悟飯が放つ凄まじいエネルギー体が大地を震わせ、激しい地震を起こす引き金となっていた。それはギニュー特戦隊の運命を決したとも呼べる。
「ん~~? 何か起きたのか?」
「ぐっ………。」
額から血液を流し、片膝を地面に付くシグナム。突拍子もない地震が聖王教会を揺らしてリクームは疑問を感じていた、だがその疑問は地震に向けられた物ではない。
聖王教会に強烈な力の変動を感じ取った故の疑問なのだ、それは必然的にも悟飯の力に対して。だがリクームは彼が此処に来ている事実を知らない。
そして突然消え入りそうな足音が耳に入る、その足音を奏でる人物を目にしたリクームは一瞬驚きを見せるが、途端に上機嫌な表情を浮かべて口にした。
「ハーイ、ベジータちゃん。どうして此処にいるのかはわからないが、こいつを助けにきたんだろ…?」
「勘違いするな…オレは貴様に用があるだけだ。そいつがどうなろうが関係ない。」
「っ……?」
逆立った黒髪に鋭い目付きを持った男は気が付けばリクームの近くにまで歩み寄っており、シグナムはその男とリクームの場を見届ける事しかできずにいる。
だが二人の間柄は良好的な物ではないようにシグナムの瞳にはうつった、緊迫感に包まれ隙を見せない。ギクシャクとした冷たい何かがある。
「オレに用だと? ま、まさかギニュー特戦隊に入りたいなんていう気か!!」
「…死んだ筈の貴様等が何故ここにいる。地獄で異変でも起きたのか?」
(死んだ……!?)
シグナムの脳裏に衝撃が走る、相変わらずリクームのとぼけているのか真面目なのか受け取りづらい言動に対しベジータは華麗に無視してしまう。
だがシグナムとベジータは互いに通じる物があった、それはリクーム達…ギニュー特戦隊のこと。何故彼等は此処を襲撃したのか――目的がわからない。そして死んだ筈のリクームが現世に存在している事、例を上げればキリがないだろう。
「へっへっへ、そんなこと教えるわけないだろう。」
嘲りを含んだ笑い声を上げて否定の意を表せば、ベジータは彼に対する興味を失ったように呟いた。
「…そうか。なら、もう貴様に用はない。」
その言葉を口にした瞬間、衝撃が起こる。突然―――リクームは地面を這い蹲っていた。いや、そう言っても過言ではないほどの秒刻みの現象が起きたのだ。
シグナムがどう足掻いても傷一つすら付けられないリクームは不様に地面に這い蹲っては耐えがたい激痛を堪える姿となっていた。
「あぐ…っ!! ベ、ベジー……タ…。」
それはベジータが一般人には目視できない速度でリクームを攻撃したからに他ならない、その速度はシグナムやリクームでさえも目を通す事はできないのだ。
故に、まるで一般人やシグナムからすれば唐突に彼は地面に這い蹲っていたという異常現象を目の当たりにしてしまう結果となる。
「この程度の相手に苦戦するようでは、この星の奴等の戦闘力もたかが知れてるな…。」
「………。」
ベジータの攻撃によってリクームは殆ど動けない状態に追い込まれていた、その事実がシグナムの脳裏に突き刺さるような衝撃を与える事にもなる。
「何……!!」
「消えただと…! どうなっていやがる…。」
だが更に二人が驚くであろう光景が唐突に広がったのだ。蹲って堪える姿を見せるリクームの肉体は霧のように跡形もなく背景へと溶けていた。
その現象を明確に表現するのなら“霧散”。まるで彼は最初から存在しなかったように体は消えてなくなりこの世から姿を消している。
シグナムとベジータは互いに唖然とした表情を浮かべながら、リクームがいた場所を眺めていた―――。
「うおっ!? バータとジースのヤツ派手にやりすぎだ。こっちまでホコリがきてやがる。」
「くっそぉ……!!」
荒れ果てた大地から浮遊するグルド、未だに体が動かないヴィータは歯を噛み締めて彼を睨み付ける―――が、その荒んだ地上とは裏腹な幼い子供の声が響いたのだ。
「あ~あ、兄ちゃんの戦いみたかったなぁ…。」
「しょうがないだろ、悟飯さんに頼まれたんだから。まずは他の敵をやっつけるのが先だ!」
