DragonballVivid   作:blacktea

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波乱の合宿編
第18話 力を取り戻せ! チビ達のドタバタ合宿修行


―――聖王教会襲撃事件から数週間後、飛行機内部のような構造を持つ室内でヴィヴィオ、アインハルト、コロナ、リオ、そして悟天とトランクスは座席に腰をかけ向かい合っていた。

ヴィヴィオ達は現在ババ抜きの真っ最中であり六人の中心位置にあたるテーブルの上で散乱している数多くのトランプカードがゲームの進行具合を物語っている。

 

 

「あっ! ババ引いちゃった!」

 

「ダメだよ、悟天くん!自分でババ言ったら….。」

 

 

襲撃犯について、悟空達について、語るべき事情は山ほどあると同時に内容は深刻極まりない異常事態その物。故に重くなった口を開く相手も限られてくる。

あの事件の真相を語った相手はクロノ等の身内の者だけ。全ての事を公に曝け出してしまえば、悟天やトランクス達はこの先どうなるのか全く想像がつかない、はやて曰く好転はしないとの予想まで付けられる始末なのだ。故に襲撃事件の真相は多くの事情を隠蔽した上で説明する事になった。

 

 

「バーカ、ババ抜きでジョーカーをバラすなんてマヌケだな悟天は。」

 

「先程トランクスさんも同じ事をしていましたが。」

 

「ねえ、それ終わったら今度は七並べしようよ。」

 

「さんせーい!ババ抜きばかりだと飽きるしね。」

 

 

そして悟空達は世間に知れ渡っていない間にトランクスと悟天を連れて元の世界に帰ろうと考えたがタイムマシンは故障して動けないとブルマに告げられ彼等は手詰まり状態。

仕方なくタイムマシンが再起するまで、襲撃問題が解決するまでなのは達と行動を共にしよう、という結論を付けて現在に至る。

 

 

「悟空さんも一緒に来れたらよかったのにね…。」

 

 

わいわいと騒ぐ六人を見守るような温かな視線を送るなのはは悟空の姿を思い浮かべて残念そうに呟く。特に悟天は自身の父が来ないと聞いてガッカリしただろうと彼女は想像していた。

悟空は襲撃事件の際にその圧倒的な戦闘力が買われ暫くの間、カリム達のボディーガードとして任用されたのだ。リインと親しい間柄になりつつある事とお礼も重ねて現在はやての家に居候中。

 

 

「仕方ないよ。父さんはカリムさんのボディーガードがあるし、最近は弟子ができたみたいでザフィーラさんと毎日稽古をつけてるらしいから。」

 

「にゃはは、悟空さんらしいね。」

 

「そういえば悟空さん、リインがすごく懐いていたよね…なにかあったのかな。」

 

「ふーん…リインがねぇ。」

 

 

悟飯はなのはとヴィヴィオの家に居候していた、当初は別の住居にする予定だったがなのはの勧めと悟天の説得により結果的にこうなったのだ。そしてフェイトもまたなのはの負担を考慮し彼女の家に引き続き住み込むという形になる。

ブルマはトランクスと仲の良いアインハルトの家へ、一人暮らしと耳にしてほぼ強引に承諾させてしまっていた。更にブルマはタイムマシンのパーツ提供を条件として管理局の手伝いを行う事に。

アインハルト曰く家に帰る事が少なく実質一人暮らしの日々で殆ど生活自体に変化は無いのだとか。たまにアインハルトとトランクスの修行に役立つ便利グッズをプレゼントしてくれるらしい。

 

しかし只一人、ベジータだけが詳細不明だった。彼は気が付けば集団から外れて姿を消していたのだ。ブルマ曰く何時もの事らしいので然程気にする者はいない。

 

 

「あの、ピッコロさん…食べないんですか?」

 

「オレは水以外必要ない…。欲しいのならお前達にくれてやる。」

 

「そ、そうですか?じゃあ遠慮なく……!」

 

「スバル! でも、水があれば生きられるだなんて凄いですね…。」

 

 

また別の所ではティアナ、ピッコロ、そしてスバルの姿。ピッコロに差し出された鮮やかに盛り付けられた弁当に一切視線は向けられず、毅然とした態度にティアナは多少の戸惑いを覚えながら彼の言う言葉に信じられない、といった風に素直な関心を示していた。

