突然、空中を浮上し眩い光を発す宝石の美麗さに目を奪われたなのは達は呆然とそれを眺め続ける。同時に不気味さも感じて安堵は出来ない、そんな中でアインハルトは不意にボージャックと宝石を見比べる。
「石がボージャックに反応しているのでしょうか…?」
「……どちらかというと持っていた石に反応してるんじゃないかな。」
轟音を上げて肥大化する渦は終息、静寂が包み込みその中心軸は改めて姿を晒す。赤髪に緑色の肌、更に両腕両足に宝石が埋め込まれた彼の眼光はなのは達へと射抜く。
「へへっ、いよいよ親玉の出番か。これで少しは楽しめそうだぜ!」
「この感じ……聖王教会の時と似てる。」
「うん…この禍々しい魔力はフリーザの時と一緒だね。」
「じゃあ、あの欠片は……。」
口角を歪めるゴテンクス、張り詰めた顔色を示すヴィヴィオ、自身の力に驚愕してボージャックは変貌した腕や手を眺めて、徐々に彼の表情には笑みを見せ始める。
「フハハハ、パワーが満ち溢れるぞ!」
宙を木霊する不気味な高笑の張本人を見上げて呆然とするスバル達、彼女達には勝ち目が無い事は周知の事実。――刹那、高笑が途切れる鋭い風切り音。
咄嗟に大気を突き抜けてゴテンクスはボージャックの眼前に現れる、そして瞬間移動したかのような速度を持って高らかに宣言する。
「スキありーーっ!! ダイナマイトローリングサンダーパーーーンチ!!」
小細工を凝らした訳でも有り余る力を注いだ訳でもない、即ち文字通り只のパンチ。せめて避けられないように空かさず殴っただけ。沈黙が場を包み込んだ。
「………。」
「あれ?」
腹部に塗り込んだ拳は的確に命中した事を示している、視認出来る範囲でそれは真実。関らず目を点に見上げるゴテンクスの視界に写るボージャックの顔は余裕に満ち溢れた物。
その程度か、と言わんばかりの彼の顔にゴテンクスは戸惑う。先程と違い過ぎる態度に誰もが驚かざるをえない、一先ずぐっと足元へと力を込める。
「それなら、スーパーデリシャスミラクルキーーーック!!」
突き出す脚、余りある力を悪戯に込めて大気を貫くソレは名前通り手加減無しのパワーだ。腹部に塗り込む手応えと同時にゴテンクスはニヤッ、とボージャックを見上げた。
「ゴテンクスさん……また遊んでるのでしょうか?」
「そ、そんな風には見えないけど…。」
断言出来ず曖昧な言い方をするスバルと上空を仰ぎ目を細めるアインハルト、彼女達の疑問は無理も無い。原因は全てゴテンクスにある。
微動だにせず立ち尽くすボージャックを目の前に引き攣った顔色でゴテンクスは思索した。可笑しい、何かが可笑しい、脳内で訴えるシグナルに耳を傾けても回答には辿り着けない。
手加減無しの力を込めた、間違いなく命中した、この二点の映像が突き刺さり冷や汗が額から滲み出す。―――ボージャック、彼に何が起きたのか?