その暢気な会話を耳にしていたグルドは呆れて物が言えず、彼が目にした先には悟天やトランクスが何処かつまらなさそうに歩いている風景。そして後方にはアインハルトとヴィヴィオ。
「そうですね、これ以上怪我人は増やすべきではありません。」
「そうそう……ってなんでアインハルトちゃん達がいるんだよ!?」
「私があそこにいても戦闘の邪魔になるだけだと思ったからです。」
「それに、此処にいる人達は放っておけないから……。」
アインハルトは無表情を崩さずに述べる、だがその表情の裏には何処か悔しさを含んだ複雑な物だ。
そしてヴィヴィオの言葉に素直に共感を抱く二人。―――放っておけない、その気持ちだけは四人にとっての共通点である。
「おい、ガキ共! なにしにきやがった!!」
遥か遠くから声が聞こえてくるが全員、気付いていないのか見向きもしない。
「どうしよう、トランクスくん…。」
それよりも問題なのはアインハルトとヴィヴィオであった、悟天は途方にくれた視線をトランクスに向けて訴える。
「う~ん、来ちゃったものは仕方ないか…もし何かあったらオレ達で二人を守ればいいだけだしな。」
「いいえ……自分の身ぐらいは守りますのでお構いなく。」
「二人ともありがとう!わたしも足を引っ張らないように頑張るから。」
「こ、この野郎~~オレをムシしやがって…これでも食らえーーーっ!!!」
子供が四人、それはヴィータにとっても予想外の展開。グルドは怒りに身を任せて周辺の物体を超能力で浮遊させてしまう。
木の枝、ガラスの破片、瓦礫、小石、グルドは周辺に存在する物体を悪戯に浮遊させて武器として四人に投げ放つ―――!
「「危ないっ!!」」
「「きゃああああ!!」」
トランクスと悟天の声は重なり合う、アインハルトとヴィヴィオの背後に迫り来る凶器は高速を飛び越えて彼女達に襲い掛かっていた。
その速度は例え武器にはならない物体でさえも殺傷能力が芽生え武器へと変異させる速度。常人の反応速度では到底追い付く事はできない、いや攻撃されているという事実さえも気付けないだろう。
故に二人だけはその速度を目視し、トランクスはアインハルト、悟天はヴィヴィオへと互いに強引な腕力によって地面へと押し倒すように攻撃を避ける。
アインハルトとヴィヴィオは忽然(こつぜん)の攻撃に驚いた表情で二人を見上げていた。自身の状況が頭に入れば入るほど、顔面を紅色に染め上げていく。
「えっ、ええっ……えっと…!」
「は、離れてください…!!」
「あ、ごめんね。」
「……ッ…ごめん!!」
戸惑うヴィヴィオに拒否反応を見せるアインハルト、その構図がどういう物なのか。それが頭に入ったトランクスまでもが顔面を真っ赤にさせてすぐに離れる事になる。
一方で悟天は上手く頭に入っていない様子でヴィヴィオから体を放すように離れていた。ヴィヴィオの顔が紅色に染まっている理由は勿論理解できないまま。
まるで主役とヒロインのワンシーンを見せ付けられたグルドは更に怒りを溜め込む結果となってしまう、自分は眼中にない――そんな不愉快な構図が眼前で描かれているのだ。
「て、てめえらいい加減にしろーっ!!」
「うるさいな~…そんな大声出さなくても聞こえてるよ。」
アインハルトとヴィヴィオへの不意打ちを行った犯人に鋭い目付きを向けるトランクス、その視線には相手を威圧する敵意が込められている。
「トランクスくん、あいつが敵だよ!さっき見たのと同じ格好してるもん。」
ジースとバータが着ていた衣装、それは戦闘服。まったく同じ物をグルドは試着していた。
とはいえ体の形状はとてもジースとバータには似つかない、非常に小柄で全身は緑色という地球外生命体と思わせるような外見なのだ。
「だろうな。よーし、一気に終わらせるぞ!」
「オッケー!」
「ナメやがって…串刺しにしてやるーーっ!!」
再び念力によってグルドの視界に入る木を地面から引き抜けば真っ二つに引き千切ってしまう、強引な力で二つに千切れた木は刺々しい傷跡部分を二人に向ける。
武器として活用された木は超高速という速度に乗せられて飛来していく、飛来する通路周辺に風圧を撒き散らしながら目標地点へと放つ―――!
