丸腰でポケモンの世界に転移したが持ち前の幸運(?)+αで生き抜いていきます   作:黒霧春也

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 10月5日、16時10分。
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29話・空気が重い

 一通り落ち着いた後、流石にクソ暑い中庭で会話するのはキツかったのでクーラーがついている客室での話し合いになった。(エルさんもなんとか復活した)

 

(く、空気が重い!)

 

 場の空気が重い……というよりも明らか修羅場っぽい雰囲気に見えるので苦笑いを浮かべているとボブカットの少女が口を開く。

 

「それでスイクンを連れた君は何者なんだい?」

「フエンジムに挑みに来た通りすがりの少年です」

「……確かに間違ってはなさそうだけどそれ以外にもあるよね」

(おっしゃる通り!)

 

 ボブカットの少女はまるでコチラを試すような感じなので当たり障りのない言葉を返す。

 

(てか、こんなやりとりはあまりしたくないんだが……)

 

 個人的にはさっさと帰りたいが離れられる雰囲気じゃないのでため息を吐きたくなるが……少し離れたところに座っているエルさんがボブカットの少女を睨む。

 

「それよりも貴女、アスナさん達を解放してください!」

「解放? ボクは単純に弱いアイツらを鍛えているだけだよ」

「ツッ! ボロボロになって病院に運ばれた人もいますよね」

「それは弱いから仕方ないよ」

(ひ、酷いな)

 

 相手が弱いから過度に鍛えている。普通なら迷惑の方が強いがここはポケモンジムなので彼女の意見は理解は出来るが……。

 

(昭和のスパルタ指導みたいだな)

 

 この話を聞いて俺は苦しい指導を受けてなくてホッとするが、同時に巻き込まれている現実から目を逸らす。

 だが相手はまるで肉食獣のようにコチラを睨み続ける。

 

「このままだと言い合いになるから話を戻して、通りすがり君の名前は?」

「俺か? 俺はクウヤだけど?」

「普通に答えるんだね。あ、ちなみにボクはルージュだよ」

「ほうほう、いい名前ですね」

「……なるほど、なんとなくだけどボクと君は相性が良さそうだ」

(獲物を見る目はやめて欲しいんだが)

 

 今は互いに手持ちのポケモンをボールに戻しているので部屋の中には俺・エルさん・ルージュの3人しかいない。

 その中で俺を見て舌なめずりをしているルージュにドン引きしつつ意見を口にする。

 

「またズレたので戻して、お前の狙いはジムにいるトレーナーを鍛える事なのか?」

「うーん、半分はそうだけどもう半分はジムリーダーの権限を得る事だね」

「と、なると少なくともジムリーダー達に不満があるからお前がいるんだな」

「単純にいえばそうだよ」

 

 ジムリーダーの権限とかの話になると意味不明なので聞き流していると、エルさんが机を思いっきり叩いた。

 

「貴女ね! あの子がどんだけ頑張ってジムリーダーになったと思う!」

「アスナのこと?」

「そうよ! で、いきなり来て権限を奪うとかおかしいわ!」

「そうかな?」

「当たり前よ!」

(あのエルさん、今ヒステリックを起こされると面倒なんだが……)

 

 机をバンバン叩いて感情的にブチギレたエルさんの一方的な意見だが、やり方はともかく内容的にはルージュの意見も間違ってはないのでなんとも言えない。

 

(なんか面倒だな)

 

 このままだとまた言い合いの喧嘩を始めそうなので、俺は呆れながらエルさんひ声をかける。

 

「エルさん、すみませんが部屋から出て貰えますか?」

「えっ!? なんで自分が出て行かないといけないのですか!」

「いいから! 話し合いは俺ら2人でやりますので」

「!? わ、わかりました……」

 

 イラつきながら立ち上がったエルさんは不服な表情を浮かべながら部屋から出ていった。それを尻目にルージュがポツリと呟く。

 

「感情しか見えないタイプは嫌いだね」

「まあ、そこに関してはすみません……」

「いいよ。君が悪いわけじゃないからね」

 

 申し訳なくなったので頭を下げるとルージュは軽く許してくれたので上げる。

 そして互いにテーブルに置いたお茶を飲んだ後に話し合いを進める。

 

「それでルージュさんはジムリーダーであるアスナさんの親戚なんだよな」

「そうだよ。まあ、アスナの事はあまり好きじゃないけどね」

「ん? それはなんで?」

「そんなの視野が狭すぎて物事が見えてないからだよ」

「おおう、意外とちゃんとした理由だな(汗)」

 

 感情メインで動くアスナさん、理屈メインで動くルージュ。性格が反対なのでかなり反発しあっているようだ。

 その証拠にアスナさんの話をした瞬間にルージュの表情が険しくなった。

 