ピッコロはこの世界にやってきてから誰かの家に居候する事も無く孤独に放浪する日々を続けている。殆どベジータと近い状態だが時折連絡を取って現在のように悟天達を修行させる為に同行する事もあった。

 

 

 

 

 

「さーて、みんな到着だよー。」

 

「わあ~…すごく綺麗!」

 

「此処が、無人世界カルナージ……。」

 

 

彼女達が訪れた場所は無人世界カルナージ、その名の通り元々は人が住んでおらず代わりに豊かな大自然に包まれた世界である。太陽の光に照らされた緑の大地に吹き抜ける風と花弁、戦いとは無縁の穏やかな世界だ。

 

 

「無人世界カルナージか…自然が多くてパオズ山を思い出すな~。」

 

「よーし、悟天。合宿所まで競争だ!」

 

「うん、いいよー!ほら、ヴィヴィオちゃんも。」

 

「わわっ、悟天くん!?」

 

 

トランクスの声を合図に悟天は隣に居たヴィヴィオの腕を引っ張って地面を駆け出す、唐突な行動と予想以上の走行速度の速さにヴィヴィオはバランスを崩しかけながら。そして彼等の後方では小さく微笑む大人組の光景があった。

 

 

「三人とも元気いっぱいだねー。」

 

「元気有り過ぎだと思うけど……。」

 

「でも、三人とも合宿所とは反対方向に行っちゃったよ。」

 

「追いかけた方がいいかな……。」

 

「ヴィヴィオもいますから大丈夫ですよ、あたし達は先に行きましょう。」

 

 

こうして数十分後、彼女達が行き着いた先にはにこにこと微笑む二人の少女と女性。その二人の顔立ちは親子のように特徴が似通っていた。故に初対面である悟飯は思わずぱちぱちと瞬きさせながら二人の顔を見比べている。

 

 

「みんないらっしゃ~い♪」

 

「こんにちはー。」

 

「お世話になりま~すっ。」

 

 

好印象を与えさせる二人の笑顔、言葉、声になのはとフェイトは同じようにして微笑む。彼女達の姿を目にした途端、なのは達は一気に表情を明るくさせたように見えた。

実際にスバルやティアナ、コロナは知り合いのようにすぐに話が弾みだしたのだ。ルーちゃんと呼ばれた紫色の髪を持つ少女はリオや悟飯達を改めて柔らかな眼差しを向ける。

 

 

「初めまして、ルーテシア・アルピーノ…ヴィヴィオの友達で14歳です。リオは直接会うのは初めてだよね。」

 

「今までモニターだったもんねー。」

 

 

うん、モニターで見るより可愛いと言いながらリオの頭を撫で下ろすルーテシア。それに対してほんのり紅くするリオ、その会話は親密さを感じさせ非常に微笑ましい雰囲気が彼女達を包み込んでいる。

 

 

「ところで…こちらは?」

 

「あ、ボクは孫悟飯です。」

 

「…ピッコロだ。」

 

「孫悟飯さんにピッコロさんね。」

 

「そして悟飯くんはわたしの旦那様なんだよ。」

 

「…え!?」

 

「なのはさん結婚したんですか!?」

 

「結婚かぁ~。」

 

「じゃあ、悟飯さんがヴィヴィオのお父さんになるのかな?」

 

「え、あ……いや、その……。」

 

 

自己紹介を終えた直後になのはの爆弾発言を聞くと、一瞬だけ間を置いてようやく理解できた悟飯は拍子抜けな声を上げた、同時に本気にしたスバルやリオとコロナの声を耳にしてはなのははくすくすと小さく笑う。

果たしてどう反応するべきか、彼の反応を面白がっているのかルーテシアはまじまじと見つめつつ。対して彼は誤魔化すように苦笑いをして。

 

 

「なのは、悟飯が困ってるよ……。」

 

「…スバル達まで勘違いしてますし。」

 

「にゃはは…ごめんね、さっきのは冗談だから。結婚もまだしてないよ。」

 

「あ、そ、そうなんですか……あははは。」

 

「うふふ、ルーテシアの母メガーヌ・アルピーノです。よろしくね、悟飯くん、ピッコロさん。」

 

「よろしくお願いします、メガーヌさん、ルーテシア。」

 

「それとお嬢、こっちが前に話をしていたアインハルトだ。」

 

「アインハルト・ストラトスです…。」

 