(あ、あいつ顔には出してないけど相当やせ我慢してるな、きっと内心はオレにビビッてるはず…。)
「何か様子が可笑しいわね……。」
「コラーッ!!真面目に戦えーーーっ!!」
ザンギャやブージンの時と同様ふざけているように思えたのか地上からのノーヴェの罵声が空中まで響き渡った。
「もう終わりか?」
嘲笑する笑みと共に挑発文句、だがゴテンクスはまともに反応出来る程の余裕は既に無い、瞬時に間合いを取り拳を再び突き出す。
「…へ、へへん。今までのは準備運動だ、ここから本気でいくぜ!!」
刹那、何度も何度も拳を全身全力でぶつける際に叫んだゴテンクスの言葉にヴィヴィオ達は思考を停止、零れたのは失笑。
「スーパーミラクルショートケーキッッ!! ウルトラギャラクティックパフェ!! バーニングサンダーミルフィーユ!!! グレートハリケーンモンブラン!!」
動じる事無く涼しい顔色で見下ろすボージャック、ゴテンクスの一人騒ぎでしかない光景にリオは多少声を荒げて――。
「………結局遊んでるんじゃん~!」
「い、一応殴ってはいるけど……。」
「聞いてられないぜ………。」
心底呆れ返った声を上げる中でゴテンクスは最後の拳を放った後に弾みを付け間合いを確保する、息切れを起こしながら見上げた先に写るボージャックの顔―――不適切な笑み。
それを直視した途端に思考は完全凍結、心臓が五月蝿く鼓動を上げる中で確実にゴテンクスの胸中には動揺が走り抜けた。
「ふっふっふ……。」
「いいっ!? 全然効いてなかったり?」
ゴテンクスの予想を裏切ったボージャックは底知れぬ悪意を孕んだ嘲笑と共に両腕を組んで見据える、その構図は蛇に睨まれた蛙。
額に冷や汗を滲ませ現状の危機感がピークに達しかける刹那、ゴテンクスは何とも言えない引き攣った表情でボージャックを見据えていた。
「ねえ、ゴテンクスは本当にふざけてると思う?」
「うーん、わからなくなってきたかも。」
「でも、さっきはあんなに強かったのにあいつにはビクともしないのっておかしいよ。」
―――全く通用していない、ほんの僅かに浮かび上がる問いの回答にセインは無意識に額から冷や汗が滲み出る。
半信半疑で口にするルーテシアとキャロ自身さえ、その回答は違うと断言は出来ず押し黙る事しか出来ずにいた。
「やっぱりあの欠片の影響でボージャックの力が上回ったのかもしれない。」
「ゴテンクス、大丈夫かな…。」
不安げな顔色を見せて呟くフェイトとなのは自身さえセイン達に向ける言葉が見当たらず困惑の一色で瞳は揺れる。
「気が済んだか?」
低い声が響いてゴテンクスは言葉を詰まらせる、悪意を秘めた嘲笑を目の前に思わず彼は苦笑、返す言葉が見付からないのだ。
先程の攻撃は手加減無しの一撃、その一つ一つに渾身の力を込めて放った拳は全て効かないというデタラメな状況下、改めてそれを認識したゴテンクスは―――。
「あ、あははは……ちょっとターーーイム!」
バッ、と片手を突き出して抗議の声、背を向けて焦りを色濃く見せる彼に余裕は一欠けらも存在しない。だがその猶予も与えずに甲高い叫び声が鼓膜を揺らす。
「あぶない、ゴテンクスくん!!」
「ふんっ!!」
背を向けた直前に出来上がる月光を遮る巨大な人影、嫌な程に見覚えのあるシルエットを視認する以上に早く……。
「――がああああっ!!!」
幼い少年の背中に衝撃が駆け抜ける、視界内が浮動して吐き気が込み上がる中で成す術も無くゴテンクスは地面へと強風を巻き起こして急降下。
衝撃波が波紋丈に広がる中心部でゴテンクスは咄嗟に見上げる、幾度と無く続く甲高い発射音が鼓膜を揺らすと同時に視界に飛び込む無数の光弾――ゴテンクスの、瞳孔は大きく開く。
「はあああっ!!」
「ゴテンクスさん……!!」
「うわあああああああああぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!」
