戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】 作:ゼフィガルド
「皆様の健闘を祈ります」
「頼んだよ!」
万が一に備えてG3五花海と幾らかの戦力を残し、ウォルターやツィイーの様な非戦闘員を置いて、ベイラムの基地から強襲艦隊が発艦していく。その中には、猟犬部隊(ハウンズ)の姿もあった。
機体を所持していないホーキンスには、ウォルターが臨時で組み上げたリコンフィグが宛がわれていた。
「すまないね。私もペイター君みたいにLCを使うべきだったんだろうけれど、機種転換の時間が無くてね」
「いや、そんな。私のデュアルネイチャーは操作感が近いから、LCと直ぐに切り替えられましたけれど、四脚ACからの転換は勝手が違いますから」
いつもの様にホーキンスへの忖度を欠かさずにしている中、通信からミシガンの声が響く。
「ウォルター! 貴様も話は聞いているだろう! 星外からザイレムクラスの大型戦艦がこちらに向かって来ている! 恐らくは惑星封鎖機構の物だ! G13が衛星砲の相手をしているなら、あのデカブツは俺達が相手をしなければならない!!」
この作戦の要であるザイレムが沈められれば、自分達はルビコンと運命を共にすることになるだろう。
強襲艦隊にも武装は付いているが、ザイレムクラスの艦船を沈められる気はしなかった。やるとすれば、内部からだ。
「敵艦の構造は、分かる訳も無いか」
「完全に手探りだ! その前に、まずは近付けるかという問題もあるがな!」
惑星封鎖機構の戦力のみならず、バスキュラープラントで未だに他の動きを見せないルビコニアンデスビートル達についても気掛かりではあった。だが、迷っている時間はない。
ツィイーを除く、1317すら参加している。これまでとは比べ物にならない規模での戦いになるだろう。全員が生還出来るかも怪しい物だった。
「私が率いる隊とホーキンスが率いる隊の2つに分けましょう。戦力等も鑑みて……」
「(多分、ペイターは入らないだろうな)」
1317の予想通り。自分とペイター、ブルートゥの3人はホーキンス隊へと入れられ、スウィンバーンとオキーフはスネイルの隊に組み込まれていた。
彼らが機体の中で待機していると、強襲艦隊は航行中のザイレムと合流した。船首部分には、映像でも見た巨大なチェーンソーが取り付けられており、異様な見た目となっていた。通信が入る。
「ウォルター、ベイラムの強襲艦隊と合流したよ。カーマンライン付近ってこともあって、どいつも調子が良さそうだ」
ルビコンの上空には残留コーラルが漂っており、幾らでもエネルギーの供給が受けられる環境にあった。それは、企業やカーラ達だけではなく、相対する者達も同様であった。
レーダーに反応が映る。自分達と同じ強襲艦隊と思しき物を随伴させながら、1つ。ザイレムクラスの反応があった。通信が入る。
「こちら、ケイト・マークソン。企業と与する者達に通達します。直ちに武装を解除しなさい。このバスキュラープラントは惑星封鎖機構の所有物です。従わない場合は強制排除します」
この警告に応える気が無いというのは、発している本人も分かっている事だろう。あくまで、これは手続きの一環に過ぎないのだ。秩序に対して矛を向ける選択をしたという烙印を押す為の。だから、返事は決まっている。
「コーラルキメても吐かないようなバカなこと言ってんじゃないよ!!」
カーラが啖呵を切った。戦いの火蓋も切って落とされた。
ザイレムの周囲にパルスバリアが張り巡らされる。突っ込んで来た特攻兵器達が、防壁に阻まれて爆散していく。
艦隊戦が始まり、次々と機体が発進されていく。残留コーラルによりエネルギーを得た機体達はブースト切れも起こさず、宙を舞い続けていた。
「ザイレムに張り付け! 内部に潜り込んでジェネレーターを破壊しろ!」
惑星封鎖機構のパイロットが叫ぶ。パルスバリアの発生装置を破壊しようとするが、防壁の内側から1機の機体が現れた。V.Ⅳラスティが操縦するスティールヘイズ・オルトゥスだった。
「ルビコンの空は貴様らの物ではない」
左腕部の『Vvc-774LS』レーザースライサーが閃く。突入しようとしたLCは切り裂かれ、宙へと落ちていく中で爆散していた。
LCでは対抗できないと判断したのか、数機のHCが前へと出た。彼らはレーザーブレードを展開して、一斉にオルトゥスに襲い掛かる。背後からLC達の援護射撃が放たれる中、次々とザイレム内部からも機体が発進されて行く。
