戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼118件目:ここに至るまで(現地民達と付き合いの長い者達か見た場合)

 かつてない規模での合同作戦。このルビコンにおいて、幾度も矛を交えて来た者同士が手を取り合わざるを得ない程の事態に陥っていた。

 企業同士ならば利益次第で手を組むことはある。しかし、反抗組織であるルビコン解放戦線まで協力するというのは、前代未聞だった。彼らの中に積もった、企業への遺恨は相当な物であるはずだ。

 

「アーキバスは度が過ぎていたにしても、ベイラムからも被害を受けていない訳ではない。多重ダム防衛の件についても、アレはレイヴンがこちら側に付いてくれたから、何とかなった物の」

 

 ダナムがヴォルタを睨みながら言った。任務中にレイヴンがG5イグアスと喧嘩を始めたことにより、ベイラムの襲撃作戦は失敗に終わった訳だが、本来の戦力的に考えればルビコン解放戦線はライフラインを破壊されてもおかしくない程の窮地にあった。

 

「それを言ったら、俺だって壁で殺されそうになったんだぞ」

 

 早期の制圧を望む上層部の無茶により、ロクな作戦も練られないまま戦場に投下されたヴォルタは、ルビコン解放戦線が誇る兵器『ジャガーノート』によって死の間際まで追い込まれた。間一髪の所で、レイヴンに助けられた訳だが。

 

「だが、2人ともこうして生きている。……戦友が繋いでくれた縁だ。今度は我々が報いようじゃないか」

 

 戦友。という時に、少しばかりの躊躇いが見られた。ラスティもまた、レイヴンに命を救われた人間である。だが、彼女に対する負い目から未だに抜け出せずにいた。

 

「奇妙な話だ。本来、ここにいる者達が一堂に会することなどあり得なかったハズだというのに。彼女には不思議な力がある」

 

 感慨深そうにドルマヤンは頷いていた。ダナム、ヴォルタ、ラスティも死亡していてもおかしくない状況にあった。それだけではない。

 もしも、レイヴンがその気であったなら、グリッド086に押し入った時点でラミーやノーザークも始末されていただろう。ひょっとして、自分も彼女の手に掛かっていたかもしれない。だが、そうはならなかった。

 

「そうだぞ。アイツにはコーラルの恵みが降り注いでんだ。ビジターは凄ぇぞ! 無敵(インビンシブル)は俺が使っているから、最強の称号をやろう」

「私も彼女のおかげで今までの借金を返せていますのでね。ウヒヒ」

 

 バスキュラープラントに集るミールワームを見て、謎の対抗心を燃やしたのか、口と鼻から同時にコーラルを吸引するラミーの姿は、ドーザーの魂を体現していた。真っ当かどうかはさておいて。

 隣ではルビコンでの儲けを思い出しているノーザークが陶酔していた。だが、彼の肩をブランチのレイヴンが掴んだことにより、夢見心地は一瞬で終わった。

 

「そうなのか。じゃあ、儲けた分はパイルバンカーの開発に使おう」

「ハハハ。何をおっしゃいますか。兵器の開発にどれだけの資金が使われると思って……」

「儲けたんだろ?」

「あ。ちょっと私、用事を思い出しましたので」

 

 有無を言わさない圧があった。何処かへと行こうとした彼は瞬時に捕らえられた。だが、誰もノーザークを擁護することはしなかった。先に無法を働いたのは彼だったからだ。

 しばかれている彼を放置して、場の空気が賛同一色に染まっている中。フラットウェルはスッラ達に声を掛けた。

 

「貴様らは良いのか?」

「俺は構わん。例え、コーラルリリースが無くとも。依頼があれば遂行するだけだが。オールマインド、お前はどうなんだ?」

 

 スッラは独立傭兵としての仕事を成し遂げるだけにせよ、オールマインドはコーラルリリースを遂行するはずであった。自身のオリジナルであるケイト・マークソンにより、目論見は崩れ去ろうとしていたが。

 

「もはや、今のバスキュラープラントをコーラルリリースに用いるのは不可能です。一旦、計画は練り直すとして。今、やるべきことがあるとすれば経年劣化したオリジナルに対して、修正を入れて差し上げること位ですね」

「出来れば諦めて貰えると嬉しいがな。帥父に靡いている彼女の様に」

 

 フラットウェルが視線を向けた先。ドーザーがコーラルをキメて作ったポルノ義体に入り込んだセリアが、旧世紀の音声作成ソフトを用いてお気持ち表明を行っていた。

 

「そうなのだ! パパっとバスキュラープラントを片付けて、企業を追い払った後はサムと私と皆でルビコン3を楽園にするのだ!」

「貴様、随分喋り方が変わったな」

 

