DragonballVivid   作:blacktea

21 / 30
第19話 悟空も仰天? 弟子と宇宙海賊とマテリアル

―――悟天やヴィヴィオ達がカルナージへ向かった頃、午後からのカリムの護衛役を控える悟空はミウラに稽古を付ける為に道場へと出向いていた。

 

 

「たああぁーっ!!」

 

「いいぞ! 動きにムダがなくなってきた。」

 

 

八神はやてが主宰する八神家道場に通う一人の少女、ミウラ・リナルディという少女はザフィーラを師匠にインターミドルチャンピオンシップ、即ち格闘大会に向けて修行の日々を送っている。

他にも大勢の生徒が八神家道場に通っているが朝から早く顔を出していたのはミウラのみ、大会の件もあって気合の入る彼女を横から見ていた悟空は強くなる見込みを感じてその実力をもっと上へ伸ばそうと今に至るのだ。

 

 

 

「ジャン拳―――ッ!!」

 

 

 

よって、結果的に悟空の持つ技術をミウラが受け継ぐ事になる。その技術はミウラにとってどれを取っても新鮮な物ばかりで習得するのに時間を要する物だったが今はこうして行使する段階にまで上り詰めていた。

 

 

「パー!!」

 

「―――!?」

 

 

ミウラは腰を屈めて真正面から悟空に対峙する、声に出した言葉とは裏腹に動作は拳を握り締めて軽く跳躍して一直線に顔面へと狙いを定める。

故に、一瞬だけ悟空はミウラの言葉を鵜呑みにして誤認してしまうがそれでも攻撃は許さずミウラの拳を手で握るように受け止めてしまう、ミウラはこれ等の動作に少し自信があった為か防がれた事に驚き瞳を見開いてそれを見据えていた。

 

 

「あぶねえあぶねえ…もう少しで引っかかるところだった。」

 

「うう、これならいけると思ったのに……。」

 

「考えたなミウラ、今のはなかなかよかったぞ。」

 

 

悟空の技術を習得した上にアレンジを加え、完璧に応用できる形になった証拠が先程のフェイントである。ミウラは褒め言葉に満面の笑顔を覗かせた。

 

 

「はいっ、ありがとうございます師匠!」

 

「よし! じゃあ次は「…少しいいか?」ん? どうしたんだシグナム?」

 

 

凛とした聞き覚えのある声、出入り口へと二人が視線を向ければ財布と小さな用紙を片手に持つシグナムの姿だ。きょとん、と目を丸くして二人は彼女へと振り向く。

 

 

「邪魔して悪いな…すまないが、買い出しに行ってほしいのだが。」

 

「え? 買い出しははやてが行くんじゃねえのか?」

 

「主は仕事でな、私や他の者もどうしても外せない用事がある…。」

 

「あ、だからザフィーラ師匠は休みだったんですね。」

 

「わかった!このメモに書いてあるのを買ってくればいいんだな。」

 

「でもこんなに買うんですか?」

 

「ああ…たのんだぞ。」

 

 

今、はやて家の冷蔵庫は空っぽに等しい程、何も入っていない状態だ。昨晩、悟空が食べ尽くした事に他ならず皆が唖然とした顔色で悟空に注目していたのは最近の出来事である。

彼はミウラとの修行を切り上げて早速買出しへと出掛けていく。メモ用紙にはニンジン、ピーマン、ジャガイモ――という具合にスーパーに行けばよく目にするであろう名前が並んでいるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「わりいなミウラ。おめえまで付き合わせちまって。」

 

「全然大丈夫ですよ師匠! はやてさん達にはいつもお世話になってますんで!」

 

「そっかあ。でも、なんでリインまでいるんだ?」

 

「今日は休みだからですよ、それに前に悟空さんが買い過ぎたから見張ってるんですぅ!」

 

 

むっ、とした顔色で悟空の頭上で呟くリイン、以前に悟空はスーパーへ買い物に出向いた際に必要以上の商品…主に食品を購入し財布を空っぽにされ、はやてが頭を抱えたトラブルがあったのだ。

