強殖装甲が斬る!   作:Yunnan

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第7話

イブキside

 傭兵が窓から飛び降りた直後、俺も氣殺(けさつ)で氣配を殺しすぐさま窓から追跡(おい)かける。

 ……やっぱりあいつ等人間じゃないな。外見は人間だけど、奴らから感じる氣が危険種と人間の氣が混じり合った気味の悪い氣質だ。人数は9人。女が1人で男が8人か。帝都警備隊の恰好をしているが、氣配の殺し方に異常な身体能力。

 

 「……もしかして強化人間か(・・・・・)

 だとしたらあいつらの異常な身体能力に納得が良く。

 ナイトレイドの脅威を知っているならたったの9人だけでアジトに来るなんて事はあり得ないだろう。 それにラバックのクローステールの結界に引っ掛からなかったのは強化手術を受けたからだろう。そうじゃなかったらアジトまで侵入は出来なかったはずだ。

 ……後ろからはケンの先導の元、ナイトレイドも追いかけてきてるか。だがこのままじゃ確実に逃げられるな。

 

 「仕方ない。回り込んで足止めするか」

 俺と敵との距離は約1㎞か……縮地は不要だな。全集中の呼吸1割で充分届く間合いだな。

 

 「全集中…………フッ!!」

 肺一杯に空気をため込み、踏み込む!

 ズン!

 その場から一気に加速し敵との間合いを詰め。

 

 「はい待って」

 先回りし足を止める。

 

 「!!?? 追いつかれた!!」

 「嘘でしょう!? アレだけの距離があったのにもう追いつかれるなんて!」

 「……不覚だな。まさか俺達に追いつける者がいるとは」

 俺が追いついた事に驚愕し足を止める敵一行。ふむ……こいつ等中々出来るな。ナイトレイドが始末した傭兵と比べ物にならんな。ナイトレイドが到着したとしても足手まといだな。ならっ。

 

 (訊こえるかケン)

 (訊こえるぞ。どうした?)

 (こいつ等、人体改造受けた奴らだから結構出来る。だからナイトレイドの奴ら加勢させないでくれないか? 邪魔でしかないから……それにこいつ等は人体改造以外に何かヤバそうだ(・・・・・))

 (分かった。なら距離を置いてこいつらにお前の戦いを見学させる。見るのも戦いだからな)

 (OKOK。そうしてくれ)

 素早く伝心術でケンに連絡し、ナイトレイドを加勢させないよう遠い距離で戦いを見せさせる。

 

 「んじゃ。軽く相手をしますか」

 ゴキゴキと拳を鳴らし肩を回す。今回得物()は使わず素手でやり合う。ってかアジトに置いてきちまったしな。

 

 「おいテメェ。まさか1人で俺達全員相手をするつもりか? あぁ?」

 不機嫌を隠さない剥き出しの男が俺に訊いてくる。お前はチンピラか。

 

 「そうだよ。ってかお前ら如き俺1人で充分事足りるからな」

 そう答えると、一気に奴らの殺意が跳ね上がった。

 

 「あぁっ!? おいテメェッ!! 俺達の事を舐めてんのか!? ぶっ殺すぞ!!」

 「お――怖い怖い。殺意剥き出しで品性下劣じゃないか。人体改造受けて知能が低下したのか?」

 「ぶっっっ殺す!!」

 同時に間合いに入り、腰からナイフを抜き逆手に持ち俺の首に一閃。(はや)いな……並大抵の人間なら視認することなく殺られてるんだろうな……でも。

 パシ。

 

 「遅いな」

 「ッ!? あ、ありえねぇ! 人体強化を受けてパワーアップした俺のナイフを素手で受け止めやがった!!」

 まさか受け止められるとは思わなかったのか、驚愕し硬直する男。押すも引くも出来ず足掻き。

 

 「クソがッ!」

 無理と判断しナイフを離し距離を後方に飛びずさり新しいナイフを持ち、今度は攻めてこないで俺の事を睨み据える。他の奴らも剣にメリケンサック。刀に両手剣に槍と武装する。

 

