丸腰でポケモンの世界に転移したが持ち前の幸運(?)+αで生き抜いていきます 作:黒霧春也
お気に入り登録615件、しおり313件、感想27件。皆様ありがとうございます!
レールの里帰り石集めをした次の日。
俺とサファイアはダイゴさんと別れて意気揚々とムロタウンにあるジムに突撃した。
「こんにちはー!」
「た、たのも!」
「「「!?!?」」」
格闘タイプ中心のムロジムでは柔道の道着を着た男女、スポーツに適した服を着たバトルガール達が己の肉体を鍛えていた。
……のはいいが、ほとんどの人が俺の方に振り向いているんだけど。
(まあ、なんか人見られているよな)
前にルナとレールで無双しまくったのでジムトレーナー達には顔を覚えられてそうだな。
と思っていたらオレンジに近い、赤髪ポニテのバトルガールがコチラを睨みつけるように近づいて来た。
「ねえアンタ、先輩達が固まっているけどなんかしたのかしら?」
「うーん、前にここに来てジムバッジをいただいたけど」
「!? じゃあ何をしに来たのさ!」
「そんなの弟子を鍛える為にきたんだよ」
「ええ!?」
相手は俺の事を知らないみたいでホッとしていると、彼女は呆れたように首を振った。
「なるほどね……アンタらはそこまで体を鍛えてないように見えるけど気のせい?」
「それはどうかな?」
「そんな斜めに構えてムカつくわね」
「あの師匠?」
なんか話がややこしくなっているので元に戻すために発言する。
「とりあえずサファイアとポケモンバトルしてほしいけど大丈夫?」
「ふうん。つまり彼女をボコボコにしてもいいのね」
「まあ、できるならね……」
「あらわたしを舐めているのかしら?」
周りのジムトレーナー達は傍観者になっているのか何も言わない。
まあ、こっちの方が都合がいいので俺は頭を下げる。
「では手始めに対戦をお願いします」
「バトルするのはあたしですよね!?」
「そうだが?」
「ううっ! わかりましたよ!」
「……叩き潰すわ」
半分ヤケになっているのか半泣きのサファイアとバトルガール……名前はカイラさん。
2人はムロジム内にあるバトルフィールドに向かい合う形で立った。
(さてどうなるかな?)
自分に自信がないが勇気はあるサファイアと新人っぽいカイラさんのバトル。
俺は見ものだと思いながらベンチに座ると、水色寄りの青髪にオレンジのジャージを着た男性が俺の隣に座った。
「クウヤ君、久しぶりだね」
「お久しぶりですトウキさん」
「ハハッ、君はまたウチのジムトレーナー達をボコボコにしに来たのかい?」
「まあ、半分はそうですね」
「なるほど、でもあんまりやりすぎないでくれよ」
「その辺はわかっているつもりです」
トウキさんは明るくこえをかけて来てくれたので俺も気楽に返答。というかこの人はコミュ力は高いのでタイミングさえ掴めれば話せるのでありがたい。
そう思って会話していると、サファイアVSカイラさんのバトルが始まった。
「お願いシャモ!」
「シャモッ!」
「行きなさいワンリキー!」
「リキ!」
サファイアが繰り出したのはエースのワカシャモでやる気満々なのかタップダンスを行なっている。
対するバトルガールのカイラさんは子供くらいの大きさだが筋肉質のポケモン、ワンリキーを繰り出した。
「アタシは新人だけど舐めないでよ!」
「もちろんです! では、よろしくお願いします」
「ええ、よろしくね!」
対戦する2人の準備が整ったので審判は互いの顔を一瞥した後。
「それではバトル開始!」
「シャモ、ひのこ!」
「シャモモ!」
「受けてリベンジ!」
「リキッ!」
先に仕掛けたワカシャモは口からひのこを飛ばしてワンリキーに直撃させる。だが相手が使ったのは『リベンジ』で威力が上がって拳が襲いかかった。
「シャモ、つつく!」
「シャ!」
「飛行タイプの技!」
『リベンジ』の拳が当たる前に『つつく』を使い威力を相殺したかに思えたが……ワンリキーの拳がワカシャモを吹き飛ばした。
「そんな! 飛行タイプの技なら防げると思ったのに」
「貴女、何を勘違いしているのかしら?」
「え?」
「つつく程度で威力の上がったリベンジを止められるわけないわ」
カラカラと笑っているカイラさんの説明を聞き俺は『リベンジ』の事を思い出す。
「リベンジは攻撃を受けた後に発動すると威力が倍になる技だったはず……」
「! へぇ、よく覚えているね」
「いえ、たまたまですよ」
トウキさんに褒められたが、俺の気持ちは微妙なまま。その理由はアタフタするサファイアを見て心配だからだ。
(ここで負けると彼女の精神に来そうだな)
レベル的には同じくらいだが戦術的にはカイラさんの方が少し上に見える。サファイアはその戦術を攻略しない限り勝つのは難しそうだ。