悟空の食事問題を元の世界ではどうしていたのか、彼の隣で歩くミウラは呆と思考を続けている。更に日頃から道着服を着込む悟空が珍しく私服を着込んでいる事に不自然さを感じてミウラは眺めるように悟空を見据えていた。

 

 

「いや、あん時ははやてがたくさん食いもん買ってこいって言ってたし…。」

 

「だからって財布が一円も無いのはどういうことですか! 言い訳は聞きたくありませんっ!」

 

 

言い合いが始まる二人を眺めてミウラは続けていた思考を切り離して苦笑を浮かべる。喧嘩するほど仲が良いという言葉を実感させられる風景―――だが彼女は唐突に表情を一変させた。

 

 

 

「……ば、爆発ーっ!?」

 

 

 

街中を襲う爆音、窓ガラスの破片が悟空達の目の前で飛び散り人々は騒ぎ出す。一気に騒然とした雰囲気に成り代わり戸惑いの顔色を浮かべてミウラは爆音が聞こえた方角へと視線を向ける。

 

 

「―――この気はフリーザ!?」

 

「ご、悟空さん!?」

 

 

張り詰めて険しい表情を見せたのも束の間、突然浮遊して直行する悟空に迷いは無かった。頭上のリインは引き離されないようにしっかりと掴まりながら驚いた声を上げる。

それは一瞬の出来事で気が付けば悟空が隣に居ないという事実にミウラが気付くまで数秒程の時間を要していた。

 

 

「フリーザ……って誰ですか? あ、待ってください師匠~~!!」

 

 

空を見上げて遠方を飛行する悟空が目に入りミウラは慌てて人ごみを避けながら走り出す。途中で怪物がいるぞー!等の奇妙な悲鳴を聞きながら彼女は悟空の後を追うのであった――。

 

 

 

 

 

 

 

 

「とぼけてもムダだよ。さあ、早くその欠片をボクに渡すんだ。」

 

「なんで僕達がこんな目に合わなきゃならないんだよ~!!」

 

 

追い詰められ成す術も無く眼前の怪物を睨み付ける青髪の少女と茶髪の少女と銀髪の少女、到底人間だとは言いにくい容姿の持ち主は口元を歪めて彼女達を見据えている。

人々は先程の爆発と怪物が原因で彼女達の周辺にはすっかりと消え伏せていた。だがそれが目に入る程、彼女達にも余裕は持っておらず眼前の危機的状況に冷や汗を流している。

 

 

「くっ、我等の最大魔力を持ってしても傷一つ付けられんとは…!」

 

「彼等は何者なのでしょうか…。」

 

 

―――焦りを滲ませ苦々しく表情をゆがめる闇統べる王(ロード・ディアーチェ)、そして彼女の隣に並ぶ星光の殲滅者(シュテル・ザ・デストラクター)。後者は依然として表情は変化していないが心境は闇統べる王と同様だろう。

そして感情豊かに不満をぶつける青髪の少女、雷刃の襲撃者(レヴィ・ザ・スラッシャー)は眉を顰めて敵である怪物へとハイライトの無い紫色の瞳が射抜いていた。

 

 

「へっへっへ、死にたくなければ大人しく言う事を聞いた方がいいぜ。」

 

「欠片ヲ渡セ。」

 

「…わかりました、欠片をお渡しします。その代わりに私達を見逃して頂きたいのですが。」

 

「くぅぅ……!!」

 

 

このままでは怪物に殺されるのが関の山、星光(シュテル)は思考を走らせた結果を口にする。だがそれは王(ディアーチェ)にとっては屈辱と苦痛以外の何者でも無い様子で更に表情を歪ませる、プライドの高い彼女にとって現状は窮屈極まりない。

 

 

「うん、いいよ。欠片さえ渡せば君達を見逃してあげる。」

 

「では……。」

 

 

