ブリキヒーローとかかしヒロイン   作:ホッシー@VTuber

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序幕

  I am the bone of my sword.(体は剣で出来ている。)

 

 炎が燃えている。ゴウゴウと音を立て、全てを燃やし尽くさんと揺れている。

 その炎の奥に私は――地獄を見た。

 誰もが死に、誰もが諦め、誰もが灰になった。

 それが本来の彼の終わりであり、彼の始まりだった。

 

 

 

 

 

 

 

  Steel is my body, and fire is my blood.(血潮は鉄で 心は硝子。)

 

 それは満月の夜。大きな人影と小さな人影が並んで縁側に座り、空を見上げていた。

「■■■、僕■ね、■■■の■■■にな■■かっ■■だ」

 大きな人影は小さな人影に言った。酷いノイズによってその言葉は届かなかったが、その声に覇気はなく、全てを諦めてしまったことはわかってしまった。

 それがきっと、彼の理想(のろい)となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

  I have created over a thousand blades.(幾たびの戦場を越えて不敗。)

 

 「問■う、あ■■■私の■スタ■■」

 薄暗い部屋。目が眩むような金色が視界に広がる。死がそこまで迫っているのにもかかわらず、その姿に息をするのを忘れていた。

 その夜、彼にとって忘れられない運命に出会った。

 

 

 

 

 

 

 

 

  Unknown to Death.(ただの一度も敗走はなく、)

 

 それから彼は理想を追い続けた。

 助けたい。救いたい。護りたい。

 だから、彼は剣を手に取った。血を流した。人を殺した。人に裏切られた。

 正義の味方を目指し続けた結果、彼は救いたいと願った人の手によって処刑された。

 最後の最後まで彼は人を恨むことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

  Nor known to Life.(ただの一度も理解されない。)

 

 死後、契約により彼は『■■■守■』となった。英霊の力で多くの人を救える。そう願った彼に待ち受けていたのは――殺戮兵器としての役目だった。

 殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。

 その騒動の原因となった加害者も。

 その騒動に巻き込まれた被害者も。

 その騒動を見てみぬふりした傍観者も。

 人類の滅亡を回避するために騒動をなかったことにするため、彼は弓に矢を番える。

 ギリ、と(こころ)の軋む音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  Have withstood pain to create many weapons.(彼の者は常に独り 剣の丘で勝利に酔う。)

 

 地獄を見た。地獄を見た。地獄を、見た。

 幾度となく行われる絶望(さつりく)にいつしか彼の理想は錆びついた。

 たった一つ、『過去の英霊になる以前の自分を自らの手で殺す』というタイムパラドックスを引き起こして、己が消滅する可能性だけを希望に、彼は鉄を()ち続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  Yet, those hands will never hold anything.(故に、生涯に意味はなく。)

 

 そして、その機会は得られた。

 運命の夜。彼は弓兵(アーチャー)として召喚され、激しい戦いに身を投じた。

 時には囮として最凶の狂戦士(バーサーカー)に挑み、6つの命を奪って消滅した。

 時には過去の己との戦いの果てに答えを得られた。

 時には強大な敵を前に敗北し、己の左腕を差し出した。

 だが、それはあくまで――記録にすぎない。

 あったかもしれない可能性でしかない。

 何故ならば、彼の記憶(ノート)にはそれが史実だと記されていないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  So as I pray, UNLIMITED BLADE WORKS.(その体は、きっと剣で出来ていた。)

 

 そこは荒廃した丘だった。だが、ただの丘ではない。無数の剣が突き刺さっており、空には巨大な歯車が回転していた。

「……」

 ()はいつの間にかその丘に立っていた。

 何度も地獄を見て、奇跡を渇望して、理想に溺れて、絶望に身を染めた。

 そんな彼の記録を目の当たりにして私はここに立っている。

「――――――」

 視線の先にはゆっくりと丘の頂点を目指す独りの男がいた。

 背中には無数の剣が刺さり、ボロボロになった外套を身に纏い、それでもなお、歩みを止めない。

 彼の理想は借り物なのかもしれない。

 彼の在り方はあまりにも罪深いのかもしれない。

 彼の生涯に意味はなかったのかもしれない。

 彼の死後に希望はなかったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それでも、私は――その背中を美しいと思った。

 たとえ、救われず、認められず、知られず、忘れられても。

 私は彼の生き方を尊いと心が震えた。

 だって、その想いは決して、間違いではないのだから。

 

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