戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼115件目:虫を弄る。子供にはよくある話だ。

 レイヴン達がバスキュラープラントで大騒ぎしている様子は、遠方のドローンから撮影されていた。各勢力、この状況にはやはり興味があるらしい。

 特にオーバーシア―としては目的の要である施設がどうなるかが気になっていたが、送られて来た映像を見て首魁であるカーラは爆笑していた。

 

「やるねぇ、ビジター! 蜂(ヴェスパー)と言い、虫に好かれるみたいだ!」

「蝸牛も混じっているみたいだが」

 

 共に動画を眺めていたラスティも笑いを浮かべていた。あの冷血漢と言われた男が、こんなに必死こいて動いている様子を見たことが無い。

 ただ、笑ってばかりいられる状況でもない。ザイレムの修繕作業に当りながらも、スッラは懸念を口にした。

 

「だが、戦いの余波でバスキュラープラントが損傷したらどうするつもりだ? 万が一、コーラルにでも誘爆すれば、どの勢力の思惑も破綻するぞ」

 

 企業からすればコーラルの損失となり、オールマインド達としてもコーラルリリースの成就が遠のき、オーバーシアーからしても不完全燃焼と言う形で、火種を残し続けることになる。

 

「だが、あのビートル達はいずれにせよ早めに排除しなければならない。バスキュラープラントは構造上、あまり頑強ではない。工期を短縮する為に、先端に行けば行くほど細くなっている。今の所は大丈夫だが、いずれビートル達が進行して行った末には倒壊する可能性もある」

 

 この中で、最も建築物に関しての造詣が深いダナムが言うのだから、どちらにせよこの作戦は避けられない物だったのだろう。

 未だに映像内ではビートル達がレイヴンへと殺到しており、その様子をタブレット内から見ていたオールマインドは溜息を吐いていた。

 

「所詮は虫けらですね。その身にコーラルを宿しながらも、目先の性欲のことしか考えられないとは。ドルマヤン、どう思います?」

「私に対する風当たりが冷たくないか」

 

 先日の性癖暴露一件以来、ドルマヤンに対する彼女の風当たりは冷たい物になっていた。勿論、この嫌味も先日の一件に紐づけてのことだ。

 

「そうだぞ。コーラルを飲んだら、コーラルのことだけ楽しむんだよ。性欲に負けるとはだらしねぇ奴らだ」

 

 コーラルの服用に関して一家言のあるラミーは、自らの矜持を見せつけるようにしてパイプに入れたコーラルを吸引していた。ヤク中の戯言ではあるが、この場においては奇妙な威厳を放っていた。

 

「カーラ。やはり、ルビコニアンデスビートルが頂上を目指すのは成層圏や空気の薄い場所、あるいは密閉空間に近しい状態ならばコーラルが増殖するという特性を把握してのことなのか?」

 

 余計なことに話が逸れそうになったので、師叔であるフラットウェルが問うた。彼もある程度の教授を受けているが、やはりこの場において最もコーラルの特性を把握しているのは、カーラに他ならない。

 

「予想としてはそんな所だけどね。でも、本当に正しいかどうかは分からない。セリア、アンタの方でも何か分からないのかい?」

 

 彼女の疑問に答えるようにして、重量物が動いた。以前、ドーザーが酔った際にデザインとIAシリーズにも使われていたコーラルへの適合技術を用いて作りだされた義体だ。

 

「私も分からない。ただ、漠然と導かれる事しか分からない、のだ。ちょっと、この語尾どうにかならない?」

「外装にばっかり金掛けて、内装に金掛けられなかったんだろさ」

 

 本当に見た目だけに全振りしたのか、搭載されているマイクなどは粗末な物だった。中にセリアが入ってようやく動かせる代物であり、電子音声も旧世紀のソフトを使用している有様だった。

 押し込められている感は否めない物の、そんな彼女をフォローする様にドルマヤンは優しい声色で語り掛けた。

 

「大丈夫だ、セリア。その舌ったらずもまた可愛らしい所だ。拙さを不完全さと切り捨てるのではなく、いとしく思えるのもまた人間の寛容さだ」

「サム……のだ」

「は?」

 

 急にラブコメを始めた二人とリングフレディと言う間男を放置して、一同はモニタを見ていた。乱闘現場からオキーフは既に脱している様だった。

 ただ、かなりの数のルビコニアンデスビートルが同士討ちと喧嘩で数を減らしていた。これに加えて、スネイルの奮闘も大きかった。

 

~~

 

 ルビコニアンデスビートル。ミールワームが変態した姿であり、外見は甲虫の様であるが、特段相似した生物が居る訳ではない。その外殻は堅牢であり、ACサイズの兵器では有効打を与えづらい。

 また、頭頂部から生えた角からはコーラル性のレーザーを放ち、体の各所からは自らの内部を走るコーラルを用いたミサイル……と称してはいるが、弾頭を用いない指向性のエネルギー弾を放ったりなど、自然から生み出された物とは思えない位に攻防を兼ね備えた性能を持っていた。

 

「貴様らのデータは私の中にもある!」

 

