戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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 皆様に支えられて、10話目に辿り着きました! 沢山のブクマ、評価、感想。ありがとうございます!


依頼10件目:今の子供達ってごっこ遊びとかするんかな?

「最近、惑星封鎖機構の拠点が攻撃されているらしいぜ」

「一番乗りを上げたのはRaDの連中って言うけれど、そんなことはないよな。ツィイー!」

 

 先日のヨルゲン燃料基地襲撃についての話は、ルビコン内で広く知れ渡っていた。惑星封鎖機構の威信にダメージを与え、ファーストペンギンの連中が大量の報酬を略奪したこともあり、我先にと攻撃を仕掛ける企業や独立傭兵が増えており、度胸試しの様にもなっていた。

 

「そんな。私は六文銭やレイヴンに助けて貰っただけだよ」

 

 ルビコン解放戦線でも話題となっており、皆がツィイーと六文銭を持て囃していた。燃料基地程の重要施設では無かった物の、実際に惑星封鎖機構の拠点に攻撃を仕掛けたのは彼女達の方が先だったからだ。

 

「うむ。ヴェスパー7の件と言い、あの傭兵にはどれだけ助けて貰っているか。出来れば、こちらの木に留まって貰いたい物だ」

 

 六文銭も頷いていた。時には企業の手先となって攻め入って来ることもあるが、同時に自分達の力にもなってくれる。何よりも解放戦線の連中にとって喜ばしいのは、皆の妹分であるツィイーと懇意である。ということだった。

 ナイルの介在があったとはいえ、肥大化したミールワームを捨てて来る為に封鎖機構の拠点に突っ込んで来い。なんて命令は、間接的な死刑宣言の様な物であったが、あの独立傭兵は見事に皆を生還させた。

 

「六文銭の言う通りだ。ただ、ドルマヤン帥父とは折り合いが悪そうだが」

 

 依頼の窓口となっている青年、アーシルはツィイーや六文銭に次いでレイヴンとの付き合いが深い。故に、あの傭兵が重度のコーラル中毒者であることも知っていたが、周りの者達は笑い飛ばすばかりだった。

 

「そんなの構わねぇ。コーラルを吸えば強くなるって言うなら、俺達も吸ってみるのも悪くねぇな!」

「そう言えば、例のドーザー達もコーラル中毒者だったな。ひょっとしたら、マジで何かしらの効果はあるのかもな!」

「もぅ、皆。私がレイヴンへの対応でコーラル中毒者の取り扱いに慣れているからって、そんなに面倒見切れないよ!」

 

 ツィイーのジョークにこれまた笑いが巻き起こった。そんな彼らの姿を物陰から見ている者達がいる。

 

「奴らめ。帥父の掲げている大義も知らずに……!」

「よせ」

 

 諦観を滲ませながら、ドルマヤンは自らの男娼であるリング・フレディを諫めた。先日、ツィイーにブチギレて以来、ドルマヤンの評価は芳しくない。

確かにあの一件は子供達をラリラリさせてしまったが、元々は善意で行われた物だったし、皆が食料に困窮していたのも事実だった。

 その上、大人達が食しても問題は無かったのだから取り扱い次第では今も貴重な食料源になっていたはずだ。それを、皆の妹分に死地に捨ててこいなんて言ったら、反感を買うに決まっている。

 

「帥父。よろしいのですか?」

「構わん。元より、この解放戦線の者達が私のことを理解しているとは思わん。一部を除いて、だが」

 

 この組織にいる者達が全員、ドルマヤンに賛成している訳ではない。

 その日を生きていく為だけに身を寄せている者も居れば、企業に対する反抗心から籍を置いている者もいるのだから。

 

「その一部と言うのは」

「フレディ。引き続き、例の猟犬についての調査を頼む」

「は、はい!!」

 

 間違いない、自分は帥父に頼られている。信頼されている。そう思うと、自らの中に無尽蔵のやる気が沸き上がってくる気がした。

 何も知らない他の連中は、世間の情報に一喜一憂しているようだが、本当にこのルビコンを導ける存在は帥父を置いて他にはあり得ない。

 

「それと。私の為に怒ってくれることは嬉しく思うが、それでお前が皆との折り合いが悪くなる方が心苦しい。寛容にな」

「……すみません、俺の器が小さいばかりに」

 

 解放戦線内では大人達以外にも子供達もレイヴンの話題で盛り上がっている。碌な娯楽も用意できない組織内では、噂話も貴重な楽しみだ。

 

「皆―! レイヴンごっこしようぜー! 俺、レイヴン!」

「俺もレイヴンが良い―!」

 

 子供達のごっこ遊びを微笑ましく見守ることにした。物はなくとも、想像力で人は何処までも行ける。そう信じての笑顔だった。

 

「うぉおおおお! コーラルパワー覚醒! コーラル最強! コーラル最高!!」

「何の! こっちも最強コーラルバンバン使うぜ!! コーラルビーム!!」

「なんの! こっちはコーラルジャンプだ!!」

「「…………」」

 

