戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】 作:ゼフィガルド
「AC共に構うな。先行した連中の排除に当たれ」
V.Ⅲオキーフの命令を受けて、LCやMT達がウォッチポイント・アルファへと降下していく。ペイター達も奮戦しているが、ベイラムが本気ならば惑星封鎖機構&アーキバスも本気だった。
頭上では強襲艦による艦隊戦まで繰り広げられており、ベイラム側もMTや汎用兵器を投下し始めたので、大混戦の様相を呈していた。
「えぇい! 数が多すぎる!!」
スウィンバーンもヤケになりながら迎撃に当たっているが、キリが無い。敵機の攻撃だけではなく、時折両陣営の強襲艦から放たれる地表部へのレーザーやミサイル攻撃にも気を割かねばならない。
そこら中で爆発が起き、敵味方問わずにパイロット達が射出されて行く中。戦況は惑星封鎖機構達に傾きつつあった。
『カタフラクトを投入しろ! HCもだ! 連中を蹴散らせ!!』
数機のHCがLCやHM型を引き連れて発進し、地上には巨大なコンテナが投下された。中からは、重戦車型の制圧兵器カタフラクトが姿を現した。
これには、戦場の指揮を務めていたナイルも青褪めた。ペイターはバレンフラワーに対応しており、スウィンバーンや五花海もHC達に対応している。となれば、この怪物を引き留めるのは自分しかいない。
「多重ダムの件と言い!! なんで、俺ばかりこんな目に遭うんだ!!」
とにかく、強敵と相対することが多い彼としては嘆く外なく。彼はディープダウンを走らせ、カタフラクトへと向かった。
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惑星ルビコンで作戦が行われている最中。星外では1隻の船から3機のACが発信していた。タンク級2機に作業用のACフレームで構成された二脚の機体。彼らに向けての通信が入る。
「シャルトルーズ、キング、レイヴン。現在、惑星封鎖機構はバスキュラープラントの防衛に戦力を割いています。修繕されたステーション31から大量の艦隊が発進していくのが見えました。何度でも潰してやりましょう」
「まさか、惑星封鎖機構が不法侵入者である企業と手を組むとも思わなかったが、それ以上にベイラムがこのルビコンでの競争に躍り出るとはな」
キングの予想では、惑星封鎖機構から鹵獲した兵器を用いてアーキバスがルビコンを席捲するという風に考えていただけに、現在の状況は想定外と言う外なかった。
「例の小鴉ね。アレのお陰で互いのエースパイロットの消費も少なく済んでいるのも大きいんでしょう」
シャルトルーズがより細かく現在の状況を分析して行く。本来ならばAC同様に使い捨てにされるパイロット達が生き残っていることも大きな点だった。
でなければ、地上で戦っているベイラム部隊は指揮官不在の中、惑星封鎖機構の兵器群に圧倒されていたことだろう。
「だが、そのおかげで俺達はこうして任務に挑める。今度こそ、奴らにルビコンから手を引かせる」
僅か3機。1つの組織を相手にするには心許ない数ではあるが、実力は十分だった。アリーナの上位ランカーに、彼らと比肩するだけの力を持つパイロット。
以前もステーション31に襲撃を掛け、ルビコンの包囲網に穴を空けた経緯を持つ。あの頃より、惑星封鎖機構は疲弊しているはずであり、完全に叩きのめすなら今しかない。という判断だった。
「見えてきました。防衛戦力も確認。注意してください」
拠点防衛用に、大量の火器を積んだHF型LCや長距離狙撃ライフルを装備したLCの姿も見られた。
キングとシャルトルーズが引き金を引く。タンク級のACに載せられた火力が惜しみも無く放たれ、ステーション31でも戦いの火蓋が切って落とされた。
――
ウォッチポイント・アルファの作戦指示を出していたケイト・マークソンが滞在するLOCステーション31では、無機質なシステム音声が現状を報せていた。