 「……何者だテメェ。人体改造された俺のナイフを素手で受け止めるとか只者じゃねぇぞ。そこらの傭兵や異民族、帝都警備隊の奴らでもねぇ。何者だ?」

 さっきのチンピラ野郎が冷静に問いただしてくる。別に答えてやっても平気だよな? 素顔も見られちまってるし。それにアジトは知られてるんだから証拠隠滅に殺さねぇといけないしな。

 

 「何者かと訊かれたら……こういう者だが」

 俺は隠し持っていた蘭陵王のお面を取り出し装着する。

 

 「!? きっ! 鬼神だとッ!?」

 「バカな!! 何故鬼神がナイトレイドのアジトにいたんだ!?」

 「仲間になったっての!? あの最凶最悪と呼ばれる鬼神がナイトレイドのッ!!」

 「だったら何だよ? 俺が何処でどの組織と手を組もうが俺の勝手じゃないか。そう驚く事もないはずだろう?」

 俺が一歩足を踏み出すと、同じ分敵も後ずさる。

 

 「おいどうするんだよ? 相手が鬼神じゃ分が悪いぜ? どうにか出し抜けて大臣の奴に報告しねぇと」

 「でもどう抜け出すのよ? 相手はあの鬼神なのよ? ナイトレイドの奴らとは比べ物にらないわ」

 「俺達が全員束になっても勝てるかどうか……」

 「でも万が一可能性があるならっ!」

 「じゃあアンタは勝てるって言うの? あの鬼神に?」

 「…………そりゃぁっ」

 俺が鬼神だと知った瞬間、敵意が低下していく。やっぱり人体改造受けたとしても鬼神には敵わないと思うんだな。

 だけど……。

 

 「……違う。こいつ(蘭陵王)鬼神じゃない(・・・・・・)

 1人の男が否定した。そいつは背に大剣を携えた巨漢、ブラートの奴より一回りデカい。人体改造の影響か?

 

 「へぇ? 俺が鬼神じゃないって何で言い切れるんだ? 手配書に描かれているじゃないか?」

 「フン。あんな手配書は偽物だ。俺は知っているぞ。本物の鬼神は貴様如き人ではない。本物の鬼神は青みがかった緑の装甲の奴の事だ(・・・・・・・・・・・・・・・)!」

 ……へぇ! この男、ガイバーが鬼神だって事を知っているのか。もしかして昔、殺し損ねた敵か?

 

 「どういう事だ?」

 「……5年前。本物の鬼神を見た。鬼神の攻撃は全て一撃必殺。額からは光線を発し、腕から生える刃は如何なる物、特級・超級危険種すら一刀両断。それが鬼神だ。貴様のような人間が鬼神ではない!」

 ……殖装してないだけで俺なんだけどね鬼神。まぁ訂正するのも面倒だしほっとくか。

 

 「って事はこいつは鬼神じゃねぇって事か」

 「ああ。この男は鬼神ではない。偽者だ」

 「何だビックリした。要は噓つき野郎ねこの男は」

 本物だっつうの。殖装してないだけでな! 

 

 「ならとっととぶっ殺そうぜ。こんな所で何時までも時間をくってられねぇ」

 「それと一応この男の首も持っていくか。もしかしたら賞金貰えるかもしれないし」

 「ならついでにナイトレイドも倒しちゃおうよ。勿論、この男を先に倒してから」

 そこで会話は途切れ、俺を中心に円を描くように囲む……こいつ等相手と自分の力量差が分からないのか? それとも何か秘策があるから自信があんのかな? まあどうでも良いか。

 

 「大人数でリンチするみたいだが悪く思うな」

 「別に悪いとは思ってねぇよ。ただ……俺を殺るつもりなら殺られる覚悟があるって事だよな? お前ら?」

 「っへ! その減らず口何時まで叩けるか見ものだぜッ!!」

 チンピラの奴が今度は両手にナイフを逆手に構え俺に突撃してくる。それを躱すと他の奴らも襲い掛かってくる。

 …………やれやれ。無駄な事だと何故分からないのか。

 

 

 

 

 

タツミside

 アジト付近に侵入した異民族を倒した(俺は脚止めをして隙をつかれ殺されかけたけど)俺達は、今度はアジトまで侵入した帝都警備隊の奴を追っている。既にイブキは追いかけていて俺達とケンは後を追っている……追っているんだけど。

 

 「は、迅くないかケンの奴!」

 俺の視線の先ではケンの姿が小さくなっていく! ってか迅過ぎる! 差が縮まるどころかどんどん引き離される!!

