丸腰でポケモンの世界に転移したが持ち前の幸運(?)+αで生き抜いていきます   作:黒霧春也

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 10月30日、16時28分。
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54話・過去を乗り越えるには

〈サファイア視点〉

 

 クウヤ師匠がルージュさんと組んで勝ち進んでいる中、あたしはカイラと組んで1回戦をギリギリで勝利した。

 

「な、なんとか勝てた!」

「やったわ!」

 

 あたしはキノガッサ、カイラは前に戦ったワンリキーが進化したゴーリキーを繰り出す。

 

(あたしも師匠やパパにいいところを見せたい!)

 

 相手はゴローンとマッスグマだったので硬さと素早さに苦戦したが、相性の良さとキノガッサの『マッハパンチ』を使ってなんとか相手を倒せた。

 なので控え室にも戻ってカイラと話していると、あたしが怯えている1組に出会う。

 

「あらあら? 啖呵を切った割にはギリギリだったわね」

「! 次はアンタ達だから覚悟しなさいよ!」

「悪いけどオレ達はそう簡単に負けない」

「そう? でも勝負はわからないわ」

 

 クウヤ師匠達の前では優男のイメージがあったルビーだが、今はあたしを見下すような視線を向けている。

 この視線はあたしが彼と最初にバトルをした後から向けられており、正直悔しさと怖さで心が締め付けられて気持ち悪い。

 

(で、でも!)

 

 ここで怯えていても仕方ない。

 前は手も足も出ずにボコボコにされてトラウマを受けつけられたけど今は仲間がいる!!

 なのであたしは勇気を持って言い返す。

 

「あ、あたしは負けない!」

「へえぇ、無能がまだ吠えるの?」

「あたしは無能じゃない!」

「なるほど、じゃあ次のバトルで証明してもらうよ」

「!! アイツら!」

 

 余裕そうな表情を浮かべているルビーとエメラルドが去っていき、あたしは思わずへたり込みそうになるがカイラが支えてくれた。

 

「わたしもできる限り手伝うわ」

「あ、ありがとう!」

「別に気にしなくていいわよ」

 

 ジムリーダーの娘としての重圧はあるけど、あたしはあたしのバトルをする。

 それがクウヤ師匠を見てあたしが感じた事だから!

 

 ーー

 

 時が進み2回戦。

 あたしとカイラはフィールドに堂々と立ってルビー&エメラルド組を睨みつけた。

 

「今度は勝つ!」

「悪いけどアンタ達に勝ち目なんてないわよ!」

「それはどうかしら?」

「まあ、負けた時の顔が楽しみだね」

 

 あたし達は表面上はまともなキャッチボールをしているけど、内心では感情がドロドロしている。

 

(圧倒されたらダメ!)

 

 へたり込みそうな体に鞭を打ち絶えていると審判さんが手を上げた。

 

「2回戦、サファイア&カイラVSルビー&エメラルドのポケモンバトルを開始します!」

 

 審判さんの声が聞こえるがあたしは意識が飛びそうになる……けど!

 

(負けない!!)

 

 痛いくらい歯を食いしばっていると、審判さんが合図したので互いのポケモンを繰り出す。

 

「行きなさいジュプトル!」

「ヌマクロー、君の出番だ!」

「空高く飛びなさい、ムクバード!」

「お願い、シャモ!」

 

 エメラルドはジュプトルでルビーはヌマクロー。対するカイラはムクバードでアタシはエースのワカシャモを選んだ。

 

「では、バトル開始!」

「ジュプトル、ムクバードにがんせきふうじ!」

「!? ムクバード、でんこうせっか!」

 

 いきなりジュプトルが予想外の『がんせきふうじ』を使ってムクバードを追い込んでいく。

 そのタイミングで向こうのヌマクローも攻撃を仕掛けてきた。

 

「ヌマクロー、みずのはどう!」

「! シャモ、ニトロチャージで回避!」

「ヌマッ!!」

「シャモ!」

 

 相手の腕にそこそこ大きなボールみたいな水の塊が発生。そのままシャモに向かって投げたがコチラは『ニトロチャージ』で素早さをあげて回避した。

 

「少しはやるようだね」

「あたしも修行して強くなったわ!」

「へぇ、でもオレの予想からは外れてないよ」

「え?」

 

 ここまで頑張ったのにルビーの想定内の言葉にあたしは動揺して判断が遅れた。

 

「ヌマクロー! どろかけ!」

「ヌヌマッ!」

「シャモッ!?」

「あっ! シャモ!!」

 

 素早く動き回っていたシャモはヌマクローが起こしたドロを喰らって転んだ。

 その隙を逃さずに相手は追撃を仕掛けてきた。

 

「ヌマクロー! みずのはどうだ!」

「ヌゥマ!!」

「しゃ、シャッモ!?」

「ああっ、シャモ!」

 

 水技である『みすのはどう』はワカシャモには効果抜群なので大ダメージを受ける。

 

(やっぱりあたしじゃあ勝てないのかな……)

