戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼116件目:ミール

 LOCステーション31。ルビコン3における惑星封鎖機構の衛星拠点であり、LCとパイロットを載せた輸送艦や強襲艦の宇宙港とも機能しており、『パラス』と呼ばれる巨大兵器を格納したコンテナと。それよりも更に一回り大きいコンテナが建造物の下部に吊り下げられている。

 これらの管理、指示を出しているケイト・マークソンは有機質の体を持たない。惑星封鎖機構が誇る技術力により、外面から内装まで全てが充実した義体を使っていた。RaDのハリボテとは訳が違う。そんな彼女に話しかけたのは、フロイトだった。

 

「さっきの話を聞いていたが、ミールワームに対してコーラルを浴びせるのは逆効果じゃないか?」

 

 ミールワームを大量のコーラルに曝せば、何が起きるか。というのは、ルビコンで行われて来た作戦を見ればすぐにでも分かることだ。

 先のコーラル集積では、レイヴンが意図的に浴びせたことにより惑星封鎖機構の戦力は壊滅の憂き目にあった。それ以前に遡れば、ルビコニアンデスビートルと言う怪物を生み出している。

 

「フロイト。貴方は『ミールワーム』と言う言葉に何を彷彿とさせますか?」

「そうだな。『ミール』だから食事だな。食用のワーム。何もおかしなことは無い」

 

 ルビコニアン達の栄養源となっていることも考えれば、名称自体に何ら違和感はない。敢えての疑問があるとすれば、こんな質問をされたことだろうか。

 

「そうですね『アーキバス』の経済圏。旧時代には『ヨーロッパ』と言われていた者達からすれば『ミール』は食事と言う意味です。ですが、ベイラムの『大豊』付近における経済圏では少し意味が違うんですよ」

 

 ケイトがモニタに表示したのは旧世紀の宇宙ステーションの写真だった。昔は宇宙に衛星を打ち上げるだけで巨額の費用が投じられ、国を興して開発競争をしていたという位なのだから信じられない。

 

「これは?」

「今はベイラムの経済圏として統合されてしまいましたが、かつて存在していた2つの大国が宇宙開発なんて物に競争していた時代。人々は惑星から出て、生息範囲を拡げる為の揺りかごを作った。外に出て帰って来るだけではなく、そこから生きていく足掛かりを得ようとしていました」

 

 観測用の衛星を打ち上げるだけではなく、宇宙に出て帰って来るだけではなく。宇宙で人が過ごせる環境の模索があって、昨今の惑星間を行き交う技術が積み上げられていった。というのは、座学でも習う様な話だ。フロイトからすれば、退屈な話でしかない。

 

「惑星封鎖機構は学校でも開くつもりか?」

「良いかもしれませんね。思想の教育には打って付けです。ですが、人々が外に出てからは碌でもないことばかりです」

 

 生活範囲が広がれば争いは宇宙の何処でも起こる話になる。これらを平定する為に惑星委封鎖機構が生まれたが、彼らの権威と力をもってしても企業や人々の欲望を統制し切ることは難しい物だった。

 

「それが『ミール』と、どう繋がって来る?」

「この人類初の宇宙ステーションの名前を『ミール』と言うんですよ。『大豊』付近の経済圏では、この言葉は『食事』ではなく『平和』や『世界』と言った意味を持つんですよ」

「たかが、虫如きに大層な意味を見出すんだな」

「いいえ。大層な意味ではなくなります。何故なら、彼らが『平和な世界』を齎してくれますから。そう考えて、態々ばら撒いたのですから」

 

 ばら撒いた。ということは、このワーム達は自然に発生した物ではないらしい。他の惑星にも食料として出回ることもある虫達に、どの様な思惑を託したというのだろうか。

 

「何を目指すつもりだ?」

「人々は戻らねばなりません。『ミール』を打ち上げ、湧いていた時の様に。惑星も宇宙を跨ぐことも無く。これ以上の過ちを繰り返さない様に」

 

 モニタの映像が切り替わる。そこには、バスキュラープラントの防衛機構を起動させるか戸惑っているオキーフの姿があった。

 ケイトがコンソールに手を翳す。躊躇っていたハズの、オキーフの機体が動き出し、バスキュラープラントにアクセスを試みていた。

 

~~

 

『このコーラル反応は!? レイヴン! スネイル! 来ます!』

 

 ルビコニアンデスビートル達と乱闘を繰り広げている中、バスキュラープラントに起きた異変に真っ先に気付いたのは、エアだった。

 外壁からコーラルが漏れだしたか思った瞬間。まるで、間欠泉の様に赤い潮流が噴出した。

 

「スネイル!」

「分かっています!」

 