 

 「っく! マジで足が速ぇ! 追いつけねぇ!!」

 このままじゃ見失っちまう!! …………と思った矢先。突如ケンが足を止め振り返る。どうしたんだ? 

 

 「……お前らこっちだ。氣配を殺して俺についてこい」

 そう言い逃げた帝都警備隊の奴と追いかけたイブキの追わず脇道を進む。俺達も乱れた息を整えながら、言われた通り氣配を殺し後を追う。

 暫く進んでいくと、離れた視線の先には鬼神のお面を付けたイブキを中心に帝都警備隊が囲んでいる場面だった! だけど中心に立っているイブキは動揺もしないで自分を囲んでいる敵を見渡している。

 

 「お前らよく見ておけ。アイツがどんな戦いをするのか」

 「助けにはいかなくても良いのか?」

 「不要だ。あの程度なら軽く捻り潰せるだろう」

 木に背を預け座るケン。本当に行かなくて良いのか? そう思った矢先、始まった。

 最初に両手にナイフを持った男が斬りかかる。躱すと同時に他の奴らも攻撃しはじめた。ナイフ以外にも剣や槍。拳法に大剣と様々な攻撃方法でイブキに襲い掛かる。

 斬り殺さんばかりの鋭い剣閃に体に風穴を空けんとする鋭い刺突。素早く手数で勝る拳や蹴りを四方八方から止まる事無く敵から繰り出される。止まる事のない怒涛の攻撃。それをイブキは難なく躱している。背後から攻められようが同時に攻撃されようが……当たる処か掠りすらしない。

 

 「人体改造……か」

 そうケンが呟いた。

 

 「体改造って何のことだ?」

 「ん? 人体改造は今、帝都の裏で行われている極秘実験だ。人の体を人為的に弄り、ボスの義手みたいに機器を体に埋め込み。もしくは薬等で体を強化する事だ。その実験体になるのが元罪人だ(・・・・)

 「罪人ッ!? 罪人を改造してるのか!?」

 「ああ。警備隊の恰好をしてはいるが、奴らは警備隊じゃない。罪人共は己の罪を軽減してもらう代わりに体を提供しているのさ。無論、そんなのはただ単なる口実にすぎないのだがな」

 傍迷惑な話だ。……ってケンが肩を竦め呆れてるけど、帝都は裏でそんな事までやってんのかよ! 

 

 「それが人間の醜悪の本性だ。公にバレなければクズ共(権力者)は何だってやるぞ。アリアが良い例だったろ? ああやってクズ共は表では偽りの仮面を被り(良い人ぶって)本性を隠すのさ」

 …………それが今の帝都の現状か。俺達が帝都に来るまで抱いていた華やかで栄のあるイメージとは真反対だ。

 ふと気づけば戦いは一旦止まっていた。イブキは何とも変化は無いんだけど、敵は疲れたのか攻撃の手が止まっていた。刹那、ナイフ使いの男が両手に持っていたナイフを投げつけた。

 だけど当然そんな攻撃はイブキには当たらない。

 半歩横にズレてナイフを躱す。男はナイフを躱された事に特に動揺もしないで、その場で腕を腰の位置で止め下から上に振りぬいた。イブキとの距離がかなり開いているのに何で振りぬいた?

 疑問に思う俺を他所に、突然イブキが何かに反応したかのように横に飛び退いて……少し遅れて腕から出血した!! 服が血でジワリと滲む。

 

 「「「「「「!!」」」」」」

 な、何で血が出たんだ!? イブキは敵から攻撃を受けた様子は無かったのに!!

