鬱ゲー世界に転生したけど、鬱要素を吹っ飛ばしてハーレムを横で眺めたい 作:ねむ眠み
人類はある日突然現れた化け物によってたった2年でほぼ壊滅状態になった。
銃火器で攻撃しようが、大砲を撃ち込もうがその化け物は死ななかった。
後にその特性から[グラトニー]と名付けられたその化け物は、文字通り『暴食』だった。
初めに現れたグラトニーは、泥のような姿をしていた。
グラトニーは近場に居た人間を捕食するとその姿を人型に変え、即座に周りの人々に襲いかかった。
その日以降、グラトニーは人型で現れ、人間を捕食するようになった。
グラトニーの多くは理性を持たずただ暴れまわる。最初は数も少なく、日光を嫌っていたので夜に行動する事が多かった。
しかし、時間が経つと日光を克服し白昼堂々と人間を襲うようになった。
しかも日を跨ぐ程どんどん数を増やし、喰らった人の数が多くなるとその身体をより強くする。
最初は銃火器でも撃ち込みまくれば一体は殺せたのだが、日の下を歩けるようになった時には既に銃火器すら役に立たない程の強さをグラトニー達は得ていたのだ。
抵抗も殆ど行えず蹂躙されていく人々。
人類が滅びるのは時間の問題だと誰もが思った。だが、その時天から現れた。
純白の衣を纏い、銀の羽を背中から生やした、神々しい存在……天使が現れたのだ。
天使は眼下の惨劇を見ても眉一つ動かさず、指先をグラトニーに向ける。
すると指先から神々しい光の線が放たれ、山程いたグラトニー達は消え去った。
…人類は滅びるのを回避した。
グラトニーをさらりと殲滅した天使は、そのまま地上に降り立ち、人類に『とある事』を持ちかけるのだった。
そして、天使が現れて更に二年が経ったある日
「行くぞ!かかれぇ!」
「支援します、《プレクト》」
号令をかける男の後ろで、眼鏡をかけた少年が分厚い鉄の板に手を触れて言葉を呟く。
少年の腕から青い線が走り、分厚い鉄の板はそれに反応するように青く輝く。
すると人々に半透明の青い盾が現れる
「これで数発は防げるはずです!過信はしないで下さい!」
「わかった、お前達!行くぞぉぉ!」
『うぉぉぉ!』
巨大なグラトニーに、武器を構えた人々が切り掛かる。
「グルァァァ!」
「ゴボッ!?」
「ゲフッ!」
しかし、無造作に振るわれた腕や、地面を踏み荒す足によって、人々はその命を散らす。
「ちっ…大物の攻撃には役立たずなのか…!」
少年は振るわれる腕や足をギリギリ回避して後ろに下がる
「クソッ…!はぁぁぁ!」
その光景を見て顔を歪ませた中性的な顔立ちの少年が、腕を足場にして飛び上がり、その剣をグラトニーへと突き立てる
「グァァ!?」
「よし、心臓を貫いた!」
「次が来るわよ!」
双剣を構えて周りを警戒する少女にそう言われた少年は剣を引き抜いてその場を飛び退く
飛び退くとほぼ同時に、さっきまで居た場所に新たなグラトニーが拳を叩き込んだ。
「ガルルル!」
「くそ…次から次へと…!これ以上犠牲も出せないのに…!」
「でも大物は倒せた。かけ直すよ《プレクト》」
剣士と少女の後ろに入った少年が分厚い鉄の板に手を触れて今一度言葉を呟く。
少年の腕から再び青い線が走り、分厚い鉄の板はそれに反応するように青く輝く。
少年と少女の周りに、先程も貼られた半透明の盾が現れる
「小型が相手なら何発かは喰らっても大丈夫なはずだ、でも過信はしないで」
「「了解!」」
少年と少女はグラトニー達へ武器を振るった
☆
「はぁ…はぁ…犠牲は多く出たけど…何とかなった…」
ぜぇはぁと荒い息を吐いて少年はグラトニーの死体の山を見る。
「もう発生して4年も経ってるのに…減らないわね、グラトニー」
少女は双剣に付いた血を払い、鞘に納めて散った仲間達へ向けて合掌する。
「仕方ないよ、やっと対抗出来る力が出来たのが最近なんだから」
支援係の少年は、そう言ってグラトニーの死体の山に支給されている杖を向ける
「"奪い取れ"」
少年がそう呟けば、死体の山から紫色のモヤが現れ杖の先に付いた石に吸い込まれていく
それと同時に死体の山はみるみる消えていき、石が紫色に鈍く輝くと共に消えてしまった
「グラトニー…未だに分からない存在だけど、最近じゃこうやって死体をエネルギーに変換する事が出来るようになったのはいい事だよね」
「そのエネルギー、何に使ってんのかしらね」
少女は鈍く輝く石を見てそう呟く
「さぁ、詳しくは分からないよ」
「……仲間達を弔いたいけど…ここはまだ危険地帯だ…帰還しよう」
そう言って立ち上がると、少年は肩に付けている収納ポーチから端末を取り出して操作する