アインハルトは思わず顔を背ける、誰もが目にし辛い光景が其処に広がる――幾度と無く無残な爆発音が宙を駆け巡って地面は酷い傷跡を残して尚も光弾の雨が降り注ぐ。
五月蝿く鳴り響く爆発音と爆煙が周囲を取り囲んで彼を視認する事は出来ず、又誰もがそれを食い止める事が出来ず呆然と立ち尽くしたまま時間は流れ続ける。
「あ…悪魔だ……。」
絶叫は轟音でかき消され爆煙でゴテンクスの姿は見えず、ひたすら膨大なエネルギーを凝縮した光弾が滑空する中でエリオに次いでキャロやスバル、リオ達も感想を漏らす。
「ひどい………!!」
「いくらなんでもやり過ぎだよ……。」
「ゴテンクスくんが死んじゃう!!」
ヴィヴィオは咄嗟にクリスを掴みそれを掲げ、アインハルトは魔方陣を足元に浮上させ始める、突発的な動作になのは達は目を奪われながらもそれ等は光り輝き始める。
「……もう我慢できないッ!セイグリッドハート!!」
「武装形態―――。」
甲高い掛け声と凛とした声が交差して光の粒子が空中上に次々と形成されていき、空中を漂う粒子は彼女達を包み込んでいく。
バリアジャケットへと衣装を変化させた途端に大人モードの二人の姿が現れ宙を駆け抜けていく―――舞空術、つい最近習得した術によって彼女達を空中へと駆け上がらせる。
「ダメッ、二人とも……!!」
虹色の魔方陣が夜空を照らし出す中でヴィヴィオは真正面の敵を射抜く、湧き上がる激情を込めて自身の眼前に魔方陣を出現させ激情と共に魔力は其処へ一点集中していく――。
アインハルトも同様に先程の悲惨な映像が脳内でループし続ける中で拳に全てが込められ始める、二人が狙うのは言うまでも無く彼女等、彼等をほくそ笑んだボージャック。
「一閃必中!ディバイン…バスタぁぁぁぁーーーッッッ!!」
「覇王、空破衝ッッ―――!!!」
ヴィヴィオの拳とアインハルトの拳が双方に突き出す、轟音が轟くと共に虹色の砲撃が暗闇を突き抜いて、衝撃破が大気を震感させてボージャックへと放たれる、が――。
「ジャマだ!」
手の平を広げ邪悪に光輝するエネルギー弾、なのは達が視界に収める事さえ出来ない速度でそれは出現して真っ向から二人へ鋭い発射音を響かせ打ち放たれる。
―――両者の攻撃が衝突する瞬間、だがヴィヴィオとアインハルトの一斉攻撃は互角にボージャクと渡り合う事すら叶わずあっさりとエネルギー弾が砲撃と衝撃破を掻き消していく。
「ヴィヴィオ…ッ!」
「アインハルトさん!!」
呆然と目を見開き、驚愕が勝った様子で二人は迫り来るエネルギー弾を見据える、リオとコロナの叫び声すら二人には届いていない。
脳内からの危険信号故に冷や汗が滲み始める、しかし二人は目の前の攻撃以上の速度で動く事も出来なければその反射神経も持ち合わせていない。
それは抗えない死が迫っている事を暗示している。死ぬ、死ぬ、死、死、死――瞳孔を開き死を受け入れる間近―――にも関らず、それ等の思考を全てシャットアウトさせる程の絶叫が木霊した。
「―――だあああああっ!!」
シルエット、幼い少年の形をしたシルエットがエネルギー弾内で映し出される、それは蹴る動作と共にエネルギー弾が方角を変えて虚しく宙を再び滑空する。
「なんだと!?」
大地が震え上がる程の爆発が後に響く、ボージャックは目の前で起きた光景を受け入れることが出来ず呆然とその先のヴィヴィオとアインハルト達の前に佇む少年を見据えていた。
だがそれはほんの数秒の出来事である、再び落ち着きを取り戻したボージャックの思考はその少年を知る事になる。――ゴテンクス、彼が再びボージャックの前に佇んでいるのだ。
「あいつ子供相手に大人気ないよなぁ~~。」
「ゴテンクスくん……ッ!!」
「無事だったのですね。」
金色の髪を腰まで伸ばし姿を変えて現れた少年ゴテンクスは不満を零しながらボージャックを見据える、安堵の溜め息を漏らすヴィヴィオとアインハルトには自然と笑みが浮かび上がっていく。
