DragonballVivid   作:blacktea

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第12話 蘇りし死者、復活のギニュー特戦隊!!

陽が沈み始める頃、茜色の雲が宙を覆っていた。赤色と橙色の鮮やかなコントラストは絵に描いたような美しい光景である。

だが空を切り裂くように奏でる悲鳴と爆煙だけはその光景からあまりにも浮いていた。

 

 

「リクーム…―――キック!」

 

「ぐぅ……っ!!」

 

 

火に包まれた聖王教会は荒々しい強風が攻撃的な衝撃破と化して散乱し、麗々しい建物を瓦礫と化してしまっている。壁に亀裂が入り込み今も全壊しそうな状況下だ。

そして大勢の魔導師達は襲撃犯を食い止める為に武器を手に取って戦いを挑んでいたが虚しく地面に倒れ伏している。

 

立ち上がって戦う者は数える程の人数しかいない、当初の圧倒的な数は少数の襲撃犯によって『全滅』させられかけていた。

 

 

「もっとビシッ!とした技はないのか? これじゃつまらんぞ。」

 

「レヴァンテイン……こいつを必ず倒すぞ!」

 

『―――Schlangeform!!』

 

 

聖王教会周辺の上空を飛行するシグナムに対なす大男が其処にいる、不服そうに物足りないと言うような表情を浮かべる男の体は傷一つ付けられていない。

電子音声と共にシグナムが手にする武器は形状を変える―――片刃の長剣から蛇腹剣へとレヴァンテインは姿を変えた。

 

彼女の防護服は男と相反して傷だらけの衣服となっており、苦々しく歯を食い縛った表情を浮かべている。

 

 

「手加減してやってるんだからもう少し楽しませろよ~。」

 

(くっ、アギトが来るまで持ち堪えなければ……。)

 

 

紫色の魔方陣が浮上すると共に強風が伴いシグナムを中心として発動させ、紫色の火炎が華麗に舞い踊る中で鞭状に連結された刃身が蛇のように舞う姿は美しさをも表現していた。

目の前の立ち塞がる男への容赦ない敵意と迷いの無い決意が体現された彼女が繰り出すであろう必殺の一撃は剣技とは到底思えない大威力を秘めている。

 

 

「飛竜一閃――――ッッ!!!」

 

 

シグナムは上体を大きく逸らすと同時、紫色の火炎が螺旋状に描きながら男へと降り注ぐ。火炎の中から姿を現すのは蛇腹剣であり、それは無造作に男の身体を抉り取らんとばかりの一撃。

その光景は蛇が獲物に喰らい付く刹那が体現されている。そして直撃したのか強烈な爆発を生み出し、辺りを爆煙と火花で全てを埋め尽くす。

 

 

(倒したか……?)

 

 

もはや聖王教会は戦場と化し、シグナムの飛竜一閃による爆煙と火炎から零れ落ちる火花によって優雅な麗しき建物は姿を消していた。それは正しく戦場の傷跡とも呼ぶべき争いの痕跡しか残されていない。

手応えがあった様子を見せるシグナムは額に流れる冷や汗を傷だらけの片腕で払い除ける。自身の血液が額に付着するが気にする様子もなく苦々しい表情に何処か微かな光を見据えたように、男が居た場所を見つめたまま。

 

恐らく男も先程の攻撃を直撃すれば一溜まりも無いだろう、その思考がシグナムの脳内を駆け巡る。避けられたのならともかく、少なからず傷跡一つは残せただろうと最低限の結果を想定した上で彼女は煙の中に佇む一つの影に視線を射抜きながら考えていた。

 

 

「ヤッホー!」

 

 

清々しい声がシグナムの耳を通り抜ける、呆気に取られてしまうような声こそが絶望感を与えるのに充分すぎた。それはあまりにも不可解な光景。

 

 

「何…ッ!? あの攻撃を受けきって、傷が付いていないだと…!!」

 

 

回避された?シグナムは回避という思考をすぐに切り捨てた。なぜなら相手は確実に直撃した事を物語る証拠が残されている。

それは無残なボロボロの衣服――もはや衣服としての機能を備えていない、ただの屑切れ。男はそれを羽織っている。

 

 

「今の攻撃はなかなかよかったぞ。この調子でオレを楽しませてくれ。」

 

「化け物め……!!」

 

 

唯一、男の身体に残されていたのは埃だけだった。

 

 

 

 