「なにっ!?」
二つの凶器は避けられる事はなかった、だが命中する事もない。その不可思議な光景を目の当たりにしたグルドは驚きの声を上げる。
無理もない、目の前には確かにトランクスと悟天の姿があるにも関らず攻撃は素通りされたのだ。それは残像のように、実物が存在してないような光景。
「こっちだよー。」
「があ…っ!」
幼い声がグルドの背後から飛来すると同時に彼の背後に強烈な衝撃が走る、それはグルドの予想を遥かに上回った計算外の足蹴りだった。
悟天とトランクスの行動、攻撃、全ての戦闘力はグルドの想像外だ。悟天に蹴り飛ばされた事実を飲み込めずにいるグルドは上空をロケットのように突き抜けていく、その先には―――。
「これって、もしかして……。」
「連携プレーですね…ヴィヴィオさん、私達もやりましょう。」
「はい…! ……クリス!!」
グルドの前方にはトランクスが待ち構えていた、この機会を狙っていたかのようにトランクスの拳は固く握り締められ今にも攻撃を放つ体制でいる。
―――そしてヴィヴィオとアインハルトは二人の行う行動の意図を読み取った様子で、ヴィヴィオは兎のぬいぐるみを握り締めた。
「でりゃあっ!!」
「ごおっ!」
瞬間的に拳は突き出され、グルドの体へと手加減なしの威力が叩き込まれる。やがてグルドは衝撃に操られヴィヴィオとアインハルトの方角へ。
「ヴィヴィオちゃん!」
「アインハルトちゃん!」
「やあああっ!!」
「はああぁっ!」
グルドが自身の状況を認識する間もなく、ようやく目を見開いて捉えた先には二つの拳と碧緑の髪を持つ女性と金色の髪を持つ女性。
それはヴィヴィオとアインハルトの大人の姿であり戦闘体制を示す姿でもあった。グルドの眼前には突き出された二つの拳。
「ぐおおおおお…っ!!」
グルドの顔面へと叩き込まれ、絶叫と共に地面を抉り取りながら叩きつけられてしまう。四人のコンビネーションによって決して隙を与えない攻撃が決まり、ヴィヴィオとアインハルトは互いに嬉しそうな笑みを向けていた。
「こいつ意外と弱かったな。オレ達、半分くらいの力しか出せないのに…。」
「もう大丈夫だよーー!!」
(…あたしがどうやっても倒せなかった奴を、たったあれだけで倒せた……?)