青紫の頬を緩ませ満面の笑顔を浮かべる怪物、チルド…彼は本来生きた世界に存在しない。

星光から受け取った欠片を見下ろし様にチルドは瞳に写す、煌びやかに輝く蒼色の光は宝石に引けを取らない程の美麗が伴っている。――そしてより一層、チルドは不気味に笑みを深めた。

 

 

「ふっふっふ、これで欠片が三つ揃ったね…もう君達は用済みだから死んでいいよ。」

 

 

無表情のままシュテルはたじろいで後退りする、不気味な程の笑顔は消えて途方もない殺気が彼女達へと放っている。

同時にチルドの部下が足を踏み出していく、彼女達の力量では戦闘に持ち込んだ所で勝てる見込みは殆ど無い。故に、死は間近に迫っている。

 

 

「そんなぁ~!!嘘つきぃぃ~~~ッッ!!!」

 

「先程の話と違います……!」

 

「おのれおのれおのれぇぇ…!! 此処で終わる訳にはいかぬ…!!」

 

「ひゃははは!じゃあね~。」

 

 

此処で彼女達が魔法を唱えた所で意味は無い。彼女達には魔法を唱える余裕も与えられない、抵抗と呼べるだけの動作や行動はチルド達に出会った事で既に封じられたような物である。

―――すまぬ、ユーリ…ディアーチェの言葉は心の中に留めて決して声にする事はなかった。やがて迫る攻撃を受け入れるのみ、そう意に決した直後だ。

 

 

 

 

 

「なんだお前は!」

 

「何処から現れた…!!」

 

「ま、間に合ってよかったですぅ…!」

 

 

彼女達に突然広がった光景―――、それは目の前に現れた黒髪の男が部下の攻撃を両拳で防ぎ切っていたのだ。

 

 

「えっ?」

 

「あなた方は………。」

 

「な、何が起きたのだ…!」

 

「皆さん、もう大丈夫ですよ!」

 

 

現状に至るまでの過程が一切視界に入らない王達は呆然とその状況を受け入れるしか対応できず、頭上に居るリインはそんな彼女達を振り返り様に見据えて笑顔を見せた。

だが一方で黒髪の男、孫悟空はチルドの顔を見て驚愕する。彼は人違いをしてたのだ、自身が想像した人物と共通点は多く類似した人物だがよく見てみればそんな事は無い。

 

 

(フリーザじゃねえ……けど、フリーザに似てる…。)

 

「おやおや、このボクに刃向うバカがまだいたとはね……なっ!?」

 

 

悟空と同様にチルドも男に驚愕していた、男の黒い髪と髪型、目付きや顔付きを忌まわしそうに表情を歪めていく。

それ等は部下にも、わかりやすい程に動揺という名の波紋が広がっていた。だがその原因を悟空達には知る由も無い。

 

 

「チルド様、こいつは…!!」

 

「まさか…バーダック……。」

 

「バーダック? 違う、オラは孫悟空だ。」

 

「孫悟空だと!? バーダックじゃないのか…。」

 

 

先程まで動揺を露にしていたチルド達は一変して冷静さを取り戻し安堵した様子で、傲慢な態度と共に口にした。

 

 

「どうやら別人みたいだね、よく見れば服装も違うようだし。」

 

「おめえ達は何者だ!!」

 

 

叫ぶように、威圧感の篭った声が響き渡る。それに対しチルドは意に介した様子も無くただ鼻で笑って見せた。口角を吊り上げて嘲りを含んだ視線を悟空達に浴びせれば彼は息を吸い込み、大声で豪語する。

 

 

「ボクは宇宙海賊のチルド様さ。さっきはよくも驚かしてくれたねえ。お礼に殺してあげるよっ!!」

 

 

途方も無い殺気を放ったのも束の間―――刹那にチルドは間合いを詰めて悟空の眼前に現れる、その動作は超人的速度であり視界に収められた者は誰一人として居ない。

チルドには疑い様の無い自信が根底にある、悟空達を圧倒できるという傲慢にも似た自信が存在するのだ。故に悟空へと放たれた拳による一撃が軽々と防がれた事実がどうしようもなく気に食わない。