 

 思い出すのはオダマキ博士からアチャモをもらった日。

 最初はジムリーダーの娘として自信があったあたしだけど、数時間後にルビーとエメラルドにボコボコにされた。

 

「へぇ、ジムリーダーの娘なのにこの程度なんだね」

「親が強いだけの無能な小娘なんてトレーナー失格だわ」

「……」

 

 その日、あたしのプライドも自信も崩壊した。だけど最後の気力を振り絞って旅をした……けど。

 

「これで終わらせるよ! ヌマクロー!」

「ヌマッッ!」

 

 ヌマクローの攻撃がボロボロになったシャモを襲う。あたしは声を出したかったけど喉が潰されているような感覚で何も言えない。

 

「ふん、結果は変わらなかったね」

「そりゃそうよ……てかあの師匠も無能よね」

「ルージュさんは認めているみたいだけどオレは何も感じなかったぞ」

「アタシもよ」

 

 あたしのせいで師匠まで好き勝手言われている。そんなの……許せない。

 

「アン「絶対に許さない!!」え?」

「「!?!?」」

 

 今までに感じたことのない気持ちが、怯えていたあたしを立ち上がらせる。その力はシャモに影響したのか気力を振り絞って立ち上がってくれた。

 

「そんな! 気合いで立ち上がったのか!」

「もういいわ! アタシがトドメを刺すわ!」

 

 エメラルドがジュプトルに『がんせきふうじ』を指示。空中から岩が落ちてくるが、シャモの体が光り輝き相手の岩を軽く弾いた。

 

「ま、まさか!」「そんなわけがないわ!」

「ハハッ、まさかクウ兄の言葉が本当になるなんて」

 

 隣ではさっきまでムクバードでジュプトルを押さえてくれていたカイラが隣で笑った。

 そして、彼女の発言を聞いてあたしは師匠の言葉を思い出す。

 

『意外と奇跡は掴もうとすれば掴めるかもな』

「師匠、貴方って人は」

 

 シャモから放たれていた光が収まると、そこにはワカシャモの進化系であるバシャーモが腕を組んで堂々と立っていた。

 

「いくわよバシャーモ!!」

「シャモモ!」

「ムクバード、わたし達も負けないわよ!」

「バァァ!」

 

 バシャーモ……いや進化したシャモが空に『かえんほうしゃ』を吐く。その威力はワカシャモ時代よりも大きく上がっており、ルビーとエメラルドは後ずさっていた。

 

「そんな! オレ達が負けるのか?」

「そんなわけないわよ! ジュプトル、やりなさい!」

「ジッュ!」

「シャモ、かえんほうしゃ!」

「バシャァ!!」

「ジュッ!?!?」

「うそ!? 効果抜群とはいえ!」

 

 今まで苦戦していたジュプトル相手に効果抜群とはいえ『かえんほうしゃ』の一撃で地面に沈められた。

 なので向こうが動揺しており、そのタイミングを使ったムクバードが動く。

 

「ムクバード、つばさでうつ!」

「ムクッ!」

「ぐっ! ヌマクロー、かわせ!」

「ヌマッ!?」

「あ、アイツも能力が上がっているのか!」

 

 先程は回避されていた攻撃が当たるようになり、アタシはシャモに向かって勢いよく指示を出す。

 

「シャモ、にどげり!」

「バシャァ!!」

「ヌマッ!? ヌマッ!?」

「そしてトドメのつばめがえし!!」

「ムクゥ!!」

 

 相手のヌマクローはシャモの『にどげり』を受けて空中に浮かんだ後、ムクバードの『つばめがえし』を受けて地面に倒れた。

 

「ハァハァ……」

(これでどう!)

 

 流石にこれ以上はあたしもシャモも限界。

 そう思っていると審判さんが互いのポケモンの状態を見て大きく叫ぶ。

 

「ジュプトル、ヌマクロー戦闘不能! この勝負、ムクバード、バシャーモの勝ち!!」

「!!」

 

 か、勝った……。

 あたしは思わず尻餅をつくが抱きついてきたカイラとシャモを受け止める。まあ、地面に転がったけど。

 

「やったあ!」

「これでクウ兄に気持ちよく報告できるわね!」

「バシャャ!」

 

 散々馬鹿にされて勝てなかった相手に勝てた。

 あたしは思わず感動して涙が……。

 

「オレ達が負けたのか」

「しかも無能のサファイアに……」

 

 向こうは何か言っているがコチラを睨みつけ後に去っていった。

 

(本当、師匠って斜め上にすごいわ!)

 

 あたしはあのひねくれヘタレの変人師匠の事を思い出して笑い続ける。そして、このまま打ち明けをしたくなったけど大会は終わってないので次の試合に備えた。

 

〈追伸〉

 

 次の3回戦、相手のカメックスとオーダイルがめちゃくちゃ強くて普通に負けました(完)

 

 




 10月30日、17時26分。誤字脱字報告ありがとうございます!
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