 

 

―――鉄槌の騎士ヴィータはグルドと名乗る異様な生物と戦いを繰り広げている、だが其処には息を切らすヴィータと余裕を露にするグルドの姿。

何度も何度も幾度と無く強靭な破壊力を秘めたハンマーをヴィータは振り回す。狙いは勿論グルドであり、的確に狙いを定めた攻撃が何度も耐える事は無く降り注ぐ。

 

 

「くそっ、なんで当たらねぇーんだよっ!!」

 

「ガキの癖に…! 止まれ!!」

 

 

聖王教会の外庭、シグナムとまた別方面で戦闘が立て続けに行われている。

ヴィータの放った攻撃は熟と避けられ続け一向に当たる気配を見せない。絶対に避けられないであろう一撃でさえも必ず避けられる、その無限ループでヴィータを苦しめていた。

 

奇妙な事に太った緑色の生物グルドはヴィータの攻撃が当たる直前に姿を消すのだ。そして別の位置に移動している、更にその移動姿を目視する事すらできない。まるで瞬間移動しているように。

 

 

「ガキじゃねぇ!!つーか、いい加減当たれええええっ!!!」

 

『Schwalbefliegen!』

 

 

突如、ヴィータの片手は何かを放り投げる。同時に宙を舞うのは数個の鉄球だった、赤色の光を纏う鉄球を勢いよくハンマーで撃ち出す。

赤色の線を描きながらグルドへと目掛けて飛翔する鉄球は誘導制御という特性を併せ持っている。誘導制御とは何かの障害物にぶつからない限り敵に命中するまで追い掛け回す。

 

 

「止まれ!」

 

 

視界からグルドは消え伏せると同時に前方へと直進していた赤色の光を纏う鉄球は方向転移する、方角は何故かヴィータ自身へと。そして背後から感じる気配と地面に映る影。

ヴィータは理解する、何らかの方法によって瞬間移動したグルドは自身の背後にいると。故に手に持つ鉄で出来た武器(ハンマー)を回転するようにぶつけようとした。

 

 

(これ以上時間を止め続けたらオレのエネルギーが尽きてしまう。ちっ、こんなガキに使うのはシャクだが仕方ない…。)

 

 

咄嗟の判断はグルドを追い込むのに充分な効果を発揮している、何故ならグルドは徐々に余裕が削れつつあったのだ。息切れを引き起こすヴィータと同様にグルドもまた息が上がっていた。

それが何を意味するか、それは戦闘を持続させる為の体力が今も減っている。だからこそ彼は奥の手段を使うのだ―――!

 

 

「きえええええええーーーーーーーーーっ!!!」

 

「ッ…動かねぇ……!?」

 

 

グルドの奇声と共に動かなくなるヴィータの体とグラーフアイゼン、突然凍り付いた全身に戸惑いを露にすればヴィータの視界に接近し続ける鋼鉄の鉄球が頭に入り込む。

 

 

「くっくっく、どう料理してやるか。」

 

「畜生…!!」

 

 

このままでは衝突する、焦りから冷や汗が額から流れ出すヴィータは必死に身体を動かそうとするがビクともしない。原因不明の現象に襲われるヴィータは成す術がなく、悪意が込められた嘲笑い声が背後で広がっていた。

 

 

 

 

 

 

―――もはや数々の戦闘によって聖王教会は原型を留めていない、半壊した建物内部には瓦礫と倒れた兵士だけが散乱している。

だが兵士は決して命まで奪われていない、気絶しているだけだ。襲撃犯の兵士と時空管理局の魔導師が通路に次々と倒れていた。

 

そして聖王教会の中庭、シグナムやヴィータとはまた方角が違う別方面。其処には桜色に輝く光と金色に輝く光が交差している。

 

 

『Short Buster!』

 

『Plasma Lancer!』

 

 

事態は悪化を辿る一方であり、なのはの衣装もまた手加減無しのエクシーズモードで敵の侵攻を食い止めようとしていた。

 

 

「おせぇぜ!」

 

「あらよっと!」

 

 

膨大な魔力を秘めた桜色の砲撃と金色に煌く無数の弾体は牙を向くが次々と男達は避け続け、砲撃と無数の弾体は爆発を引き起こす。

余裕を持った速度は遊びという言葉を連想させるかのように軽々と二人は空中を泳ぎ回る。なのはとフェイトの攻撃は一向に当たる気配も見せなければ隙も無い。

 