 

本気の一撃という訳では無いが手を抜いた訳でも無い、だが微動に変化しない悟空の表情を目にしていれば不思議と背筋に悪寒が走る、チルドはこの一撃だけで冷や汗をかき始めていた。

 

 

「だだだだだだっ!!」

 

 

――――眼前の男は危険である、本能的警告を無視するように次々と無造作に撃ち出す拳。だがそれも余裕を持った様子でパシンッという軽快な音と共に全てが防がれていく。

現状が理解出来ない、といった風に攻撃を止めないチルドは精神的に追い詰めらていく気味の悪さも感じている。不気味極まりない眼前の存在、それがあの昔の記憶を呼び覚まして止まない、黒髪と目付きと顔付き…チルドにとっては忌々しい事この上無い。

 

 

「はぁ…はぁ…少しはやるようだね。」

 

「……今のでおめえの力量はわかった、おめえじゃオラには勝てねえ。」

 

 

悟空の一言でチルドの部下は騒然とした雰囲気となり次々と口走る。あのチルド様が…、信じられないと言いたげに騒めく。反してチルドは悟空の言葉に不愉快そうに眉を顰めて額に青筋を浮かび上がらせて言い放った。

 

 

「ボクが勝てないだと…ふざけるなっ! ボクは宇宙海賊チルド様だぞ!! こうなったらボクの本気を見せてやるっ!!」

 

 

不気味な悪寒も忌々しい記憶も、刹那に芽生えた相手への畏怖や戦慄も全て振り払うように宣言するチルド。だが悟空にとっては負け犬の遠吠え程度の取るに足らない宣言だ。

チルドは拳を握り締める、握り締めた物は先程シュテルから奪い取ったロストロギアの欠片。それ等を三つ、憤怒を巻き上がらせながら体内へと吸収していく。

体内に吸収された欠片は皮膚の表面に現れながらも―――チルドの持つ気は肥大していく。

 

 

(―――!? この邪悪な気はフリーザの時と同じだ…もしかしてあのカケラは…。)

 

「ご、悟空さん、大変ですぅ!」

 

 

背後のリインが慌てて声を上げる、悟空は視線だけを向けて彼女の言葉に耳を傾けた。

 

 

「もうすぐ管理局員が来ます…!」

 

 

表情は微動に変わらない、だが眉がぴくっと動いた様子を見逃す程リインは盲目ではない。未だに膨れ上がるチルドの気を静かに見据える悟空は先程の発言で余裕を失った様には見えない。

だからこそ、ディアーチェ達は彼の冷静さが不思議なのだ。気を感じ取れない彼女達でさえチルドには不吉な、邪悪な何かが宿っている事を理解するのは容易。―――やがて、チルドは虚勢を張るように笑い出す。

 

 

「ふっふっふ、待たせたね。これがボクの本当の力だ!」

 

「そうか。なら、オラもちょっとだけ本気でやらせてもらうぞ。」

 

 

突如金色の粒子が姿を現しては煌き輝く、悟空の周辺を中心にそれは漂い光輝し始める。昼の光がより一層照らし出しながら悟空の気は急激に上昇していく。

その異様な光景にチルドは瞳を見開いて驚愕していた、脳裏に流れる嫌悪と憎悪に満ちた映像がぶり返して目眩を覚えさせる――咆哮と共に激怒した金色の髪をした男の姿が、彼とあまりにも重なり過ぎているのだ。

 

 

「ば、バカな! 金色に変身しただと…!?」

 

「か…カッコイイぃぃ~~~ッ!!」

 

「何と、変身するとはな…!」

 

「先程と雰囲気が変わりましたね…。」

 

「悟空さん……!」

 

 

感激の声を上げはしゃぎ出すレヴィと驚きを隠せない様子でシュテルとディアーチェは口にする、少なくとも悟空は管理局員が来るまでロストロギアの力でパワーアップしたチルドを倒す必要がある。