あっけなく倒れてしまったグルドを見下ろすような視線を向けるトランクス、背後では満面の笑顔を浮かべて声を掛ける悟天の姿。
だがそんなありえない状況下、口出す事はなく静観し続けた人物が一人―――先程からグルドの超能力によって身動きを取れずにいた少女は始めて口を開いたのだ。
「……なんで、ヴィヴィオが此処にいんだよ。」
「あ、ヴィータさん…! その、色々あって……それよりヴィータさん大丈夫ですか?」
「お怪我はありませんか…?」
信じられないとばかりに瞳が揺らぐ赤髪の少女はヴィヴィオよりも幼く、アインハルトよりも下に見える。だが彼女、ヴィータが放つ威圧感や風格はヴィヴィオ達の比ではない。
ヴィータは先程の光景をもう一度回想していた。グルドが瞬きする間に倒されていく光景はヴィータにとって信じがたい光景なのだ。
「…擦り傷だけだから心配すんな、んでそっちは……?」
「アインハルト…アインハルト・ストラトスと申します。」
「ボクは孫悟天だよ!」
「オレはトランクスだ!」
何処か荒々しく男のような口調でヴィータは言う、ほぼ無表情に近いアインハルトや元気な印象を与える無邪気な笑顔を振り撒く悟天とトランクスは名前を名乗っていく。
疑問が積もるヴィータはアインハルトやヴィヴィオから様々な説明を耳にしてもらう事となる。同時にヴィータは驚いた表情を見せながら時は一刻に過ぎ去っていく。
―――だが五人の視界にあるべき物がないことに気付く、それは極々単純で先程から目にしていた物だ。それは突然にして消えていた。
グルド、彼の姿が何故か周辺に存在していない。彼は完全に息の根が止まった訳ではない、先程の四人の攻撃によって気を失っているだけである。だがグルドはそこには存在していなかったのだった。
暗闇だけが広がる視界に薄暗くぼんやりと入り込む風景と、見慣れた女性の顔。全てを包み込むような優しい青い眼と柔らかな茶色い髪を持つ彼女が、フェイトの視界に入り込んだ。
そして脳が覚醒すると同時にフラッシュバックを引き起こした。鮮明に描き出される青色の肌を持つ男との戦闘、「真・ソニックフォーム」、「行こうバルディッシュ」、そして「ギニュー特戦隊」――――。
「っ…! なのは……!!」
「ふぇ、フェイトちゃん…? 大丈夫…かな?」
「フェイトさん……よかったです。」
フェイトは此処に至るまでの記憶を一瞬にして全てを呼び覚ましていた、ギニュー特戦隊と名乗る謎の男達との戦闘によって惨めに敗北するまでの出来事を。
だがそれをかき消し包み込むような、なのはの穏やかな微笑とシャッハの安心した溜め息を目にしていれば自然と心は晴れていくような感覚を覚えていた。
「二人とも、ありがとう…私は大丈夫。ところであれからどうなったの?」
気が付けばフェイトの服装は真・ソニックフォーム時の衣装から変異している、先程までフェイトが思い出した敗北の過程が彼女のモードを解除させた原因だろう。
そして彼女の中で最も疑問視するべき内容を二人にぶつけた所、シャッハとなのはは困り果てた視線を互いに向けて口を閉ざす。
「そ、それが……。」
「どう言えばいいのかわからないけど…。」
なのはとシャッハは困り果てた視線を遠方へと向けた、その行動を理解する事ができないフェイトは怪訝な表情と共に彼女達と同様の行為を行う。
だがフェイトの中に飛び込んだ光景はとても理解しがたく現実離れした構図だ……一人の青年と向かい合わせに佇む二人の男――その一人は自身を敗北させた人物。
「…ちょっと言いづらいけど、わたし達じゃ力不足だからあの人に任せてるって感じだよ。」