圧倒的過ぎる程の実力が生み出す戦闘、茶番劇のように男達は飛び回っていた。当たらない苛立ちと相手の強さに対する焦りがなのはとフェイトを蝕んでいく。

 

 

「くっ、当たらない……!」

 

「このままじゃ魔力を無駄に消費するだけかな……フェイトちゃん、わたしはブラスターモードでいくよ。」

 

「な、なのは…!? あのモードを使ったらなのはが…!」

 

「言いたいことはわかるよ…でもみんなを助けないといけないから。」

 

 

穏やかな微笑を浮かべるなのはに対してフェイトは思わず言葉を失ってしまう。ゆりかごの一件がフェイトの脳裏を支配する中で桜色の粒子が出現する。

大量の桜色の粒子がなのはを包み込み、彼女の掛け声と共にそれは消失してしまう。外見上の変化が見受けられない彼女の姿に男達は疑問に感じたが一瞬でその感情は消えた。

 

 

 

「…ごめんねフェイトちゃん。けど心配しなくても大丈夫だから。」

 

「なのは…?」

 

「わたしが一瞬だけ隙を作る…だから、フェイトちゃんは急いでカリムさんとはやてちゃんの所に……!!」

 

 

強風と共に出現した彼女の雰囲気は以前と比べて威圧的な物へと変化しているようにフェイトは感じている、それは最もなのはと身近な関係だからこそ一層それを感じていたのだ。

 

 

「…わかったよ、なのは。でも無茶だけは絶対にしないで……。オーバードライブ――真・ソニックフォーム!」

 

『Sonic Drive.Riot Zamber.』

 

 

金色の文字が武器に埋め込まれた宝石に刻み込まれていく、そして唐突に広がったのは金色の光。光はフェイトを覆い隠して新たな姿へと変貌させた。

 

 

「うん、なるべく善処するよ……ありがとう。」

 

 

金色の光が消失し、強風と共に現れたのは露出度の高い防護服を着込むフェイトの姿、それは明らかに無防備極まりない紙一重のもの。一撃でも体に叩き込まれれば立てなくなるほど防御力を低下させている。

だが鎧を捨てた代償として彼女自身のスピードが大幅に上げられていた。一撃でも当たれば落ちるがその一撃を当てる事は至難の業であり、ハイリスクハイリターンな戦法を体現させたのがソニックフォームだろう。

 

金色の剣を両手に敵を見据え、フェイトは二人の男と睨み合う。

 

 

「おっ!戦闘力が上がったようだぜ。」

 

「これで少しは楽しめそうだな。」

 

 

男達は口角を上げて笑う、それはなのはの得体の知れない威圧感の正体に気付いているかのように。その男達の様子にフェイトは背筋に寒気を感じさせていた。

何故なら男達の態度をフェイトは理解できていない。理解できない敵の仕草は不気味な物にしか写らない、だがそれでもフェイトは相手から視線を逸らさずなのはが作る隙を待ち続けている。

 

 

(多分わたしの魔力じゃ叶わない…。)

 

 

なのはは既に気付いていた。自身の限界以上の力を引き出しても男達を打倒する程の力はない、それは決定的な実力の差が裏付けている。

しかし、それでも敵に立ち向かう術は残されているのだ。幾度の戦闘経験で積み上げられてきた才能と努力の結晶体を彼女は持っている。

 

 

(体内のエネルギーを魔力に変換して……。)

 

 

なのはの体内に存在するエネルギー、人が生きる事に必要な力を魔力へと性質を変化させていく。その技術自体はこの世界では異端の分類だ。

通常、魔力とは大気中に漫然している魔力素をリンカーコアが吸収し純粋な魔力として加工させる事で魔力を生み出す。

魔力を生み出すには魔力素が必要であり、その魔力素を代替した物が彼女の体内のエネルギーだ。

 

それはある異世界へと足を踏み入れた時になのはが独自に編み出した技術である。

 

 

「これで…! レインジングハート、いくよ……!!」

 

 

限界以上に引き出された大量の魔力を倍増させるかのように生み出される魔力と共になのは自身は桜色の光を纏い、太陽のように輝く姿には誰もが見惚れてしまうような風景を描き出していく。

槍状の杖を両手に男達を標的として捉えれば凄まじい破壊力を秘めた桜色の衝撃破が放たれ、空気を引き裂き其処にある物をすべて掻き乱すように貫いていく…!!