「アインハルトね、ヴィヴィオから話は聞いているよ。よろしくね……そういえば、ヴィヴィオが見えないけど…。」

 

「あ、ヴィヴィオは……。」

 

 

リオは歩いてきた道へと視線を向ければルーテシアは疑問符を浮かべてリオと同じように視線を向ける、其処には薪を両手で抱えるエリオとキャロの姿。

彼等はヴィヴィオ達の知り合いであり同時にはやてを先頭に機動六課に所属していたメンバーでもあるのだ。二人は懐かしいメンバーを目にして明るい笑顔を覗かせる、同時に二人の背後を追いかけるように姿を現す三人は―――。

 

 

「「おつかれさまでーす!」」

 

「エリオ、キャロ…!」

 

「な、なんとか戻ってこれたぁ~……。」

 

「ヴィヴィオ!」

 

 

フェイトはエリオとキャロの姿に笑顔を浮かべて、背後を追いかける悟天、トランクス、ヴィヴィオの姿に悟飯達は視線を注ぐ。

本来なら三人は此処とはまた違う方向へと走り出している、キャロ達と行動を共にしているのが妙な風景としてフェイトたちには写っていた。

 

 

「お前達、何処に行ってたんだ。」

 

「ははは…ちょっと道に迷っちゃって。」

 

「それでキャロさん達を見つけてここまで案内してもらったんです!」

 

「初めまして、エリオ・モンディアルです。」

 

「えっと、キャロ・ル・ルシエと飛竜のフリードです!」

 

 

何処かのファンタジーに出てきそうなフリードと呼ばれた真っ白な竜は嬉しそうに鳴き声を上げる。

 

 

「よろしくエリオ、キャロ。ボクは悟天の兄の孫悟飯、それと悟天達が迷惑をかけたみたいでごめんね。」

 

「あ、いえ。全然気にしてませんよ。」

 

「うわあっ!? ははは、くすぐったいよフリード~。」

 

 

自身の翼を羽ばたかせて小さな竜は宙を浮遊して悟天の頭の上へ、決して重くは無い体重が頭上に掛かって思わず悟天は笑い声を上げた。

悟飯の心配事の一部は今、目の前で起きている事であり予想通りの展開に何とも言えない気持ちを胸の中で滲ませている。

 

 

「ところでフェイトさん。こちらは…?」

 

「まだ紹介していなかったね? 彼女はヴィヴィオのお友達の……。」

 

「アインハルト・ストラトスです、よろしくお願いします。」

 

「ちなみに一人ちびっこがいるけど三人で同い年!」

 

「いっ、1.5cmも伸びましたよ!?」

 

「…………?」

 

 

わあわあと騒ぐ四人に囲まれたアインハルトは不意にそれ以外の気配に気が付く、脳を刺激する違和感にも似た何か。それを探るようにアインハルトは周りを見渡してその正体を探り始めていた。

だがそれは悟天とトランクスも同様に、その対象を探り出す。視界に留まる範囲内にそれは居ない、背後を振り返ってその先を見れば黒い人型の何かが―――。

 

 

「…ッ!?」

 

「あー!ごめんなさいっ、大丈夫です!!」

 

 

咄嗟に構えを取ったアインハルトを目にしたヴィヴィオは慌てながら論す、トランクスもまた彼女と同じ行為をやっていただけにヴィヴィオの言葉には目を丸くした。

黒い人型の何か、それはどんな生き物にも属さない異型の存在で静かに構えを取る三人を見据えている。不思議とその視線は敵意ではなく、寧ろ紳士的な穏やかさを感じさせるのだ。

 

 

「私の召還獣で大事な家族、ガリューっていうの。」

 

「し、失礼しました…!」

 

「え、え~と…ごめんなさい。」

 

「クリスも驚いてたよね?」

 

 

ガリューと呼ばれた召還獣をよく観察していれば背に大量の魚が入った籠を背負っていた、アインハルトはそれが改めて目に入った事もあり戸惑いと共にルーテシアへと深く頭を下げる。後にトランクスも続いて。

そんな中でどさくさに紛れて宙を浮遊する小さな兎もガリューを見て困惑しており、今は頭を下げ続けるその姿にヴィヴィオの苦笑と言葉を買っていた。

 

 

「ボクは孫悟天だよ。よろしくね、ガリュー!」

 

 