「それに、フエンジムは元々ボクのお父さんがジムリーダーだったんだよ」

「あー、それで自分が継ぎたかったのに親戚のアスナさんが継いだからむかついたんだな」

「それも半分ある」

(なんか彼女も感情的だな……)

 

 意外と感情的なのかとルージュを見て話していると、彼女はコチラをジッと見て少し笑う。

 

「やっぱり君はおかしい」

「普通に悪口を言われたんだが(汗)」

「あ、ごめん。そんなつもりじゃかったよ」

「そ、そうか……」

(少し傷ついたがそれはさておき)

 

 感情表現が苦手なのかルージュはほぼ無表情のまま頭を下げてきた。なので、俺は苦笑いを浮かべながら「おあいこ」と言って頭を上げてもらう。

 

「ありがとう。それで話を戻すけど、お父さんが引退したと聞いて他の地方で修行していたボクはフエンタウンに戻ってきたんだよ」

「ほうほう、それが2ヶ月前なんだな」

「そう……で、ボクはジムリーダー試験を受けようとしたんだけど」

「戻ってきた時にはアスナさんがジムリーダーになっていてムカついたんだな」

「うん」

(この場合はどうなるんだ?)

 

 話的には誰も悪くない気がするのでこのまま収めたいところだが……。彼女は無表情だが悔しそうな雰囲気を感じる。

 

「正直、アスナがジムリーダーとしてしっかりやっているならボクも受け入れてたよ」

「でも実際はそうではなかったんだな」

「うん!」

「……ちなみに当時はどんな感じだったか聞いていいか?」

「もちろん!」

 

 とりあえず細かな意見を聞いてみたいと思い質問した結果。問題ごとが結構あったので紙に書いて纏めると。

 

①、『あなをほる』を使われたフィールドを放置して次のトレーナーのジム戦をやっていた。(整備業者に頼めば放置期間内で元に戻っていたがそれをしてなかった)

②、シフトの管理ミスを起こして非番の日にジムリーダー代理を緊急で出勤させた。

③、ジムに来たトレーナーの適正レベルよりもはるかに強いポケモンを使いボコボコにして相手の心をへし折った。

④、事前連絡もなしにジムを臨時休業させて挑みに来たトレーナーを困惑させた。

⑤、単純にジムの意識レベルと練度が低い←ルージュの主観

  

 ……うん、これは。

 ルージュの意見をまとめている限りこれはジム側の問題が多い気がする。

 

「とりあえずこんな感じだけど大丈夫?」

「お、おう(汗)」

(これはこれでアウトでは?)

 

 アニメを見ていたのである程度は予想していたが、それを超えてきたので思わずドン引いてしまう。

 

「……ボクの意見を否定しないのかい?

「そりゃ、現場を見てないのに判断は出来ないだろ」

「確かにそうだね」

 

 ルージュの意見を鵜呑みにするのは少し違うが、否定するのは材料が足りてない。

 

(とりあえずジム内を見たいが)

 

 ここは現場を見て判断する方がいいので俺はある意見を彼女に向かって提案する。

 

「一応相手側の意見も聞いていいか?」

「それはもちろん」

「ありがとう」

 

 片方だけの意見を聞いて判断するのはやりたくないので、俺はルージュに許可をとった後に立ち上がり外で待っている事務員さんに声をかける。

 

「少しいいですか?」

「あ、はい!」

「もしよければジムリーダーのアスナさんを呼んできて欲しいです」

「わかりました!」

 

 事務員さんにお願いしてアスナさんを呼んでもらうが……アザやヤケドまみれでボロボロの彼女が笑顔で現れた。

 

(すげぇ痛々しいな)

 

 アスナさんの姿を見て固まっていると、彼女は笑顔のまま挨拶の言葉を口にする。

 

「初めまして! フエンジムのジムリーダー、アスナです!」

「は、はい。俺は通りすがりのトレーナー、クウヤです」

「クウヤさん、よろしくね!」

 

 アスナさんらアニメで見た通り可愛げのあるので目移りしそうだが、我慢して部屋の中に入る。

 

「ようやく来たね」

「! ええ、カナさん(事務の人)に呼ばれて来たわ!」

「そう……。じゃあ本題に入るよ」

「わ、わかったわ!」

 

 俺とアスナさんは椅子に座り、内容を纏めた紙をアスナさんに見てもらいながら意見を聞き始めた。

 

 ー〈登場キャラ〉ー

・名前、ルージュ

・性別、女性。一人称、ボク

・年齢、15歳くらい(アスナと同い年)

・見た目、顔はアスナとソックリだが髪型がボブカット

・性格、本人は理論型だと思っているが感情もそこそこ入るタイプ。だが基本的に合理的かつ主観が強いので今のフエンジムは少しやばい状態です。

 

 

 

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