 

 

「なにっ…!?」

 

「ぐうぅ……っ!!」

 

「(す…凄い……)――――行こうバルディッシュ!!」

 

 

突発的に威力が倍増された攻撃に対して男達はその衝撃破を真正面から受け止める事になってしまう、想像以上の破壊力が男達を襲い腕や脚に傷を付け始める。

男達の反応を見計らってフェイトは二人の隙へ潜り込むように、彼等の後方へと通り過ぎていく。目指すははやてやカリムが居る場所へ、金色の閃光と化した彼女はとてつもない速度で向かっていくが―――。

 

 

 

「ちいっ、ナメたマネしやがって…。」

 

「遊びはここまでだ。ギニュー特戦隊の真の恐怖を見せてやるぜ!」

 

 

フェイトの行動を男達は見逃すはずもない、青い色の肌を持つ男は振り返って金の閃光を視界に捉えた直後にそれ以上の速度で衝撃波の中を突き進んで彼女を追い抜いてしまう。

 

 

「え…?」

 

 

瞬きもできない速度を持って男は瞬間的にフェイトの前方を取ってしまっていた、先程追い抜いた筈の男が瞬間移動でもしたかのように目の前に立ち憚る光景にフェイトは唖然の声を上げる。

能力的に最大限の速度を発揮できる状態であるフェイトは純粋な速度で追い抜いた男により彼女の一番の強みがたった一秒で潰されたといってもいいだろう。

 

何の効力も彼等の戦闘では僅かな勝機すら掴めない。フェイトの目の前に広がるのは敗北のみであり、実力の違いはなのはやフェイトが想像している以上の差が存在している。やがて男は容赦なくフェイトの腹部へと目視できぬ蹴りを入れた。

 

 

「ぐ、ああぁっ……!!」

 

「まだまだいくぜっ!」

 

 

苦痛な悲鳴を口にした瞬間、更に叩き込む拳と蹴り。無慈悲な攻撃が一つ一つ確実に装甲の薄いフェイトの体へと命中していく。

一発でも叩き込まれれば瀕死状態に追い込まれるにも関らず数え切れない重い一撃が次々と叩き込まれていく非情過ぎる光景だった。

 

 

「フェイトちゃん…っ!!」

 

「おっと、よそ見するなよ!」

 

 

力無く落下していくフェイトに気を取られている間が結果的に隙を見せる事になってしまう、その間に飛び込むのは赤い色の肌を持つ男。

 

 

「おらあっ!!」

 

「あ……ぐ…!」

 

 

突然、なのはの腹部から激痛が生じたのだ。戸惑いを覚えながら視線を腹へと向ければ男の持つ白髪が目に入り彼女は理解した、腹部に男の拳が滑り込んでいる事実に。

まるで瞬間移動したかのような動作になのはは焦りを感じつつ、悲痛に塗れた声を漏らす。無論、瞬間移動をした訳ではない。なのはの目では捉えられない速度で攻撃をしただけである。

 

腹部からの凄まじい衝撃になのはの体は耐え切れず、そのまま地面へと突き落とされるように体を叩き付けるのだった。

 

 

「くっくっく…さっきの威勢はどうしたんだ?」

 

「う、くぅ……。」

 

 

顔を歪ませ敵を睨み付けるが迫力は感じられない、だが嘲笑っていた男は何故かなのはから視線を外して周辺に目を向ける。それが奇妙な行動として写ったのかなのはは男を直視し続けていた。

 

 

「……ん? 誰か隠れていやがるな。」

 

 

男が呟いた声をなのはは完全に聞き取る事はできずにいる、何故なら微かに別の声が耳に入り込んでいたからだ。今にも消えそうな声に集中するようになのはは耳を澄ます。

 

 

「何者かが聖王教会を襲撃してきました…!! 爆発によって辺りは酷い事になっています……。」

 

「シスターシャッハ……?」

 

 

瓦礫に身を潜めているのか、姿はなのはの視点から確認できないが誰かと会話しているように聞こえた。

先程からシャッハが近くに身を潜めている事に気付いていなかったなのはは思わず目を見開いて声が聞こえる方角へと視線を向けて激痛に耐えながら体を起こそうとする。

 

 

「っぐ……!!」

 

「なのはさん!? 大丈夫ですか、なのはさん…っ!!」

 

「おーっと、こんな所に隠れて何をしているんだ?」

 