「…了解よ」
「了解」
少女と少年も端末を取り出して操作する。
するとホログラムのように三人の姿がぶれて、その場から姿を消した。
ーーーー
三人が次に姿を現したのは、無骨な鉄の壁に四方を覆われた部屋だった。
「今日も疲れたな…」
そう言って剣を置いて、少年は息を吐く
「そうね…お疲れ様、リン」
「ありがとう、ルビー」
そんな少年…リンを、少女…ルビーが労う。
ルビーは寄り添うようにリンの隣へ行くと、その体を密着させて頬を撫でる。
そして、最後の一人である少年はそんな姿を眺めていた。
「もう、何よ?見せ物じゃないのよ?」
「ああ、分かってるよ…ただ仲良いなって眺めてただけだから…回収したエネルギーを届けて来る」
そう言って少年は部屋を出る。
「ええ、行ってらしゃい…私達も休息に行きましょ?」
そう言ってルビーは体を撫でて微笑んだ。
「ああ…行こうか」
その言葉に、リンは微笑んで立ち上がる。
そうして部屋を出た二人は、そのまま休憩部屋へと向かう。
「…やっぱりあの二人の関係は…とても良いなぁ」
そんな二人を、少年は壁に隠れて見つめ、そのまま踵を返してエネルギーを届ける為に走り出した。
ーーー
そのまま、少年は白い扉の前で立ち止まる。
「回収したエネルギーを届けに来ました」
『入りなさい』
透き通るような声が、扉越しに聞こえた。
そのまま扉を開けて部屋に入ると、部屋は白一色だった。
中央には銀の羽に包まれた塊が鎮座している。
少年が鎮座しているモノにある程度近づくと、その翼が開かれた。
『ああ、今日は数が多く大変だったでしょう?怪我をしたりはしていませんか?』
ニコリと微笑むその存在は…人とほぼ同じ姿をしていた。
金髪は長く腰近くまで伸びており、瞳は慈愛に満ちた金色。
その身を白い服で包み、細くしなやかな四肢はだらりと垂れている。
そして、その背には銀の羽が生えており宙に浮いていた。
その姿を見て、少年は頭を少し押さえる
『おや、大丈夫ですか?』
「……大丈夫です…今回も多大な犠牲を出した上でギリギリでしたが、何とかなりました」
『そうですか…では、回収したエネルギーをこちらに』
そう言われて、少年は杖を掲げる。
杖の先端に付けられた石が紫色の光を発して輝き、辺りに紫色のモヤを撒き散らす。
『その力を浄化しましょう』
そう言うと眩い光がその存在から放たれる。
思わず目を閉じた少年は、光が収まると共に目を開ける。
『ふふ、今回も"余り物"が出来てしまいました…受け取ってくれますよね?』
その存在の中央に、キラキラと輝く白い球体があった。
その存在はワクワクした表情で、少年に白い球体を飛ばす。
白い球体はスゥ…と少年の胸に入り込むと、その体を薄ら白く輝かせた。
『おや…今回は新しい力を得たみたいですね。…回復の奇跡のようですね…よかったですね、念願の回復ですよ』
そう言ってその存在は微笑む。
「はい、よかったです」
『むむぅ…もう少し笑ってくれませんか?』
余り喜ばない少年の顔に、その存在は頬を膨らませる。
「余り感情を出せませんよ、アナタ様は私達人類を救った天使様なのですから」
『貴方だけなんですよ?この私が…唯一、全てを見通せない人類は』
そう言ってその存在…天使はジッと少年を見つめる。
「……」
少年は口を閉じて見つめ返す
『…はぁ、今回も許しますが…せめて喜怒哀楽くらいは見せて欲しいものです』
そう言って天使はその身を銀の羽で包んだ。
「……失礼します」
少年は天使へ頭を下げて部屋を出る。
そのまま白い扉から離れ、しばらくした後に、少年は壁を背に付けて一人呟く。
「…裏ボス相手に全てを明かせるわけないだろ…」
グラトニーという、『人類を破滅寸前まで追い込んだ敵』、そしてそんな人類を救った『裏ボスである天使』。
命が羽根のように軽く消えてしまうゲーム世界に転生した少年は、改めて決意する。
「鬱要素なんて全部吹っ飛ばして、主人公のハーレムをこの目で見るんだ…!」
グラトニー
突如現れた謎多き怪物。人間を捕食し、捕食した数だけ強くなる。
銃火器が効かず、"天使"の加護を受けた武器を『適正』のある人物のみが振るう事で倒す事が出来る。
加護武器
"天使"から加護を受けた武器、グラトニーに唯一ダメージを与える事が出来る。
しかし誰しもが使える訳ではなく、『適正』のある人物が振るう事でその力を発揮する。
天使
人類を滅びから救った救世主、救った人類に対して『とある事』を達成させるのを条件としてその力を貸している。