時間は残り少ない、震え出すチルドを疑問視する暇も無く早々にミウラの所へ戻らなければならない。―――だが先に動き出したのはチルドだった。

 

 

 

「き、金色になったって…今はボクの方が上だーーーっ!!!」

 

 

 

自暴自棄のまま絶叫が木霊する、強風が波紋状に広がり周辺のテーブルや椅子、看板等を無作為に吹き飛ばして足元には罅が刻み付けられていく。

負の感情を込めて両手からエネルギー弾が何度も悟空目掛けて発射され幾度と無く爆発が巻き起こる。激しい騒音が鳴り響き爆煙を周囲を覆い込むように発生するが―――。

 

 

「そんな…無傷だと!?」

 

「はああっ!」

 

 

傷一つすら付けられない状況下、絶望が脳裏に過ぎる刹那――悟空は両拳を握り締めて自身の気を高めていく。同時に彼を纏う金色の光は反応するように光輝する。

今の悟空は危険極まりない存在へと化していた、故に悟空を中心に突風が吹き乱れそれ等が衝撃破となってチルドの部下達は悲鳴を上げた。

 

部下達は耐え切れずに宙を舞う、地面に叩き付けられ壁に激突して。戦況はチルドの敗北へと着実に進んでいく。

 

 

「認めない…認めないぞっ! ボクが宇宙一なんだ!!」

 

 

駄々をこねる子供のように叫ぶチルドは片手を前方に突き出す、気が前方へと集中すれば邪悪に満ちた力が収束し始める。

絶大な気が凝縮された膨大なエネルギー弾が形成される中でチルドの瞳は悟空を映し出す。それが過去の記憶と重なり合い、芽生えた殺意が理性を掻き乱していた。

やがて渾身の攻撃が悟空へと襲い掛かり―――。

 

 

「なにいっ…!?」

 

「すごーい!!」

 

「信じられませんね……。」

 

「奴は本当に人間か…?」

 

 

秒間の刹那にディアーチェとレヴィ、シュテル、そしてチルドは驚いた表情を見せる、悟空は自身に襲い掛かるエネルギー弾を片手であっさりと弾き返してチルド目掛けて飛翔する。

渾身の攻撃が全く通用しない事に驚くのも束の間…悟空は空かさずチルドの間合いを詰めれば腹部へと肘打ちを素早く畳み掛けていく。

 

 

「―――だあっ!!」

 

「うごおお…っ!!」

 

 

形容しづらい激痛が滲み出す、急所を突かれ嘔吐感が体内で跳ね上がりチルドは口内から唾液と、ロストロギアの欠片――計三つが吐き出される。

 

 

「悟空さん、管理局員がこっちに来ます…!!」

 

「わかってる!!」

 

 

微かに、大勢の聞き慣れない声が耳に入り込んでいく。それを見逃さずに悟空は蒼色に輝くロストロギアへと視線を落として咄嗟にそれら全てを掴み取る。

焦りが悟空を駆り立て秒刻みの刹那でリインフォースの元へと飛翔する、咄嗟に彼女は彼の頭上へと戻れば度外れた速度を持って三人の少女の腕へと、掴む形で手が触れた。

 

――――ビシュン、という風切り音が軽快に紡ぐ。残されたのは地面に倒れたチルドの部下達だけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「師匠達どこいったんですかぁ~~!?」

 

 

財布を片手に嘆く桃色の髪を持つ少女、ミウラは途方にくれていた、先程から探している人物が見当たらず彼女一人だけ大通りで彷徨い歩いていたのだ。

街中であるにも関らず大通りを歩く人の姿は見受けられない。怪物騒ぎで大勢の一般人が避難しているのだ、大通りを虚しく不気味な雰囲気へと駆り立てている。

 

 

「此処は……?」

 

「あれ?場所が変わってる…!」

 

「な、何が起きたのだ!?」

 

 

大通りに人はミウラ以外に此処を通る者など誰一人として居ない。故に背後からの声と気配を認識するのに時間を要していた。

そして振り返れば三人の少女が各反応を示しながら戸惑いの顔色を浮かべて周辺を見回しているのだ、ミウラは呆然とその少女達を見据える事しかできなかったが…彼女達の中心にいる黒髪の男と小柄な少女の存在に気づく。