「どうしよう……」
「シャモ!」
「迷う時間なんてあるのかしら?」
「リキ!」
先程とと同じく厳しい攻めを仕掛けてくる相手に、サファイアはまるで諦めたような目をしていた。
「やっぱりあたしじゃあ無理なんだ」
(おおう)
サファイアは意気消沈したのか項垂れており、カイラさんは呆れているのか首を振った。
「わたし程度で諦めるなら上に行くのは到底無理ね」
「ううっ……」
「チッ、さっさと終わらせてやるわ」
「シャモ!?」
ワンリキーの『リベンジ』が逃げ回っていたワカシャモに直撃して地面に転がる。
「さて彼女は心が折れたけど師匠の君はどうするんだい?」
「それは……」
「黙って見ていても意味がないと思うよ」
「! 確かにそうですね」
ルール違反かもしれないが俺はベンチから立ち上がりサファイアに向かって檄を飛ばす。
「サファイア、よく聞け!」
「ひいぃ! し、師匠!」
「この際だからハッキリ言うが、お前には磨けば光る才能がある!」
「! でも、あたしは!」
「だがその才能も気づかなければ意味がないんだよ! そして、お前は強くなると俺が保証してやる!」
「ええ!?」
そんな根拠はどこにもないと思われるが、俺は彼女は主役なのを知っているので大きな声で叫ぶ。
「だから思いっきりやって相手をぶっ倒せ!」
「……フフッ、師匠は不器用ですね」
「え?」
「いえ、激励ありがとうございます!!」
先程と違い目に光が灯ったサファイアはニッコリ笑い、ボロボロのワカシャモに声をかけた。
「シャモ、悪いけど最後まで付き合って貰える?」
「! シャモモ!!」
彼女の雰囲気が変わったのを察したワカシャモは、体を真っ赤に光らせながら頷いた。
「!? これって!」
「ああ! ワカシャモの特性、もうかだ!」
「! へぇ、あれだけボコってもまだ動けるのね」
これ以上は言葉はいらないと思って俺はトウキさんが座るベンチに戻る。すると、嬉しそうにしている彼から軽く肩を叩かれた。
「いい激励だったよ」
「ハハッ、ありがとうございます」
ジムリーダーに褒められたので内心では気持ちよくなっていると、サファイアが勢いよく叫ぶ。
「シャモ、ニトロチャージ!!」
「シャ!」
「何が狙いか知らないけど! ワンリキー、受け止めてリベンジ!」
「リキ、リキッ!?」
ワカシャモの炎を纏った突進を受け止めようとしたワンリキーだが、勢いが強すぎて後方に吹き飛んだ。
サファイアはその瞬間を見逃さずに追撃を仕掛けた。
「ここはひのこ! そしてもう一度、ニトロチャージ!」
「ジャモ!!」
「!? さっきと動きが違う!」
火事場の馬鹿力。その言葉が今のサファイアとワカシャモにピッタリだ。
俺は今の彼女の指示とワカシャモの連携を観察しながら一言。
(やっぱりアイツは凄いな)
嫉妬しそうになるくらいの天才肌。
前は同期の2人に負けたと言っていたが、今はカイラさんを圧倒している。
「まさか彼女がここまで凄いなんてね」
「ええ、自分もびっくりしてますよ」
隣で冷や汗を流すトウキさんに俺は頷いていると、ワカシャモの『ニトロチャージ』がワンリキーに直撃して勝負がついた。
「ワンリキー戦闘不能! ワカシャモの勝ち!」
「う、嘘でしょ……」
負けると思ってなかったのかカイラさんはショックで膝をつく。逆にサファイアはゾーンに入っていたみたいで勝負が終わると尻餅をついた。
「か、勝ったのね」
「シャモッ!」
「ありがとうシャモ!」
嬉しそうに彼女に抱きつくワカシャモ。俺はその姿を見て和みながらサファイアに近づく。
「し、師匠!」
「おう、今回のバトルはどうだった?」
「それは! 途中は心が折れそうでしたが師匠の言葉で立ち上がれました!」
「なるほど……」
あの言葉だけで立ち上がれるお前の方がすごい。
俺はそう思っているとトウキさんが爽やかな笑顔を浮かべながら近づいて来た。
「サファイアさん、勝利おめでとう」
「えっと、ありがとうございます!」
相手がジムリーダーのトウキさんだと知らないみたいでお礼を言って頭を下げた。
だがこのままだとジムリーダーには勝てないと言われたのでサファイアは少しの間、ムロジムで稽古をつけて貰える事になった。
〈追伸〉
サファイアがジムトレーナーと稽古を始めた中、なぜか俺まで巻き込まれた。
「で、なんでお前が俺と一緒にトレーニングをするんだよ」
「そんなのトウキさんに聞いて!」
ムロジムは格闘場と言うよりもスポーツジム。
その為、ジャージに着替えた俺とカイラさんは代理の1人が見ている中でランニングマシンの上を走らされていた……。
10月23日、15時47分。誤字脱字報告ありがとうございます!