『ただいま、当施設付近にACが接近しています。対象はアスタークラウン、アンバーオックス、ナイトフォールの3機。以前、この拠点を襲撃して来た『ブランチ』のメンバーです』
「そうですか。地上部で激戦が繰り広げられると想定して、こちらに来たのですね」
かつて、このステーションは『ブランチ』のメンバーによって襲撃され、惑星封鎖機構の監視網を引き裂かれたことがある。今は修繕され、拠点として機能しているが、ここを破壊されれば都合が悪い。
今は物量でアーキバスを従わせているが、ここを破壊されたら主従関係が逆転しかねない。だからこそ、襲撃を掛けて来たのだろう。強襲艦も含めて多くの戦力がルビコンに投下した後を見計らって。
『対処して下さい』
「『AAP02:PALLAS』を起動してください」
『了解。超大型防衛無人兵器『AAP02:PALLAS』を起動します』
しかし、ケイトにも備えが無い訳では無かった。ステーション31に2つの巨大なコンテナがぶら下げられていた。小さな方のコンテナが開かれると、中から超強大な質量を持った物体が姿を現した。
そう表したのは、兵器と言うには余りに無骨だった体。クレーターだらけの隕石とも小惑星とも取れない物質に無数のレーザー砲とブースター類を取り付けただけの物。封鎖機構のパイロット達に入った通信は悲鳴にも近かった。
「全員! 打ち尽くした後に逃げろ!! 針玉が来るぞ!!」
既に弾を使い果たしていた者達は一斉に逃げだし、使い切っていない者も武装をパージした。
彼らが撤退するとの入れ替わるようにして、赤い粒子を撒き散らしながらパラスが進み出る。取り付けられた無数の砲門が紅色に光った。
「来るぞ!!!」
キングが叫び、全員がスペースデブリの物陰に避難した瞬間。宙域が赤光に染まった。縦横無尽にレーザーが走るだけではなく、ある程度の指向性を持ったエネルギーの塊が周囲のデブリに着弾しては爆発していた。
「バカげている」
シャルトルーズも悪態を吐く外ない。何よりも、惑星封鎖機構がコーラルを用いた兵器を使用して来ることが想定外だった。
もはや、秩序の番人であるという体裁を守る気さえも無いのか。あるいは、そこまで手を汚す覚悟をして、この場に挑んでいた。
「攻撃の合間に……いや。駄目だ。途切れる気配が無い」
レイヴンがナイトフォールで一撃離脱も考えた様だが、どうにも針玉と呼ばれている兵器にはエネルギー切れと言うのは無縁らしく、常に攻撃を続けていた。
「回り込むしかないにしても。どうやって?」
相手にしないというのが一番の解であったが、キングとしても如何に回り込むべきかという手段が見つからない。間断なく続く攻撃によって周囲のデブリが破壊され、隠れる場所も無いからだ。
「一旦、引き返そう。連中がこんな兵器を持っていたなんて予想外だった」
レイヴンからの提案に3人は押し黙った。惑星封鎖機構が戦力を地上へと集中させている今が絶好のタイミングだというのに。ここで逃げたら、次のチャンスはないかもしれない。
だが、現状は閃きや小細工でどうにかなる相手では無かった。オペレーターは苦し気に答えた。
「想定をはるかに超える戦力が出て来ました。無策で突入するのは自殺行為です。作戦を中断します」
好機に釣られて、命を落としたらそれまでだ。3機は作戦宙域を離脱し、母艦へと引き返して行った。そして、帰投してレイヴンが口を開いた。
「このまま、ウォッチポイント・アルファに向かう。少しでも惑星封鎖機構とアーキバスの戦力を削る。2人は母艦の護衛を」
「分かった」
キングが頷くと、レイヴンを乗せたナイトフォールは射出用のポッドに詰め込まれて、ルビコン3に向けて投下された。目的地はウォッチポイント・アルファだ。
「頼んだよ」
シャルトルーズ達は近隣に惑星封鎖機構からの追手が差し向けられていないことを確認しつつ、徐々に離れていく。その傍ら、オペレーターは通信を開いていた。
「こちら『ブランチ』。聞こえますか? ハンドラー・ウォルター」