戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】 作:ゼフィガルド
本来、深度2から先へ行く為には隔壁を解錠する必要がある。そのロックは、『執行者』と連動されており、進む為には交戦を余儀なくされるはずだが、条件を踏み倒そうとしている。
『いや、そう考えれば先のトラップはむしろ有難かったかもしれんな! こうして、我々に練習の機会を用意してくれたのだから!』
「ご友人。中々に良いジョークです」
本来であれば、大型機の攻撃力と機動力で侵入者を翻弄しているはずだが、『執行者』自身が目的へと向かわざるを得なくなっている。そして、行動が制限された機体を見逃す程、ミシガンもレッドも甘くはない。
「どうした! 俺達のことが目に入っていないか! 喜べ! どうやら、コイツはお前にお熱の様だ!」
一切の武器を持っていないというのに、アサルトブーストの加速を乗せたキックだけでミシガンは戦っていた。
ライガーテイルの重量から繰り出される攻撃により態勢を崩した所で、レッドが追撃を入れる。ベイラムの象徴、魂と称しても差支えの無い程の傑作武器『SG-027 ZIMMERMAN』の散弾が、『執行者』の装甲に食らいつく。
「ブルートゥ! やるべきことをやれ! お前の背中は私達が守る!!」
レッドガン部隊の矜持を見せられては、ブルートゥの心意気も燃えざるを得ない。先に声を上げたのはカエサルの方だった。
『ブルートゥス! 開くぞ!』
2人の手腕によって、ロックが破られた。本来の手順を無視して隔壁が開かれ、先へと続く道が出来た。こうなれば、いよいよ戦う理由は無い。
ミシガンとレッドも彼の意図を組んだのか『執行者』をスタッガーへと追い込んだ瞬間、アサルトブーストを吹かして部屋の外へと向かう。同時に再び隔壁が閉まろうとしていた。
『貴様はそこで俺達を見送っていると良い! 間抜けめ!』
「うぉおおおおおおおおお!」
レッドのハーミットは特に問題も無く駆け抜けたが、ミシガンのライガーテイルは交戦した損傷が原因か、機体が軋みを上げていた。だが、彼の判断は早かった。
「邪魔だ!」
彼は残された腕部をもパージして機体の軽量化を図った。その甲斐もあって、彼が潜ると同時に隔壁は閉ざされた。後方では苦し紛れに放ったミサイルやレーザーの轟音が響いていた。
「問題はこれからです。時間が経てば、アレは隔壁を突破してくるかもしれません。その場合はどうしましょうか?」
『それに。引き上げる場合はどうするかという問題も残っているぞ?』
バスキュラープラントを奪還したとしても、帰還と言う問題が残っている。この先にも戦力が配置されていることを考えれば、無視できる話ではない。
「困ったな。エンゲブレト坑道へと続く道は、ベイラムで封鎖してしまったからな」
レッドも作業に従事していたのか、声色には多少の後悔があった。防衛のことを考えれば、外部からの侵入経路を潰すというのは極自然なことだった。
「当時の判断に許可を出したのは俺だ! お前が気にすることではない!」
『この男。口は悪い癖に気遣いが随所にみられるな』
ミシガンが上司としての鑑を発揮しつつ、深度3へと進んでいく。侵入者を阻むレーザートラップも機能を停止しており、すんなりと降下出来た。だが、ここでレッドが違和感に気付いた。
「おかしい。ミールワームがいないぞ」
「そうですね。以前、ベイラムと共に撤退した時には壁や天井に這っているのを見掛けたのですが」
ブルートゥもこの周辺には大量のミールワームが生息していたことを憶えている。コーラル集積の近くということもあって、漏れ出たコーラルを享受している者達で溢れかえっていたハズだが、姿が見当たらない。
「ひょっとしたら、G13の奴が引き連れて行ったかもしれんな。奴の機体はコーラル粒子を発していたハズだ」