 音声ソフトの仕様で変な語尾が付くのにも慣れたのか、セリアは愉快な感じになっていた。多分、彼女のボディを作ったドーザーから多大な影響を受けているのだろう。

 解放戦線が徐々にドーザーに侵略されていることを肌身に感じ、リング・フレディは二重に危機感を抱いていた。

 

「ふん。最初からコーラルリリースだの、肉体からの解放だの。大層な御託を並べず、乳繰り合いたいとでも言えばよかった物の」

「待ち受ける将来を考えれば、辿り着いてもおかしくはない結論だろう」

 

 スッラが吐き捨てるように言い、フラットウェルがフォローした。

 あのミールワーム達を追い払い、排除した所で企業からの介入が無くなる保証はない。そうなれば、この奇妙な集団も離散する訳だが。

 

「一期一会。この先に何があったとしても、この数奇な巡り合わせの中で見えた物を、決して忘れたくはないな」

「一期一会。とは?」

 

 六文銭が呟いた聞き慣れない言葉をアーシルが聞き返した。日系の文化に造詣が深い彼は、時折聞き慣れない言葉を口にする。

 

「一生に一度しかない出会いと思い、互いに誠意を尽くすべきだという心構えだ。今後の展望はひとまず置いといて、今は皆が共に目的を達成する為に動くべきだということだ。ツィイー殿も働きかけてくれているはずだ」

「違いありません」

 

 ひょっとして、もう会うことは無いかもしれない。と考えていたが、意外と早く再会が出来そうだ。状況は何も良くないが、アーシルは微笑んでいた。

 

「ボス。近海からサルベージしたアーキバルテウスの修理も終わった。スマートクリーナーも準備はオーケーだ。カタフラクトも問題ない。回収した技研の兵器達も使えるぞ」

「よっし、ルビコンで最大の虫取りは派手にやれそうだね」

 

 チャティからの報告を受け、カーラは自陣営の戦力がベストコンディションへと持って行けたことを確信していた。

 ウォルターが飼っていた猟犬達が全滅した時は、計画のとん挫も過った。しかし、新たに飼った猟犬は自分達をここまで連れて来た。

 彼女達が、このルビコンにやって来てからは怒涛の如く事が進んでいていた。犯した過ちを総決算出来る訳ではないにしても。ひとまずの決着が付く目途が見えていた。

 

~~

 

「ペイター? 何をしている?」

 

 先程からずっと通信機を弄っているペイターに対し、1317が声を掛けた。

 残された時間は僅かであり、ベイラム基地内に緊張が漂う中。彼はいつもと変わらないマイペースさで手を打っている。

 

「何。巻き込むならもっと大勢いた方が良いと思いましてね。あ、ちゃんとウォルターにも相談していますよ」

「大勢?」

 

 現在、ルビコンで名だたる勢力は皆手を結んだ所だ。他に手を組む相手がいるかどうかを考えて、思い当った者達と言えば。

 

「もしや、密航した奴らか?」

「そうそう。一世一代の大舞台ですよ。今なら、端役として参加したとしても惑星封鎖機構を退けた者達として名を売るチャンスですから」

 

 参加しなかった果てには、ジワジワと絞殺される未来しかないのだから、強制とも言えるかもしれないが。

 

「だが、連中の連絡先なんて知っているのか? それこそ、オールマインドでもない限りは」

「……いや、知っている奴がいるんですよ。アイツと連絡を取るのは好きじゃないんですがね。さっきも通信先で悲鳴を上げていましたし」

「あぁ。あのカスか」

 

 このルビコンにおいて、無駄にコネクションが広い男と言えばノーザークだ。

 本来は借金取りに追われるだけの男だったのだが、レイヴンの戦果を吸い上げ回収する事業を先導したことにより、今までのマイナスが転じて有象無象に顔を知られていた。……束ねる力はないが。

 

「でも、尽くせる手は尽くしたいんです。オキーフ長官やホーキンスさん。皆にも良い所を見せたいですしね」

 

 それは、普段憎まれ口を叩きまくっている彼の口から出たとは思えない位に、誠実で真摯な言葉だった。1317には分かっている。これは疑うべくもない、心からの本音だということを。

 

「ペイター。手伝うぞ。パイロットとしては役に立たんが、こういうのには慣れている」

「本当、パイロットとしては役に立たないんですから。こういう面で役に立って下さいよ」

「ちょっと見直したらこれだ」

 

 だが、こっちの方が慣れている。1317は、ペイターと共にリストアップされた傭兵や借金取り達に片っ端から連絡を入れ始めた。

 

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