トランクスとノーヴェのトレーニングが始まってから相当な時間が経過しており今もその修行の真っ最中だ。
だが数分後には二人のトレーニングの時間は終わり、一息尽いた所でベンチに上に座り休憩を図っていた。
「ノーヴェさんも結構強いね。」
「お前ほどじゃねーけどな。」
改めて二人で修行する事でトランクスとノーヴェの力量の差を互いに把握した上で二人は感想を述べている。
「へへん、オレはガキの頃からパパに鍛えられてたから。」
「パパ…?お前の親父さんもお前と同じ戦ったりする事ができんのか?」
「もちろん! パパは宇宙で一番強いんだ。」
「いやいや、さすがにそれは大げさすぎだろ。」
休憩中は世間話によりある程度の時間を潰す。そうしている間にも夕暮れの時刻へとなっていた。
夕暮れになれば学校の授業も一通り終了する時間でもあるのでノーヴェはすぐにアインハルトの事を思い出す、彼女に紹介したい人物がノーヴェの中には存在している。
その金色の髪の少女がふと頭に思い浮かんだ瞬間、ノーヴェは立ち上がってトランクスの方へと視線を向けた。
「じゃ、そろそろあいつを連れてくるか。お前は此処で待っててくれ。」
「わかったー!」
ノーヴェはそのまま立ち去っていく。一人になったトランクスは引き続き一人で修行の再開をする事になった。
途中でアインハルトに告げたノーヴェの言葉がトランクスの脳内で回想して改めて疑問が浮かぶ。アインハルトの覇王としての悲願を受け止めてくれる人物。
堂々と『いる』と宣言したノーヴェの中には心当たりの人物がいるのだろうか?トランクスはノーヴェとアインハルトが来るのを修行しながら待ち続けた―――。
「…参りました。」
「よう、待たせて悪いな。」
「え、えーと……。」
「おかえりアインハルトちゃん、ノーヴェさん……と誰?」
アインハルトの隣に金色の髪を青いリボンによってツーサイドアップにさせた少女が目に入る、更に周りには複数の少女。見慣れない人物に思わずトランクスは目を丸くさせながら問う。
「あ、はじめまして。ミッド式のストライクアーツをやってます!高町ヴィヴィオです!」
「そのヴィヴィオの友達のリオ・ウェズリーです!それでこっちがコロナって言います!」
「えっと、よろしくお願いします!」
「ストライクアーツ? オレはトランクスだよ。よろしくヴィヴィオちゃん、リオちゃん、コロナちゃん。」
「つまり格闘技ってことだ。挨拶は終わったようだな。」
補足するような説明を加えながらノーヴェは改まった表情と瞳を見せながら全員に視線を向けていく。
「まあ皆、格闘技者同士。ごちゃごちゃ言わず手合わせでもした方が早いだろ。場所も確保してあるしな。」
「う~ん、女の子が相手だから手加減した方がいいのかな…。」
「…私は手加減されたくありませんが。」
「その辺りの加減は任せる。んで最初はヴィヴィオとアインハルトからだ、それでいいな?」
「別にいいよー。」
「はい、全然いいですよ!コロナもでしょ?」
「うん!二人の勝負見てみたいかな。」
一通りの流れを話していくと場の雰囲気は気まずい物ではなくなっていた。それこそがノーヴェの気遣いでもあり狙いでもある。
トランクスはふと脳内で回想していた。覇王の悲願を受け止めてくれる人物、もしかしたら高町ヴィヴィオの事なんじゃないかと思考が走りつつ。
こうしてノーヴェの提案もあり、アインハルトとヴィヴィオは互いにコートの中央にまで足を進めば一定の距離を保ちながら軽い運動をし始める。
「じゃ、あの!アインハルトさん、よろしくお願いします!」
「……はい。」
明るく陽気にヴィヴィオはアインハルトとの手合わせに嬉しさを見出しながら構えを取り、アインハルトも同様に構えを取った。
二人の準備が整ったタイミングを見計らうようにノーヴェは息を吸い込む。
「スパーリング4分1ラウンド…射砲撃と拘束(バインド)はナシの格闘オンリーな。」
魔法系統なしの純粋な肉弾戦による対決、トランクスは魔法系統にはピンとこない様子のままノーヴェは試合開始の合図を口にする。
「レディー・ゴー!!」
