線の先にはこちらに背を向けイスに座りながら飲み物を飲む金髪女。露出が激しいが、俺が振り返ったのに気づいたのか、氣を抑えている。この女……若干だが血の臭い(・・・・)が鼻につく。暗殺稼業の奴らか?

 

 「ん? どうしたイブキ? 後ろを振り向いたままで」

 「……いや。何でもない。どうやら気のせいのようだ。じゃ、兵舎に向かうか」

 「おう!」

 俺はそのままあの女を放っておいて、タツミと一緒に兵舎に向かう。

 

 

 

 

 

???side

 何だあの男、私の氣配に気がついたのか? ……いや。それはない筈だ。一応、アイツにだけ警戒しながら追いかけてみるか

 私はカップに入ったコーヒーを飲み干して。少年の隣にいた男に気をつけながら追いかけ始める。

 

 

 

 

 

イブキside

 …………ふむ。かなり距離を開けているが、どうやら追いかけてきているようだな。まぁ、敵意もないから無視するか。

 

 「なぁイブキ。その長い袋には何が入ってんだ?」

 兵舎に向かう道中、タツミが俺の袋を指差し聞いてくる。

 

 「これか? 中身はこれさ」

 俺は歩きながら袋の口元を結んでいる紐を解き中から獲物を取り出す。

 

 「それって、もしかして刀ってやつか?」

 「ほう、よく知っているな」

 「帝都に来る途中、似たような武器を持っている奴がいたからな。その男に聞いたら東方にある島国で作った武器、刀って言っていたから……でも、刀にしちゃ長くないか?」

 「まぁそうだな。確かに長いが、これはれっきとした刀だ。倭刀術というのを扱うために長いのさ」

 「へぇ~。それって普通の長さの剣じゃ出来ないのか?」

 「ああ。倭刀術は剣術に体術を組み合わせて使うから、普通の剣や刀じゃ刃渡りが短すぎて使えん」

 「なるほどね」

 などと、2人で話しながら歩いていると、目的の兵舎についた。

 

 

 

 

 

 「あ―――。お前らも入隊希望者か……。んじゃこの書類書いて俺んとこ持ってきな」

 兵舎に到着し、受付ではタツミが男から書類をもらっている。俺は入り口付近に寄りかかり様子を窺う。ってか受付の男気だるそうだな。……まぁあんだけの長蛇の列の入隊希望者を相手にしてりゃ、そうなるか。

 

 「……これって一兵卒からスタートってこと?」

 書類を見たタツミが怪訝な表情で男に聞くと、男は面倒くさそうに言う。

 

 「当然だろ? しかも大抵辺境行きだ」

 へぇ。一兵卒って最初は辺境に行かされんのか。大変だな。

 など思っていると、タツミが書類を叩きつけ男に詰め寄る。

 

 「そんなのんびりやってられるか!! 俺の腕を見てくれ! 使えそうなら隊長のクラス辺りから士官させてくれよ!!」

 ……何してんだあのバカ。俺がため息ついていると、受付の男がタツミと俺を(・・)つかんで兵舎から投げ捨てられた。

 

 「って俺もかよコラ!?」

 「何だよ! 試すくらいいいじゃねぇか!!」

 「ふざけんな! そこのお前もコイツと同じなんだろう!? この不況で希望者が殺到してんだよ! いちいち見てられった!! 雇える数にも限界があるんだよ!! 分かったら早くどっかに行けクソガキ共が!!」

 バン! 強く扉を閉める男。何で俺が怒られなきゃいけねぇんだよ……理不尽だ。後俺はガキじゃねぇ。22歳だ。

 

 「マジか……どうすっかな~これから。金を手っ取り早く稼ぐには兵舎が一番だったのに。騒ぎを起こして名を売るか? でも捕まるかもしんねぇし」

 タツミはその場で足を組んで腕組みをして何やら考え込む。焦る気持ちは分らんでもないが、少しは帝都で情報収集でもしたらどうだ?

 

 「まったく。2.3年前より帝都の不景気さらに悪化してぇねか?」

 ……まぁ今帝都を動かしてる皇帝様が幼いとは言え、裏では大臣が色々クズな事してりゃそうなるか……こりゃぁ、いよいよ帝都も危うい状況だな。

 これからどうしようか考えていると、背後から近寄ってくる氣配……あの女か。

 

 「ハーイ。お困りのようだな少年。お姉さんが力を貸してやろうか?」

 いきなり声をかけられたタツミは驚きながらも、目を見開き女の胸を凝視している。メチャガン見してるし。まぁデケェからな。男はおっぱい大好きだし。

 

 「少年はさ、帝都にロマンを求めて地方からやって来た口だろ?」

 「何故分かる!?」

 当てられた事に驚く。そりゃ全身から田舎者オーラが出てるからな。

 

 「帝都に長く住めばよそ者くらい一発で分かるさ。で、私てっとり早く士官できる方法知ってるんだけど、教えて欲しい?」

 「マジで!? 早く教えてくれ!」

 おいおいそんな嘘情報に食いつくなよ。ってこんな不景気でいきなり士官になれる分けねぇだろ。

 

 「そっちの……えっと。名前なんて言うの?」

 「普通、自分から名乗るのが筋ってもんだろう。イブキだ」

 「俺はタツミだ!」

 「イブキにタツミか……私はレオーネ。よろしくね!」

 「それよりも早く士官になれる方法教えてくれよ!!」

 タツミが急かすと、レオーネは笑顔で言ってきた。

 

 「んじゃ、お姉さんにゴハンおごって♡」

 ……コイツぶん殴っていいか? 

