丸腰でポケモンの世界に転移したが持ち前の幸運(?)+αで生き抜いていきます 作:黒霧春也
〈ツバキ視点〉
バトルステーションの特訓が終わった次の日。
オレが改めてカナズミジムに挑戦する為に準備を整えてポケモンセンターのエントランスで待っていると、アイツは気怠けな表情を浮かべながら時間通りに現れた。
「おはよう」
「ルル」
「ん、ああ……おはよう」
「なんか眠そうだよなお前」
「まあ、朝に弱いからな」
「そ、そうか」
(おいおい……)
いつも通りキルリアを肩に乗せて現れたクウヤは目をこすりながら口を開く。
「とりあえずカナズミジムに向かうか?」
「そうだな」
「ルゥ」
クウヤは特に変わらない低めのテンションでジムに向かって歩いていくのでオレもついていく。
(って、なんかチグハグだよな)
この十日間コイツと絡んでいるが、基本的には大人っぽく感じるのにたまにガキに見えるのでどうも掴みにくい。
なのでオレは警戒しながらついていくと忌まわしきカナズミジムに到着したのでクウヤよりも先に中に入る。
「たのもー!」
「おはようございます!」
(おおう……なんか恥ずかしい)
カントーにいた時に兄貴や姉貴がジムに入る時にやっていたやり方なのになぜか恥ずかしい。
なのでオレはむず痒い気持ちになりながらジム戦の登録をしてクウヤ達と共にロビーで待っていると隣に座ったクウヤが口を開いた。
「さてと、ここからどうなるかだな」
「まあ、負ける気で戦うわけじゃないのはお前でもわかるだろ」
「逆に負けるつもりでこられたら困るわ」
「ルルッ♪」
ソファーに座ったクウヤの膝にキルリアが乗りそのまま頭を撫でられている。
オレはこの甘い空気に突っ込みたくなるがこのキルリアは凶暴なので黙っておく。
(マジで何も言えん!)
コイツらのノリが恋人みたいに見えるのは今更だが、キルリアのヤンデレさが明らかにおかしいので関わると捻り潰される。
というかそんな命知らずになりたくないのでこの時間が苦痛になっていると受付に呼ばれたので足早に離れた。
ーー
ジムチャレンジは特に問題なく突破できた。
だがジムリーダー戦が本番なので身構えているとロングタイプのスカートを履いた真面目そうな少女が現れた。
「ようこそカナズミジムへ。私はこのジムのジムリーダーのツツジです」
「え? なんか若くないか?」
「それは今年からジムリーダーになった若輩者だからですよ」
ジムリーダー代理ならまだ理解できるがオレと同じくらいの年齢でジムリーダーをやっているのに驚いた。
(逆に考えろ! この年齢でリーダーを任せるということは……)
おそらく天才タイプ。
オレはそう思いながら警戒していると審判が手に旗を持って振り始めた。
「これよりジムリーダー戦を始めます! 使用ポケモンはチャレンジャーは6匹まででリーダーは2匹とさせていただきます!」
審判からのルールを聞きながら腰につけたボールを手にする。
そしてツツジも準備が整ったみたいで向こうもモンスターボールを構えたので審判が声を張り上げた。
「それではバトル開始!」
「行きますわ、イシツブテ!」「ラッシャイ!」
「頼むぞ、ヒトデマン!」「ヘァ!」
ツツジが繰り出したのは岩石に腕がついたようなポケモン・イシツブテ。
コイツはカントーではイシツブテ合戦と呼ばれる祭りで使われていたのでタイプとかは覚えている。
「先手はどうぞ」
「! ヒトデマン、みずてっぽう!」
「へぁっ!」
「イシツブテ、岩を盾にしなさい!」
「ラッシャイ!」
「なに!?」
ヒトデマンが勢いよく放ったみずでっぽうはイシツブテに向かって飛んでいくが、相手は近くにあった岩の後ろに逃げ込み攻撃を防いだ。
「ぐっ! なら、接近してこうそくスピン!」
「ヘアァ!!」
「なるほど、ではこちらはたいあたり!」
「ラッシャ!」
コマのように回るヒトデマンに対して小細工なして突っ込んでくるイシツブテ。
その2体がフィールドの中央でぶつかった結果、ヒトデマンが吹き飛ばされた。
「そんな!」
「今よ! イシツブテ、がんせきふうじ!」
「ラッシャイ!!」
コチラが隙を見せた事で相手が大量の岩を作り出し追撃を仕掛けてくる。
そして岩に押しつぶされるようにヒトデマンの体が埋まった。
「ふう、これからどうするのかしら?」
「ツッ! ヒトデマン……」
(打つ手がない)
このままじわじわと押しつぶされて負ける。
オレは前も感じた敗北感に気持ちが押しつぶされそうになっていると、突然フィールドに置かれている岩が砕けて吹き飛んだ。
「ヘアァァ!!」
「この光は!」
「ら、ラッシャ」
岩に挟まれて押しつぶされたはずのヒトデマンだったが次の瞬間、体が青く輝いたポケモンに変化した。
「スターミー……」
「シャー」
「え? スターミーって水の石での進化のはずだが?」
ここで進化するとは思ってなかったが流れはコチラに向いたので、オレは沈んだ気持ちを立て直して相手のポケモンを睨む。
……って、クウヤのマジレスのツッコミも間違ってはないが今は置いておく!