頭上にフリードを乗せる悟天は一歩近付いてガリューと挨拶を交す、邪気の無いその行動はガリューにも通じた様子で胸元に手を置いて軽く頭を下げた。

その行動は紳士的で同時に暖かさを感じ、外見との奇妙なギャップも相まって印象深い。悟天と逸早く打ち解けそうな対面でもあった―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたしいっちばーん!!」

 

「あーリオ、ずるーいっ!」

 

「ボクもボクも~~!!」

 

 

水辺の音が響き渡るロッジ裏、だがアインハルトは困惑して途方にくれている。大人組はトレーニングがあるという事もあって別行動、子供組は川遊びという方向性で決まったものの各反応は十人十色。

リオが一番真っ先に水辺へと駆け出して追いかけるようにヴィヴィオと悟天は後を追う。コロナとルーテシアはそんな三人を微笑ましく一歩出遅れながら水辺へと走り出して、トランクスは呆れたように子供だなぁと口にして遠くから眺めている光景である。

 

 

「トランクスくーん!アインハルトさんー、二人とも来てくださ~い!!」

 

「ほれ、呼んでるぞ。」

 

 

水の中に入る四人は水掛け等をして遊び始める中、ノーヴェは二人が行くように施す。トランクスは面倒臭いと言わんばかりの表情で未だに目立った反応を見せないアインハルトへと声をかける。

 

 

「はいはい。いこ、アインハルトちゃん。」

 

「で、ですが私はできれば練習を……。」

 

 

アインハルトは遊びに来た訳ではない、修行を目的として足を運んだ彼女にとって川遊びをする必要性は全く感じられずしようとも思っていない様子だった。

困惑の色を深める彼女にノーヴェは口元を緩ませて言葉を投げる、それを耳にした彼女の顔色は困惑ではなくある種の期待に混じる不安という複雑なものへと変化していた。

 

 

「まあ準備運動だと思って遊んでやれよ。」

 

「あ、アインハルトさん!トランクスくん、どうぞー!」

 

「気持ちいいよ~。」

 

「で、ですが……。」

 

「それに、あのチビ達の水遊びは結構ハードだぜ?」

 

 

理解が出来ず反応に困った様子で、ヴィヴィオ達の誘いに断りを入れる訳にもいかずアインハルトは渋々羽織っていた上着を脱ぎ捨てて水辺へと足を運んだ。

ヴィヴィオ達の水遊びはハードだと言うノーヴェの言葉は果たして何を意味するのか、水中に体が触れてひんやりとした感触が伝わりながら彼女は進んでいく。

 

 

「トランクスくん! 向こう岸まで競争しようよ!」

 

「さっきの続きだな。いいぜ、負けたら昼飯のおかず一個よこせよな。」

 

「じゃあ向こう岸までの往復、みんなで競争ーッ!!」

 

「お~~~っっ!!」

 

 

コロナの言葉が合図となって一斉に向こう岸を目標として泳ぎ出す、水が無数に弾ける音が響いて見守るノーヴェを関心させた。始まったか…と声に出さない心境を抱きながら。

 

 

(あれ……みんな、早い…!?)

 

 

単純な経験差か、稀に見る才能の差か。アインハルトはヴィヴィオ達と段々と距離を離している事に気付いて彼女は泳ぐ速度を何とか速めようと体力を振り絞る。

しかし先頭に立つ二人だけはある意味で予想通り、圧倒的な速度を持って進んでいた。二人を中心に巨大な水柱を巻き起こして波紋が広がり波は荒れ始めている。

 

 

「……あいつ等は別だ。」

 

 

真っ先に向こう岸に辿り着いた二人を眺めてノーヴェは呆れたように呟く、だが反してアインハルトはヴィヴィオ達に違和感を抱いていた。それはただ単純にアインハルトが思っていた以上にヴィヴィオ達の泳ぎは速い、ただそれだけの事。

だがアインハルトがどう足掻いてもヴィヴィオとリオ、コロナの距離は縮まらない。寧ろ遠くなっているのではと感じさせる、想像以上の持久力と瞬発力を目の前に彼女は唖然とした心境で泳ぎ続ける。

 

 

(みなさん本当に……その…。)

 

 

トランクスと悟天は置いておくとしても残りの四人だけは理解する事が出来なかった、結果は二人が互角で後にルーテシアとヴィヴィオ、リオにコロナが続いていくという物。

彼女の努力も虚しく順位を覆す事が出来なかった悔しさと疑問が胸に溢れる。そして想像以上にアインハルトの体は疲労が蓄積している事に気付いたヴィヴィオの奨めで一度、岸に上って休憩する事にした。