 

 「ほう。空破山(・・・)を使う奴がいるとはな」

 「く、空破山って何だ?」

 「今さっきイブキがくらった技の名前だ。本来、空破山は刀剣による剣術の技術であり、高速で振り切る事で発生する真空波だ。東の島国ではたしか鎌鼬とも呼ばれていたな。空破山は厄介だぞ。何せ目視不可視(・・・・・)の刃が飛来してくるものだ。武の達人ですら躱すのは容易じゃないらしい」

 「目視出来ないって……ンじゃあの攻撃どうやって躱せって言うんだよ」

 話を訊いていたラバックが顔を顰め悪態を吐く。

 

 「悪態を吐くな。確かに目視不可の刃を躱すのは至難の業かと思われるが、アイツが言うには簡単らしいぞ」

 「え? 簡単なの?」

 「まあ見ていれば分かる」

 ナイフ使いの男がまた腕を振りぬき真空波(見えないけど多分イブキに飛来している)が襲い掛かる。またくらうのかと思っていたが今度は躱した。

 今度は両腕を上下に振りぬくが、やはりイブキには当たらなかった。

 

 「解ったか?」

 「ゴメン全然分からない」

 「……つまり真空波は刀剣攻撃の軌道を見切れば躱せる。軌道上にしか進まない上、相手を追尾する事は無い。腕の動きを見れば躱せるさ」

 ケンはそう答えるけど、実際に目視不可の刃なんてそう簡単に躱せるものなのか?

 男が攻撃を止め下がると、今度は女が仕掛ける。女は高く飛び上がると左腕を掴み、鞘から剣を抜刀するような動作で腕がズレたと思いきや、骨の代わりに銃身が現れた!! 銃!? アレも人体改装の影響か!?

 女が銃身に手を添え狙いをイブキに定め撃ちだす。

 イブキは片手にナイフを逆手に持ち弾丸を防いでいると大きく後方へ飛び退った。瞬間さっきまでイブキがいた地面が突然紅くなり、炎が噴き上がった!! はあぁぁ!? どういう事!? 何で地面から炎が!! 

 炎はイブキの足が一瞬地面に着いた瞬間に何度も噴き上がり……やがて止まった。炎が噴き出した穴から男が出てきた。

 銃女が男の隣に降り立ち、腕の一部をズラし中から空の薬莢を捨て新しい弾薬を詰め込み、男が息を吐き出すと僅かに炎が噴き出た。

 ……今イブキと戦っている敵の9人の中、3人が仕掛け後の6人が攻撃せずに静観している。何で残りの6人は攻撃しないんだ? イブキが隙を見せるのを狙っているのか?

 ナイフ使いの男がナイフを捨て、両腕をクロスさせると腕から鋭い刃が現れた!! そして動物のように前傾姿勢になると一気に駆け出し間合いに入った! 無防備な首に凶刃が襲い掛かる! だけどイブキは躱しも防ぐもしないでただボケっと立っている! 何で躱さないんだよ!!

 刃がイブキの首を斬り飛ばす……事は無かった。刃は首に当たったまま男の動きが止まったからだ。そしてゆっくりと倒れた。

 

 「死んだな」

 とケン。

 

 「え? アイツ死んだのか?」

 「ああ。刃が首に当たる直前、一瞬迅くイブキが奴の頸椎を叩き折った」

 仲間が一瞬で殺された事に女が銃を構えた所で……動きが止まった。その答えはすぐに分かった。離れた距離にいた女に一瞬で近づいたイブキの左腕は貫き手状態で女の胸部から背中まで貫いていたからだ。

 イブキが腕を引き抜くと、女は糸が切れた操り人形のように崩れ落ちる。穴の開いた胸部から血が溢れ地面を紅く染める。

 イブキは真っ赤になった左腕に視線を向けていると、背後から剣を振りかぶった男が斬りかかる。

 振り下ろされた剣は躱したイブキに当たらなかったものの、勢いは止まらず地面を砕き亀裂が奔った!! 何だよあの一撃! 防御してたら真っ二つじゃねぇか!

 背後に回ったイブキに対し男は流れる動作で裏拳を放つ。それをイブキは躱さないで片手で受け止めた! 拳を受け止めた反対の手で、相手の脇腹に掌を当てた。瞬間。男は吐血し倒れた! え!? 何で血を噴き出したんだ! イブキは脇腹に掌を当てただけなのに!!