 

男の声に思わず凍り付くシャッハ、同時に微かに耳に届いたヴィヴィオの声になのはは上体を起こして戦闘体制を整えようとしていた。

 

 

「天下のギニュー特戦隊から逃げられると思うな。」

 

 

ようやくシャッハの姿を目視した頃には誰かと通信していたのか、モニター画面を切って青い色の肌を持つ男と睨み合う。

―――絶体絶命という言葉に相応しい絶望的な状況が展開される中で息を飲むシャッハ。このままでは、という思考が脳内を駆け巡っていた。

 

 

「ギニュー、特戦隊……?」

 

 

唐突に名乗り出た言葉に頭が回らない様子でシャッハは呟く、何かのチーム名のように感じられた名前に対して青色の肌を持つ男はきょとん、とした表情を見せて口を動かす。

 

 

「おいおい、ギニュー特戦隊を知らねえのかよ…。」

 

「ま、ここは異世界らしいからな。よーし!バータ、久しぶりにあの名乗りをするぜ。」

 

 

思わず両手に武器を手に取り構えを取るシャッハを無視して男達は一定の配置に付いた途端、奇妙なポーズを取り出す。

その光景はあまりにも戦場とはかけ離れた奇矯な行動になのはとシャッハは呆然と眺める事しかできなかった。

 

 

「ギニュー特戦隊の赤いマグマ! ジーーーース!!」

 

「ギニュー特戦隊の青いハリケーン! バーーーータ!!」

 

「………えっ、と。」

 

 

両手を広げて青い色の肌を持つ男はバータと名乗り、肩膝をつく赤色の肌を持った男はジースと名乗り出て可笑しなポーズを取る姿に二人は唖然とした表情を浮かべている。

 

 

「ふっふっふ、どうやらオレ達のファイティングポーズに見惚れて言葉が出ないようだな。」

 

「当然だろ。ギニュー隊長が直々に考えてくださったポーズなんだぜ。」

 

 

ギニュー隊長?シャッハとなのはは思考を続けていたが彼等の言葉に一時的なストップが掛かった。彼等はギニュー特戦隊と呼ばれるチームの一員、そしてリーダーがギニューと呼ばれる何者か。

だが二人が相手をした中でそれらしい人物は見付からずにいる。シグナムかヴィータが相手をしているという思考が浮かぶが何故か腑に落ちない思考でもあった。

 

 

「……フェイトちゃんに酷い事をしておいて、大勢の人を傷つけておきながら…よくそんなことができるね。」

 

「貴方達…そんなふざけたポーズを取って私達をバカにしてるの…!!」

 

 

だが笑って済ませられる訳もなく、二人は怒りを露にさせた言葉を言い放つ。しかしジースとバータも同じように激怒して言い放った。

 

 

「ふざけたポーズだと! てめえ等オレ達のファイティティングポーズをふざけたポーズと言いやがったな!! おい、ジース!!」

 

「ああ。殺すなという命令だったがオレ達のポーズをバカにされてはガマンならねえな。貴様等だけはこの世から消し去ってやる!」

 

 

ジースは空中を浮遊し、紅色に輝く球体を出現させる。唐突に出てきた彼等のむき出しの感情と殺意を直視する暇もなくジースは叫ぶ。

 

 

 

「クラッシャー……ボール!!」

 

『Protection EX!』

 

 

片手で直接当てる事で打ち出す球体、即座に反応したレイジングハートは防御魔法を発動させ桜色の障壁を形成させ球体と激突する。

だがジースの放った攻撃は今のなのはで防ぎ切る事はできずにいた、障壁を突き破ろうと障壁に滑りこむ球体に必死で防ぎ切ろうとレイジングハートとなのはは努力を重ねつつ。

 

 

 

(…っ…ぐ……もう、だめ……。)

 

 

 

足場に亀裂が入り込む、それはなのはの防御魔法―――障壁が突破される寸前という証拠だ。それを何より理解していたのはなのはとレイジングハート。

自身の限界を突破した力を出しても叶わない敵に歯を食いしばる、その様子を静観し続ける事しかできないシャッハは悔しそうに覚悟を決めた。

 

 

 

(ヴィヴィオ、フェイトちゃん…はやてちゃん、みんな……ごめんね。)

 

 

 

