強殖装甲が斬る!   作:Yunnan

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第4話

イブキside

 「はぁ~……眠いぃぃ」

 日差しの良い温かさに爽やかな風が吹いている見晴らしの良い丘の上で俺は寝そべっている。こういう時代って、携帯とか電子機器が無いからちょっと不便なのはあるんだよねぇ。

 昨夜。ナイトレイドのアジトに到着したんだが。

 

 『ゴメン! 今ボスが急用でアジトに居ないんだ。数日の間だけアジトにいてくんない?』

 ……とレオーネが申し訳なさそうに言ってきたので仕方なく俺とタツミは、奴らのアジトで世話になっている。そういやアジトの半径数キロに当たってラバックのクローステールの糸の結界が張ってあったな。まぁすぐに分かったけど。

 

 「にしてもそのボスって奴はいつになったら帰ってくるんだよ~~」

 ガチで暇だ。本はあるけど全然面白くねぇ。アレを見るくらいならジャンプやマガジンの方が断然いい。あ~。何か面白いこと起きねぇかなぁ……筋トレはしちまったし。

 ホントにやることなくボケーっと空を見ていると。

 

 「おーい! イブキー!」

 「ん?」

 聞き覚えのある声に体を起こす。振り向けばレオーネが背後から近づいてきた。

 

 「何だレオーネ」

 「アジトの案内をしてやろうと思ってね」

 「アジトねぇ……ってか勝手に案内してもいいのか? お前たちのボスはまだ戻ってきていないんだろう?」

 「大丈夫! ボスはそんな小さいこと気にしないから!!」

 ん――。まぁ、そのボスって人が気にしないって言うんなら。

 

 「んじゃ、お願いするわ」

 「うっし! んじゃ行こう行こう!」

 そういうなり腕を組むとアジトへ引っ張っていく。引っ張っていくのだが……。

 

 「おい」

 「ん~? 何かな~?」

 笑みを浮かべたままレオーネは聞き返してくる。コイツ……絶対分かってて胸を押し付けてきやがる。帝都の色町で娼婦にも同じことやられたことがあったが、何で女は胸を押し付けるのかね? よく分からん。

 

 「何でもねぇよ」

 「そ! んじゃ行くぞ~!!」

 ハァ……レオーネに目をつけられなきゃいいんだがな。

 レオーネに引っ張られていると、途中見晴らしのいい丘にタツミが胡坐をかいていた。目の前には石を積んであった。あの2人の墓か。

 

 「タツミの奴。まだ立ち直ってないんだな」

 「そうなんだよな。もう3日もあの場所から動こうとしないんだ」

 「唯一無二の友人を失ったからな、割り切れというのが難しいだろうな」

 それに、仮に俺も親友をあんな形で失ったら、ああなっちまうだろうし。腕が立つとは言え15の子供(ガキ)。そう簡単に割り切れるわけねぇわな。

 ふと気づくと、俺をアジトへ引っ張っていたレオーネがタツミに近づいていき。

 ボスン。

 と、タツミの頭に豊かな胸を置く。

 

 「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉい!? ななな何すんだよ!!」

 「おぉ! 初々しい反応だね……もうあれから3日だ。私たちナイトレイドの仲間になる決心はついたか?」

 「だから!! 俺は殺し屋の仲間になる気はないっての!!」

 「ありゃりゃまだ決心がついていないとはねぇ~~……しょうがない」

 何を思ったのかレオーネはタツミに近づき。

 

 「んじゃアジトの中を案内するぞー!! イブキも行くぞ!!」

 服の襟筋を掴み無理やりにでも引きずっていく。強引だな。

 

 「うおおぉい!? 離せ!! 離せったら……イブキも見てないで助けろよ!!」

 「だが断る!」

 「ふざけんな!」

 ギャーギャー喚くタツミを無視しアジトに入る。

 

 

 

 

 

会議室

 「え? まだ仲間になる決心をしていないんですか?」

 目を見開き驚くシェーレ。

 最初に連れられて来たのは大きな一室、恐らく会議室みたいな場所だ。そこには一人の女性……シェーレが椅子に座り読書をしていた所に俺達が連れてこられたわけだ。

 

 「そうなんだよシェーレ。何かこいつ等に温かい言葉をかけてやってくれ」

 レオーネに頼まれシェーレは数秒程考え込み。

 

 「ん―……そもそもアジトの位置を知った以上、仲間にならないと殺されちゃいますよ?」

 「暖かくて涙が出てきたぜ」

 如何にも殺し屋らしい回答に涙を流すタツミ。そんなに嬉しかったのか。

 

 「よく考えた方が良いですよ」

 そう言い再び読書を再開するシェーレ。ってか何の本を読んでるんだ? 暗殺関連の本かな? チラリと本の題名を見ると……『天然ボケを直す100の方法』と書かれていた。

 

 「…………」

 何処にそんな本が売っていたんだ? ていうか天然ボケって治るもんだっけ?