ゴテンクスは地上に居るなのは達へ視線をおくれば二人と共に其処へ降り立つ、それを見たなのは達は緊張の糸が切れたように和やかな雰囲気になって三人へ駆け寄る。
「ヴィヴィオ、アインハルト…!!」
「ふぇ、フェイトママ…!?」
「…あ、あの、えっと……。」
真っ先にフェイトは二人に駆け寄って抱き寄せる、驚くヴィヴィオと戸惑いの色を顔に浮かべるアインハルト。
「二人とも怪我が無くてよかった……。」
「本当にどうなる事かと思ったわ。」
「バカヤロー、心配かけさせやがって……ん、お前ゴテンクスか?」
キャロとティアナは二人の姿を確認すると同時に胸を撫で下ろしたり安堵の溜め息を漏らす等の各反応を示す、その中で後方に佇む見慣れない少年を目にしたノーヴェは数秒考えた上で浮かんだ名前を口にする。―――ゴテンクス、彼女達が知る姿とかけ離れた容姿の少年になのはは首を捻る、その気持ちは他の皆も同様の物である。
「なんだか、さっきと姿が変わってるような気が……。」
「姿だけじゃないぜ。今のオレは―――」
「―――みんな無事か!!」
ゴテンクスの言葉を遮る突風、突然突風を撒き散らすそれは空中を浮かぶ二人の男による物。なのは達は上空を見上げてその本人を視界に留めると思わずなのはの顔が綻ぶ。
「悟飯くん!ピッコロさん!!」
悟飯とピッコロ、彼等は静かに地へ降り立って遥か先の前方にいるボージャクへと視線は向けられる。
それをまじまじと見据えた後に二人の顔色は良くない物へ、眉を下げて目を細める顔は明らかに状況の異常さを察した物だ。なのは達は思わず息を飲んで彼等を見守る。
「…あれがボージャックか、以前よりも遥かにパワーが増している。」
(ボージャックから感じる邪悪な気…間違いない、あの時のフリーザと同じだ。だとしたら―――。)
顔を顰め始める二人、同時にゆっくりとボージャックは悟飯達へと歩み寄っていく。緊迫とした雰囲気と化して嫌な汗が額から流れる中でボージャックは静寂を切る。
「悟飯……まさか貴様はあの時の小僧か…。」
「そうだ。ボージャック、お前の仲間はボク達が倒した。」
「残ったのは貴様だけだ。」
静かな声、それでいてプレッシャーが圧し掛かる邪悪な声。―――不意にボージャックから飛び出るあの時の小僧、その言葉の真意をなのは達は理解できず疑問符が浮かぶが今は其処に構うほどの余裕も無い。
生か死か、叩き付けられる選択肢を前に嫌な心臓がドクドクと鼓動する。計り知れない緊張感と不穏さがなのは達を渦巻く中で、ボージャックは不敵に口元を緩ませて――。
「ふっふっふ…面白い、貴様にはあの時の恨みを返さなければならん…――簡単には死なさんぞ!!」
宣戦布告、互いに睨み付ける両者の間に戦意や殺意がぶつかり合う直前に、場にそぐわぬ幼い声が鼓膜を揺らした。
「おい、オッサン! オレのことを忘れるなよ。」
「オ、オッサンって……。」
ボージャックは金色の髪を持つ少年、ゴテンクスへと視線を向ける。それは見下すような視線で、思わずなのは達は今までの緊張感が途切れたような呆れ返った様子でゴテンクスを見る。
「あれだけ痛め付けられたのによくそんな事が言えたモンねぇ……。」
「ゴテンクスくんって怖い物知らずだよね…。」
「あはは、ある意味凄いとは思うけど…。」
「そこっ、褒めたり関心するトコじゃない!」
物怖じせず睨み付けるゴテンクスを前に呆れて見ていられない風に口にするティアナの隣でキャロとエリオは苦笑、更に横のルーテシアが咎める。
そんな生死の境目とは思えぬ会話に思わず苦笑を漏らすなのは達の注目の的はピッコロと悟飯へ振り返り、きっぱり口に出して言う。
「そういうわけだから兄ちゃんとピッコロさんはヴィヴィオちゃん達と見学してて。」
「お前、何勝手なことを…!」
怒り心頭の様子でピッコロは怒鳴り付ける勢いでゴテンクスと対峙する、その横で悟飯は一歩前に出て静かな声を響かせる。
「…勝算はあるのか?」