真っ先に駆け付けたのは、飛行形態へと変形したセリアの『SOL 644』と彼女の機体に掴まっているドルマヤンのアストヒクだ。
『サム! しっかり掴まっていて!』
「……同じ物を守るために共に戦場に立つなど。まるで、夢の様だ。セリア、共に舞おう」
翼の先端部に展開したコーラルブレードが擦れ違いざまにHCを切り裂き、態勢を崩した一瞬の隙を狙う様にして、アストヒクのBASHOフレームから繰り出される『HI-32: BU-TT/A』パルスブレードの強烈な一撃は、少なからぬダメージを与えていた。
「我々も帥父に続け!!」
「今こそ! 決戦の時!! 三途の渡し賃を携え! いざ、行かん!!」
ミドル・フラットウェルや六文銭達も出撃し、HCなどのエース機達との交戦が始まる中、彼らから少し遅れて大型機体もまたザイレムを発進した。
超高出力ENユニットを搭載した大型リングには追加でミサイルユニットが盛られていた。超高振動パルスアレイにパルスキャノンを加え、中央のコアユニットの手にはプラズマライフルが握られていた。そして、周囲にはパルスバリアが展開されている。
「劣化したオリジナルを正すのもまた、進化した私の役目であります。オールマインド・バルテウス。出撃します」
通常の人間が扱えば、常時展開しているパルスバリアによって心身が蝕まれるが、AIであるオールマインドはこれらの欠点を踏み倒していた。
アーキバスが改修した際にオミットされていたミサイルを大量に吐き出しながら、超高出力ENユニットに連結させたプラズマライフルから、複合エネルギーを照射しながら、宙を舞っていた。
次々と惑星封鎖機構の強襲艦や機体が引き裂かれて行く中、彼女に向けて大量のミサイルが殺到した。バルテウスの推力とパルスバリアで凌いだが、相手を見て彼女は不敵に微笑んだ。
「なるほど。その機体までもがオリジナルと言う訳ですか。どちらのAIが優れているか証明して差し上げます」
彼女に見せつけるようにして、惑星封鎖機構のバルテウスは156連装ミサイルを展開していた。EN兵器と実弾兵器が空で炸裂し合っていた。
――
大型兵器やエース機同士の交戦区域を擦り抜けたLC達がザイレムに着艦すると、大量のMTが待ち構えていた。先頭に立っているラミーが吠える。
「野郎ども! 歓迎してやりな!」
多数のミサイルが降り注ぎ、LC達が回避運動を余儀なくされる。中には回避し切れず撃墜される者もいたが、幾らかは攻撃を擦り抜けてMT達に肉薄しようとした所で、猛スピードで接近して来たタンク型のAC『キャンドルリング』の肩部兵装『SONGBIRDS』に吹っ飛ばされていた。
「ああ! 畜生! 私がタンク型じゃなかったら、帥父について行ったのになぁ!」
「よそ見するんじゃねぇ。殺すぞ」
ヴォルタのキャノンヘッドもまた接近して来たLC達を迎え撃っていた。ザイレムの上層街区での戦闘も始まり、内と外で激しい交戦が繰り広げられていた。
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一方、レッドガン部隊と合流した猟犬部隊(ハウンズ)は、敵母艦『ケレス』に着艦していた。
内部へと繋がる入り口も分からない中、彼らを出迎えるようにして設置されていた多数の砲台が火を噴いた。迂闊に飛行すれば、蜂の巣になりかねない中。甲板の上を猛烈な勢いで転がって来る物が見えた。スネイルが叫んだ。
「ヘリアンサス!」
通常であれば、宙に浮けば対処できる物だが、跳び上がることが封じられた状況では厳しい物があった。畳みかけるようにして、後続には『IA-05:WEEVIL』がいるのも見えた。
照準を合わせる間もなく迫り来る相手に対し、ミルクトゥースがアサルトブーストを吹かしながら躍り出た。そして、迫り来るヘリアンサスを蹴り飛ばしてウィーヴルに激突させていた。
「以前にも見たことがありますのでね。これ位は出来ますよ」
『タイミングの微調整は俺も手伝ってやったがな』
蹴り飛ばしたミルクトゥースの脚部にも多少のダメージは入ったが、相手が被った被害に比べれば微々たる物だった。
「連中を排除した後、中に入り込むとしましょう。空に逃げられないのであれば、正面から挑むまで!」
「ほぅ! 神経質に見えて、貴様も意外と大胆だな! G13の無法ぶりが移ったか!」
スネイルのHAL826とミシガンのライガーテイルもアサルトブーストを吹かして、迫り来るヘリアンサスを蹴り飛ばして、砲台にぶつけたり船外に蹴り落したりしていた。
両陣営の衝突は、互いが持てる戦力と資源を出し惜しみすることのない凄まじい規模で行われていた。