 今度は真横から高速の刺突が襲う。それを簡単に飛んで躱し、刺突()いてきた男の頭に拳を当てると、さっきと同じように倒れる。……目をこらして見れば顔面から血が噴き出ていた。

 いっきに4人殺された事で動揺した拳法使いの男に、イブキは一瞬で男の間合いに入り首に蹴りを放った。咄嗟に腕で防御姿勢を取るが、イブキの蹴りはお構いなしに防御した腕ごと首の骨を蹴り折った。

 蹴り飛ばされた男の首は可笑しな方に曲がり、腕も折れ曲がっている。

 …………5人。9人中5人がさっきの攻防でイブキの手で殺された。アイツ素手であんなに強ぇのか? 残りの4人は勝てないと分かっているのか後ずさる。

 イブキが近づき4人が下がった瞬間、一斉に武器をイブキに投げる。当然イブキには当たらず飛んできた大剣の柄を掴み、他の武器を払い落とす。奴らは気にせず懐に手を入れ何かを口に含んだ。直後だ。

 

 『う……ウオオオオオオォォォォォオオッ!!』

 『ぐ、ガガガガオアアアァァァァァァッ!!』

 『い……痛い。まさか、これがここまでの痛さだとは!!』

 『ウボオオオォォォォアアァァァァァァッ!!』

 突然発狂しだした! 何だ!? 毒で自害か!?

 

 イブキは何かに気づいたようで大剣で斬りかかる。苦しんでる男の頭部に刃が当たる瞬間、掌で受け止めやがった!! 何で斬られないんだ!?

 訳が分からないでいると、突然全員の体が膨張し警備服が破れたかと思えば徐々に姿形が人から何かに変貌している!! 何だアレ!? 

 受け止められた剣から手を離し距離を取るが、さっきまでのスピードの比じゃない速度で距離を詰められ、顔面に一撃。躱せずモロに喰らったイブキは木々をなぎ倒しながら吹っ飛ばされた!!

 

 「!! 散れッ!!」

 「うぇっ!?」

 直後、ケンの怒号が響き俺の首根っこを掴みながら真横に飛ぶ。皆も少し遅れて散ると……。

 ドオオオォォンッ!!

 さっきまで俺達がいた場所に物凄い速さで何かが降ってきた!! 着地の衝撃で地は割れ砂煙が舞う!! …………徐々に薄れてると、降ってきたのはあの怪物(バケモノ)だった!  

 身体は兄貴より大きく、爪に牙は鋭く四肢は木のように太い。

 

 「バカな!! 獣化兵(ゾアノイド)だと!? 完成していたのか!!」

 ケンが怪物を見て声を荒らげた。獣化兵? 

 

 「……ナイトレイドか。これは手間が省けたな。このままこいつらの首を持っていこう」

 「だな。帝都を暗躍してるこいつらの首を持っていけば、大臣からまた報奨金に加え新しい薬をくれるかもだしな」

 「ナジェンダの奴はどうするんだ?」

 「アジトの位置は分かっている。こいつ等を始末した後、殺りに行く」

 「面倒だし俺が殺ってくるよ……アンタら3人でナイトレイドの始末をお願いするわ」

 怪物の1人がアジトへ向かおうと足を向け、残りの3人が俺達の方へ向き直る。

 

 「インクルシオォォォォッッ!!」

 「ライオネル!!」

 「葬る!!」

 兄貴とレオーネが帝具を発動させ、アカメが刀を抜き斬りかかり。

 

 「すみません」

 アジトへ向かう1体にシェーレの鋏が襲う。だけど…………。

 ズドッ!! ガッ! ガギィッ!!

 

 「!」

 「これは!!」

 「刃が通らない!!」

 「っ、硬い」

 獣化兵の体を傷つける事は無かった。

 

 「おいおい……そんな玩具(帝具)で獣化兵を傷つけられると思ってんのか? 獣化兵は帝具使いに対抗するために様々な超級や特級危険種の細胞を技術を用いて人間の中に埋め込み遺伝子調整をし、帝具を超えた究極の生命体だ。だから何の改造もされていない人間如きが俺達(獣化兵)に勝てると思うなよっ!!」

 「!!」

 シェーレ目掛け獣化兵の拳が振り下ろされる。シェーレは防御せず躱す。

 ドゴオオオオオオォォッッ!!

 拳は躱したシェーレに直撃はしなかったが、勢いは止まらず地面に直撃し地を揺らす。拳は地面にクレーターを作り陥没している! 防御なんかしたら一発でお陀仏じゃねぇか!!