「え……そんな、無謀だよなのは…!」
「でもわたし達三人で力を合わせるより…ずっとそれ以上に強いと思う。」
その話自体が信じがたい物である、この日の為にと必死に日々訓練してきた人間達が足を引いて無名の人物に任せるという出鱈目(でたらめ)な現象が発生していた。
出鱈目な現象を体現する一人の青年をフェイトは目を凝らしてその姿を鮮明に目視する。黒髪の青年は桁外れな風格や威圧感が異常な程に備わっているように彼女は感じた。
だがそれでも内心の「無謀過ぎる」という感情は捨てきれない、事の経緯を見守るようにフェイトやなのは、シャッハは静観し続けるのであった。
「な、なんだ…急にあのヤロウの雰囲気が変わりやがった……。」
「へっ!それなりのパワーアップをしたみてえだが、オレ達が相手では運が悪かったな!」
黒髪の青年、悟飯は一切表情を変化させず冷静すぎる態度を崩す事はなく、生死を左右する戦場内でも一切の揺らぎは見せない。それが恐ろしい威圧感となって降り注いでいる。
しかしバータは虚仮威(こけおど)しと言わんばかりに彼へと突っ込んでいく、前進していく!だが反してジースは目を見開いて声を大にして言う。
「――――待てバータ!!」
「くたばれーーーっ!!」
激声と共に拳が悟飯の顔面目掛けて突き出された、それは数秒もない出来事だがバータの拳は空振りで終わってしまう。
「なっ!? ば、バカな!オレは確かにヤツに攻撃をしたはずだ。」
バータ自身でさえ視界に収まらない速度を悟飯は持っている、身震いを覚えさせる光景にバータは額から冷や汗を流し途方もない程の「恐怖」と「畏怖」と「絶望」が襲い掛かっていた。
「どうした? オレは一歩も動いてないぞ。」
「う…うおおおおっ!!!」
がむしゃらに、力任せに、撃つ、撃つ撃つ撃つ!当たるまで滅茶苦茶に拳で殴り続けるバータ…数撃てば当たるという言葉通りに悟飯へと向け続けていく。
だがそれでも当たらない、全ての攻撃は全て避けられ一つも当たる事はなく避けられ続けている。それは悪夢のような光景だ。
「…す、すごいですねなのはさん……。」
「どうやって避けているのかわからない…一体何が……。」
「……多分、バータって人はあの人に当てる気がないんだと思う。」
なのはの言葉にシャッハとフェイトは目を点にさせて彼女の方へ目線を向ける、意味がわからない。
バータは悟飯を目掛けて殴り続けている、それが一つも当たらず無限ループしているだけに過ぎない光景はバータが悟飯を狙っていないからだと言う。
「あの人の威圧感で、バータって人は無意識に避けようとしてるような……。」
「そんな、馬鹿な……信じられません。」
「…………。」
もはや勝負は決着が付いたのだろうか?バータの根本的な何かは既に「敗北」している。
だが三人の視界には悟飯が動いたような動作は感じられない、それは単純に目視出来ないほどの速度かもしれないが彼女達の目には悟飯の僅かな動作さえも入ってこない。
「く、くそ!全然あたらねえ……。」
「バータ!二人でコンビネーション攻撃だ。地獄で編み出したオレ達の新技でヤツを仕留める!!」
「あ…ああ、わかった。」
なのはの言葉は真実性を物語るようにバータの攻撃は一切当たる事はなかった。代わりに足の震えや額に異常なほどの冷や汗を流しながら。
痺れを切らした様子でジースは叫ぶ、そしてバータはジースの隣まで戻れば彼等は構えを取り始める。同時に発生したの青色の光と赤色の光。
二つの光はまるで燃え盛るの炎のように揺らめき、地響きと共にジースとバータはく空中を飛来する!
