威厳に溢れる碧銀の髪を持つ女性を前にしたトランクスは一体何がどうなっているのか理解できずにいた。
「えーと、お姉さん誰? 試すってどういうこと?」
「私はハイディ・E・S・カイザーアーツ正統…『覇王』と名乗らせていただいてます。
試すというのは、文字通り…私とあなたがどちらが強いか勝負をするという事になります。」
「覇王…? よくわからないけど、お姉さんと闘えばいいんだね。じゃあさ、オレが勝てたら魔法を教えてよ。オレ、魔法で世界一の遊園地を作りたいんだ!」
「…はぁ?こいつ何言ってるんだ。」
「………。」
支離滅裂な言動にノーヴェは首を傾げるが女性は無表情を貫いていた。
(……この人からは魔力が感じられない?)
あの拳を受けきって尚、立ち上がることもできればまともに喋る事もできる少年に驚きは隠しきれないが、女性にとってはこの少年に不可解な点が幾つも残っている。
魔力が感知できない点も勿論それも当てはまっているが…そもそも、目の前にいるこの少年は一体どこからやってきた?少なくとも渾身の一撃を受けて立ち上がる時点で只者ではないだろうが。
「…その前に、あなたには魔力自体がありませんので魔法を扱う事ができません。」
「くそ!逃げろ、ガキーっ!!」
今頃になってダメージが体に通用してきたのかノーヴェは上手く行動できない中で少年へと叫ぶ。だがその直後、軽やかなステップと共に強烈な拳を叩き込もうとする女性。
「えっ?魔力って……うわあぁっ!!」
呆気なく腹部に激突。そのまま勢いよく吹き飛ばされ地面へと全身を強打させてしまう――まったく状況を上手く理解していない為にトランクスは反応に遅れたようだ。
「いって~~…コラーーッ!いきなり攻撃するなんてズルいじゃないか!!」
「―――隙だらけですね。」
決して女性自身も万全の状態で戦っているわけではない。ノーヴェの攻撃を受け止めたとはいえ、多少の疲労は残っているのだ。
攻撃自体の威力もスピードも全て万全の状態ではないにしろ、油断してしまっているトランクスにとって充分に苦戦させられてしまう。
「また来るぞ!!」
「わあっ!?」
女性はトランクスに急接近した後――殴る、蹴るの高速連続攻撃が次々と雨のように降り注ぐ、だがそれでもトランクスは避け続けていた。
(そんな……掠りもしないなんて。)
いくら疲労が残っているとは言っても相手は子供、なのに一撃も当たらないどころか掠りもせず全て空振りで終わっている事に焦りさえ感じる。
「ねえ、本気でやってるの? 言っとくけど、そんな攻撃じゃオレには当たらないよ。」
「……っ!!」
その発言が挑発として通用してしまったのか、女性は次々と殴る蹴るをひたすら繰り替えし暴力の雨を降らし続ける。
以前よりも命中率と威力が増した凄まじい攻撃の数々。しかしそれでもトランクスに当たる事はなかった。
「はあぁっ!」
「よっ…と! たあっ!!」
トランクスは素早い連続攻撃を避け続け、最後に隙をついて足払いを仕掛けて相手の体制を一気に崩していく。そして刹那の浮遊感に襲われる相手に容赦なく蹴り上げを図る。
「ッぐ…!?」
「―――でやああああ…あ、あれ…?」
上空へと吹き飛ばされた女性は体制を立て直す事すら叶わず、正に隙だらけの状態。好機と思ったトランクスは最後の重い蹴りを食らわそうと高くジャンプするが―――蹴りは届かなかった。
勢いが途中で途切れ、不本意な喪失感が刹那に焼きつく。空中を支配し動いていた筈の少年の動きは急停止して気味の悪い浮遊感が全身から浴びせられる。
(マジかよ!? オレこんなに気が減ってたのか……。)
「何やってんだよあのガキ!?」
「………。」
何時ものような戦いを行おうとすれば必ず途中で詰まってしまうのだ。気の半滅は戦闘力が半滅したも同然、トランクスは自身が弱くなっている事を改めて思い知ると同時に形勢は一気に逆転してしまう。
「はあっ!!」
「うああああああぁぁぁっ!!?」
瞬時に上空にいる碧銀の髪を持つ女性から重圧な蹴りを食らって一気に地面へと急降下して激突する。コンクリートが破壊されるのではと思うほどの威力がトランクスの全身を襲う。
「…あなたは確かに強いですが、その油断がある限り私には勝てません。」
「っぐ…しまった! カラダが挟まって動けない…。」
全身が地面に衝突した際の衝撃によって埋もれてしまっておりトランクスは身体を動かせない、女性は勢いをつけて空中を急降下、拳に練り上げられた力を収束させていく。
「――――覇王・断空拳!!!」
怒涛の勢いで凄まじい破壊力が込められた拳が真っ直ぐにトランクスへと打ち下ろされる刹那、亀裂が入り込んだ地面から金色の粒子が煌き爆発を起こす。
「はあああぁぁっ!!!」
「な…!?」
拳は真っ直ぐに受け止められていた。女性の視界に入り込んでいたのは金色のオーラに身を包む少年の姿であり、髪の色も瞳の色も先程の物とは変貌していたのだ。
一瞬、誰なのかと見間違うほど外見が様変わりしてしまっており、女性自身も困惑の色を隠しきれない。ノーヴェ自身もトランクスの姿に冷や汗を額から流していた。
「だああぁーーっ!!」
「ぐうっ!!」
輝かしき金髪碧眼の姿を持った少年は倒れていた片手を重い拳として女性の腹へと叩き込む、その威力は信じられないほどの怪力が彼女を襲い体制を崩したのだ。
「あ…ぐ……。」
先程の攻撃はまったくもってトランクスには通用していない、女性は揺らぐ視界の中で金色のオーラに身を包んだ少年を見据えた後――地面に倒れた。
その後すぐに金色のオーラは消え去っていき薄紫色の髪と目つきの悪い青色の瞳へと姿が元通りになる。
「はぁ、はぁ……やっぱりオレ弱くなってるなあ。」
「あ、あれで弱いだぁ!?」
動けるようになったノーヴェは倒れた女性とトランクスに目を奪われていた、この女性の事や金色のオーラなど謎が深まるばかりなのだ。
暫くすると眩い光が女性を包み込んでいき、消失した頃には碧銀の髪をツインテールにさせた少女が地面に先程の女性のように倒れていた。
「ええっ!? お、女の子になっちゃ…った……」
「お、おい…!」
そしてトランクスもまた彼女と同じように体制が崩れそのまま地面へと倒れてしまう、何がなんだかわからないまま一人になってしまったノーヴェは重いため息しか出ず。
「一体どうなってんだよ…とりあえず、家に運ぶしかねーか…。」
二人の怪我と比べればノーヴェの怪我は軽症であり時間が経っている事もあってか少し和らいでいる。
倒れてしまった二人をこのまま放っておくわけにもいかなかったので家に連れて行くことにするのであった…。
悟空「オッス!オラ悟空!! なんとかトランクスは勝てたみてえだな。」
ベジータ「ち…あんなガキに手こずりやがって……。」
悟飯「そういえば、悟天はどうなったんだろう。」
ピッコロ「問題を起こさなければいいが。」
悟空「次回DragonballVivid「ミッドチルダへようこそ!魔法少女との出会い」」
悟天「え?兄ちゃんを知ってるの?」