柔らかい物体にしがみついて生暖かい感触が伝わってくる、まだ眠気が残っているせいで状況が今一つわからない中、気持ちよさそうな表情を浮かべ静かに悟天は寝言を口にしていた。
「ん~~もう食べられないよ~。」
「……すー…。」
朝日の光を浴びた金色の髪は輝いており、悟天はその金色に輝く髪を持つ女性の膝をしがみつくように枕代わりにして寝ていたのだ。
―――唐突に「チリリリリッ!」と騒がしい音が木霊して一気に頭を目覚めさせるキッカケとなった。
「わっ! なんだなんだ…!!」
「もうこんな時間…? ふあぁ~……。」
悟天は飛び起きて音の正体に気がつくと冷静さを取り戻していく、どうやら目覚まし時計が一定の時間になったので音が鳴っただけらしい。
「……あれ? ここ何処…?」
「此処はなのはの家だよ……。」
金髪の髪を持った女性は自分の疑問に答えてくれたが――それでも完璧に冷静さを取り戻せるわけもなく、寧ろ余計に頭の中でパニックになっていく。
「わあっ!? お姉ちゃん誰…?」
「私はフェイト・T・ハラオウン…フェイトって呼んで。それで、君のお名前…聞かせてくれる?」
「ボクは……。」
「―――フェイトママ~~!朝ご飯できたよーー!!」
聞いた事もない少女の声が部屋にまでたどりつく、フェイトは「すぐ行くよー!」と返事を返して自己紹介は後回しにされてしまった。
「ごめんね、続きは朝ご飯食べ終わってからで…その時みんなのことも紹介するから。」
「うん!いいよー。」
特に気にする様子もなく明るい返答をする悟天に思わず優しげな笑みを露にするフェイト。成り行き上、朝ご飯を共に食べる事になって部屋から出ると二人で手を繋ぎながら階段を下りていく。
「おはよう!フェイトママ。」
「フェイトちゃん、おはよう。…それから、君もおはよう。」
「へ? お、おはよう…。」
「えっと、とりあえず話は朝ご飯を食べてからにしよっか…?」
他に言いたい事もあるがひとまず朝食を取るために全員、椅子に腰をかける、テーブルにはオムレツやサラダなどが並べられていた。
――数十分後にはなのは達は朝食を済ませてようやく本題に入る流れの筈だったのだが……。
「んぐんぐんぐ…おかわりーっ!!」
「ま、まだ食べるのー!?」
「ふぇ、フェイトちゃん…ご飯残ってる…?」
「ううん、もうあれで最後だよ…。」
「そうなの? だったらいいや。」
未だに食事が終わらなかった者が一名、図々しくも悟天は炊飯器の残りのご飯を全て一人で食べ尽くしてしまったのだ。
「そんなに食べても大丈夫なの…?」
「うん、大丈夫だよ。いつもはもっと食べてるから。」
「「………。」」
「あはは、そうなんだ。」
恐る恐る聞いたヴィヴィオの質問に明るい言葉を投げる悟天、その後に包み込んできた静寂に悟天は首を傾げながら周りを見渡していた。
「え、えーと、そろそろ君の事聞かせて貰えると嬉しいな。名前とか……。」
「わかった。ボクは孫悟天だよ。」
「(えっ、そん…ごてん……。)わたしは高町なのは、なのはでいいよ。よろしくね、悟天くん。」
「わたしは高町ヴィヴィオだよ。よろしくね、悟天くん!」
「私はさっき自己紹介したけど、フェイト・T・ハラオウン…改めて宜しくね?」
「よろしく!なのはさん、フェイトさん、ヴィヴィオちゃん。」
互いに明るい笑顔を浮かべて自己紹介を交わす。だが一人、なのは自身は怪奇な表情を浮かべて様子を眺めるように見据えていたのだ。
「それで悟天くんは一体どこからきたの? ミッドチルダに住んでるようには見えないけど……。」
「ミッドチルダ? 違うよ、ボクは地球から……あ、そうだ! ボク魔法を教わりにきたんだった!!」
「「「ええっ!?」」」
その言葉を聞いた悟天を除いた三人はそれぞれ異なる反応を示す、なのはは地球に反応してフェイトは魔法に、ヴィヴィオはミッドチルダ出身ではない事に。