―――合図を発した直後、ヴィヴィオが先手必勝の勢いでアインハルトへと次々と拳を振るう、連撃のように次から次へと繰り返される拳をアインハルトを腕を交差させて受け止めていく。
受け止めることにより防御をしており、ダメージが微妙ながらに体に響いているのかアインハルトの体は拳を防御する度に僅かに後退していた。
(まっすぐな技…きっと、まっすぐな心……。)
アインハルトは後方へと下がる事で拳を避け、避けられない拳は腕を交差する事で防御する。ヴィヴィオの攻撃は全て急所を外しており、まともな攻撃を食らわせずにいた。
それでもヴィヴィオは焦る事もなくアインハルトとの手合わせを楽しんでおり、更に攻撃は激しくなり無駄もなくなっていく。
「結構いい感じだな。」
「今の所はね。でも、アインハルトちゃんにはまだ余裕がある。」
ヴィヴィオの猛攻は増していく、蹴り上げを加えてアインハルトに命中させようと試みるヴィヴィオだが容易にそれも避けられる。だがその度に攻撃の威力もスピードも増してきていた。
それでもアインハルトには命中しない。防御され避けられの繰り返しであり、アインハルトもまたスピードが上がっていく。
(だけどこの子は……。)
その途中、悲しみに溢れた表情がヴィヴィオを貫く。不意なアインハルトの表情の変化がヴィヴィオにとっては唐突な物に思えた。
(だからこの子は―――!!)
ノーヴェとトランクスはアインハルトの行動に目を奪われる、今まで防御一線だけであった彼女が始めて攻撃に移した瞬間だったのだ。
一気に身を屈めて姿勢を低くし、そのままヴィヴィオの胸へと手で押し当てて一気に暴風と共に彼女を後方へと大きく吹き飛ばす。
その瞬間はヴィヴィオの猛攻の中で一瞬の隙を突いたアインハルトの攻撃が見事に彼女へと命中させたのだ。
「ッ……す…。」
吹き飛ばされた挙句、ヴィヴィオはスポーツコートに体を叩きつけられる。全身の痛みと別格の胸からの激痛にヴィヴィオは胸に手を当てると同時――、彼女の体は震えていた。
それは全身の痛みで震えているというよりも相手の強さに感動した上での武者震いのようにも見て取れる。顔を上げた彼女の表情は純粋な笑顔だったのだ。
「すごいっ!!」
(―――私とは違う。)
再びヴィヴィオは構えを取って次の攻撃段階へと入る準備を行おうとする前に、アインハルトは彼女に背を向ける。
敵に背を向ける行為は自ら隙を見せているのと同様であり、ヴィヴィオは戸惑いを露にしていた。
「…お手合わせ、ありがとうございました。」
唐突に響いた声が発する言葉にヴィヴィオには理解できず戸惑いだけが残る、試合終了という意味が込められた言葉を淡々と述べるアインハルトの背が虚しく感じてしまう。
そのまま自らの前から立ち去っていくアインハルトの歩みは止まることはなかった。放心状態を打ち破ってヴィヴィオは慌てて問いかける。
「あの…あのっ!すみません、わたし何か失礼を……?」
「いいえ。」
「じゃ、じゃあ、あの、わたし……弱すぎました?」
「いえ…趣味と遊びの範囲内でしたら充分すぎるほどに。」
ヴィヴィオは思わず口に出すべき言葉を失った、つまりアインハルトからすれば自分は弱すぎたのだと彼女は結論付いたのだ。
決して趣味と遊びだけではないつもりなのだがアインハルトからすればそれぐらいの範囲であるという事実がヴィヴィオの胸を苦しめる。
相手の期待に応えられなかった事――、ガッカリさせてしまった事、自らのレベルの低さ、様々な現実が小さな胸に突き刺さっていく。
「あのっ!すみません…今のスパーが不真面目に感じたなら謝ります!!」
その声が背を向け立ち去ろうとしていたアインハルトの歩みを静止させた。
「今度はもっと真剣にやります、だからもう一度やらせてもらえませんか…?今日じゃなくていいです!明日でも…来週でも!」
必死な説得を訴え続ける、このまま彼女をガッカリさせて期待ハズレのままの結果で終わらせたくないという思いがヴィヴィオを突き動かす。
その思いはアインハルトにも確実に届いており、故に彼女はどう対応すればいいかわからずにいる。助けを求めるようにノーヴェへと視線を向けていた。