戦いにおいて最も重要な要素、それを投げ掛けた直後にゴテンクスの頬は緩み緩んでいく、何か言いたげに大きく息を吸い込み、そして―――。
「トーゼン!1分…いや、30秒でケリをつけてやるぜっ!!」
「「「「30秒!?」」」」
大胆に宣言した30秒宣告、ふざけてる、誰もがそう感じたなのは達の声は重なる。ヒソヒソと耳打ちする声とざわつきがそれを尚更物語っていた。
「あんなに苦戦してたのに30秒で倒すなんて無理だよ…。」
「やっぱり悟飯さんに任せた方が……。」
不安げに顔を見合わせて小声で喋り続ける一同、これで負けたりすればゴテンクスの命が奪われる。安易な選択は出来ない、お茶らけたゴテンクスを見れば見るほど不安は募っていく。
視線の的はやがて悟飯へ、今一番に期待されている人物は険しい顔付きで考え込みながらゴテンクスを見下ろす。決断、それが迫られている故に彼は口を開く。
「わかった、ここはゴテンクスに任せる…。」
「……仕方あるまい。だが、危険だと判断したらすぐに悟飯と交代だ。」
悟飯とピッコロの言葉を聞くと一同は黙り込む、静寂が再びなのは達を包み込む中で意を決したように互いに顔を見合わせては最終的にゴテンクスへと。
「ゴテンクスくん、絶対に死なないでね!」
「死んだら許しません……。」
ヴィヴィオとアインハルトの声に続いて次々とキャロやエリオ、スバルやルーテシア、なのはとフェイトと次々と声が続いていく。頑張って、油断したらダメだよ、無理ならすぐに引き換えしてね、そんな直向な言葉が飛び交いゴテンクスはニカッと少年らしい笑顔を向けて。
「サンキュー! みんなの声援受け取ったぜ!」
全員の声援を送られ改めてゴテンクスはボージャックへと振り返る。先程の話を一通り耳にしていたボージャック自身は不愉快そうに眉を顰めていた。30秒宣告は自身が舐められている証拠であり気に触る発言でもある。
だが其処で怒り狂い吠えるほどボージャックという男は器の小さい男ではない。ボージャックも相応の自信がある、己の強さに。敵の30秒宣告は自分を舐めていたと認識させてやればいい、それだけの事。故にボージャックは自分にゆっくりとした足取りで近付く少年に無闇に吠える事は無かった。
「30秒でオレを倒すだと? ふん、くだらんハッタリだな。」
「ハッタリかどうか見せてやるよ…―――これがオレのフルパワーだ!!」
罵る言葉を言い返せば突然ゴテンクスの全身から金色のオーラが放たれる、青色の稲妻と共に迸るオーラは甲高い音を鳴り響かせ大地を抉り取り始める、轟音、耳障りな轟音が少年らしからぬゴテンクスの力強さを語る。
金色の髪が空中を漂い始めボージャックも同様に戦闘体制を取る、異様な雰囲気に包まれる両者は突然にして地面を蹴り、蹴られた地面は一気に陥没して、二人の異様さを表す。
「「はあああああああああっ!!!」」
叫び声が鼓膜を揺らす直前には二人はぶつかり合う、だがそれは残像に等しくそれが目に見えた直後であちこちに勃発する衝撃破と衝突音、目に見える二人の姿は其処に居る訳ではなく其処に居たという過去を現す物。
視界に収める事も出来ない超人的スピードを目の前にスバル達は呆気に取られるしか無くその見えない光景を見るばかり、甲高い衝撃破が地面を抉り取って突風を巻き起こす。突風は暴風となり衝撃破となり有り得ない破壊力を持って、ゴテンクスとボージャックの周辺物を全て破壊していく。
「ふわぁ~……。」
「凄い、戦いだね……。」
「僕達とはレベルが違い過ぎる…。」
「どっちもバケモノじゃない…。」
「リオ、見える?」
「見えるわけないよー!」
空中で次々と連鎖的に巻き起こす轟音――、キャロ達は空いた口が塞がらない様子でぽかーんと目を点にそれを眺めるばかり。
「うおおおおおおおおっ!!!」
「だだだだだだだだだっ!!!」
互いにエネルギー弾を両手から次々と発射し続けその両者の間で爆発を幾度と無く繰り返し続け、地面が抉れ強風が襲い掛かる中で突然として爆発は止んでしまう。