 

 

「なんとかギリギリ間に合ったな。」

 

「管理局員に見つからなくてよかったのですよ……。」

 

「し、師匠!! 何処に行ってたんですか!?」

 

「はは、急にいなくなって悪かったな。強え気を感じたからちょっと見て来たんだ。」

 

 

苦笑を浮かべる悟空と安堵のため息を吐くリイン、両方とも疲労が蓄積した様子である事にミウラは疑問に感じるが口にはしなかった。

 

 

「……ところで、この人達は誰ですか?」

 

「こいつらは…あり? なんではやてがいるんだ、しかもちっちゃくなってるぞ。」

 

「フェイトさんもいますね。でも随分と雰囲気が……。」

 

「我をあの子鴉と一緒にするな!」

 

「ヘイト? 違うよ!僕はオリジナルじゃないもん。」

 

 

八神はやて、フェイト・T・ハラオウンと類似した二人の少女は一斉に声を上げる。髪型は同じだが色や目、性格が彼女達と全く違う。

食い違う話に対して特に取り乱した様子を見せないシュテルは口を挟む、このメンバーの中で一番に理知的な彼女は静かな声で問いを投げたのだった。

 

 

「もし宜しければ、お話を聞かせて頂いてもいいですか?」

 

「はい、こちらも聞きたい事がありますので。」

 

 

―――話を聞けばディアーチェ達はミッドチルダとは違う異世界「エルトリア」に在住していたと言う、誰かに呼ばれたような錯覚に陥った直前気が付けば今居る世界へと足を踏み入れていたと彼女達は口を揃える。

その際にロストロギアの欠片を発見し手に入れた時、チルド達が襲ってきたのだと話す。

 

 

「つまりチルドがおめえ達を狙ったんはこのカケラが目的だったんだな。」

 

「うむ、確かにそれが目当てのようだったな。」

 

「悟空さん、この欠片は……。」

 

 

気掛かりに感じたリインは悟空の片手へと視線を落とす、握り締められたロストロギアの欠片が目に入り険しい表情へと変わっていく。

聖王教会が襲撃された際もフリーザはその欠片を目的としていた。今回も同様の行為で、その共通点に首を捻らざるをえない。

 

 

「ああ、間違いねえ。フリーザが吸収した石と同じやつだ。」

 

「後でこの石をカリムさんに調べてもらった方がいいのかもしれませんね…。」

 

「それで、おめえ達はこれからどうすんだ?」

 

 

悟空は改めて三人の少女へと目を向けて問いを投げる、同時に沈黙が彼女達を包み込む。返答に困った様子で口は開かれた。

 

 

「うーん、どうしよう…。」

 

「元の世界に戻る方法を探すしかなかろう?」

 

「ですがディアーチェ、何の手掛かりもない状態で探すのは難しいかと思います。」

 

「だが探さなければ我等は永遠に戻れないではないか。」

 

「ええっ、ユーリやキリエ達に一生会えないの~!?」

 

 

騒ぎ出すレヴィと主張が噛み合わない様子で口論を繰り返すディアーチェ、シュテル。一向に結論が出ない三人に対して悟空は何か思い付いたかのように表情を一変させた。

 

 

「なあ、行くとこがねえんならオラ達と一緒にこねえか?」

 

 

悟空が不意に思い付いた言葉を口にしてみれば数秒、沈黙が包み込む。

その沈黙はシュテルとディアーチェにとって予想外の提案で思わず無意識に思考を走らせていた故の結果である。ミウラとリインは唖然とした顔色を浮かべて、レヴィはきょとんとした表情でぱちぱちと瞬きを繰り返している。

 

 

「何言ってるんですか師匠!?」

 

「…でもいいかもしれませんね、はやてちゃん達を知ってるみたいですし。」

 

「えっ、いいの? じゃあ一緒に…。」

 