ガラスが破壊されるような音を奏でて障壁は木っ端微塵に破片と化してしまう。―――もはやなのはとシャッハを守る物は存在していない、このまま何も出来ずに呑まれるのを待つしかなかった。

 

 

 

 

「いくぞ悟天!」

 

「うん!」

 

 

幼い声が唐突に降り注いでシャッハとなのはは驚いてその声の主へと目を向けた。其処には地を駆ける二人が視界に入り込む。

あまりにも突然な出来事で二人の思考は状況を飲み込む事ができなかった、同時に生暖かい手や腕の感触が伝わって二人は一気に足場が疎かとなる。

 

 

「「いっせーの…せっ!!」」

 

「「なにいっ!?」」

 

 

そして飛来する少年達は互いに拳を突き出し紅色の球体に命中させて弾き返し、遥か何処の方角へと球体は吹き飛ばされてしまう。

男達は驚骸な声を上げてその二人の少年を睨み付ける。予測できない状況が眼前で目まぐるしく展開され理解不能に陥るなのはとシャッハの元へ不意に声が届いた。

 

 

「大丈夫ですか…?」

 

「え……えっ?」

 

「なのはママ、フェイトママ……っ!!」

 

 

改めてなのはは自分の状態を理解した瞬間、まるで絵に描いたような光景が広がっていたのだ。

一人の青年がなのはの膝を片手で抱えていた。それは横抱きと呼ばれる抱き方であり、お姫様抱っことも呼ばれる抱き方だ。

 

更になのはの視界に飛び込むのは自身の娘であるヴィヴィオだった、今にも泣きそうな表情で彼女を見つめている。

 

 

「お父さん!仙豆を二粒くれませんか。早くしないとこの人達が…!!」

 

「ああ、わかってる。ほれっ!」

 

 

冷静な思考回路になりつつあるなのはとは違い、シャッハは未だに混乱が残る様子で辺りを見回している。四方八方に伸びた黒髪の男に腕を掴まれている様子のシャッハは男が突然取り出した豆粒に視線を向けた。

青年の言動はなのはの容態を気に掛けた故の言動である。なのはは先程の戦闘による傷跡が酷く下手をすれば命にも関わるほどの致命傷であった、限界を突破した状態を持続させるだけでも体力の消耗は激しい。

それにも関らず、今の彼女の表情は苦しみに満ちた顔を浮かべる事もなく穏やかな表情を浮かべていた。その表情の真意はなのは自身にも理解する事はできずにいる。

 

 

(なんだか、懐かしい感じがする……。)

 

 

言葉では言い表せない複雑な気持ちが彼女の心を満たしていた、青年の手や顔付きは決して初めてではない。錯覚のような感覚が青年を見る度に思う。

 

 

「聞こえますか? これを食べてください。」

 

「………っ。」

 

 

小さな豆を片手に掴んだまま。静かに問い掛ける青年の声になのはは回答を返すわけもなく彼が手に取っている豆をなのはの口に含ませようとする。

なのははそれを口に含めばすぐに噛む。大した味が広がるわけもなく軽い歯応えだけが印象に残るのだった。

 

 

「悟天、仙豆をあの人の口の中に入れてくれ。気絶してるから飲み込ませないとダメみたいだ。」

 

「わかった! ヴィヴィオちゃん、手伝って。」

 

「う、うん…!」

 

 

青年はフェイトに目を向けるが気を失っているせいでなのはと同じような反応は期待できないと判断した様子である。

無邪気な声と共に青年から仙豆を受け取った悟天とヴィヴィオは今も倒れ伏しているフェイトの元へと駆け寄っていく。

間近で彼女を確認すれば酷い傷跡がより一層、明確に視界に飛び込んでくる。ヴィヴィオは倒れている彼女の体を少し浮かせ、悟天はフェイトの口元に豆を飲み込ませるように含ませた。

 

 

「おめえも食うか?」

 

「わ、私は大丈夫です。それよりも聖王教会の中に騎士カリム達が…!」

 

 

シャッハは慌てて燃え落ちていく半壊状態の聖王教会へと視線を向けて訴える、だがもはや聖王教会は瓦礫の一角となりつつある。

崩れ落ちていく聖王教会を目にした悟空はその建物を見据えて眉を潜める。

 

 

「あの家ん中に邪悪な気が集まってんな。悟飯、ベジータ。こっちはおめえ達に任せていいか?」

 

「あ、はい。構いませんよ。」

 

「こんなザコ共すぐに片付けてやる。」

 