悟天は椅子から降りると近くに置かれていた荷物に手を伸ばす。玩具やお菓子を取り出していくが最後に円盤のような機械が取り出された瞬間、なのはの目はその機械に注目する。
「これってもしかしてドラゴンレーダー!?」
「ドラゴンレーダー?」
「なのはは知ってるの?」
きょとん、とした表情で見守るヴィヴィオは機械を見て首を傾げており、フェイトもなのはが言い当てた事に呆気にとられている。
「ねえ、悟天くんは兄弟とかいたりする? もしいるのなら名前を教えてほしいな。」
「うん!兄ちゃんがいるよ。名前は孫悟飯だよ。」
「―――!? やっぱりそうなんだ……。」
ヴィヴィオもフェイトも言葉を失ってただ二人を見守るだけであった、そんな中でなのは自身は懐かしむような優しげな微笑を浮かべて話し出す。
「…なんていうか、フェイトちゃん。わたしが子供の頃に突然行方不明になったこと…覚えてる?」
「覚えてるよ…1ヶ月ほど行方不明になったあの事件のことだよね?」
「ゆ、行方不明!? なのはママいなくなったこと、あった?」
「にゃはは、ごめんねヴィヴィオ。わたしの子供の頃のお話なんだけど……。」
――軽く彼女は思い出話でも語りだすように説明し始める。なのはは子供の頃に次元犯罪者を追跡中に、突然行方不明となった時期があったのだ。
フェイトの言う通り1ヶ月ほどの期間でありその期間内の間、彼女は異世界で過ごしていた。その異世界では1週間ほど過ごしたのだが元の世界では1ヶ月も時間は過ぎていたという昔話だ。
「その異世界でね、孫悟飯って男の子にお世話になったんだ…だから孫悟天って名前を聞いたときは驚いたの。」
「そういえば、昔不思議な女の子に出会ったって兄ちゃん言ってたな~。」
「悟天くん、悟飯くんは元気にしてるの?」
「兄ちゃんは元気だよ。今は大学ってとこで学者さんになる為に勉強してるんだ。」
「そうなんだ…悟飯くんらしいね。……あ、あと悟天くん、悟飯くんには仲の良い女の子とかいるの?」
何故か頬を赤くしながら訪ねるなのはにヴィヴィオは首を傾げてしまう、一方でフェイトは何かを察したのかクスッと小さな声で笑っていた。
「仲の良い女の子? う~ん、ビーデルさんかな。」
「ビーデルさん…って、どんな子なの?」
「ビーデルさんは兄ちゃんと高校からの友達で、一緒にグレートサイヤマンをやってて、ミスター・サタンの子供なんだ。」
「グレートサイヤマン?ミスター・サタン?」
「なのは、そろそろ出勤時間。ヴィヴィオもそろそろ行った方がいいよ。」
このまま放っておけば長い話になりかねない事を見計らった上でフェイトは話題を切り出す。当然、それを合図として会話は中断となった。
「ええっ、もうこんな時間!?」
「ごめんね悟天くん!それとフェイトちゃん、悟天くんのこと任せていいかな…今日は休みだったと思うんだけど。」
「うん、大丈夫…任せて。」
「ありがとう! じゃあ、いってくるね。」
「いってきまーす!」
フェイトと悟天は慌てて荷物を持って家を飛び出していくなのはとヴィヴィオを見送る。その後、フェイトは食器を片づけに入り、暫くするとソファで寛いでる悟天の元へと戻る。
「お待たせ。さっきの話の続き…といきたいけど、悟天は少し匂うから一緒にお風呂に入ろっか?」
「お風呂! うん!入る入るーーーっ!!」
無邪気な笑みと共に平然と口にした悟天、どうやら何も抵抗感がないらしくフェイトもまた母親のような微笑を浮かべていた。
「わぁ~おっきいお風呂だ。トランクスくん家みたいだな。」
数分の時間が流れた頃には悟天とフェイトは風呂場に出ていた、悟天はただ無邪気に風呂場を眺めて見渡している。
本来なら異性同士で抵抗感が出てくる物なのだが悟天自身が子供で甘えん坊な性格に問題があり、そしてフェイトの過保護さから招いた結果だった。
「悟天、なのはに話してくれたお話の続き聞かせてくれる…?」
「お話ってビーデルさんのこと?」
