戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼119件目:ここに至るまで(企業や所属勢力から離れた者達から見た場合)

 決戦に向けての準備は、ベイラムでも行われていた。ザイレムだけではなく、強襲艦隊の準備から出撃機体のメンテナンスも含めて、フル稼働で動いている。

 レッドガン部隊の参謀であるナイルを始めとして、総長のミシガン。猟犬部隊(ハウンズ)からハンドラー・ウォルターとスネイルも加えて、作戦会議が行われていた。

 

「現在、バスキュラープラントの延伸は宇宙空間との境目『カーマンライン』まで近づこうとしている。あの辺りには、残留コーラルが漂っている。これらを取り入れれば、奴らの増殖は更に早まることだろう」

 

 オーバーシアーの一員として、コーラルを監視し続けていたウォルターが言うのだから、恐らく事実なのだろう。

 

「最終防衛ラインと言った所か。だが、相手は惑星封鎖機構なのだろう? 衛星砲による迎撃もあるのでは?」

 

 ナイルの懸念もまた、ケアしなければならない条件だった。もしも、相手がアーキバスであるならば衛星砲を掌握し切れず、艦隊戦へと縺れ込むことも出来たかもしれない。

 だが、相手は惑星封鎖機構を司るシステムが相手だ。上空からACを狙い撃つほどの精度を誇る砲撃ならば、接近する強襲艦隊を迎撃することは容易いことだろう。

 

「バスキュラープラントを破壊しても良いなら、地上部からの制圧も出来たのですがね。ミシガン、上層部はやはり虫だけを取り除けと?」

「うむ。頑として譲らん。連中は、この状況に至っても自分達が勝者になる未来を思い描いているらしい」

 

 スネイルがミシガンに確認を取ってみたが、案の定と言わんばかりの返事に溜息を吐く外なかった。自分達の利益の為なら宇宙を巻き混むことも厭わない。実に企業的な姿勢だった。

 

「だとすれば、どうすれば奴らを追い払えるかですね。攻撃をすれば、そのままルビコンを巻き混む火災にも繋がりかねない」

 

 この後のことを何も考えないなら、接近して1匹を焼き払うだけで良い。連鎖的にバスキュラープラントに誘爆して、第2の『アイビスの火』を巻き起こして終わりだ。

 

「その為のザイレムだ。カーラ達が突貫で改造している」

「改造? どんな風に?」

 

 いつの間にそんなことをしていたのかと、初めて聞いた情報にナイルが聞き返した。ウォルターがモニタに表示したのは、以前に企業が総力を挙げて行った討伐作戦の映像だった。

 丁度、画面内ではミルクトゥースが超大型兵器『グラインドブレード』を用いて、ルビコニアンデスビートルを掘削しているシーンだった。

 

「元々、アレはルビコニアンデスビートルを討伐する為ではなく、こういった事態に備えて巨大建造物の伐採用に開発していた物であるらしい」

 

 映像が切り替わり、ザイレムへと移ると。船首部分にチェーンソーと思しき兵器が取り付けられていた。パッと見の機構を見る限りでは、あの時に使われたグラインドブレードとよく似ていた。

 あまりに実用性、整備性、利益性を度外視した兵器であったが、バスキュラープラントを断ち切るという意味では、打って付けの物だった。

 

「俺達は愉快な木こりになる訳だな。だとしたら、衛星砲をどうにかしなければならんな! 誰を送るか、リクエストはあるか!?」

「ある。言うまでもあるまい。621とレイヴンを向ける」

 

 現在、企業が持つ最強の戦力と言って良い二人だ。ザイレムの護衛に使うとばかり考えていたので、ナイルも多少の驚きは見せていた。

 

「良いのか?」

「惑星封鎖機構の有象無象や虫程度なら、ベイラムと猟犬部隊(ハウンズ)の戦力でどうにでも出来る。そして、多少の攻撃程度ではザイレムは落とせない。故に、奴らにとっても衛生砲は重要拠点だ。俺ならば、そこに護衛を付ける」

 

 護衛。と聞いて、先の戦いを思い出していた。レイヴンやイグアス達をも交えた4機を相手にしながらも、互角以上に戦っていた怪物。V.Ⅰフロイト。

 オキーフからも話を聞いていたが、彼は既にアーキバスではなく惑星封鎖機構に恭順している様だった。

 

「決まりですね。報告を見るに、軌道上にはブランチも待機しているそうですね。まず、前哨作戦として彼女らに衛星砲の破壊に向って貰いましょう」

 

 残された時間が少ないとなれば、行動には迅速さが求められる。直ぐにスネイルが手配を始めた。

 

~~

 

「閣下。それは、幾ら何でもレイヴンを酷使し過ぎでは?」

 

 スネイルから通達されると同時に、スウィンバーンが口を出した。ホーキンスとオキーフが多少、驚いた様子を見せていた。

 V.Ⅶとして会計を兼任していた頃の彼は矮小と言うしかない人物であった。しかし、壁で捕虜となった一件から彼は大きく変わっていた。少なくとも、スネイルに意見をするなど考えられない光景だった。

 