 

 「あ――っ!!」

 うるせぇぶち殺すぞ!! 何だよ今度は。

 俺とタツミにレオーネが振り返ると、入り口には俺達を指さすクソガキピンク髪ツインテールこと、マインがいた。マインは俺達の方へずかずかと歩み寄ってくる。

 

 「ちょっとレオーネ! なんでその二人アジトに入れてんの!?」

 「だって仲間だし」

 「まだ仲間じゃないでしょう! ボスの許可も下りてないんだから!」

 しれっと言い切るレオーネに対しギャーギャー喚きたてるマイン。正直うるせぇ。てかボスか……まぁ元帝国軍の軍人だからな。見る目はあると思う。

 

 「…………」

 ん? 気づけばマインは穴が開く程俺達を凝視している。

 

 「不合格ね。とてもプロフェッショナルのあたし達と仕事出来る雰囲気ないわ……顔立ちからして!」

 「なっ! 何だとぉ!!」

 人の神経を逆撫でする言い方に喚くタツミ。こんなクソガキに一々喚くな。血圧が上がるぞ?

 

 「気にするな。マインは誰にでもこうなんだよ」

 「ふん!」

 タツミを宥めるレオーネと俺を見据えた後、部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 部屋を出た俺達が次に案内されたのは、アジト内の訓練場らしい。

 

 「どぉぉりゃぁぁぁぁっ!!」

 その訓練場では今、上半身裸で槍を振るっている男がいた。素人が見ても分かる凄まじい槍捌き。

 

 「ここが訓練場と言う名のストレス発散場。んで、今槍を振るっている汗臭そうな男がブラートだ」

 風切り音がスゲェ。もう帝具(インクルシオ)使わず素手で戦えば良いんじゃね? って元帝国軍なら当然か。

 男……ブラートの槍捌きは数分間程続いた。

 

 「はぁっ!! ……ふ――っ。おっ、何だレオーネか。っとそこにいる少年とお前は……この間の奴か!!」

 最後の一振りを終え、一息ついたブラートは漸く俺達に気づいたようで近づいてくる。

 

 「え? 何で俺の事を?」

 タツミは初対面のブラートにこの間の奴を言われてもピンとこないようで困惑している。普通気づくと思うんだけどね。

 

 「ん? ああ。この姿で会うのは初めてか。屋敷からお前を担いできた鎧の男だよ」

 「え? ……あ! あの鎧男か!!」

 「そ! 俺はブラートだ。よろしくな」

 「俺はタツミだ。よろしく」

 握手する二人だが、タツミを見るブラートの雰囲気が何やら怪しげな……確かこいつは。

 

 「……気を付けなイブキ。ブラートはホモだから」

 レオーネがこっそり耳打ちしてくれた。そうだ思い出した。ブラートの奴はホモ野郎だった。

 

 

 

 

 今度はアジトから少し離れた場所を移動するレオーネの先導の元。木々の合間を歩いていると……。

 

 「イブキ。タツミ」

 「ん?」

 「??」

 「……少し静かに着いて来て」

 小声でそう伝え、気配を殺しながら歩く。何か見っけたのか? 言われた通り静かにレオーネの後を着いていくと、視線の先に岩肌に仰向けに寝そべっているラバックがいた。ラバックは岩肌の上から眼下の川を見ている。監視かな?