 だが、データの収集と解析はスネイルも得意としている所だった。柔らかい場所が何処かとなれば、甲殻に覆われていない腹の部分等もあるが、バスキュラープラントと言う構造物に張り付いている以上、狙い辛いことこの上ない。

 甲殻の隙間を狙う。というのも現実的ではない。少しでも狙いを外せば、弾かれてしまうからだ。故に、最も狙いやすく効果的な場所と言えば。

 

「ここだ!」

 

 今回の作戦に当り、デスビートル内部のコーラルへの誘爆を避けるために『HAL826』の装備は特別仕様な物になっている。EN兵器は外され、ベイラムや関連企業の実弾系が主な武器となっていた。

 現在の『HAL826』』の左腕部には『PB-033M ASHMEAD』パイルバンカーが装着されていた。そして、その杭をルビコニアンデスビートルの肛門に目掛けて打ち込んでいた。

 

『うわぁ……』

 

 エアは絶句していたが、これは決してふざけている訳ではない。ルビコニアンデスビートルは構造上、前進は行いやすいが旋回などは不得手としている。なので、彼らの攻撃を避けるという意味でも背面からの攻撃は有効だった。

 加えて、如何に外殻が堅牢だとしても。内臓まではそうはいかな。そう言った意味での肛門からの座薬パイルバンカーの見た目はどうあれ、ルビコニアンデスビートルを撃退する上では最も合理的な方法ではあった。

 

「多少のフェロモン程度で性欲を解放させる害虫共め! 分別を弁えろ!」

『自分から差し向けといた挙句、その説教は酷くありませんか?』

 

 エアの諫言が届く訳もなく、スネイルは次々とルビコニアンデスビートルを叩き落していたが、それ以上にレイヴンに殺到して来るので彼女もまた対応に追われていた。

 

【うーっ。やらせろ!!】

「うるさくて、耳が痛い……」

 

 幾ら落としても、まるで意見を変えることのないビートル達のタフさにレイヴンも辟易していた。そして、そんな激闘を潜り抜けて辿り着く奴もいる訳で。

 

「エイシャァアアア」

「こしょこしょ」

 

 覆い被さって来たデスビートルを相手に武器をぶっぱなすのではなく、腹部をマニピュレーターでツゥーっとなぞり、徐々に下腹部へと向っていく姿は何処か蠱惑的な物さえ感じた。

 張り付いている脚部に籠る力が抜けて行き、自身の体重を支えきれなくなったのか、そのまま落下していく。耳年増なエアが何とも言えない感情を抱いている中、レイヴンは多少驚いていた。

 

「ミールワームにしていたくすぐり。利いた!」

『レイヴン。あまりよろしくない行動なので控えましょう』

「なんで?」

 

 ENも弾薬も使わない合理的な行動ではあったが、エアの保護者的な感性が何処か如何わしさを感じていたからというのもあった。

 果たして虫の知能で、彼女の行為を理解していたかはともかくとして、より一層のルビコニアンデスビートルが殺到して来た。

 

『こんなミッションでも無ければ1匹残らず焼き払っていましたのに』

「エア、怖い」

 

~~

 

 下方で馬鹿共がバカをしている間、オキーフはバスキュラープラントの先端へと辿り着いていた。今もなお、オートマティックで延伸工事は続いている。

 

「こちら、オキーフ。本部、聞こえるか? バスキュラープラントの先端に辿り着いた。指示を頼む」

『ご苦労です。オキーフ。では、手筈通りに』

 

 彼の通信に応えたのはケイト・マークソンだった。彼は指示に従い、バスキュラープラント全体のプログラム部分にアクセスをしていた。

 

「防衛システムの一つ、迎撃プログラム起動。吸い上げたコーラルの何割かを使うが、それでもいいのか?」

『はい。出し惜しみをして、全てを失う程馬鹿らしいことは在りませんから』

 

 言っていることは道理だった。バスキュラープラントにはいざという時の為に防衛機構の一つとして、吸い上げたコーラルを用いた迎撃プログラムが存在している。しかし、オキーフとしては疑問だった。

 

「あのルビコニアンデスビートル達を相手にこんな物が使えるのか? 有効かどうかも疑わしい」

『何も、焼き払うだけが目的ではありません。このバスキュラープラントが組み上げたコーラルを消費することで、彼らの関心を薄れさせることも目的にあるのです。一体、何を躊躇っているのですか?』

 

 彼女の言うことは最もな風に聞こえて、何か見落としがある様な気がしてならない。情報部のオキーフとしての勘が、警鐘を鳴らし続けていた。

 

「(果たして、この勘に従うべきか?)」

 

 レイヴンやスネイル達もまとめて焼き払うことになるが、彼の感心はそちらではない。もっと、重要な何かが抜けている様な気がしてならなかった。

 ケイト・マークソンと通信を続けながら、彼は抜け落ちた可能性について模索していた。

 

「(そもそも。奴らに、コーラルによる攻撃は……有効だったか? ケイト・マークソンが把握していないとも思えない。オールマインドじゃあるまいし)」

 

 そして、関係のない流れ弾が全く知らない所にいる彼女に直撃していた。

 

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