「相手はあのバカです。悔しいですが、私でも勝てません。もしも、配備されていなければ楽なミッションとして。配備されていれば、彼女達にしか遂行できないミッションです」

 

 だが、スネイルの言う通り。V.Ⅰに対抗できる存在はその二人しか思い浮かばなかった。自分が行った所で役に立たないことを自覚せざるを得ない中、彼の肩を叩く者がいる。ブルートゥだった。

 

「ご友人。私達の大切な友人のことを気にかけてくれることは大変うれしく思います。だからこそ、彼女を信じて待っていて欲しいのです」

『うむ。だが、それでも気が済まん場合は一緒に遊んでやればどうだ。喜ぶだろうよ』

 

 彼自身の意見に加えて、カエサルからの話も聞いたスウィンバーンは暫し考えていた。その間に、ブルートゥはミールワームに餌をやっているレイヴンに対して手招きをしていた。

 

「ご友人。彼が呼んでいますよ」

「え? 何?」

 

 ゲージを閉めて、ヒョコヒョコと近付いて来た。こうして見ると、彼女がルビコンで活躍し続けた人物とは思えなかった。だが、そんな彼女と出会って変わったことも自覚している。

 

「その、何だ。私にもそのミールワームを触らせて貰えんか?」

「いいよ!」

 

 彼女は満面の笑みを浮かべて、ゲージを開けた。中では大人しくしていたミールワームがモゾモゾと擦り寄って来た。

 部屋内に居れば見る時間も多くなる訳で、以前よりも沸き上がる生理的嫌悪感もずっとマシな物になっていた。差し出した手を這い、腕、肩を伝っていく。モゾモゾとした感覚が肌を伝うのは相当に気持ち悪かったが。

 

「凄い! その子懐いているよ!」

「そ、そうか」

 

 首を登り、顔を伝ってもスウィンバーンは笑顔を浮かべていた。彼なりの誠意と言うか激励なのだろうが、やっていることが滑稽な為か。部屋内にいる元・ヴェスパー部隊長達は全員噴き出していた。

 そして、散歩を終えたミールワームは自分からゲージに帰って行った。今の一幕にレイヴンは大層喜んでいた。彼の健闘を労う様にして、ホーキンスも微笑んでいた。

 

「慣れる特訓が実を結んだって所かな。いや、この調子だと次は一緒に食べる所まで行けそうね」

「ちょっと口に入れるのは……」

「慣れれば美味いぞ。少し、脂がしつこいが」

 

 オキーフからの有難い感想を受けても、スウィンバーンは曖昧な笑みを浮かべるばかりだった。そんな様相にスネイルは呆れていた。

 

「全く。学生の集いですか?」

「こう言うのも良いんじゃないかな。以前までのスネイルなら、キレ散らかしていただろうしね」

 

 ホーキンスに指摘され、スネイルは口ごもった。あの頃は常にイライラしていて、こんな下らないことをしていたら嫌味か痛罵のどちらかを吐いていたことだろう。だが、笑っているレイヴンを見ればどうでもよくなっていた。

 

「ご友人。時には肩ひじを張らない方が、いい案が思い浮かぶこともあります。凝り固まっている間には見えない世界もありますよ」

「一理ありますね。さて、お遊びはこれ位にしておきましょう。レイヴン、グリッド086へと向かいなさい。軌道上で『ブランチ・レイヴン』と合流した後の指揮は、彼らに従いなさい」

「分かった!」

 

 基地内のマスドライバーの準備も整った。格納庫へと向かう彼女を見ながら、スウィンバーンは先程までの表情を引っ込め、苦々しそうにしていた。

 

「あの娘にとって、このルビコンでの戦いが最後になればよいが」

「そうだね。まぁ、その時は我々も改めて無職だ。また、何をするかは一緒に考えて行けばいい」

 

 一度企業を裏切った物は以後も雇用される可能性は低くなる。ホーキンス程の年齢ともなれば、企業が再雇用してくれる可能性はさらに低い。

 今はウォルターによって雇われているが、事が終われば自分達がお払い箱になる可能性は高い。ある程度のアフターフォローもあるだろうが、期待し過ぎてもいけない。

 

「全ては終わった後に考えれば良い。何なら、スネイルがパトロンをしていた毛髪再生局に勤めるというのもどうだ?」

「駄目です。貴方達は毛髪に悩んでいないでしょう? そのケが無い者達を迎え入れる気はないのでね」

 

 どうやら、スネイルは潰しが効くらしい。多少の妬ましさを感じながら、今後についてはブルートゥとしても思うことは在ったらしい。

 

「私はまたRaDにでも戻りましょうかね。その時は、ご友人の声を聞こえる者も多数いるかもしれませんね」

『かもしれんな。……にしても、エアの奴。先程からずっと黙っていたが』

「彼女なりの気遣いですよ。いつもご友人と一緒にいますからね。そう、我々には沢山の友人がいますから」

 

 大勢の人間といる間は、彼らとの会話を優先して欲しいという彼女の希望でもあるのだろう。

 沢山の人間に囲まれ、協力し合える関係に辿り着けたのは、彼女の選択があっての物だ。その環境に感謝をする様に、ブルートゥは一礼をしていた。

 

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