丸腰でポケモンの世界に転移したが持ち前の幸運(?)+αで生き抜いていきます 作:黒霧春也
ザアサアと風で木が軽く揺れる森の中。
上下ジャージに白いスニーカー……と中学生になりたてくらいの姿になった自分の姿を見て思わず固まる。
「一体どうなっているんだ?」
元々は成人した社会人だったはずなのに今は子供姿なので、思いつく限り記憶を洗い出し始める。
会社が終わり帰宅
↓
飯や風呂などを済ます
↓
ポケモンバイオレットのレート戦をする
↓
いい時間になったので布団に入って寝た
↓
子供の姿になって見知らぬ場所に転移←イマココ
……一通りまとめてみたが、普通におかしくないか!? と考えながら上を向くと。
「って、空に飛んでいるのはムックルだよな」
ふと空を見上げるとムクドリみたいな小さな鳥……というよりもムックルや進化系のムクバードの群れを見つけた。
(い、意味がわからない)
自宅で寝ていて次に目を覚ますと冷たい地面の上。しかも声に違和感があって近くの川で顔を写すと中学生くらいの自分。つまりは13歳くらいの姿になっていた。
「突っ込みところしかないがやばいよな」
今の装備は先程上げた青色のジャージと白いスニーカーで持ち物はポケットを確認したが何もない。つまりは丸腰状態である。
(チートもない森スタートかよ)
正直、レジェンズアルセウスよりもハードな気が……。そう思いながら立ち上がると、ある物を見つけた。
それはオボンの実に近い黄色の果実だ。
「と、とりあえず食べてみるか」
半ば詰んだ状態なのでヤケで、木になっているオボンの実を掴む。するとリンゴやナシみたいにしっかりとした感覚を感じたので、俺は皮ごと齧り付く。
「んゆ!? うまい!」
アニメやゲームでは回復アイテムであるオボンの実。だが、いざ食べてみるとナシに近いシャキシャキとした感じ、しかもかなり甘くて食べやすい。
(これはありがたい)
お腹が空いていたので収穫しながら食べる。うん、普通に美味しい!
「ふう、ありがたい!」
オボンの実を3個ほど完食。残った分はジャージのポケットに入れた。
(しかし、食料がこれだけだとな……)
飢え死ぬのは無くなったが、同じ物では飽きるのは目に見えている。なので、俺は少し怖いが探索を進めた。
「この辺は何があるんだ?」
少し離れた場所を見てみると、ケムッソやキャタピーの姿。それに進化系のポケモン達も揃っているが……。
ボールがないので捕獲できないし、戦うポケモンもいない。
「マジでスマホくらい欲しいんだが」
レジェンズアルセウスではアルセウスからもらえるスマホがあり、そのおかげで助かっていた。だが俺は何もない状態で、しかも空中には危険なポケモンであるスピアーが飛んでいる。
(このまま死ぬのか……)
まともに見つかれば死ぬ可能性が高い。俺はその恐怖でガクガク震えていると、少し離れた場所に何かがいた。
「な、なんだ?」
見た感じは黄緑色の姿をしているが、ボロボロで動けないのか体を揺らしているだけ。
(どうするか)
もし獲物を捕らえる為にわざとやっているなら詰むが、逆に本当なら逆にチャンスかもしれない。
「よ、よし!」
このままだと何も変わらないので、俺は覚悟を決めて動けない相手の方に向かう。
(なんのポケモンだ?)
遠目ではわからないので近づくと、その姿が目に入った。
「マジかよ……」
地面に倒れていたのは黄緑色の髪をしたポケモン。進化先のポケモンの姿は美しく人気がある相手。
(ラルトス)
「!!」
テレパシーポケモンであるラルトスは、俺の心に反応したのか顔を上げた。
「ら、ラルゥ……」
「お、おい!?」
ラルトスの顔や体の至る所には傷があり、遠目で見た通り動けないみたいだ。だが俺にはきずくすりの一つもないのでどうしよ……ん? そうか!