 続いて反応したレイヴン達は直ぐに外壁から距離を取った。張り付いていたルビコニアンデスビートル達は紅い炎に焼かれるかと思いきや。

 

「キギィイイイイイイ!!!」

 

 耳を劈かんばかりの鳴き声を上げながら、しかし。焼き払われていなかった。

 黒い甲殻が捲れ、中から白く透き通った姿が現れた。背中が開き、赤い翅が現れた。彼らは這うことを止めて、飛翔を始めた。

 

「何が。何が起きている!?」

 

 スネイルが今まで採取したデータにもない変化だった。一斉に上昇を始める彼らを見て、レイヴンがポツリと呟く。

 

「届け。届け。だってさ」

『何処へと?』

 

 もはや、ルビコニアンデスビートル達はレイヴン達にも興味を無くして上昇していく。そして、建設途中の最先端部分まで辿り着いた時。彼女達は自身の正気を疑うかのような光景を見ることになる。

 

「遅かったな」

 

 そこにはオキーフが滞空していた。バスキュラープラントからは脱し、遠巻きに眺めている。

 最先端部分。宇宙にはまだ届かない分の距離を埋めるようにして、ルビコニアンデスビートル達自身が重なり合い、土台となり、先端を伸ばして行っている。有機物で延伸された先端はあまりにグロテスクな物だった。

 

『な、なんですか。コレ……』

 

 変異波形と言う存在すら霞むほどの異常。ただ、途中で数を大きく減らしたこともあり、宇宙に届くほどは延びていなかった。

 もはや、通信を起こしても何を刺激することもあるまいと。3人全員が通信を入れると、同じ場所へとつながった。

 

「皆さま。ご覧いただけましたか?」

 

 声の主は、ケイト・マークソンだった。レイヴンとスネイルの通信にも入っていることから、この事態は彼女の手引きである物らしい。スネイルが問うた。

 

「これは一体、どういうことですか?」

「ミールワーム達が宇宙を目指しているのです。御覧の通り、彼らはコーラルを豊富に蓄えて外へと出て行く。そして、真空に曝され内部から増殖して行くことでしょう。宇宙は彼らに覆われるのです」

「何の為に……」

 

 イカレているとしか思えない。コーラルリリースの様に解き放つにしてもベクトルが違う。スネイルもオキーフも彼女の意図が読めなかった。そんな中、レイヴンが口を開いた。

 

「閉じ込める為?」

「はい。貴方達の様なケモノ達が外に出て来ると争いばかりを巻き起こすので。もう出て来ないで貰えますか? 今回の事件を考慮した結果。人類は、秩序に対する天敵だということがよく分かりましたので」

 

 もしも、この怪物達が宇宙に跋扈すれば、人類は惑星に押し込められることになるだろう。惑星封鎖機構は自らの名を体現するつもりであるらしい。だが、スネイルは鼻で嗤っていた。

 

「バカげている。宇宙に届くまでは虫共の数も足りていない。私達が始末した分も考えれば、貴様の提案はエラーで終わる話だ」

「あら。一度見ていた癖に、分からないのですか?」

 

 スネイルの嘲笑に対して、ケイトもまた侮蔑を伴った返事をした。

 土台となっていたルビコニアンデスビートルの肛門から朱色の卵がひりだされた。それは生まれた時点で既に朱色の甲殻を纏っており、親の体から少しずつコーラルを摂取すると肥大化していき、最終的には自身も延伸する為のパーツとなっていた。

 

「スネイル。奴らには産卵機能があるんだ。オスメス問わずにな」

 

 かつて、オキーフは討伐作戦の際に見たことがある。自らの分身を生み出し、手勢を増やして対抗して来た姿を。ケイトが続ける。

 

「このバスキュラープラントは惑星封鎖機構とアーキバスにより共同で管理させて頂きます。ミールワーム達の飼育場として、では愚かな皆様。ごきげんよう」

 

 そして、通話は一方的に打ち切られた。次いで、レイヴンとスネイルにウォルターから通信が入って来た。

 

「何が起きている?」

「説明をする為にいったん戻る。どうやら、私達はこの惑星に閉じ込められることになりそうです」

 

 この状況を観察しようと、甲殻などの偽装を取り付けたドローンが、スネイル達の脇を擦り抜け接近した瞬間。バスキュラープラントに集ったルビコニアンデスビートル達から一斉に攻撃を受けて爆散した。もはや擬態も通じないらしい。

 

「スネイル、レイヴン。俺も連れて行ってくれ。もはや、アーキバスには戻れない」

「良いでしょう。ただし、バックドア等が仕込まれていないかを検査してからですが」

 

 今の状態で近付いても碌なことが出来ないと判断した彼らは、オキーフも連れて拠点へと戻ることにした。いよいよ、本格的に彼らにタイムリミットが設けられた。

 

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