まさかとは思ったが、ここにいる者達はミールワームの不可思議な生態を見せつけられたことがある者達だ。その上、レイヴンは普段から色々と弄ったり、食したり、可愛がったりもしているので引き連れていく位は本当にやりそうな気がしていた。……ミシガンの突飛な予想は、実際に起きている訳だが。
「万全の状態とは言い難いですし、G13やイグアス先輩の行方も気になりますが……」
APと弾薬も消費し、ライガーテイルに至っては動くかどうかも怪しい。だが、補給も撤退も望めそうにない。進むしかなかった。
ミールワームもおらず妨害も無かったので、拍子抜けするほどあっさりとコーラル集積へと辿り着いた。だが、そこでは異常が起きていた。
大破した機体や残骸が散乱しているのは良い。何かしらの交戦が発生していたのだろう。不自然なことではない。問題は地面を蠢く存在についてである。
「ミール、ワーム?」
異常に肥大化したミールワームが地を這って移動していた。あるいは、大破した機体に集り、モゴモゴと口らしき部分を動かしている。何を食しているかは想像したくもなかった。
『刺激しない様に進んだ方が良さそうだ。奴らは、かなり気が立っている』
「ということです。総長、ご友人。見つからない様に回り込みながら進みましょう」
配備された惑星封鎖機構の戦力と戦わずに済む。というのは幸運かもしれないが、話し合いの余地も手加減も存在し無いだろう生物が跋扈している状況と言うのは、もっと不味い状況だったかもしれない。
大破した機体だけではなく、潰された同胞達の残骸をも食らいながら、ミールワーム達は何処かへと向かっている。
「もしや、バスキュラープラントに?」
「あり得ますね。そもそも、ルビコニアンデスワームもここを目指していたのですから」
レッドの推測にブルートゥが頷いた。ミールワームはコーラルを主食としている。故に、餌のある場所へと向かって行くのは本能とも言えるだろう。特にバスキュラープラントは、ルビコンにおけるコーラルの集積場所である。
先へと進めば進むほど、ミールワームの数は増して行く。中には、栄養豊富状態になった者もいたのか、小型版ルビコニアンデスビートルへと変態している個体も居た位だった。
大橋を進み、落ちて潰れる個体も居たが気にせず進んでいく。まるでルビコンが秘めたる意思を見ている様だった。そして、悉く残骸が転がっているのを見るに、惑星封鎖機構や企業ですら止められない物になっている様だった。
「まさか、最終的にコーラル競争の勝者がミールワームになるなんて、バカげたことにならんだろうな。流石に俺でも笑えんぞ」
珍しくミシガンが引き攣った顔をしていた。見つからない様に少しずつ進んでいくと、彼らはとある場所でピタリと止まっていた。同時に、ブルートゥとカエサルの耳に聞き慣れた声が飛んで来た。
『まさか、オービット同士でコーラルによる障壁を作成して……。レイヴン! 彼は、疑似的にですが『IB-C03W4:NGI 028』のシールドを再現しています!』
エアの声だった。バスキュラープラントの根元では、V.Ⅰフロイトがレイヴンとイグアスを相手取っていた。
戦場には凄まじい数のオービットが舞っており、ミールワーム達も本能的に生命の危機を感じていたのか崖から降りようとしない。しかし、後続の者達に追いつかれる形で押し出され、落ちていく個体の姿は確認できた。
『ブルートゥス。加勢するぞ!』
「えぇ! 少しでも、ターゲットを拡散させましょうか!」
「私も行くぞ!!」
ミルクトゥースとハーミットが降下する。流石に、ライガーテイルの機体の状態で加勢に行ったとしても足手まといにしかならないと判断したのか、ミシガンはその場にとどまった。
だが、何か出来ることは無いかと考えた。今の状況は特殊と言う外なく、動くことしか出来ない機体でも出来ることは在る筈だと。背後で次々と押し出され、落下していくミールワームを見ながら考えていた。