「ううん、どうやって此処に来れたのかとか…どうして魔法を教わりにきたのか、とか。」
「いいよー。ちょっと待ってて!」
悟天は慌てて風呂場から飛び出していくと自身の荷物に手をかけて何かを取り出す。それは一冊の分厚い本であり、わざわざ手にとって風呂場に持って戻ってきた。
「うんとね、ボク達はドラゴンボールを集めて神龍にお願いして来たんだ。魔法の世界に行けばこの本みたいに魔法を使えると思ったから。」
「これは…おとぎ話みたいだね。」
まだ湯を被っていないだけあって本に触っても特に問題がないのでフェイトは悟天の持つ分厚い本の中身をペラペラと捲っていく。
内容に触れていると大体の悟天の考えが読めてきたフェイトは本を閉じて改め問いを投げてみる。
「悟天はどんな魔法を使いたいの?」
「えへへ、ボクは魔法でいくら食べてもなくならないケーキとお菓子の国を造るんだ~。」
笑顔で語りだす悟天、お菓子の国はあの分厚い本の内容で登場しておりそれを想像しているのではないかとフェイトはすぐに推測が浮かんだ。
「そ、そうなんだ…でもごめんね。そういう魔法はこっちの世界にはないんだ。」
「ええ~~!? そんなあ……ボク楽しみにしてたのに~~。」
わざわざドラゴンボールを7個集め、異世界に飛ばされてでも探し出そうとした自らが望む魔法がないと告げられ今にも泣きそうな表情を浮かべてしまう悟天。
「え、えっと、ごめんね悟天……代わりに私が魔法を見せてあげるから。」
「え? フェイトさん魔法使えるの?」
「使えるよ。でも、悟天が思っている魔法とは違うんだけど……それでもいいかな?」
「うん! 見せてくれるならいいよ。」
「わかった……じゃあ、あとでね?」
優しく声をかけてなんとか場を落ち着かせようとする、それが上手く成功して悟天は笑顔になっていた。
「そうだ、トランクスくんにも教えないと…。でも、気が探れないから何処にいるかわからないや…。」
「そのトランクスくんと気っていうのもお風呂に入りながら教えてくれる?」
「いいよー。」
またもや長い話になりそうなのでフェイトはすぐに風呂へと切り上げる。先に体を洗ってから二人は湯船に浸って暫くの間、楽しそうにお互いの世界や家族の事など様々な会話を続けていたのだ。
「10歳か…じゃあ、悟天はヴィヴィオと同じ歳なんだね。」
「うん!けど、トランクスくんはボクより一つ年上なんだよ。」
「そうなんだ。」
「そういえばフェイトさんの髪の色って超サイヤ人みたいだね。」
「超サイヤ人…?」
「みせてあげるよ。はあっ!」
そして最終的に行き着いた話題は超サイヤ人……なのだが、悟天が気合いを入れても何も変化がない。
「悟天、今のは?」
「あれれ? 超サイヤ人になれない……気合が足りなかったのかな。」
試しに今度は更に気合いを入れてみるが変化は変わらず、フェイトは悟天の行動を不思議に感じていたが突然、地響きが鳴り浴槽のお湯が溢れ始めている事に気づく。
「お湯が溢れて……。」
「んぎぎぎ………だあっ!!」
次の瞬間、物凄い爆音と共に浴槽があっけなく破壊されてしまったのだ。そしてお湯で髪を濡らしたままフェイトは言葉を失う。其処には金色のオーラに身を包み、逆立った金髪と碧眼の姿に変貌した悟天の姿があった…。
悟空「オッス!オラ悟空!! あちゃ~~悟天、風呂ん中で超サイヤ人になっちゃダメだぞ。」
ピッコロ「…孫、お前も以前似たような事をしてなかったか? しかし、あの様子だとまともに超サイヤ人になる事もできないようだな。」
クリリン「それにしても、悟飯も隅におけないな~~って悟飯は?」
ヤジロベー「悟飯なら用事ができたと言って行っちまったぎゃ。」
ベジータ「トランクス、オレに恥をかかせるような事はするなよ。」
悟空「次回DragonballVivid「悲願を果たせ! 明かされる覇王の過去」」
トランクス「オレだってサイヤ人の王子だ!」