「なあ、コイツは食えるか?」
「ラ……」
ポケットに入れておいたオボンの実を取り出し、ラルトスの口元に近づけるが、相手は余力がないのか齧りつけない。
(ぐっ、仕方ない!)
「悪い! お前を助けるにはこれしかない」
「!?」
包丁とかあれば細かく切って食べされる事もできたが、丸腰の俺にはそれができない。なので相手には申し訳ないが、オボンの実に齧り付き砕いた後、ラルトスの口に運ぶ。
(めっちゃ恥ずかしい!)
最初は心的に抵抗があったが、何回か口移しを繰り返した。そのおかげでラルトスは少しずつだが動けるようになった。
「ラル!」
「おお、よかった」
オボンの実の回復効果は意外と早いのか、地面に倒れて動けなかったラルトスは動けるようになった。
(さてと、これで最後かもしれないな)
先程からブウゥンとコチラに近づいて来る羽音……。ふとみると両手の槍を構えたスピアーがコチラを睨みつけていた。
「スピッ!」
「ぐっ、病み上がりのお前は逃げろ」
「!?」
この状況では勝ち目は薄いのは言葉でしなくてもわかる。その為、俺はガクガク震える足を叱咤して地面に落ちている石を拾う。
「来るなら来い!」
ポケモンの世界に転生して1時間も経ってないのに死亡。しかも相手はスピアーとか笑うしかない。
(まあ、仕方ないか)
チートを持ってない自分にはこれしかできない。対するスピアーは余裕そうに槍を構えていた。まあ、スーパーマサラ人なら勝てるかもしれないが、俺は一般人……。普通に無理!
「スピッ!!」
「ぐっ!」
あの技はおそらく『みだれつき』。ゲームでは連続攻撃の技だが、現実でみると恐怖がやばい。
そう思いながらも拾った石を投げるが、相手は軽く弾き接近して……うん?
「す、スピィ?」
「あれ? なんでスピアーの動きが止まっているんだ」
へたり込んだ俺の体が槍に貫かれる直前、スピアーの体が空中で硬直。互いに顔を見合わせていると……進化したのか、キルリアが目を光らせていた。
「キルゥ!」
「え? なんで!?」
キルリアはコチラの腕に抱きついて来た後、目を光らせながら空中で静止しているスピアーを睨む。
「キルッ!!」
「!?!?」
そして勢いよく地面に叩きつけられたスピアーは目を回しながら動かなくなった。うん、普通に強くね?
「もしかして助けてくれたのか?」
「キルゥ♪」
「うん、助かった」
俺は腕に抱きつくキルリアの頭を撫でていると、相手も嬉しそうに目を閉じた。
(ギリギリ生き残れたな)
スピアーを倒してくれたおかげで助かったが、状況的にはあまり変わってない。だが、1人でも味方が増えるのはかなりありがたいと思う。
「さてと、お前はこれからどうするんだ?」
「……」
「うん? なんでジト目なんだ」
「キルッ!」
キルリアが自分の口に手を当てており、可愛げなポーズをとった。うん……この流れ的に。
「私の唇を奪ったから責任を取れと?」
「ルルッ♪」
「お前!?」
医療行為なのは理解しているみたいで一礼。でも頬を染めており抱きつく手が強まった。
(まあ、いいか)
何回か質問してみると、キルリアはメスみたいで内心ホッとするが……。なんかめっちゃ懐かれた。
「とりあえずこの森を出る事から目指すか」
「ルルッ!」
彼女と出会いをキッカケに俺・クウヤのストー……。
「なあ、なんでお前は胸に抱きついたままなんだ?」
「キルル」
抱っこしたまま歩け。彼女はそう言いたいみたいで、俺は渋々その格好のまま森の中を歩いていく。
〈余談〉
・この先の旅で予想外の展開が起きまくるとはこの時の俺は知る由もなかった。〈原作と比較して〉
10月2日、13時52分。誤字脱字報告ありがとうございます!
12月3日、16時32分。誤字脱字報告ありがとうございます!