 どうやら、子供達にとってACを始めとした兵器と言うのはあまり良く分からないらしく、断片的にではあるがレイヴンがコーラルを吸いまくっているので滅茶苦茶強いという風に伝わっているらしかった。

 決して、ドルマヤンを挑発している訳では無かったのだが、むしろ無邪気に人の逆鱗に触れまくっているのだから始末が悪かった。

 

「帥父? 子供のすることですから。ハハハハ……」

 

 その時のドルマヤンの寂しそうな顔に対して、リング・フレディは言葉を紡げずにいた。…その夜のことである、解放戦線内からヒッソリと帥父が姿を消していた。

 

~~

 

「ある友人からの私的な依頼だ。この氷原の何処にコーラルが集積しているのか、地点を絞り込む為に情報を収集して来て欲しい。場所はかつて、ルビコン調査技研が建造した洋上都市『ザイレム』だ」

 

 アイビスの火が起きて以来、無人都市になって居ること。先行調査としてドローンを飛ばしたが消息が途絶えたこと、これらを妨害するECMフォグを破壊して来て欲しいという物だった。

 

『今回はマトモな任務になりそうですね』

「まとも?」

 

 スウィンバーンの暗殺や壁の奪還はまだいい。ミールワームを捨ててこいだの、ヤク中と詐欺師をプロデュースして来いだの、ロクでもないミッションばかりが続いていたので、実に作戦らしい作戦だった。

 

「621。ザイレムではECMフォグの影響で通信が使えない。……正直、お前を一人で行動させるのは滅茶苦茶心配だが」

 

 そう考えていたのはS-1317だけではなく、ナイルも同じだったらしい。彼らは621の中にいるエアを知らないのだから、当然と言えば当然だった。

 

「ウォルター、提案だ。俺も付いて行っていいか?」

「駄目だ。ザイレムでは何が起きるか分からない。621単騎なら身軽に動ける」

 

 ナイルもG2として相当な実力者であったが、それでも未曽有の場所に向かわせることは出来ない。というのが、ウォルターの判断だった。

 

『レイヴン。私なら、貴方のサポートが出来ます』

「よろしくね」

 

 ウォルターからのブリーフィングが終わり、ミッションへと向かおうとした直後。再び通信が入って来た。傍受される可能性を考えての暗号通信だった。通信を開く。

 

「独立傭兵レイヴンへの依頼はここで良かったな?」

「お前は、確かにルビコン解放戦線の」

 

 リング・フレディ。ツィイー達と違い、接点のない彼が依頼をしに来るというのは不可解極まりない事態だった。

 

「単刀直入に言う。帥父が姿を消した。これはまだ解放戦線でも一部しか知らない」

 

 あまりにも衝撃的な報告に全員が絶句した。真っ先に思い当った可能性は『誘拐』だ。ルビコンに蔓延るレジスタンスが目障りなのは、どの企業にとっても同じことだろう。ウォルターは、様々な可能性を巡らせながら問うた。

 

「誘拐だとしたら、目星は付いているのか?」

「いや、誘拐だとかそう言うのではないと思う。ちょっと、思うことがあったらしく」

「どういうことだ?」

 

 リング・フレディはおずおずと語りだした。ツィイーにブチギレて以来、組織内での評判があまり良くないこと。コーラルとの共生を目指したが、どうも指針的にそう言う雰囲気でもなくなっていること。

 話を聞いて、一つの心当たりが思い浮かんだ。この場にいる全員が同じことを思ったらしく、一斉に621に視線を注いだ。

 

「ぃえい」

「俺達に徘徊老人を保護しろと?」

「頼む。頼めるのがお前らしかないんだ」

「俺達は慈善家じゃない。依頼料は用意できるのか?」

 

絞りだす様な懇願だった。ルビコン解放戦線はとにかく金がない。組織を上げて、やっと捻出できる程度だ。とてもではないが、個人で払える物とは思わなかった。

 

「フラッドウェルとは話が付いている。相場からすれば、少し低いが」

「……良いだろう。アテはあるのか?」

「これは俺の枕元に置かれていた物なのだが」

 

 送られて来た画像には1枚の紙が映し出されていた。書面には『ザイレムに向かう』と記されていた。

 

「何故、ドルマヤンがザイレムに?」

「俺にも分からない。ただ、帥父はコーラルに対して並々ならぬ関心を持っていた。何かがあるのだろう」

『偶然でしょうか?』

 

 だとすれば、出来過ぎている様な気もしたが、これから向かう先であるというのなら態々断る必要もないと判断した。

 

「俺達も向かう所だ。共同調査になるぞ」

「構わない。むしろ、レイヴンほどの実力者と共に出来るなら光栄だ。どうか、帥父を探すのに協力して欲しい」

 

 短く告げて、リング・フレディは通信を切った。まさかの予期せぬ同行者が出来たことについて、思わずナイルは呟くのだった。

 

「どうにも、お前には人を引き付ける才能があるみたいだな」

「かなぁ?」

 

 それが本人の望んだ物であるかどうかは別として。一同は洋上都市ザイレムへと向かった。

 

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