その爆煙の中から姿を現すボージャックは酷く体力を消耗した様子で肩で息をしながらゴテンクスを睨む。歯を食い縛り、何か理解できないような、怪訝な顔色を浮かべながら。
「はぁ…はぁ……なぜだ。急に力が……。」
やがてボージャックは表情を一変させて上空へと顔を上げる、その先には両腕をクロスするゴテンクスの姿。
「これでトドメだ! スーパーゴーストカミカゼアターック!!」
腕を解き顔を真上に仰げば口から次々と無数に飛び出す白い何か、それは顔面がゴテンクスの顔で出来た物体でそれを見たヴィヴィオ達はぽかーんと何を言えばいいかわからず立ち尽くしており。
『『『『ひっひ~、オバケだぞ~怖いぞ~~。』』』』
オバケ、とも言える白い物体が次々と姿を現してなのは一同は再び互いに顔を見合す、魔法とはかけ離れた技に何と言えばいいかわからないといった風に。
「な、なにあれ…。」
「ゴテンクスくんの顔をしたオバケがいっぱい出てきた!」
複雑そうに眉を下げて見つめるルーテシアの隣でヴィヴィオは叫ぶように口にする、ゴテンクスの顔を持つ白い物体は次々とゴテンクスの指示を受けて逃げ道を塞ぐようにボージャックを取り囲んでいく。
一方、ボージャックは気を溜めることで必死になりながら目の前に襲い掛かる白い物体が近付く事に気付いて悔し塗れに拳を強く強く握り締め――。
「あいつ本当に30秒で倒すかもしれんぞ…。」
「決めろゴテンクス!」
迫り来る白い物体、数え切れない程の沢山の物体を前にボージャックは憎々しげに睨み付けて腕を構えて戦闘体勢へと戻る。
「みんなが受けた痛みを思い知れ!」
(悟天くん…!)
(トランクスさん…!)
「くっそおおおおおーーーーーーーっ!! 」
「オバケ全員まとめて突撃ーーーーーーーーーッ!!!!」
「「「「いっけええええーーーーーーー!!!!」」」」
無数の白い物体がボージャックに狙いを定める目前、ヴィヴィオ達はその現場を見て声援を送りながらそれは迫り行く―――!
咄嗟にボージャックは声を荒げながら両手から強大な威力を誇るエネルギー弾を発射、滑空するエネルギー弾は白い物体とぶつかり合い爆発を繰り返していく、が。
圧倒的な数の不利、全てを相殺し切る事は出来ず爆煙の中から姿を現す白い物体は酷く体力を消耗したボージャックへと臆する事無く降り掛かり――。
「―――ぐ、おおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
着弾、爆発、その現象が次々と数え切れないほどループする中で轟音に紛れて絶叫が響き渡り…最後に姿を現したのは、キラキラと照り輝いた数個の蒼い欠片だった。
「この欠片……やっぱりあの時のロストロギアだよね。」
「だとしたら他にも散らばっているかもしれない。」
「帰ったら欠片の探索をせねばな。」
なのは達はボージャックが消滅して地面に落ちた複数の蒼い欠片を拾うと、すぐに其れがフリーザが吸収したロストロギアと同一の物だと判断し、確認を行って貰う為にカリムに報告する。
又、戦闘を終えたゴテンクスは、ボージャックを倒した直後に悟天とトランクスへと分離。ピッコロの話だと彼等の気がまだ不安定な為、互いのバランスが崩れて短い時間でフュージョンが解けてしまったのではないかとの事。
「へへっ。ま、こんなもんかな。」
「ヴィヴィオちゃーん! 敵やっつけたよ~~!!」
「うん! 本当に凄かったよッ!」
「あ、ダメです!ヴィヴィオさん…!」
元の二人に戻った事にヴィヴィオ達は安堵の笑みを浮かべて駆け寄る。ヴィヴィオも二人の元に駆け寄ろうとするがアインハルトに腕を掴まれ此処が温泉で自分達がタオル一枚しか身に着けてない事を指摘されれば、顔を真っ赤に染めて悟天とトランクスを追い出す始末。
――――こうして悪夢の夜は終わり、いつもの穏やかな日常が戻ってくるのであった…。