「……あの、気をつけてください…。」

 

 

気を察知する能力に長けた彼等は相手の強さを測ることができる。故に、最も力が集中した地点は“此処”ではない。

シャッハが先程訴えた場所こそが最も力が集中する場所なのだ。身震いを覚えさせる邪悪な力の根源を悟空は追い求めて―――。

 

 

「サンキュー! そんじゃ、頼んだぞ。」

 

「なっ、飛んだ……!?」

 

 

シャッハにとっては予想外な出来事……いや、予想外な出来事は以前からも立て続けに起きており今更驚くのも野暮である。そんな風にシャッハは薄々と感じてしまった。

魔法を使っているわけもなく悟空は突然浮遊して空中を移動したのだ。何らかの術を使っているのは明白だがそれが魔法ではない。その事が彼女にとって驚きを与えるには充分すぎた。

 

この場を悟飯達に任せることにした悟空は背を向けて、火炎によって殆どが焼け落ちた教会へと飛び込んでいくのだった。

 

 

 

 

 

「えっと……あの、もう平気ですよ。立てるようになりましたので……。」

 

 

改めてなのはは声を上げて悟飯の腕から離れて地面に足が付く。命の危険が伴う致命傷はあっという間に見る影がなくなっており、何一つ傷が入っていない彼女が其処にいたのだ。

それは秒刻みで怪我が治療されていくという驚異的な回復力だった。悟飯がなのはに豆を食べさせた直後にその現象は現れ、あっという間に完治させたのだ。それは正に万能薬と言ってもいいだろう。

 

 

「なのはママ…よかった……。」

 

「ヴィヴィオ……うん、心配かけちゃってごめんね。」

 

 

ヴィヴィオは安静の一息を吐いた。なのはは内心、何故ヴィヴィオやその友達であるアインハルトが此処に居るのか今すぐにでも問いかけたかったのが本音だ。

だが彼女達の様子は明らかに普通ではない。相手の態度は自分を心配してくれている、それを理解したなのははその質問を口にするのを止めて今は穏やかな顔で答えるのだった。

 

 

「あ、あの…本当に大丈夫なんですか……?」

 

「うん……心配してくれてありがとう、アインハルトちゃん。」

 

 

誰もが先程の豆について問いただしたい気持ちになっている、だが異世界の産物についての質問はこの場では相応しくない。故に問いかける事はなくアインハルトとシャッハはなのはに心配した眼差しを向けているのだ。

この場で起きた疑問は、この事件が終わった後で答えを聞こう。その思想が彼女達の脳裏に共通した思考であった。

 

 

「フェイトさんの怪我が……!」

 

 

先程、豆を食べたフェイトにもなのはと同様の効果が現れている。シャッハはフェイトの急激な回復力に驚きながらも声を上げた。

 

 

「よかった…此処は危険ですので離れててください。」

 

「え……っ。」

 

 

静かに呟く悟飯の声、その返答に対して困ったように口を閉ざすなのは。敵の強さを直接目の当たりにした彼女は決して素直に頷く事はできなかった。

自分の力では彼等の強さに及ばない事を理解している、故に青年に託す事にも賛成できず口を閉ざしたままどう言うべきかと思考を繰り返す。

 

勿論それはシャッハにも言える事だ、彼女は「危険です…!!」と安易に賛成する事はなかった。

その様子を見ていたヴィヴィオは気絶しているフェイトの元から離れて彼女達の会話に参加する。

 

 

「…なのはママ、シャッハさん。たぶん大丈夫だと思うよ。」

 

「ヴィヴィオ……?」

 

「悟天くんやトランクスくんのお兄さんとお父さんだから…すごく強いと思うんだ、だからぜったい大丈夫だよ!」

 

 

屈託のない笑みを浮かべられ、なのはとシャッハは否定の言葉を口に出す事はできなくなってしまう。ヴィヴィオの言う事は確かに一理あるのだ。

少なからずなのはは悟天の強さを目にしている。ほんの数日間の生活でなのはが見た悟天を思い返し、そして白いワイシャツを着た青年を目にすれば――彼女は首を立てにする事を決めたのだった。

 

 

「そうだね…わたし達は此処から離れていた方がいいかもしれない。シャッハさんもそれでいいですか?」

 

「……なのはさんがそう言うのでしたら、わかりました。」

 

「なのはママ…!!」

 