「「パープルコメットクラッシュZ!!」」
青色の光と赤色の光は混ざり合い一筋の紫色の光と化す、炎のように不気味に襲い掛かる紫色の炎は周辺を一方的な暴力によって掻き毟っていく。
地面は抉り出され突拍子に衝撃破が荒れ狂い抉れた道筋を作り上げて標的である悟飯へと突進しながら無数の光弾を解き放つ。
「ふははは!貴様にこの攻撃が防げるか!!」
「粉々に吹き飛べーーーっ!!!」
強烈な威力を秘めた二人の合体技は並大抵の防御力では歯が立たないだろう、もはやなのは達は手も足も出ず悟飯を見守るしかないのだ。
「きゃ…っ!」
「ふぇ、フェイトちゃん大丈夫…!?」
「フェイトさん、なのはさん…! 此処にいるのは危険です、もう少し離れた方が―――ッ!?」
突如、襲い掛かる強風に身を崩しそうになるフェイト。なのはが支えた事によって崩す事はなかったものの、今にも吹き飛ばされるとばかりに地面へと足跡を刻み込む。
誰もが止められる筈もない、絶対的な破壊力が込められた光弾の雨に恐怖を抱いたシャッハは二人に逃げるように施すが…。
「――――かあっ!!」
彼女が見た先にはその一撃は消えていた。広がるのは何事もなかったかのように広がる瓦礫の山、いや先程の合体技による傷跡は確かに残されている。
だが悟飯の一声によって全てが無くなっていた。瞬間的に大気が震え暴風が渦を巻くように発生したが直後、紫色の光は風景に溶け短い悲鳴を奏でたのだ。
「うおおっ…!!」
「な、何が起きたんだ……や、ヤツがいねえ!?」
バータとジースは悟飯に接触する事はなく遥か後方まで吹き飛ばされていた、更に二人の眼前にいた筈の悟飯は姿を消している。
咄嗟の事態に目標も捉えられない二人は周辺を見渡す。だがそれでも悟飯は何処にもいない、気配を察知するという行動もできず二人は動揺を露にしていた。
「こっちだ。」
「――――!?」
背後へと振り向くバータ、その先には先程から探していた人物が不敵な笑みを浮かべて佇んでいたのだ。
そこには一切余裕が崩れていない不敵な笑みを浮かべた悟飯がバータを精神的に墜落させていく。
「ウスノロ…。」
「う、ウスノロ…宇宙一のスピードを誇るオレ様がウスノロだと!!」
それはバータが最も長所としていた部分であり、一つの誇りとして受け取っていた部分。だが悟飯は不敵な笑みと共にそれを汚した。
「ノロマの方がよかったか?」
挑発的な言葉を何度も投げかける、全ての言葉はバータの感情を剥き出しにさせるには充分すぎる。
その姿は戦闘が起きるまでの穏やかな青年と比較すれば今の青年、悟飯は何処か好戦的で酷く冷静なのだ。
なのはやフェイト、シャッハはその姿を見て戸惑いを覚えていた。先程までの青年の人格については勿論、バータとジースの合体技を簡単に打ち破って見せた彼の力に。
「…こんなこと、ありえません……!!」
苦々しく吐き捨てるように言い放つシャッハに少なからず共感を覚える二人。だがなのはだけは、力よりも悟飯の性格の変化に対して気に掛けていたのであった。
一向に動く気配を見せないバータとジース、いくら悟飯の挑発を浴びせられても彼の力の強さだけは頭から離れない。圧倒的な実力と精神力、どれを取っても彼等の比ではない。
よって生々しい感情だけが露になる。負け犬の遠吠えとも呼ぶべき二人の言葉だが―――。
「ヤツの実力は本物だ…ちくしょう! あの石のパワーを得られれば貴様なんかっ!!」
「あの石? 何を言っている…。」
聞き捨てならない言葉を唐突に口にする二人、もはや崖に立たされているような状況なのだ。
「とぼけるな! 望むだけで究極のパワーが手に入る石に決まってるだろ。今頃、隊長が奪いに向かってる!阻止しにきたつもりだろうが残念だったな。」
「それをフリーザ様が手にすれば再び宇宙の帝王へと君臨する……そして、そのおこぼれをオレ達に分け与えてくださるのだ。」
