炎が燃えている。ゴウゴウと音を立て、全てを燃やし尽くさんと揺れている。
その炎の奥に私は――地獄を見た。
誰もが死に、誰もが諦め、誰もが灰になった。
それが本来の彼の終わりであり、彼の始まりだった。
それは満月の夜。大きな人影と小さな人影が並んで縁側に座り、空を見上げていた。
「■■■、僕■ね、■■■の■■■にな■■かっ■■だ」
大きな人影は小さな人影に言った。酷いノイズによってその言葉は届かなかったが、その声に覇気はなく、全てを諦めてしまったことはわかってしまった。
それがきっと、彼の
「問■う、あ■■■私の■スタ■■」
薄暗い部屋。目が眩むような金色が視界に広がる。死がそこまで迫っているのにもかかわらず、その姿に息をするのを忘れていた。
その夜、彼にとって忘れられない運命に出会った。
それから彼は理想を追い続けた。
助けたい。救いたい。護りたい。
だから、彼は剣を手に取った。血を流した。人を殺した。人に裏切られた。
正義の味方を目指し続けた結果、彼は救いたいと願った人の手によって処刑された。
最後の最後まで彼は人を恨むことはなかった。
死後、契約により彼は『■■■守■』となった。英霊の力で多くの人を救える。そう願った彼に待ち受けていたのは――殺戮兵器としての役目だった。
殺した。殺した。殺した。殺した。殺した。
その騒動の原因となった加害者も。
その騒動に巻き込まれた被害者も。
その騒動を見てみぬふりした傍観者も。
人類の滅亡を回避するために騒動をなかったことにするため、彼は弓に矢を番える。
ギリ、と
地獄を見た。地獄を見た。地獄を、見た。
幾度となく行われる
たった一つ、『過去の英霊になる以前の自分を自らの手で殺す』というタイムパラドックスを引き起こして、己が消滅する可能性だけを希望に、彼は鉄を
そして、その機会は得られた。
運命の夜。彼は
時には囮として最凶の
時には過去の己との戦いの果てに答えを得られた。
時には強大な敵を前に敗北し、己の左腕を差し出した。
だが、それはあくまで――記録にすぎない。
あったかもしれない可能性でしかない。
何故ならば、彼の
そこは荒廃した丘だった。だが、ただの丘ではない。無数の剣が突き刺さっており、空には巨大な歯車が回転していた。
「……」
何度も地獄を見て、奇跡を渇望して、理想に溺れて、絶望に身を染めた。
そんな彼の記録を目の当たりにして私はここに立っている。
「――――――」
視線の先にはゆっくりと丘の頂点を目指す独りの男がいた。
背中には無数の剣が刺さり、ボロボロになった外套を身に纏い、それでもなお、歩みを止めない。
彼の理想は借り物なのかもしれない。
彼の在り方はあまりにも罪深いのかもしれない。
彼の生涯に意味はなかったのかもしれない。
彼の死後に希望はなかったのかもしれない。
それでも、私は――その背中を美しいと思った。
たとえ、救われず、認められず、知られず、忘れられても。
私は彼の生き方を尊いと心が震えた。
だって、その想いは決して、間違いではないのだから。