 

 「そろそろレオーネ姐さんの水浴びの時間だ、俺はあの胸を見るためなら危険を省みない!」

 ……そういやこいつはこういう奴だった。

 アホ丸出しのラバックにレオーネは素早く近づき。

 

 「じゃあ指2本貰おうか」

 耳元でそう宣告し……。

 ゴキ。

 

 「アアアアァァァァァァァアアッ!?」

 宣告通り指2本頂いた。

 絶叫するラバックにレオーネは追加で腕を捻り上げる。

 

 「相変わらず懲りないなーラバ。と言う訳でこのバカはラバックな」

 ラバックはバカだと理解出来た。 

 

 

 

 

 

 最後に訪れたのは河原だ。水の流れる音が心地いい。

 

 「何だかもうお腹いっぱいなんだが」

 隣にいるタツミは若干だが疲れているようだ。

 

 「アハハ。次は美少女だから期待しろって―。ホラ、あそこにいるのがアカメだ」

 指さす先には、特級危険種エビルバードを焼いて食っているアカメがいる。

 

 「いや何で特級危険種エビルバードを食ってんの!?」

 「アカメが狩ってきたからだろう」

 「エビルバード狩れるもんなのか!?」

 「アカメの腕なら大丈夫だろう」

 「ん?」

 近づくと、口いっぱいに肉を詰め込んだアカメが振り返る。

 

 「……レオーネも食え」

 「サンキュ―!」

 よく噛んで飲み込んだアカメは良い感じに焼けている肉をレオーネに放る。受け取ったレオーネは肉にかぶりつく。美味そう……。

 

 「お前たちは仲間になったのか?」

 「いや」

 「じゃあこの肉をやる訳にはいかない」

 施しは受けん。

 

 「それにしても今日は奮発してないか?」

 肉を食い終い終ったレオーネがアカメに訊く。

 

 「ボスが帰ってきてるからな」

 そう言い肉を食いながら後方を振り返る。そこには岩に腰を下ろし、スーツに身を包み眼帯をしている女性がいた。傍らにはバックとコートが置いてあった。……へぇ。流石は元帝国軍将軍。引き締まってるな。ただ右腕は義手なのか。

 

 「よっ」

 俺達の視線に気づいたのか挨拶をしてくる。タバコ吸い過ぎると肺に悪いぞ?

 

 「お帰りボス! 何か土産あります―?」

 気軽に話しかけるレオーネに対しボスは不敵な笑みを浮かべ。

 

 「それよりもレオーネ、お前3日前の仕事で……作戦時間オーバーしたそうだな」

 そう聞き返した。

 何かを悟ったレオーネは素早く振り返り脱兎のごとくならぬ脱獅子のごとく逃げ出す。

 ドシュッ!

 瞬間、何かが通り過ぎレオーネを捕まえた。そのままひきずり戻す。正体はボスの義手だった。ああやって飛ばす事が出来るんだ。意外に機械技術的なのは進んでいるんだな……。

 

 「強敵との戦いを楽しみすぎるのは良くないな……その癖は何とか直すんだ」

 「分かったからそのキリキリ止めてくれ!!」

 逃れようとジタバタもがくレオーネだが無駄な努力。ガッチリと掴んでいる義手の手を離すことは出来なかった。

 

 「まあ良い。作戦は成功だからお咎めなしだ……所でそこの少年と君は?」

 義手を巻き戻し終え、今度は俺とタツミに視線を向ける。

 

 「そうだボス! この2人挙手!!」

 「おい! だから勝手に進めるなッ!」

 「見込みはあるんだろうな?」

 「あります!」

 喚くタツミを無視し、話がとんとん拍子で進んでいく。

 

 「それにイブキはあの伝説の鬼神なんで!」

 「何だと!? それは本当かレオーネ!! アカメ!!」

 椅子から立ち上がるボス。その際にタバコが口から落ちる。

 

 「ん。イブキは確かに鬼神だ。私達と戦い……いや。ある意味一方的だった。一太刀も入れることが出来なかった」

 「そうそう! 私達が全力で挑んでも弄ばれただけだったし!!」

 そう嬉々と自分達が敵わなかった事をボスに言うのはどうなんだレオーネ。

 

 「ほれ。証拠の鬼神のお面だ」

 「……そうか。まさか生きている間に伝説の鬼神をこの目で見れるとはな」

 顎に指を添え俺を頭から足先まで隈なく見渡す。

 

 「アカメ……会議室に皆を集めろ。この少年と鬼神の件も含めて前作戦の結果を訊きたい」

 そう言いコートを羽織りバックを背負いアジトへ向け歩き出す。俺達も後に続く。

 

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