「みなさん…あとはお願いします。」

 

 

最後にアインハルトが彼等へと視線を向けて頭を下げて言う。意向が決定した所でなのははフェイトを抱えようと倒れ付している彼女へと足を進める。

途中で彼女の視線が泳いで悟飯へと一瞬だけ目を向ければ暫く彼を見据えた跡にフェイトを抱えてヴィヴィオ達と共にその場から距離を取るようにして離れていく。

 

 

(あの人が悟天くんのお兄さんってことは……。)

 

 

彼女の視線に対して悟飯や他の者達は気付く事はなかったが、唯一悟天だけがその様子を視界におさめていた。

 

 

「バータ、なんでベジータ達がいるんだ。」

 

「お、オレが知るかよ。なに、今のオレ達はあの頃とは違うんだ…返り討ちにしてやろうぜ。」

 

 

顔見知りのような静かな口調で会話をする二人は目の前のベジータや悟飯達を見ては頭に疑問が浮かぶが特に気にする様子もなく見据える。

 

 

「こんな酷いことを…お前達がやったのか!」

 

 

周辺に倒れ付している大勢の魔導師達に目を配りながらも叫ぶ、血液が流れ怪我をしている魔導師達の存在は悟飯の怒りを誘う結果となっていた。

しかし殺されているわけではない、気絶している事から彼の怒りは最大極限にまで膨れ上がる事態は避けられていた。

 

 

「ああ、そうだ。この星の連中はザコばかりだから手加減するのに苦労したぜ。」

 

「フリーザ様の命令じゃなければあの建物ごと破壊して皆殺しにしてただろうけどな。」

 

「ひどい……。」

 

 

だが彼等の言葉を聞けば聞く程、怒りを感じざるをえないだろう。平然と語るバータとジースは周辺に転がるように倒れている魔導師に見向きもしない。

 

 

「ち…フリーザのヤロウも絡んでいやがったか…。」

 

「ベジータ!あの時に殺された恨みは忘れんぞ!! 今のオレ達は昔のフリーザ様に匹敵する力を持っているのだ。」

 

 

忌々しく殺意を向ける彼等の中に蘇るのは遠い昔の出来事。まるで映像のように思い出すその映像を回想していれば同時に怒りを表す。

過去の因縁が絡まり合うように再現した今の風景は奇妙な光景でもあった。

 

 

「ふん、オレはフリーザなどとうに超えている。くだらんお喋りはここまでだ…近くにいるグルド、リクームごとまとめて消し―――。」

 

「すみませんベジータさん…あの二人の相手はボクにやらせてください。」

 

 

静かに名乗り出た悟飯の主張に悟天やトランクスは驚いた表情を浮かべてベジータはすぐに反論を口にする。

 

 

「なんだと? 何故貴様が……―――!?」

 

「…兄ちゃんが怒ってる…。」

 

「悟飯さん……。」

 

 

彼等が見た先には怒りで震える悟飯の姿であり、無意識に歯を噛み締めてはジースとバータを睨みつけていた。

思わず悟天やトランクスはその態度を見て言葉を失ってしまうほどに悟飯は内心溜め込み続けていた怒りを静かに露にする。

 

 

 

「はああああ……っ!!!」

 

 

 

悟飯を中心に攻撃的な強風が荒れ狂い重量のある瓦礫が簡単に投げ飛ばされてしまう、地面に傷跡を入れては我武者羅な突風で乱暴に周囲へと撒き散らしていた。

なのは達は彼の突然出てきた激しい怒りにたじろぎながら強風によって吹き飛ばされないように踏ん張り続けている。

 

そして強風が治まり体内に眠る潜在能力を限界以上まで引き出した悟飯の姿は悟空と同じ山吹色の道着へと変わり、敵であるジースとバータに対して威圧的な眼光を向けていたのだった。




悟空「オッス!オラ悟空!! 悟飯のやつ本気で怒ってんな。」

ベジータ「あいつの持つ潜在能力は計り知れん…。」

悟天「やっぱり凄いや兄ちゃん!」

トランクス「ああ!オレ達も負けられないな。」

アインハルト「私もあんな風になれたら……。」

なのは「悟飯くん……。」

ヴィヴィオ「なんか、なのはママの様子が変かも…。」

悟空「次回ドラゴンボールViVid「ミッドチルダの戦い、悟飯の究極パワー炸裂!」

悟飯「勝てんぜお前は。」
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