 

 

「……元気、すぎる。」

 

「やっぱり水の中は慣れていなかったんだな。」

 

 

降り注いだ声の主を碧銀の髪を揺らして見上げるように振り替える、同時にクリスからタオルを渡され彼女はそれを受け取りつつ。

 

 

「体力には少しは自信があったのですが……。」

 

「いや、大したモンだと思うぜ。」

 

「……どういうことですか?」

 

「あたしも救助隊の訓練で知ったんだけど、水中で瞬発力を出すにはまた違った力の運用がいるんだよな。…いっておくがあいつ等は例外だ。」

 

 

納得するようにアインハルトは水飛沫が舞う水辺へと視線をうつす、先程の経験でそれを痛感した彼女にとってノーヴェの言葉はすぐに飲み込めたのだ。

 

 

「じゃあ、ヴィヴィオさん達は……。」

 

「なんだかんだで週二くらいか?プールで遊びながらトレーニングしてっからな…柔らかくて持久力のある筋肉が自然に出来てんだ。」

 

「…そういうことでしたか。」

 

「どーだい、ちょっと面白い経験だろ?何か役に立つ事があれば更にいい。」

 

「はい……。」

 

 

疑問が残るのは悟天とトランクスだが、彼等は元々人種が違えば暮らしてきた環境が違う。重力での修行を思い出せばそれは明白、改めて彼女は自身の世界の狭さを思い知らされる経験となっていた。

だが彼女の表情は一向に変化しない為に他者が内側の感情を読み取るには至難の業だろう、それでもノーヴェは臆する事も無ければ何か思い付いたように言葉を投げる。

 

 

「んじゃせっかくだから面白いモンを見せてやろう、ヴィヴィオー!リオ、コロナ!! ちょっと『水斬り』をやってみせてくれよ!」

 

「「「はぁーーーいッ!」」」

 

 

呆然とするアインハルトを前にコロナとリオ、そしてヴィヴィオは一旦体を静止させ構えを取る。拳を打ち出す直前―――水中は穏やかな波を取り戻して静けさが漂う。

 

 

「水斬り……?」

 

「ちょっとしたお遊びさ、おまけで打撃のチェックもできるんだけどな。」

 

「―――えいっ!!」

 

 

静寂を打ち破るようにリオは水中で拳を放つ、本来なら速度は落ち緩やかな衝撃しか持たない拳は力の運用一つでこうも変わるのかとアインハルトは目を見張った。

真っ直ぐに腕を突き放した先に巨大な水柱が発生したのだ、エネルギーが前方に集中している事がよくわかる光景で同様の行為をコロナもやって見せる。

 

 

「いきます!!」

 

 

腰を屈めてヴィヴィオの拳が一気に水中を打ち抜いて巨大な水柱が迸る、水飛沫と共に発生したそれは誰よりもエネルギーが一番に前進していた。

 

 

「アインハルトも格闘技強いんでしょ?試しにやってみる?」

 

「はい…!」

 

 

彼女に断る、迷うという感情は一切入っていない様子で頷く。その瞳には確かに明確な感情が込められ真剣そのものだ。

再び水中に入り冷たさが全身に伝わる、だが気にする様子も無く穏やかな水辺を歩いていく。トランクスと悟天も関心を寄せて視線が彼女を捉える。

 

 

(水中じゃ大きな踏み込みはできない……。)

 

 

緩やかな動作と共に水は小さく音を立てる、拳を突き出す体制一つ取るだけでもアインハルトを思考させた。通常の動作では上手くいかない事は明白なのだ。

彼女なりに思考して彼女なりの手法で行う。先程の水泳の事もあって具体的な力の運用はある程度把握している、それを持って―――。

 

 

(抵抗の少ない回転の力で、できるだけ柔らかく…!)

