鬱ゲー世界に転生したけど、鬱要素を吹っ飛ばしてハーレムを横で眺めたい 作:ねむ眠み
のんびり更新なので気長にお待ちください
倉庫を開け、『必要なもの』が無事ある事を確認した僕は、それを鉄板の機能を使い収納する。
そもそもこの『必要なもの』自体はゲーム内で散策する時に見つけられるものの、ドーピングアイテムでもなければ何かのイベントで使うというものでもない。
ただの『最高級まくら&布団』である
ただし、ラスボスの前座であるデバフ特化のボスに対して使用すると、戦闘を回避出来るというだけだ。
残念な事にこの方法は『前日譚』では使えない、本編で主人公が使えるものだ。
しかし、とある実況者が『前日譚』で特定のコマンド操作をする事で例外的にこの戦闘回避が出来る事が判明したのだ。
その為、現実となったこの世界でも使えるだろうと見越して持っていく。
倉庫を出ると、リンとルビーがジト目でこちらを見ていた。
「ったく、急いでどっか行くと思ったら倉庫に居たのかよ…回復薬でも探してたのか?」
「まぁ、そんな所」
その言葉を聞いてルビーは溜息を吐く
「ほら、もう次の作戦司令出てるんだからさっさと行くわよ」
そう言う二人の武器は変わっていた…ゲーム通り、リンは黒い刀身にメラメラと炎が纏わり付いた『獄炎剣』、ルビーは青色の双剣『双青剣』を装備している……どちらも二人が死亡した後、主人公とヒロインのメイン武器になるものだ。
「ま、次の任務は簡単な偵察よ。さっさと片付けてお風呂入りたいわ」
「偵察っても油断するなよ、グラトニーは何処にでも居るしな」
リンはそう言ってルビーの額にデコピンをした。
「っぅ…わかってるわよ!」
額を抑えて涙目のままルビーが怒りながら返すも、その口元は緩んでいた。二人だけの緊張の解し方なのだろう
イチャイチャしてんなぁと僕は思う。
「じゃあ、さっさと行こう」
そう言って僕は端末を起動させる
「俺にタックル決めたお前が言うのかよ」
「ホントね」
リンは苦笑しつつ、ルビーは頬を膨らませながら端末を起動させる。
起動すると同時に、三人の姿は一瞬ブレるとその場から消失した。
☆
そうして偵察する場所に転移した僕ら+その他の人は、グラトニーと遭遇する事もなく、地質調査や使えそうな素材の回収等をしていた。
やる事を終えた僕達は、次いでに情報通りなのかどうか、リン・ルビー・僕とその他の人の2チームに分かれてエリア探索をしていた。
「エリア情報じゃグラトニーが大量に居るはずなのに、全然遭遇しないなんて不気味ね」
「グラトニーは現状人間と同等の賢さを持たないはずだ、何処かに密集しているかもしれない」
ルビーは欠伸混じりにそう言うものの辺りを警戒し
リンはいつでも剣が抜けるようにと構えていた。
そんな中僕は記憶を掘り返して思い出そうとする。この前日譚で
「ねぇリン、正直もう帰っても良いんじゃない?」
「まぁ、確かにそうだね…目的は達成してるんだ。もう切り上げてもいいだろう。このエリアに僕達以外の組織の人の反応はないし、さっさと切り上げて帰ったと思うよ」
リンはそう言って端末に手を伸ばす
それと同時に、思い出した
あのボスは帰る間際の
「ぁ…?」
不意に、リンの体がまるで糸を切られた操り人形のように倒れる。
「リン!!」
ルビーは素早く地面に倒れる寸前でリンを支える。
「オ…ぁ"…イィ?」
そんなルビーの後ろで、図体が見上げる程デカくまるで脂肪が肥大化した醜い肉団子のような外見のグラトニーが
「なっ!?」
「せいっ!」
僕は唯一の攻撃手段、『鉄板ブーメラン』でそのグラトニーの腕を弾く
「オォン…ヒドゥイ…」
何処ぞで聞いたような声を上げて、そのグラトニーは弾かれた衝撃でゴロリと上向きになる
ひっくり返った亀のようにバタバタと手足を動かしているが、それは起き上がろうとしているのではなく
敵を知らせる動きだ
「オ、オ、オ!!」
次第に手足のジタバタだけでなく、その巨体を揺らし始めた。
その音に反応してか、ゾロゾロと人間サイズから巨人サイズまでの様々なグラトニーが周りを囲み始めた。
「リン、リン!!しっかりして!」
「あ…うぇ…ぉ…?」
そんな状況の中ルビーは必死にリンに呼びかけるも、リンの身体はダラリと力なく垂れ目は虚、明らかに戦闘が出来る状態ではない。
「ルビー!今はこの状況を切り抜けるぞ!」
「うっさい!分かってるわよ!」
ルビーはそう言って双剣を抜き、構えた。
「リンにこんな事をしたのがどいつなのか知らないけど、この場に居るのならバラバラに切り刻んでやる…!」
そう言ってルビーはグラトニーの群れに飛び込んだ。
その戦いの様はただただ圧倒的の一言。
双剣が無作為に振るわれ、グラトニー達を切り刻む。
そして斬られたグラトニーは即座に青い炎に包まれ、その身を焦がしなから倒れ伏す
ルビーがグラトニーを切り刻む中、僕は適度にルビーに火力支援。そして戦線復帰が出来ないリンに、覚えたばかりの『回復の奇跡』を使用する。
『回復の奇跡』は文字通りありとあらゆる状態異常を治し、体力を全回復する奇跡だ。
当然ながらそうホイホイと使用できる訳ではない
「ガフッ…!」
『回復の奇跡』を使用すると同時に、僕の口から血が溢れる。
これが『回復の奇跡』の代償、【使用時、HPの99%分のダメージを受ける】という代償だ。もちろん99%以下なら即死する。
余談だが主人公のヒロインはこれを早期に取得する。曇らせ展開用スキルかな?