「断る! 我等だけで戻る方法を探す、助力などいらぬ!」

 

「そうですね…迷惑を掛ける訳にもいきませんので。」

 

「まあそう言うなって、またチルドみてえな奴等に襲われるかもしれねえだろ? それに、おめえ達を元の世界に戻してやれるかもしんねえ。」

 

 

その言葉に反応したシュテルが目線を向ける、彼女達の目的は元の世界への帰還――真剣な物へと変化した眼差しを持って言葉を彼女は投げた。

 

 

「…元の世界に戻れるのですか?」

 

「貴様、それは本当だろうな?」

 

「ああ、たぶんな。」

 

 

再び思考するシュテルとディアーチェを置いてリインは悟空の肩へと飛行する、何処か慌てた様子で。

 

 

「ご、悟空さん、多分って何か心当たりがあるんですか?」

 

「まあな。あとで教えてやるよ。」

 

 

不安が募るリインだったが彼女達を放っておく訳にもいかず、返す言葉も無く渋々頷くだけであった。

 

 

「おい貴様等、何を話しているのだ?」

 

「はは、ちょっとな。で、どうすんだ?」

 

「元の世界に戻れるのであればその提案、のみましょう。」

 

「但し、もし出来なかった時は我等が許さぬからな!」

 

 

一切表情に変化を見せないシュテルと威圧的な物言いで語るディアーチェ、それは彼女達が悟空と同行する事を受け入れるという意味である。

 

 

「そういやまだ名前聞いてなかったな。」

 

「僕はレヴィっていうんだ、それでこっちがシュテルんと王様!」

 

「シュテル・ザ・デストラクター…シュテルと呼んでください。」

 

「ロード・ディアーチェ、まあディアーチェと呼ばれるが王と呼んでもいいぞ?」

 

「レヴィにシュテルにディアーチェだな、オラは孫悟空だ!」

 

「ボクはミウラ・リナルディ! 八神家道場に通う悟空師匠の一番弟子です!」

 

「時空管理局所属のリインフォース・ツヴァイですぅ。」

 

「「「リインフォース!?」」」

 

 

リインフォース、その名前を耳にした瞬間三人の少女は驚いた表情を見せて彼女へと詰め寄っては質問を繰り返す。その質問はミウラにも投げられながら。

主な質問内容はフェイトやはやて、なのはの事ばかり―――只々リインは狼狽えてばかりであったが…。

 

 

「そういえば師匠達、買い物はどうしたんですか?」

 

「そ、そうでした! それにもうすぐお昼ですよ悟空さんっ!!」

 

「やべえっ! 遅刻したらまたシャッハとはやてに怒られちまうぞ!!」

 

 

方向転換した悟空とリインは突然走り出す、向かうべき行き先はスーパー。その途中で見知った人物からの通信には誰も予想していない。

 

 

『リイン、悟空さんと今買い物やんな? もうすぐお昼なんやけど何してるん?』

 

『リインフォース、悟空さんを知りませんか? そろそろ護衛の時間なのですが……。』

 

 

一気にシャッハとはやてから通信が入りモニター画面が表示される、その絶妙なタイミングにリインは驚いた表情を浮かべて視線を泳がしていた。

そして後にディアーチェ達が悟空とリインに追い付けばモニター画面の人物を目にして声を荒げはじめる。

 

 

「こっ、子鴉…!! 貴様等、これは一体どういう事だ!?」

 

「きちんとしたお話を伺いたいのですが…?」

 

「ゴクーッ!! 買い物するなら水色のまんまる買ってよー。」

 

「はやてちゃん、シャッハさん、すみませ…ってレヴィさん何してるんですか!?」

 

「師匠の背中に抱き付かないでくださいっ!!」

 

「ハラ減ったなあ~~。」

 

 

レヴィは力一杯に悟空の背に抱きつく、それを目にしたリインとミウラが叫ぶ。ディアーチェとシュテルはそんな二人に説明を求め、モニター画面に映るシャッハとはやては全く予想していない騒動を目にして言葉を失い絶句している。