「あー、そんじゃまあ…来週またやっか?今度はスパーじゃなくてちゃんとした練習試合でさ…。」
言葉に悩みながらもノーヴェは言い放つ、この状況で下手な事を言えば空気を凍りつかせかねない。その上で考慮した結果がこうなったのだ。
「…わかりました、時間と場所はお任せします。」
「ありがとうございます!」
深くヴィヴィオは頭を下げて感謝の言葉を発した。再び背を向けたアインハルトは無表情を浮かべていた、悲しんでいるようにも受け取れるが真意を読み取る事は難しい。
「よし、話も纏まったから今日は解散ってことにするか。」
「え、えっと…アインハルトさんもそれでいいですか?」
「……構いませんよ。」
話の決着がつけば不穏な雰囲気も消失していく、それがノーヴェの狙いでもあり気遣いでもあった。
そして彼女達は帰宅する為の準備をする。一人の少年を除いて―――。
「ちょーーーっとまったーーっ!!!」
「なんだよ、いきなり…。」
「なにか忘れてない?」
真顔で問いかけるトランクス、それに対してアインハルトは無表情。ノーヴェは二人の少女の顔を見合わせている。
「忘れてないって…ノーヴェ、何かわかる?」
「いや、あたしにもさっぱりだな。」
「忘れてるって…なんだっけ?」
「宿題のことかな~?」
「こらこらー!オレと勝負するって約束だよ。覚えてるでしょアインハルトちゃん。」
ヴィヴィオとリオ、コロナは純粋に忘れているように読み取れるが、ノーヴェは冗談で言い放っているのかヴィヴィオ達と同様なのか読み取る事が難しい。
だがトランクスからすれば後者、つまり本当の意味で忘れてしまっているのだと受け取っている。
「そうですね…。」
「まあ、時間もあれだしそれは明日か明後日ぐらいでいいんじゃねーか?」
「…すみませんが、そうしていただけると助かります。」
試合開始の時間帯は夕暮れが過ぎ去ったぐらいの時間帯、早ければもうこの時間帯には夕飯を取っている頃合いだろう。
だがそれにも関らずトランクスは決して引き下がろうとしなかった。というのも、彼の中に流れるサイヤ人特有の血が騒いでいたのだ。
「ふーん、そんなにオレに負けるのが怖いんだ。」
挑発的な言葉を投げる、ヴィヴィオとアインハルトの手合わせはサイヤ人の戦闘本能を騒がせる要因となっていた。
故にトランクスは今すぐにでも勝負をしたいという本能的な衝動によって突き動かされている。
「あのなー、勝負したいって気持ちもわか…。」
「ま、それも仕方ないか~。この前の勝負もオレが勝ったし、覇王も大したことないね。」
「……わかりました、そこまで言うのなら受けて立ちます。」
流石に言い過ぎだ、とノーヴェが抑えようとする頃にはアインハルトは挑発を真に受けていたのだ。覇王という言葉が重く圧し掛かっている彼女にとって内心の苛立ちは隠しきれずにいる。
無表情を貫いているが体は違う。拳を強く握り締めて真っ直ぐな目線をトランクスにぶつけて凛々しくも言い放った彼女の姿にノーヴェは呆れたような感情さえ覚えてしまっていた。
「そうこなくっちゃ。あ、どうせならヴィヴィオちゃんと二人でかかってきなよ?その方が面白い試合になると思うからさ。」
「わ、わたしまで……?」
「ヴィヴィオも入るの!?」
「二対一になるね…。」
「はあ…仕方ねぇーな、でもこれが最後な。」
「オッケー!よーし、まずは準備運動だ。」
立ち去ろうとしていたアインハルトはコート内に加わり、ヴィヴィオと同じ位置へと歩みを進めていく。若干の緊張感が湧き出ながらも真っ直ぐにトランクスを目で捉えながら。
二対一という理不尽とも感じ取れる勝負方式でトランクスは挑む。―――勝負の行方はどう転がるのだろうか…。
悟空「オッス!オラ悟空!! あいつらすげえな、なんだかオラまで戦いたくなってきたぞ~。」
ベジータ「よし、オレと勝負だカカロット!」
クリリン「お、おい!ここで戦うなよ…。」
ピッコロ「しかし、トランクスのやつめ。あまり調子に乗ってるとイタい目をみるぞ。」
悟空「次回DragonballVivid「これがサイヤ人だ!トランクス、本領発揮!」」
悟天「ボクも戦いたいな~。」