「ルールはさっき言った通りの射撃と拘束はなしの格闘オンリーだ。」
「わかった。…あれ? 大人の姿にならなくていいの?」
トランクスの何気ない発言に対してアインハルトの眉がぴくりと動く。そう反応しても可笑しくはないとノーヴェは表には出さない呆れた感情を抱いていた。
「…貴方の方もあの金色の姿にならないのですか?」
「金色って超サイヤ人のこと? 気が減っちゃった所為で自由になれなくなったんだ。」
あれから何度か超サイヤ人への変身を試してみたが、悟天の時と同様思うように変身できずにいたのだ。そして今のトランクスが持つ気は元々の半分にも及ばず、アインハルトとの戦いで変身できたのは切羽詰って気を限界まで解放した結果である。
「……そうですか。そういうことであれば私も武装形態にはなりません。」
「ふーん、でもそれじゃあ簡単に勝負がついちゃうからさ。今回は左手を使わないであげるよ。」
「えっ……左手を…?」
「…ヴィヴィオさん、彼に油断は禁物です。」
アインハルトが囁くように口にした言葉に対してヴィヴィオは上手く理解する事はできなかった。故に彼女は怪訝な表情を浮かべながらトランクスを不思議そうに見つめる。
彼女から見た印象はトランクスとは格闘技に自信がある少年。予想する実力はアインハルトと互角か、もしくはノーヴェに匹敵するくらいか。その程度の取るに足らない認識なのだ。
やがて二人はトランクスからある程度の距離を取った位置に付けば試合開始の合図とも呼べるノーヴェの声が響き渡る。
「―――レディー・ゴーッ!!」
「「ッッ!!」」
試合は早々にアインハルトとヴィヴィオが地面を走り抜け攻撃に出たのだ、試合開始も間もなくトランクスの眼前には一気に二人の少女が飛び込む。
二人の息を合わせた拳による連撃が次々と絶え間なく降り注ぐ、決して遅くはない速度を持った攻撃の雨は通常の格闘技者であれば避ける事は容易い事ではない。
ヴィヴィオは最初の攻撃に対して加減をしながら次々と拳を振るい続けるがやがてその加減は弱まっていく。アインハルトも更なる速度と攻撃を持って畳み掛けていた。
「ほらほら、こっちだよー!」
「く…っ!」
「う、うそ……!?」
何故なら彼は当たらない。二人掛りでの拳による高速連続打撃に対しても避け続けている。軽やかに余裕を持っていると言わんばかりの動作で彼女達以上の速度で回避しているのだ。
だがその行動自体は挑発であり、アインハルトとヴィヴィオの感情を余計に高ぶらさせ攻撃はより過剰な物へと変貌していく要因となっていく―――!
「おお、やってるッスねぇ…。」
「うん…来て正解だったよ。」
「……っておい! なんでお前等が此処にいんだよ!?」
ノーヴェの後ろには長い茶髪の女性、銀髪の少女のような外見を持つ者もいれば大勢の女性陣が姿を現したのだ。リオとコロナは話についていけず首をかしげて眺めている。
「すまんな、ノーヴェ…どうしても気になるそうだ。姉も一応止めたのだが……。」
「陛下の身に危険が及ぶことがあったら困りますし…。」
「護衛役としては当然。」
「「陛下……??」」
「あー、いや。こいつ等の事は気にしないでくれ…。」
リオとコロナは口を揃えた。大勢の女性陣はヴィヴィオを集中的な視線を浴びせているような気配を見せているがリオとコロナはその意図を理解する事ができない。
唯一、理解していたのはノーヴェだけであり、だからこそ彼女は呆れた表情を彼女達に向けていたのだ。
(当たらない……!!)