―――この騒ぎはスーパーに到着しても尚、終息の気配を見せる事は無く大勢の客人や店員から悟空達は注目の的となるのであった……。

 

 

 

 

 

 

…意識は唐突に覚醒した、彼は全身が傷だらけで今にも死に絶える直前である事を認識するまでに時間を要しながら今其処に居る。

激痛で思考さえ覚束ない、眠気にも似た感覚に戸惑いを覚えながら這いずり回っていた。敗北した彼が思考する物とは即ち勝利、故に敗北の原因である。

 

 

「ハァ…ハァ……このボクが2度も金色のサイヤ人に負けるなんて……もっと、もっと欠片さえあれば……。」

 

 

大勢の人間の声が耳障りな程に響く、何があった?怪物だと?足音と共に囁かれる声は彼にとって不愉快極まりない。負の感情だけがメラメラと燃え散っている。

とある路地裏の一角、金色の戦士に敗北した怪物チルドは腹部に強烈な打撃を与えられた際の衝撃で遥か遠方に吹き飛ばされていたのだ。

 

 

「ちっ、カカロットのヤロウ…トドメを刺さなかったな。」

 

「誰だっ!?」

 

 

不吉な声と足音、眼前に影が映し出されチルドは恐怖が先行し心臓を高鳴らせながら振り返る。だが相手を上手く視認する事ができずチルドは目を凝らす、男である事は間違いは無いが具体的な所が視界に入らなかった。

 

 

「なんだ、もうオレのことを忘れたのか。てめえを地獄に送ってやったサイヤ人だ。」

 

 

漸く視認できた男の顔にチルドは強張った顔色を見せる、口元を緩めて不適な笑みを浮かべるその男をチルドが知らない筈が無いのだ。故に先行していた恐怖は現実の物へと化す。

映像のように蘇るフラッシュバック、男を取り巻く金色の粒子…残り少ない体力を振り絞って、激痛で揺らぐ視界を無視してチルドは動く。

 

 

「バーダック!? く、くるなあああーーーっ!!!」

 

「―――じゃあな、チルド。」

 

 

悟空の外見的特徴を隅から隅まで取り入れ、額に赤いバンダナを巻いた男は何の感傷も込めず淡々と呟く。四方八方に伸びた黒髪から金色の光を身に纏い逆立った金髪へと変化、片手をチルドへと突きつけエネルギーが前方へと収束し、一つの砲弾が形成されれば容赦なく撃ち出される。

 

 

 

「ちくしょおおおおおお―――ッッ!!!」

 

 

 

殺意と憎悪で塗り潰された絶叫が路地裏内を木霊した時にはもうチルドは消滅していた。死体も残らず消失した光景にはまるでチルドが最初から居なかったようにも感じさせられる。

バーダックは不意に空を見上げる、呆と空を眺めながら思考を繰り返す。不適な笑みは消えて張り詰めた険しい表情を見せながら彼は呟く。

 

 

「誰の仕業か知らねえが、勝手にオレを呼び出しやがって……覚悟しておけ。」

 

 

何処か憂鬱そうに、鬱陶しそうに、憎々しく語る。独り言をポツンと口にした後、バーダックは路地裏を後にして何処かへと飛び立つ。

その後、街中では金色の戦士という風の噂が流れるようになり、一種の都市伝説或いは怪談話として世間に大きく伝えられる事となるのであった…。




レヴィ「オッス!僕、レヴィ!! ゴクウの背中って暖かいよね。でも、チビクロハネとミウラが引き剥がそうとするんだ。」

リイン「当たりまえです! 悟空さんはレヴィさんのものじゃないのですよ。」

ミウラ「そうですよ、師匠に迷惑がかかります!」

シュテル「二人とも羨ましそうに見てましたが…。」

悟空「次回DragonballVivid「もっと高みへ! 悟飯となのはの魔導師パワーアップ計画」」

ディアーチェ「我にも暗黒のパワーを与えるのだ…!」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。