 

 

拳を打ち出す、水を斬る。やがて発生するのは巨大な水柱――だがアインハルトが起こした水柱は自身が想像した物と少し違っていた。

 

 

「あはは、すごい天然シャワー!」

 

「水柱、5メートルくらい上がりましたよ!」

 

「………あれ?」

 

 

水柱自体はヴィヴィオが起こした物以上、力が前方に集中している事は明白。だが今シャワーのように雨が降る光景は力が前進していない証拠、それをアインハルトは既に勘で理解している。

 

 

「お前のはちょいと初速が速すぎるんだな。」

 

 

水中へと足を運び始めたノーヴェの言葉が引っ掛かるようにアインハルトは虹彩異色の瞳を向ける、悟天とトランクスは好奇心を孕んだ瞳でノーヴェを見据えながら。

 

 

「初めはゆるっと脱力して、途中はゆっくり……。」

 

 

構えを取る、その構え方はアインハルトやヴィヴィオとは少し違うが確かな構えを取る。

それは足蹴りの類、一度決闘を申し込んだアインハルトにとって何処か見覚えのある構え方なのだ。

 

 

「―――インパクトに向けて鋭く加速!これを素早くパワーを入れてやると!」

 

 

水中で脚を蹴り上げる、水音を奏でた直後…巨大な噴水のように水柱が上空を突き抜け、地底が目に入る。これまで見てきた物の中で一番強烈な類だった。

再びアインハルトは姿勢を取って手本を脳裏に想像する。腰を低く出来るだけ全身の力を抜く、リラックスするように充分に力が抜けた瞬間を狙う。

 

 

(……構えは脱力…途中はゆっくりインパクトの瞬間だけ……。)

 

 

腕を曲げて前方を見据え、一気に腕を突き出す数秒間…先程まで抜けていた力を一気に蓄積させ前方へと集中させる、それはまるで…。

 

 

(―――撃ち抜く!)

 

 

撃ち抜くように放つ、掴めない水を斬る。先程とは違う確かな手応えが一気に前進に伝わって巻き起こす。

 

 

「すごい、さっきより凄く進みましたよ!!」

 

「思った以上だな、こりゃ。」

 

 

アインハルトが撃ち抜けた先には道が出来ていた、5メートル以上に迸る水柱と力が駆け抜けた痕跡が色濃く反映されており、自身の想像以上の出来にアインハルトは静かに見据える。

無邪気に感心するヴィヴィオと素直に驚いた感情を見せるノーヴェ。コツを掴んだ瞬間に一回目とは出来が違いすぎる、完璧に水斬りをアインハルトは習得していたのだ。

 

 

「面白そうだな! 悟天、オレ達もやってみようぜ!」

 

「うん!やろうやろう!!」

 

「ちょっ、まておい!お前等がやったら……。」

 

 

 

「「―――はあっ!!」」

 

 

―――非現実的な光景は稀だろう、だがそれが日常茶飯事のように巻き起こっている現状にノーヴェは思わず顔に手を当ててやっちまった…と頭を悩ませてしまった。

ヴィヴィオ、リオ、コロナ、そしてアインハルトは言葉に出ない様子で呆然とその現場を眺める事しか出来ず、いや対処する事も出来ないだろう。ルーテシアは寧ろ理解に苦しんでいる程だ。

 

撃ち下された悟天の拳と蹴り上げられたトランクスの脚が互いに集中作用して水辺だった其処は只の地面と化し、存在していた水は一気に天高く突き抜けていく――残されたのは無数の魚だけである。

 

 

 

「おい、今すぐ逃げるぞ!!」

 

「ふえぇぇぇ~~っ!?」

 

「悟天くん、トランクスくんやりすぎー!!」

 

「水が落ちてくるー!?」

 

「ルーテシアさん、早く…!」

 

「……えっ? あ、うん!」

 

 

天高く飛来するそれは滝のように地面に向けて落下し出す、それを見計らってノーヴェの指示と共に岸へと上がり始める中で悟天とトランクスは呆然と全員の反応を眺めているだけだった。

まるで意味が分からない、といった風に。突然騒ぎ出したノーヴェ達に悟天とトランクスは疑問を抱いた様子で一切動作を起こす事も無く…。

 

 

「あれ? 水がなくなっちゃった…。」

 

「なんでみんな慌ててるんだ?」

 

 

トランクスと悟天、二人の視点はノーヴェ達の視点と異なっている。ノーヴェ達の視点は悟天とトランクスの水斬りによって水が天高く上空を飛来する様を捉えているが二人は違う、水斬りをしたら水が無くなった。たったそれだけなのである。

故に影が濃くなりつつある光景を理解する事が出来ず、ふと上空を見上げてみれば滝が飛来する状況下であり悟天とトランクスはようやくそこでノーヴェの意図が理解できたのだ。