 

 「ッ、なんて破壊力」

 「驚いている暇はないぜ」

 表情を顰めエクスタスを構えなおすシェーレに爪を構え突っ込んでいく。

 

 「シェーレ!!」

 そこへマインの声と同時にシェーレが高く飛ぶと、シェーレの背後で銃を構えていたマインの攻撃の一条の光が獣化兵を飲み込んだ。やったか!? ……だがそんな願いは空しく消えた。

 

 「……嘘。無傷なんて」

 マインが唖然としている。それもそうだ。視線の先には光に飲み込まれた獣化兵が無傷でいるのだから。

 

 「ハァ。だから言ってんだろ? 無駄だって。頭悪いなクソガキ……それとチェックメイトだぜ?」

 「カハッ!!」

 「「「「マイン!」」」」

 獣化兵の腕が伸びマインの首を掴み引き寄せ。

 

 「動くな。お嬢ちゃんを殺されたくなかったらな」

 羽交い絞めにし首筋に鋭利な爪を当てる。それを見た皆の動きが止まる。刹那、ケンがマインを羽交い絞めにしてる獣化兵に駆け出す。

 

 「ケン! 今はマインが人質にッ!!」

 「おい動くな。殺すぞ?」

 アカメと獣化兵が声をかけるもケンは気にせず、マインを捕まえている腕を掴み引き剝がした。

 

 「なっ!!」

 「アカメ!!」

 「!!」

 マインを取り返したケンはアカメに放り投げ。

 ドゴッ!! 開いた腹部に蹴りを打ち込んだ。

 

 「ぐッ!?」

 声を漏らし獣化兵の巨体が後ずさり、膝をついた! 嘘だろう!? 皆の攻撃が効かなかったのに何で!!

 

 「…………この力、ただの人間じゃないな。何者だ?」

 「死ぬ奴に応える必要は無い。それに……そこは丁度良い場所だな(・・・・・・・・・・・)

 「何?」

 ?? 良い場所? どういう意味だ? 

 ケンの言っている意味が分からないでいると……。

 ドゴン!!

 

 「グハッ!?」

 鈍い音が響くと同時に獣化兵が吹っ飛んで行った!! 何だ今のは!! 誰も動いていなかったのに何で!!

 目の前の出来事に驚愕していると。

 

 「さっきは全力で殴ってくれたな獣化兵。おかげで蘭陵王のお面が半分壊れたじゃないか」

 獣化兵がいた場所にユラリとイブキの姿が浮かび上がった。手には半分壊れたお面を持っていて、鋭い双眸で獣化兵を睨みつける。

 

 「イブキ! 無事だったのか!!」

 「まぁな。久しぶりに良い一撃を貰った」

 「バカな!! 獣化兵の攻撃を貰っておいて何故無事なんだ!?」

 「ああ、消力(シャオリー)で無力化したからな。さてと……俺も本気(・・)になりますかね」

 ゴキゴキと骨を鳴らし獣化兵に無造作に近づくイブキ。

 

 「なら今度こそ死ねッ!!」

 駆け出し、子供の腕サイズの凶爪をイブキの頭部目掛け突き出す!!

 

 「「「「「「「イブキ!!」」」」」」」

 俺達が叫ぶと同時に。

 

 「ガイバ―――ッ!!」

 力強い咆哮。瞬間。

 ドォオオオオオッッ!! イブキから衝撃波が発生した!!

 

 「ギャヒイイィッ!!」

 その衝撃波で獣化兵が跡形もなく消し飛んだ(・・・・・)!! そしてイブキの背後から兄貴のインクルシオとは違う何かが出てきた!!

 その何かはイブキの身に纏う……よりは捕食に近い感じなのか? そんな感じで全体が青みがかった緑の鎧? を身に纏ったイブキ。それを見た獣化兵が後ずさりしはじめた。

 

 「なあ。アイツってまさか」

 「お……おい。何かの、冗談だろう? そうだよな?」

 「いや。冗談じゃない……アレは本物の鬼神だ!!」

 3人ともさっきまでの威勢が嘘のように消え去り、今は一刻も早くイブキから離れようとしている。

 

 「悪いけど、最初に言ったはずだけどお前らは逃がさないよ。ここで死んでもらうから。鬼神……強殖装甲の力を見せてやる」

 それは残りの4人への宣告だった。

 

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