丸腰でポケモンの世界に転移したが持ち前の幸運(?)+αで生き抜いていきます 作:黒霧春也
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ムロジムで稽古を始めてから半月後。
ルナ達は基礎訓練や新技の特訓をして前よりも強くなり、コウテツことダンバルもメタングに進化したのでそこは嬉しく感じる。
そしてサファイアのキノココがキノガッサ、ココドラもコドラに進化したので彼女は着実に強くなった。
ーーーー
最近はムロジムに併設されている寮で生活しているので、朝早くからランニングに行ったりトウキさんに連れられてサーフィンなどをした。
そのおかげで前よりも体力がついた気がするが……。
「ハァハァ、俺の勝ちだな」
「こ、今度は負けないわよ」
なぜか知らないが、カイラ(呼び捨て)によく絡まれて勝負する羽目になった。
その勝負の内容がスポーツ系はもちろん料理や洗濯とかさまざまに及んだ。
「というかアンタが家事できるとは思わなかったわ!」
「これでも旅しているから当たり前だろ」
「わたしは全く出来ないわよ!」
「おいこら残念美少女」
「誰が残念よ、このひねくれイケメン」
「お前ら仲がいいな!」
「「誰が!!」」
俺達の面倒を見てくれている30代中盤くらいのスポーツ柄に筋骨隆々の男性、カイラの父親であるカルドさんが大口で笑っていた。
「しっかしここまで娘が元気になってくれるのはありがたいな」
「お、親父! コイツはライバルなだけだ!」
「ハハッ! いい競争相手じゃないか」
「ううう!?」
なんかモジモジしている彼女に俺はドン引きしていると、トウキさんとトレーニングをしていたサファイアが戻って来た。
「師匠! 昼からあたしのジム戦をするから見に来てください」
「おうわかった!」
部屋の時計を見ると今は午前10時くらいなので後3時間はある。
なので俺は疲労感がある体に鞭を打って立ち上がりシャワーを借りた。
「ふうぅ」
最初はそこまで体が動けなかったけど、アイツの煽りにムカついて大人気なく勝負をしたな。
(ある意味新鮮だったな)
前世では味わった事のない経験なので楽しんでいたかもしれない。
俺はそう思って男性用シャワー室から出ると、隣の女性用シャワー室から出てきたカイラと出会った。
「ち、ちょうどいいタイミングね」
「そうだな」
「ねぇ、サファイアがトウキさんに勝ってバッジを手に入れたら貴方はどうするの?」
「そんなの次の街に向かうに決まっているだろ」
「……そう」
なんか残念そうに下を向いている彼女に俺は疑問符を浮かべていると、いきなり腕を引っ張られる。
「少し付き合いなさい」
「へ?」
頭の中に(?)が増える中、カイラに腕を掴まれたままムロジム出て浜辺に向かうことになった。
ーーー
浜辺に到着すると彼女は座り込んだので俺も少し離れて座る。
(気まずい……)
どこでフラグを立てたかわからないがカイラはコッチをジッと見ている。その為、俺は少し迷った後に口を開く。
「それで俺をここに連れてきたのは泳ぎに来たわけじゃないよな」
「! まあ、そうね」
いつもと違い消えてしまいそうな声をする彼女に、イジる気持ちが失せたので真面目に言葉を返す。
「俺はデリカシーがないから直接聞くが、お前は何が言いたいんだ?」
「それは……アンタにあたしの昔話を聞いてほしいのよ」
「え?」
「いいから聞きなさい!」
(マジかよ)
いきなり斜め上の回答をされたので固まってしまう。だがカイラ自身は真面目な表情を浮かべながら話してきた。
「あたしはお母さんがいない。と言うよりもお父さんとわたしに愛想を尽かして出て行ったのよ」
(い、いきなり重い)
「それで小さい頃にお父さんと2人になって、あたしは引きこもりがちになったの」
「……」
「最初の数ヶ月はあたしが悪いんだって自分を責めてた。でもその姿を見たお父さんが泣いていたのを見て何もわからなくなった」
ポツポツと話す彼女に俺は何も言えなくなっていると、向こうは涙を流し始めた。
「そんなある日、お父さんがジムリーダー代理の試験を合格した事を知ってアタシも変わろうと思って旅に出たの」
「ちなみに旅に出る時にカルドさんは何か言ったのか?」
「偶に連絡をよこせと困った時には声をかけろって言われたわ」
「なるほど、いいお父さんだな」
「ええ!」
本当はすごい心配になりそうなのにその気持ちを抑えて娘のやりたいことを尊重する。
俺はカルドさんの優しさを感じていると、そのタイミングでカイラの表情が暗くなった。
「だけどわたしの旅は1週間で終わったわ」
「それって」
「理由は単純にバトルしてボコボコにされまくって心が折れたのよ」
「……」
当時はワンリキーではなく別のポケモンを使っていたらしいが、ソイツとカイラ本人が心が折れたらしい。
「その時にわかったわ。わたしにはバトルの才能がないってね」
(な、何も言えない)
カラカラと笑う彼女は痛々しいので、俺はなんとも言えずに話を聞く。
「それでカッコ悪くムロタウンに帰ってきた時、お父さんは優しく抱きしめてくれた。けどわたしは自分を許せなかった」
「それで今はジムにいるのか」
「まあ、1年間くらい引きこもっていたから体力は落ちていたわよ」
「なるほどな」
現実のショックが大きくて引きこもる。俺も似た事を経験したので同情できる内容。
そう思っているとカイラが先ほどよりは嬉しそうに口を開く。
「でもその後が面白いのよ。あたしがジムで稽古している数日後に1人の若い男女が現れたのよ」
(おそらく……)
「で、ジムの先輩達は少年を見て固まっていたし、少女は彼の事を師匠って呼んでいた」
「ふむふむ」
「それでわたしは何を思ったのか感情的に突っかかったわ」
「今思うとめちゃくちゃだな(汗)」
「ええ! わたしもそう思うわ」
「思うんかい!」
自分がやった事なのに涙を拭いてカラカラと笑う彼女に突っ込みつつ、続きを耳にする。
「それはさておき。トウキさんの提案で貴方とペアを組んでトレーニングする事になって、そこからわたしは自分が変わる感じがしたのよ」
「ほうほう」
「それでアンタと競い合ったり喧嘩した時間がすごく楽しかった」
「お前な……」
流れ的に上手く掴めないが俺はカイラが言いたい事がわかる気がする。そう思っていると彼女が近づいてきて俺の手を握った。
「ねぇアンタ、いえクウヤにお願いがあるけどいい?」
「とりあえず聞いてから決める」
「フフッ、じゃあクウヤの事をクウ兄って呼んでいいかしら」
「マ? えっと」
なんかいきなり斜め上の回答を聞いたので固まっていると、カイラは握った手を離して俺の膝に頭を置く。
「お願い」
「ハァ、わかったよこの愚妹」
「ありがとう、ひねくれ兄さん」
俺は膝に頭を置いている彼女を見ながら空を見上げる。そこには雲ひとつない晴天の空が広がっていた。
(こんな日もいいか)
思わず苦笑いを浮かべているとカイラから「頭を撫でろ」と言われたので渋々撫でる羽目に……。
「気持ちいいわね」
「そうだな」
凄い甘えられているので俺は自分なりに言葉を返す。
そしてサファイアのジム戦が始まるまでこのままだった結果、俺の足が痺れてカイラに担いでもらう事になった。
10月23日、15時48分。誤字脱字報告ありがとうございます!
10月24日、10時09分。誤字脱字報告ありがとうございます!