「ぁ…おいっ!?大丈夫か!?」
「ただの奇跡行使のフィードバックだっての…僕の事はいいからルビーの手助けを頼む」
「あ、ああ…」
血を吐いた僕の姿を見て青い顔になりながらも、リンは剣を抜いてグラトニーの群れに飛び込んだ。
「ぺっ…!はー…ふー…」
口に溜まった血を吐いて、息を整えながら僕は考える。
あのボスはこの『トラップ型グラトニー』による戦闘で現れたはずだ。
「あー…あー…!うっさい!うっさいんだよ!君達!寝れないだろ!!」
そんな声と共にグラトニーの群れの真ん中で衝撃波が発生し、大量のグラトニーが消し飛ぶ
「なっ…!?」
「きゃっ!!」
その衝撃でリンとルビーが吹き飛ばされ、老朽化したビルに叩き付けられる。
幸いにもビルが崩れる事はなかったが、二人はバトル漫画のような姿でビルの外壁に埋まっていた。
「つ…ぁ…なん…だ?」
「うぐ…ぐ…」
二人とも頭から血を流し、意識が朦朧としているがギリギリ生きている。
「…問題は、コイツなんだよなぁ…」
そう言って僕は改めて、『前日譚』のボスに顔を向ける。
「せっかくさー、昼寝してたのに何起こしてくれてんの?幾ら温厚で優しくて、人間を自主的に襲わないようにしてる僕でも限度があるんだよ?」
その姿は、グラトニーとはかけ離れていた。
その容姿は人間の少女だった。
布を纏っただけの服装から陶器のようなシミひとつない白い肌を晒し、純白の髪は陽の光を受けてキラキラと煌めく
瞼が重いのかしょぼしょぼしている金色の瞳は、怒りが強いのか瞳孔が開いていた。
「僕は優しいからね、特別に選択肢をあげるよ
醒めない悪夢を見続けるか、酸で四肢からじわじわ溶かされながら死ぬか、毒に侵されて苦しみ悶えながら死ぬか、発狂して味方を殺すか…選んで?」
ニッコリと、この状況でなければ可愛いと思える笑みを見せる。
これが、『前日譚』のボスであり、ラスボス前の前座ボス。
敵側でありながら、人間に対して
眠りを邪魔する者は断じて許さず、例えグラトニーだろうがニンゲンだろうが始末する。
ボスとしては通常攻撃がデバフ+状態異常付与であり、『人間の数が多い』程に強くなるボスだ。
安全策としてストーリーをそこそこ進めながら襲いかかるグラトニーを始末し、少しづつ人間を増やして来たプレイヤーを絶望のドン底に突き落としてくる。
因みに前日譚の時点でステータスがラスボス超えの為、どう足掻いても勝てない仕様だ。
唯一出来るのは、『戦闘回避』だけ
そして、そのキーアイテムを持つ僕は、鉄板から堂々と『最高級まくら&布団』を取り出した…!
『惰眠』ヒュプノ
本編ではラスボスの前座、チュートリアルだと最後のボス(勝てない)という2回出番があるボス。
本編では戦闘回避すると、そのまま何処かへ行ってしまいそれ以降の足取りが掴めなくなる。
前日譚で戦闘回避しても、本編では前座として出て来る。戦闘回避は不可能になっているので殺すしかない
RTAでは低乱数で即死攻撃をするので、チュートリアルからお祈りタイムが始まる為嫌われている。
なお、その見た目から大きいお友達に人気で、同人誌が毎年作られていた。
特定条件を満たすと、『ガチモード』と称して姿が変化する。
こちらは全男性プレイヤーから人気を得ているので、発覚した次の日から薄い本が分厚くなったらしい
なお転生者は同人誌の存在を知らないが『ガチモード』は知っている、感想は「正統派美少女みたいな見た目なのになんか色気あるなぁ」だそうな