 俺は生まれて初めて女を殴りたい衝動に駆られた。

 

 

 

 

 

タツミside

 兵舎を追い出された俺とイブキは金髪おっぱ……レオーネって人が早く士官になれる方法を知ってるらしくって、早く教えてもらいたい俺は彼女の要求を呑んだ。呑んだんだけどよ……。

 

 「プハ―――ッ! いや――昼まっから飲む酒は最高だね!!」

 メシ屋でレオーネは遠慮なしにガンガン酒を飲みまくってやがる。既にテーブルにはカラのジョッキが幾つも置いてある。心なしか隣に座っているイブキも冷めた目でレオーネを見ている。

 

 「遠慮なく呑みすぎだろう」 

 「まぁ呑め少年! 楽しく行こう!

 酔ってる顔で言われても説得力ない……あーもう!

 

 「それより早く仕官できる方法を教えてくれよ!」

 「あぁ、それはなつまり……人脈と金だな」

 「金?」

 俺が聞き返すと、レオーネは酒の入った小さなコップを置いた。

 

 「私の知り合いに軍のやつがいてな、そいつに小遣い出せばすぐだすぐ!」

 ……この不景気で金だけで本当に士官になれんのか? でも、今は何が何でも金がいるんだ!

 

 「成程……これで足りるか?」

 俺が荷物から金の入った袋を机に置くと、イブキが驚きレオーネが目を輝かせた。

 

 「オー! 足りる足りる。結構持ってんじゃん!」

 「へぇ。意外に稼いでいたんだな」

 「道すがら鍛錬も兼ねて危険種狩って褒美もらったりしてたからな」

 「ふーん、強いんだ……こりゃ即決で隊長だな」

 「おう! 頼んだぜ!」

 金の入った袋を持ったレオーネは席を立った。

 

 「私との出会いは色々と勉強になると思うよ少年! んじゃ話をつけてくるからそこで待っててね♡」

 「ハーイ♡ そうかー人脈か。大事かー」

 そうだよな。こういう知らないところで一番大事なのは人脈だよなー。あのレオーネって人、親切で助かったな。

 

 「ハァ。少しは疑えよバカ」

 「ん? 何か言ったかイブキ?」

 「何でもねぇよ。それより俺も行くところがあるから、じゃぁな」

 「おう! またなイブキ!」

 手を振るうと、一瞬だけ振り替えしそのまま店を出て行った。

 あー。早く報告が待ち遠しいな。

 

 

 

 

 

イブキside

 全くタツミの奴、どれだけアホなんだよ。あそこまで人を早々信じるか? そう簡単に士官になれるわけじゃないってのに……まぁ良い社会勉強になるか。

 それにレオーネはちゃっちゃと消えているし、アレは確実にロクでもないことに使いそうだな。

 さて、前まで帝都に住んでいた家に行ってみれば。扉の横の箱の中に紙が入っていた。これは簡単に言えば依頼書だな。

 本来なら自分から調べに行くんだが、こうやってたまに帝都裏、もしくはスラムに住んでいる情報屋にたまに暗殺依頼を承っているわけだ。俺は情報料として帝都で購入した食料や服に薬を少なからず回している。あんまり大量に買うと警備隊の奴らに目をつけられるからな。

 

 「今日の獲物は……大富豪の家族及び使用人の暗殺か。何々、娘のアリアは甘い言葉で旅人を家に泊まらせ、食事に眠り薬を混入し自分の趣味である拷問で死ぬまで弄ぶ。母親は薬漬けにし、日記をつけ、父親と護衛人はその行為を知りながらも見逃している……一家そろってのクズか。何でこういう奴らばかり長生きするんだろうなまったく」

 ずっとこういう輩を斬り殺してきたが、ウジ虫の如く絶えず出てくるんだよな。ホントに面倒だ。今は夜だし視察にはちょうどいい。俺はすぐさま他人に依頼書を見られないよう破り捨て処分し、一目のつかない所から表通りに出る。

 

 「さぁ。その家族の家はッ」

 「あれ? イブキじゃんか」

 「ってタツミ?」

 振り返ればタツミが豪華な馬車から顔をだしていた。何があったのかと聞こうとしたが、すぐに分かった。

 

 「あら、タツミの知り合い?」

 標的、アリアの乗る馬車だからだ。

 コイツは運がいい。探す手間が省けたってもんだ。

 

 「あなたも、泊まるアテがないなら私の家に来ない?」

 「よそ者でもいいのか?」

 「アリアお嬢様はお前みたいな奴を放っておけないんだ、お言葉に甘えろ」

 護衛の奴がそう言う。ならお言葉に甘えさせてもらうとするか。

 

 「じゃぁ、頼めるか?」

 「じゃぁ決まりね♡ どうぞ」

 笑顔で手招きしてくるアリアだが、目の奥には新しい拷問が出来る玩具を手に入れた感じが見て取れた。

 ……精々今のうちに楽しんでおけ。お前はもうすぐ終わりだからな。

 

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