一方、アインハルトとヴィヴィオの猛攻は激化の一方を辿る、更に更に更に攻撃と速度は上昇し続け、キレのある高速打撃を幾度となく繰り返し続ける。
だが全てが空振りとして終わっていく。初っ端から息の合う二人のコンビネーションにノーヴェは大したもんだ、と感心の眼差しを向けているが二人の内のヴィヴィオにとってはトランクスの強さに焦りしか覚えない。
「そろそろ体があったまったかな。じゃあ、今度はこっちからいくよ!」
瞬時にトランクスは二人との距離を置いた途端、一気に今まで行動に出なかった攻撃を始める。高速をも超えた拳の一撃がヴィヴィオを叩きつけようと迫り来る刹那――アインハルトは身を乗り出した。
ヴィヴィオの目の前にへと身を置くと同時に強烈な威力を誇る一撃を両手で受け止め持ち堪えようと全身に力を入れた瞬間、アインハルトは不意に体を仰け反らせ勢いよく吹き飛ばされてしまう。
「う、ぐぅ…ッ!!」
「だあっ!!」
「アインハルトさん!? …っ、きゃあああ!!」
唐突な行動の展開に追いつけずにいるヴィヴィオのほんの僅かな隙にトランクスは付け込む、すかさず蹴りを入れられ後方へと地面を擦り合わせる音が流れながらも必死に耐えようとする。
幸いにも出遅れたヴィヴィオが唯一取れた行動は防御だ、トランクスの拳に対しての防御動作が持続し、攻撃が蹴りに代わっただけなのだ。吹き飛ばされる勢いが止めば大きくトランクスとヴィヴィオは距離を開けていた。
「まさか、あそこでアインハルトちゃんがヴィヴィオちゃんを庇うなんてね。」
「今のは危なかったよ…!」
「トランクスって奴、中々やるッスねー…。」
「二人で協力しても相手にならないって感じだね。」
「このままでは陛下が負けてしまうな……。」
圧倒した試合に言葉すら失う光景であり、様々な女性陣がそれぞれの感想を呟いている。アインハルトは大きくトランクスとの距離を作り出されてしまうがヴィヴィオと同様に踏み止まっていた。
単純な戦闘能力は二人合わせた力とトランクスを比較すればどれも彼に圧倒されているのだ。その事実が挑発のせいもあって苛立ちを芽生えさせるが対抗手段が見つからない状況である。
「トランクスくんって強い…! どうやったら勝てるんだろう……?」
「それはわかりません、ですが何か弱点があれば……。」
圧倒的すぎるレベルの違いを埋められるほどの状況を打開する事のできる弱点が存在していれば、アインハルトの脳内は勝利という事象を求めて思考し続ける。
ヴィヴィオ自身もまだ負ける気はないのか、彼女の瞳は輝いていた。トランクスとの勝負を投げていない様子で再び構えを取ると同時にトランクスとの間合いを詰める。
「あのなぁ……アインハルトにヴィヴィオ!もっとこう、協力して戦えぇーっ!!」
「「――――ッ!!」」
ノーヴェの高く鳴り響いた声は二人に届いた、刹那―――アインハルトは急に目の色を変えてヴィヴィオから距離を置いてトランクスの右側へと移行していく。
瞬発力に優れた動作にトランクスとヴィヴィオは彼女の行動の意図を理解できないまま対応しようと試みる、トランクスはアインハルトの攻撃を避けようと動作を起こした瞬間…。
(そうだ…!!)
結果的にトランクスの反対側、左側は隙が生じたのだ。空かさずヴィヴィオは隙が生じている左側へと移行すれば高速の蹴りが振るわれ、アインハルトも同様の行動を起こし左右対照の攻撃を食らわせようとする。
「挟み撃ちか…考えたね。」
単純な格闘戦であれば一人でも可能な業だが挟み撃ちは二人が揃う必要がある、アインハルトとヴィヴィオのコンビネーションは優れているが二人特有の業を今に至るまで成し遂げていない。
「でも、甘いっ!」
「ええッ!?」
だがトランクスには通用しなかった、常人が出し切れないであろう飛翔力を持って挟み撃ちを回避する。
彼は高くジャンプを行うことで蹴りを避け、拳が味方同士で命中するという自滅を企んでいるのだ。それは挟み撃ちの弱点を突いた的確な行動とも言われる動作である事に変わりはないが…。
「――――甘いのは貴方の方です。」
今に至るまでの全ての動作はアインハルトの目論通りであり、彼女は蹴りに急停止を掛けると同時に腰を屈めて一気にトランクスを追うように飛翔。
唐突な動作だがヴィヴィオも急停止を掛けてすかさず一歩出遅れた飛翔でトランクスに対して拳による追撃を加えようと試みる、まるでそれ等の動作は全て計算されたかのように。
「え?え?……うそでしょ~~~!!?」
手足をバタバタと動かすがトランクスにはこの場での対処方法が存在しない、舞空術を使用すればこの状況は難なく乗り越えられるが大幅に気が減った状態では上手くコントロールできないのだ。
