鬱ゲー世界に転生したけど、鬱要素を吹っ飛ばしてハーレムを横で眺めたい   作:ねむ眠み

5 / 9
眠りを司る者

 

ヒュプノの目の前に、『最高級まくら&ふとん』を置くとそのまま自分に身体強化のバフをかけて全力でバックステップを行う。

 

ゲームではヒュプノに使用すると大興奮して暴れ回り、距離を取らねば即死するからだ。

前日譚でも本編でも、これは同じである。

救いと見せかけてデストラップ仕掛ける製作陣は鬼畜だと思う。

 

しかし、ヒュプノはそれを見て暫く身動きせずに棒立ちしていた。

 

「…今のうちか…ゲホッ…」

 

僕はHP1%のままに、ビルにめり込んだままのリンとルビーの元へ飛び上がり、状態を確認する

 

「…ぐ…ぁ」

 

「…ぅ…」

 

どうやら頭の怪我が響いているのか意識が薄い

めり込んだ部分を強化した腕で無理やり叩いて広げると、二人の端末を操作する。

 

「…ま…て…おまえ…」

 

「うるさい。重症者は、さっさと…うぇ…帰って手当て受けろ」

 

朦朧とした意識の中口から吐いた血で汚れたままの僕を見て、リンが何か言おうとするが被せるように言うものの、口の中が血の味しかしないので気分が悪い。

 

「ま…ちなさ…」

 

ルビーが何か言おうとするとほぼ同時に、端末は無事に起動し二人を転送する。

 

「自分もさっさと離脱を」

 

その時、背筋が凍るような寒気を覚えた。

 

「ねぇ、君。どうして……僕が『眠り』の関連だと、気付いた訳?」

 

身動きが取れない

 

背後に、居る

ヒュプノが、居る

 

「そもそもがおかしいんだよねぇ。僕が現れた時、あの二人は想定外みたいな顔して吹っ飛んだのに、君はまるで分かってたみたいな顔で行動した。

 

……何隠してる訳?事と次第によっては、君をここで消さなきゃいけなくなる」

 

ヒュプノの手が、僕の首に添えられる。

 

それは、幼い少女の手ではない

明らかに少女と呼べる大きさだが、ゆっくりと込められていく力は少女のそれではない

 

「…眠りの邪魔をするなって、出て来た時に言ったじゃないか」

 

「まぁそうだね、でも…わざわざ戦場に行くのに、まくらと布団を持って来るなんて、普通にあり得ない話だよ。

 

…僕が来るのを予知しているか、知っていたか(・・・・・・)じゃないとね?

 

どっちなのかなぁ?君は」

 

背中に、柔らかな感触が伝わる。

普通なら喜ぶべき事だろう、しかし

 

今、後ろに居るのはラスボスを超えた強さを持つヒュプノだ。

しかも、予想の中でバッチリと転生者(こちらの事)を当てて来ている

 

…今の所、天使に隠し通せているというのに

 

「あ、予知夢です、予知夢。なんとなーくそんな気がして」

 

「そっかぁ予知夢かぁ!」

 

パッと首からは手を離し、ヒュプノは笑う

 

「眠りを司る僕にそんな嘘付けるなんて、良い度胸してるね?君」

 

明らかに低く、キレた声でヒュプノは続けて言う

 

「さっき触れた時に感じたけど…君、違うんだよなぁ…」

 

つんつんと背中を突いて、ヒュプノは言う

 

「だって、君みたいな独特な魂(・・・・)もし一度でも遭遇したのなら、僕は覚えてる

 

君達人間は誰しもが持つ欲がある。

 

その内の一つを、僕は司ってる(・・・・)訳だ。

 

そんな僕が、知覚できない。

君はこんなにも育っているのに、今この時まで僕が存在を認識していない

 

 

でも、君とこうして会う前は、該当者が不明な(・・・)夢が存在していた。

 

今、君が見てた夢だと理解したけれど…おかしいんだよ、僕が認識できない存在なのに、夢は知ってるんだから」

 

そう言ってヒュプノは僕を地上に降ろすと無理やり振り向かせる。

そのままペタペタと身体に触れ始めた。

 

「うわっ…君何したの?明らかに後衛だったし怪我する要因なかっただろ!身体は血まみれ、肉体は生命活動が希薄!何したんだよ!」

 

「あー…回復の奇跡を…」

 

その言葉に、ヒュプノは目を見開いて叫ぶ

 

「君みたいな力のない人間が貧弱な体で奇跡ぃ!?バカなの!?死ぬ気か!!」

 

「いや、回復の奇跡使ったら99%生命力(HP的な意味で)持ってかれるだけじゃないですか」

 

「生命力99%なくなったらほぼ死んでるの!君頭おかしいよ…

 思考は読み取れない、存在を感知できなかった。でも、夢は知れる(・・・・・)…なんだこの不気味な感じ…」

 

うへぇ…と僕を見ながらドン引きを始めるヒュプノ

 

「…あー、一つ聞いて良いですかね?」

 

「なんだよ」

 

僕から少し距離を取って、ヒュプノは見つめる

 

「僕が何の夢見てたか分かります?」

 

「え?何の夢って…」

 

顎に手を当てて思い出そうとしたヒュプノは、そのままうんうんと唸る。

 

しかし、ピタリと止まるとその顔がみるみる赤くなり始めた

 

「い、言わない…言わないからな!?というかっ!その……あー!そうだ!僕枕と布団を君から貰ったんだったー!寝れるか試さないとなー!!」

 

そう言ってヒュプノは枕と布団を持つと一瞬にしてその場から消えた。

 

「……いや、覚えてないからせっかくだし教えてほしかっただけなのに」

 

そのままポツンと残った僕は、『主人公』を探す為に歩き出した。

 

何故なら…ヒュプノが現れ、リンとルビーが生きている以上、別働隊は全滅しているからだ。

 

「なんか見つけやすそうな特徴的な建物とかに居てくれよ主人公…僕はお前のハーレムを横から眺める為に必死に生きてきたんだぞ…」

 

何せ、主人公が発見された時の情報が一枚絵だけで、『暗そうな部屋』な事だけしか分からないのだから

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。