 

 

「二人とも、早く逃げて~~!!」

 

「「わわわわあっ!?」」

 

 

―――ヴィヴィオは叫ぶ。既に二人は化け物レベルで水斬りを習得していた、物事は何事もバランスであり度を越せば支障をきたす。そして数分後、二人がノーヴェにこっ酷く叱られたのは言う間でもない出来事である。

 

 

 

 

 

アスレチックフィールドの一角、晴天に包まれた其処でトレーニングの真っ最中といった風になのは達と悟飯は熱心に訓練を続けていた。

山麓に位置するせいか其処から見下ろす景色は絶景とまでは呼べないが殆どが視界に入る程だ――故になのはは其処で目にした光景を疑っている。

 

 

「……あれって。」

 

「な、何なんでしょうかあれ!?」

 

「あいつらめ……また何かやりやがったな。」

 

 

滝、しかもそれは遥か上空から流れ出て虹を描いており、あまりにも不可解な光景だった。なのはの隣に居るスバルはそれを目にして慌て出しピッコロは至って取り乱すことなく呟いている。

水斬りによって巻き起こされた現象は遠方に位置するアスレチックフィールドからも視認する事が可能だ。それ程に二人の水斬りのレベルが物語っている。

 

 

「ところでみんなは大丈夫ー? 休憩時間延ばそうかー?」

 

 

なのはは崖越しに覗いてみれば案の定、登り切れずに息を切らす他メンバーの姿が視界に入り込む。

疲労困憊で限界に近い様子を察して言葉を投げてみれば大丈夫でーすという精一杯な体力を振り絞って大声を発すティアナと息切れ気味にバテてなんかいないよ…と説得力の無い言葉を口にするフェイト。

 

 

「よっ、ほっ…と。」

 

「す、凄いね……そんな錘をつけて何週もできるなんて。」

 

「わたしじゃ絶対無理ですよ~…。」

 

「あはは、ホントにねぇ……。」

 

「悟飯さんを見てると僕も負けられないな……。」

 

 

悟飯は両腕に超重量の鋼鉄の腕輪を装着し、更に足首にも同様の腕輪を嵌めてロープを伝って何週も山を登っていた。

ジャージ姿の悟飯を見上げて関心するティアナ、フェイト、キャロは進むスピードも徐々に遅れ気味なのに対し悟飯に感化されたエリオはスピードを落とさず残り少ない体力で上り詰めようとしている、とはいえ三人と距離がそれほどある訳ではない。

 

 

「そういえば、悟飯さんが付けてる錘はどれくらい重いんですか?」

 

「全部で1トンだ。」

 

「…………ええっ!?」

 

「やっぱり凄いな、まだ体力があるみたいだし。」

 

 

登る速度も大して変化は無い、疲労の様子も見せない、まだ継続する気配さえ感じさせる。生き物なのかと疑う程の限界を突破した体力、人種の違いを思い知らされるそれは驚愕に値した。

その様子を眺めていたなのははハッと何か思い浮かんだように表情を一変させて丁度良く彼女が居合わせる地点にまで辿り着いた悟飯に早速足を運んで、一声かける。

 

 

「…悟飯くん、ちょっといい?」

 

「ん? どうしたの?なのはちゃん。」

 

 

それは将来を見据えて、隊員がどんな過酷な場面に遭遇しても折れないように、そんな策の一つを彼女は提案した。

 

 

「あとで気の使い方とかを皆に教えてくれないかな…色々と役に立つと思うし、必要な場面も多くなってくると思うからね。」

 

「わかった。ちょうど午後から悟天達と気の訓練をするからその時に…。」

 

「ありがとう、悟飯くん!わたしも手伝うから…!」

 

 

笑顔を覗かせてそれは約束される、そして再び訓練が続行され昼の時刻を指す頃合いになるまで穏やかな時が流れるのであった――――。




悟空「オッス!オラ悟空!! 悟天たち楽しそうだな。オラも行きたかったぞ~。」

シャッハ「悟空さんには騎士カリムのボディガードがありますからね。」

カリム「…すみません悟空さん。家族と過ごす時間を私の為に使わせてしまって。」

ザフィーラ「悟空、そろそろ時間だ。」

悟空「次回DragonballVivid「悟空も仰天? 弟子と宇宙海賊とマテリアル」」

???「師匠!稽古をお願いしますッ!」
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