―――この場にフリーザが居る、だがそれはある意味では予想の範疇なのだ。この場に悟飯やベジータ達が姿を現した時点でそれらしき人物には検討が付いている。
だがフリーザ一味を知る者にとっては不可思議な現象なのだ、彼等は既に死んだ存在。それが今になって、異世界で彼等に出会うだなんて誰も予想はしなかっただろう。
照りつける夕日の光を吸収する悟飯の黒髪と瞳。だがその奥はフリーザの存在によって僅かに感情が揺れている。
(…なるほど、これで此処が襲撃された理由はわかった。そうなると、やはりあの邪悪な気の正体はフリーザ達か。だが、どうやってこの世界に……。)
「くっ…てめえの相手は後回しだ!まずはオレ達のポーズをバカにしたこいつ等からぶっ殺してやるぜ!!」
「…っ、こっちに来ます!」
「速い…!?」
瞬間、シャッハやなのは、フェイトは身の危険を感じて一気に張り詰めた表情へと追い込まれてしまう。一直線に向かってくるバータの本格的な殺気を浴びせられ体が動かず恐怖を心底感じ取り―――。
(怖い、たすけて…悟飯くん………。)
それは誰にも聞こえない、彼女(なのは)の心の叫び。それは決して誰にも届く事はなく耳にする事もなく消えていく儚い願いだが……。
「―――貴様等の相手はオレだと言ったはずだ。」
「なあっ!?」
「悟飯くん…!」
オレンジ色に塗りつぶされた瓦礫の山にいた筈の青年は何時の間にかなのは達とバータの間に立っており、彼の冷たい声が異常な精神的威圧を浴びせた。
バータは彼の声を聞くだけで呆気に取られてしまい全身が金縛りに合うような恐ろしい錯覚を覚えてしまうのだ。
「だあっ!」
「ぐえ―――っ!?」
「バータ…!?」
その錯覚を覚えていられるのは一瞬だけである、それらの感覚を吹き飛ばすような激痛がバータを襲う。彼の正面には腹部に肘打ちをする悟飯の姿。
抵抗する間もなく意識は朦朧とする、朧な視界内は必然的に強制遮断され暗闇だけが広がりその場に崩れ落ちた。
「あ…あああ……。」
「でやあっ!」
「がああ―――」
恐怖を抱くジースを睨み付けた悟飯は彼の背後を取り振り払うように手刀で首筋へと打つ、その動作は数秒という時間を必要としていない。その速度にジースでさえも気付く事すら叶わないのだ。
あまりにも圧倒的な戦力差、現実離れした戦場に呆然と見守り続けていた三人は勝敗が決着しても口を開く事はなくただその戦場を見据えている。
もはやベクトルが明後日の方角に疾走しているような、言葉にしづらい複雑な心境を持つだけであった。
「……終わったの?」
「い、一体彼は何を……?」
「突然、倒れたように見えるけど……。」
目に見える範囲に限定するなら、突然ジースが倒れたのだ。戦況を理解する為には脳の処理と現状を目視する事が必要だが彼女達は「現状を目視できなかった」。
だからこそ彼女達は突然彼が地面に倒れ付したように見える。そしてジースの背後に立ち尽くす悟飯の姿だけ。悟飯が何を行ったのか、ジースが何故倒れたのか、その原因が理解出来ない。
「もう大丈夫ですよ。」
地面に倒れた二人は動く気配も感じられない、だが命が絶たれた訳でもない。他の魔導師達と同様に気を失っているだけなのだ。そのまま彼等は静かに消えていく。
突然二人が消えた事に対して疑問を感じるが、脅威は去ったのでなのは達に微笑を浮かべる。その姿に思わずなのはは無意識に安静の笑みを露にしていたのだった。
悟天「こんにちは、悟天だよ!」
ヴィヴィオ「悟飯さんかっこよかったね!あっという間に倒しちゃったよ。」
フェイト「うん、悟天が強いのも頷けるね…。」
アインハルト「ですが、特戦隊はまだ一人残ってます。そして黒幕も…。」
なのは「はやてちゃん達が心配だな~。」
トランクス「次回DragonballVivid「フリーザ来襲!? 野望を打ち砕け孫悟空!」」
悟飯「お父さん!あとはお願いします!」