「スターミー、バブルこうせん!」
「シャー!!」
「なっ、しまった!」
「ラッシャ!?」
進化に気を取られていたのか指示が遅れたみたいで固まっていたイシツブテに効果抜群の技を叩き込んだ。
「ら、ラッシャ」
「イシツブテ!」
「よし! ここでみずてっぽう!」
「シャ!」
「!? ラァ……」
「イシツブテ戦闘不能!」
スターミーから勢いよく発せられたみずでっぼうを受けたイシツブテは地面に転がり動かなくなった。
そして審判の判断で戦闘不能になり、ツツジは手元に自分のポケモンを戻した。
「予想外の展開は起きる物なんですね」
「そりゃそうだろ!」
「シャ!」
データだけで決まるポケモンバトルよりもこうやって生で戦う方が楽しい。
そんなのは昔の件で理解しているので、オレは喜んでいるスターミを見ながら笑う。
「まあ、いいでしょう! だけどこの子は倒せますか?」
「どんな奴が来ても倒してやる!」
「では! いきなさいノズパス!」
「ノー」
次に出てきたのは天然記念物みたいなポケモンのノズパス。
(そこまで強そうには見えないな)
タイプ的にいわなのはジムの特性上わかっているのでここは水技で攻めていく。
「いくぜ! スターミー、バブルこうせん!」
「ミイィ!」
「! ノズパス、いわおとし!」
「ノズッ!」
スターミーが放った泡状の光線はノズパスが生成した岩に防がれた。
だが一部は隙間から突破して相手の体に当たっており、このまま押し切れそうだ。
「よし! こうそくいどうで接近しろ!」
「シャー!」
「! ならコチラは準備を!」
「ノズッ!」
(準備?)
ツツジの言葉が気になるがスターミーはノズパスに高速で接近していく。
そしてバブルこうせんを放って倒そうとしたが、動かなかった相手がいきなり雷を浴びたビームを放ってきた。
「こ、この技はまさか!」
「ええ、電気タイプの大技であるでんじほうです」
「ぐっ!」
「スターミー戦闘不能!」
でんじほうを受けたスターミーは綺麗に吹き飛び動かなくなった。
オレは自分が慢心していたと思いながらスターミーをボールに戻してもう1匹のポケモンを手に取る。
「た、頼むぞニドリーナ!」
「ニドッ!」
「なるほど」
ツツジが何かを思ったのか口に手を置いているがコチラは無視して攻撃を仕掛ける。
「いくぞ! ニドリーナ、どくばり」
「ニイィ!」
「そんな攻撃弾いてください!」
「ノズッ!!」
ニドリーナが放ったどくばりは相手の固い体に弾かれて地面に落ちた。
(このままだと攻め手が少ないぜ)
スターミーのお陰でダメージが入っているのありがたいが残りを削られるかが心配だ。
でもやるしかないのでオレは気合いを入れてニドリーナに指示を出す。
「ニドリーナ、とっしん!」
「ニィド!」
「また突っ込んできますか!」
勢いよく突っ込むニドリーナだがノズパスはその場を動かずに受け止めた。
(うん? ちょっと待てよ)
先程から元いた場所からあまり動かないノズパスを見てふとあることを思う。
「もしかしてあまり動けないのか?」
「ッ!?」
「その顔は当たりみたいだな」
待ちの姿勢ばかりのノズパスだったので気づけたことなのでニドリーナに走り回ってもらいながら攻撃を仕掛ける。
「ニドリーナ、後ろからにどげり!」
「ニィ!」
「鈍くても! ノズパス、周りにがんせきふうじ!」
「ノオォ!!」
強力な蹴りをノズパスにお見舞いするが相手も対策はしていたのか全方位に岩を出現させた。
そして削り合いを繰り返した結果、先に倒れたのは……。
「ノッ」
「の、ノズパス!!」
「ニイィ!!」
ニドリーナが放つ渾身のにどげりがノズパスに直撃して相手はそのまま地面に倒れた。
そして審判がノズパスの状態を確認した後、手に持っていた旗を天高く上げる。
「ノズパス戦闘不能! 勝者、ツバキ!!」
「よ、よっしゃあ!!」
「にぃ!」
ボロボロだからコチラに飛び込んできたニドリーナを受け止めながら思わず笑った。
そしてオレはニドリーナを地面に下ろしてツツジさんからジムバッジを受け取る。
「楽しいバトルをありがとうございました」
「いや、オレも楽しかったぜ」
ぎこちない笑みを浮かべるツツジにオレも苦笑いを浮かべる。
(なんかなー)
バッジは手に入ったのでよかったがオレにはまだやる事がある。
「さてと、アイツに追いつくためにも頑張らないとな」
笑顔を浮かべて観客席から降りてくる目標にオレは手を振りながら受け応えた。
「カナズミジム突破おめでとう」
「はっ! この程度でおめでとうはないだろ」
「そうか?」
「ルルッ」
コイツらの意見に棘のあるような言葉で返すがなんとも思ってないみたいで2人とも笑っていた。
(……コイツらならオレの秘密も話せるかもしれない)
オレは淡い期待を持ちながらクウヤ達と共にカナズミジムから出て空を見上げた。
「オレはお前を超えて最強になってやる」
「うん? どうした」
「いや、なんでもない」
前を歩く奴に振り向かれたがオレは首を振りながら笑顔を浮かべる。
そしてポケセンで手持ちを回復させた後、何故かオレの奢りでスイーツの食べ放題にいくことになった。
ー〈余談〉ー
ヒトデマンがスターミーに進化した理由だが、フィールドに置かれている石はムロタウンのいしの洞窟から手に入れているらしく稀に進化の石が混じっていることがあるみたいだ。
16時28分。ヒトデマンがスターミーに進化する理由がレベルではなく水の石だったので苦しい内容ですがなんとか修正しました。
指摘を下さった読者様、ありがとうございました!
10月2日、14時21分。誤字脱字報告ありがとうございます!