(まずいぞ!まだ気を完全にコントロールできてないから舞空術が使えないし、かといってこのまま落ちれば――――――。)
「「はあああっ!!」」
「くっ…!」
勝利は目前と言わんばかりの容赦ない攻撃にトランクスは両手を伸ばし、彼女達の拳と脚を受け止めてしまう。あまりにも軽々しく扱う姿に二人の思考は一時中断して絶句する。
「―――――でりゃああっ!!」
「きゃあああぁぁ!!」
「ぐぅっ…!?」
脚と拳を掴んだまま空中で即座に回転し、二人を同時に地面へと背中から激突させてしまう。予想外の危機を回避したトランクスの額には焦りで冷や汗を流していた。
「ふう~今のはマジで危なかったな。でも、これでオレの勝ち―――。」
「勝負あり!! アインハルトとヴィヴィオに一本!」
「…ふぇ? や…やりましたよ、アインハルトさん!!」
「ええっ!? なんで!勝ったのはオレじゃないの?」
嬉しそうに微笑むヴィヴィオは上体を持ち上げて子供らしい笑顔をアインハルトに向ける、だがアインハルトは納得がいかないと言った怪訝な顔を浮かべており、トランクスもまた不満を持っていた。
「……なぜ私達の勝利なのですか?」
「トランクスは左手を使わないって言っておきながら使ったからだ。」
「そういえば最後で使ってたね。」
「うん、思いっきり使ってた。」
「証拠の映像もあるよ。」
「だから、トランクスの反則負けなのか…。」
当初トランクスは左手は使わないという条件、ハンデを背負いながら戦うと宣言していたのだ。
余裕の表れとも言うべき条件であったが空中での二人の攻撃に両手を使用してしまった事は充分に約束を破る行為と言える。
「ですが…それは本当の勝利ではありませんので、私達の負けです。」
「はぁ……もういいよ。自分の言葉には責任を持たなきゃだしね。この勝負はオレの負けだ!」
「えっ、本当にいいんですか…?」
「うん。元はと言えばオレがハンデを出したからこんな結果になったんだと思うし…だから次はハンデなしでやろうね。」
ノーヴェは何かトラブルが起きると予想していたがその予想はあっさりと崩れてしまう、自然な会話の流れでトランクスは自分で負けを認めてしまったのだ。
「はい、次はもっと強くなってからお願いします!」
「……次こそは、必ず。」
両者の虹彩異色の瞳がトランクスに向けられればヴィヴィオは笑顔を浮かべて、アインハルトは表情の変化がないが何処か悔しさを感じさせる瞳を向けていた。
その後はウェンディ達一味とリオとトランクスが互いに自己紹介を交わして時間は過ぎていく。後にトランクスは何処で住むかの話になるがノーヴェからの提案でナカジマ家という事に決まる、姉妹達にも依存はない。
―――最後にはアインハルトとヴィヴィオとの再戦の約束を交し解散する事になったのであった…。
「ただいまー、なのはママ!フェイトママ!」
「あ、ヴィヴィオお帰りなさい……。」
「ヴィヴィオお帰りー…今日は遅かったね…?」
「うん!ちょっと色々あったの。あ、汗をかいたからお風呂に入りたいんだけど…。」
ヴィヴィオはノーヴェ一同と解散し自宅に帰宅するが出迎えてくれたフェイトとなのはの表情に違和感を覚えて続けようとしていた言葉を止めて首を傾げる。
室内は談義中という雰囲気に包まれ奥にいる悟天となのはが特にその雰囲気を曝け出しているようにヴィヴィオは感じ取ったのだ。
「そ、それが…あはは……。」
「にゃはは、ヴィヴィオ…驚かないでね。実は……。」
「ごめんねヴィヴィオちゃん、お風呂壊しちゃった。」
「………ふえええええぇぇぇ~~~っ!?」
頭に手を添えながら悟天は苦笑いを浮かべながら返答、無論ヴィヴィオの反応は家内のフェイトとなのはが予想した通りの物である。
後にヴィヴィオは風呂の状態を直接目で確かめて見る事となったが予想通り浴槽の状態は完璧に壊されてしまっているのだ。その深刻さだけは彼女の予想を上回っている。
結局、風呂に入る事はできずなのは一家は明日作業員の人達に相談する事になり、直るまでの期間はフェイトの提案により銭湯に頼る事になるのであった…。
悟空「オッス!オラ悟空!! なかなか面白え勝負だったな。」
ベジータ「ふん…相手がガキだと思って油断するからこうなるんだ…。」
ピッコロ「だが、自分の負けを素直に認めるとは…少しは成長したようだな。」
クリリン「ははは。そういえば、さっきブルマさんが呼んでたぜ。」
悟空「次回DragonballVivid「いざ異世界へ!悟空チーム出発!」」
悟飯「魔法の世界…か…。」