戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】 作:ゼフィガルド
惑星ルビコン3において採掘された資源『コーラル』。強力なエネルギー資源であり、情報導体でもあり新時代のリソースを求めて星外からは多数の企業が訪れていた。
企業の競争はやがて兵隊を使った紛争にまで発展し、火薬の臭いを嗅ぎつけた独立傭兵達や土着のルビコニアン達を巻き込んだ闘争に明け暮れていた。これは、そんな闘争蔓延る世界で生きる1人の傭兵の話である。
「コーラルうめっ、うめっ」
ここにいるクソデカ芋虫に赤い何かを塗って貪っている女。スレンダーと言えば聞こえはいい物の、胸も尻もない彼女は強化人間C4-621。対外的には『レイヴン』という名前で知られている傭兵である。
焦点の定まらないロンパリな視線で見つめているのは、まだ見ぬ平和なルビコンの未来かもしれない。
「621。こんな所に居たのか」
そんな彼女を迎えに来たのは、トレンチコートを着た初老の男性『ハンドラー・ウォルター』だった。トリップしている彼女の姿を見て溜息を吐きながら、その腕を引いた。
「仕事の時間だ。お前もブリーフィングに参加しろ」
「おひょひょ」
責任感も緊張感も感じない笑い声をこぼしながら、ウォルターに腕を引かれてブリーフィングルームへと連れていかれた。
「ベイラム本社からの依頼だ。繋ぐぞ」
「こちらG6。聞こえているか! G13!」
「はい」
G13とは、621のベイラムグループの精鋭部隊『レッドガン』内でのコールサインだ。
通信相手であるG6のよく通る声が響きすぎているのか、621の体は右に左に揺れていた。
「先日の惑星封鎖機構の強制査収もあって、調査拠点が失われた。故に『壁』にあるアーキバスグループの調査拠点の奪取と警備隊長であるヴェスパー7の排除を依頼したい」
「めっちゃ壁に執着していますね」
元はルビコン解放戦線と言う土着のレジスタンス達の反抗拠点であり、ベイラムグループも攻略を試みたが、多数の被害と精鋭であるレッドガンの1人を失うという痛手を被った。
「だからこそだ。この壁を取り戻すことは我々の士気にも繋がる。うちからも兵隊を幾つか付ける」
「いや、邪魔」
「付けるのが本社の条件だ」
621は胡乱な視線でウォルターに助言を求めた。助力の為に付ける訳ではないとすれば。
「少しでも自分達が作戦に寄与し『壁』を入手する為に動いた。という実績が欲しいのだろう。アーキバスの精鋭であるヴェスパー7が相手である。という前提を忘れている気もするが」
「G4も意識不明の重体に追い込んどるし、これはもうダメかもしれんね」
コーラルのキマった頭でも否定できる程の意見なのだから、相当にダメっぽいが独立傭兵としては仕事を選んでいられる物ではなかった。
「引き受けましょう。ただし、条件があります?」
「条件?」
「はい。付き添いであるMT達にとある武器を装備させて欲しいのです。なぁに、お宅らベイラムグループの武器です」
~~
壁。ルビコン解放戦線の拠点だったが、現在はアーキバスがコーラルの湧き出る井戸は無い物かと、調査拠点にしている場所でもある。
惑星封鎖機構、ルビコン解放戦線、ベイラムグループと襲撃者に事欠かない場所に派遣されたのは、猜疑心と警戒心においてはヴェスパー内でも右に出る者がいない男『スウィンバーン』であった。
「時代遅れの斜陽グループに教養も糞も無い土人共め。何故、私がこんな所に。スネイル閣下は私のことを信用してと言っていたが、本当は厄介払いじゃないのだろうか」
早速、お得意の猜疑心に駆られていると景気よく爆炎が上がった。襲撃である。哨戒させているMT達には監視用装備を取り付けているというのに、一つも連絡がないので急いで通信を入れた。
「おい! 何が起きている!!?」
「さぁ? なんかこう。暴れているみたいです」
「見て来い!」
「しかし、隊長殿が決めた哨戒ルート外に行くことになりますし」
「貴様! 頭、ペイターか! さっさと見てこい!」
まるで融通も何も利かない部下を叱咤したが、この様子だと多分見に行かないだろう。態々、激戦区に足を向けろというのも酷な話だが、それが企業戦士である。
「嘗めるなよ。私だってヴェスパーⅦだ」
操縦桿を握る手に力が籠る。自分だって番号付きだ。有象無象位を蹴散らす力はあると構えていた所で、背後から複数の反応が近づいて来た
友軍反応のタグが無いことから、この事態を引き起こしている下手人達だろう。意を決して振り返れば。
「おいすー」
「貴様は! 独立傭兵! ベイラムと……」
とまで言いかけて凄まじい衝撃に襲われた。もしも、彼が強化人間でなければ気絶していただろう。と言っても視界は霞み、操縦も覚束ないとなればマトモに動かせるのは口位だった。
「ま、待て! 私はこの部隊の」
ガンガンと揺さぶられる。見れば引き連れているMTからの攻撃も効いているらしい。一体、何をされているかも整理できない状態のまま、ベイラムグループのパイロットは叫んだ。
「ウォオオオ! ベイラムインダストリー最強! ZIMMERMAN最強!!」
閉じ行く意識の中、スウィンバーンが見たのはレイブンもMTも同じ長距離ショットガン『ZIMMERMAN』を装備していたことだった。爆発は鳴りやまなかった。
「持って帰って、身代金とろ」
『レイヴン。ウォルターに何か言われると思いますよ……』
「エア、犬ってのはね。飼い主に獲物を持って帰るんだよ」
『それは本当に犬の仕草でしょうか?』
「そうわよ。あ~、気持ちいい~」
コーラルを吸引し過ぎた為か、薄っすらと見える女性に向けて621は饒舌に話していた。壁の周囲ではZIMMERMANの咆哮が鳴り響いていた。