戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】 作:ゼフィガルド
カーマンライン付近でルビコン連合と惑星封鎖機構が戦闘行為を繰り広げている中、地上部より延伸していた有機バスキュラープラントの変化に気付いた者は少なかった。
産卵しては孵り、自身が延伸の礎となって行くサイクルを繰り返していたのだが、ひしめき合うルビコニアンデスビートルの一部が剥がれ落ちた。
落下していく中、彼らは薄赤色の翅を激しく動かし、戦場の真っただ中へと向かって行く。流石に自分達に向って来れば、意識せざるを得なかった。
「何だ!? アイツら、飛べ……」
ベイラムのパイロットは最後まで口にすることなく、ルビコニアンデスビートルから放たれたコーラルミサイルを食らって、落下していく。
ただでさえ、圧されている中。これ以上の増援には対処しきれない。ルビコン連合の者達が焦燥感を覚え、惑星封鎖機構の面々が自分達の優勢を確信したのも束の間、彼らの機体も等しく襲われていた。
「お、俺達は味方だぞ!?」
戦場を跋扈する虫達に人類側の事情などは知ったことではないのか、バスキュラープラント付近で戦闘行為を繰り広げる者達は等しく脅威と認定されて、両陣営への攻撃が開始された。
今まで、飛行能力を持たないが故に。この戦いに乱入して来ることは無いだろうと踏んでいただけに、混乱が巻き起こった。
「この虫けらが!!」
ベイラムの強襲艦の船底に取り付けられた砲台からレーザーが照射されるが、ルビコニアンデスビートルを貫くには至らない。
人々の敵意に反応する様に、彼らは攻勢を強めた。カーマンライン付近ということもありコーラルを潤沢に吸収していたのか、そこら中にコーラル性のレーザーや爆発が炸裂し、次々と機体や強襲艦が沈められていく。
「この、糞がァ!」
エクドロモイに乗ったパイロットが、ルビコニアンデスビートルの甲殻の隙間を狙ってEPを打ち込んだ。瞬間、内部を満たしていたコーラルの誘爆に飲み込まれて、消えた。
両者にとって共通の敵が現れた。しかし、彼らは手を取り合うことなどはしない。戦場に渦巻く混迷が深まっていく中、ザイレムにも等しく脅威は訪れていた。
「おい! あの虫共を誘導して、奴らを蹴散らせ!」
ドーザーやルビコニアン達が形成する防衛線に阻まれていた、惑星封鎖機構のパイロット達は状況の変化を利用していた。
表で対応しきれず、到来したルビコニアンデスビートルにワザと攻撃を加えて挑発をした後、防衛線へと突っ込んでいく。自らの命を顧みない特攻を見て、リング・フレディが叫んだ。
「やめろ! 死ぬぞ!」
「貴様らも死ねぇえええええええええ!!!!!!」
音が割れんばかりの凄絶な憎悪が響いた。MTとACからの総攻撃を受け、背部からはコーラルミサイルを受け、LCは火を噴きながら突っ込み爆散した。
たった1機の特攻により、防衛線の中に脅威が潜り込んだ。もはや、攻撃をしなければ何もして来ないという段階は通り過ぎ、ルビコニアンデスビートルは目につく機体全てに攻撃を仕掛け始めた。
「奴の犠牲を無駄にするな! 攻め込め!!」
防衛ラインが突破され、着艦したLCやエクドロモイ達がザイレムの攻略に掛かる。陣形が崩れた隙を見逃す彼らではなく、畳みかけるようにして攻撃を仕掛けていた。
「ギャー!! ライン総崩れですよ!」
ラミーの隣で豆鉄砲を撃っていたノーザークもこの状況に対応せざるを得なかった。LCならばギリギリ相手も出来るが、エクドロモイは捌けない。
「死ねや!!」
エクドロモイやLC達がさっきを込めて向かって来る中、彼のシナプスは限界間際まで稼働していた。1秒が延々と引き延ばされていく様な感覚の中、この窮地を脱する方法を探していた。
応戦する。無理。幾ら、来た頃よりましになっていたとしても戦闘を生業としている者達とマトモに勝負できる訳がない。
逃げる。無理。速力の関係上、あっと言う間に追い付かれて殺される事だろう。
颯爽とレイヴンが助けに来てくれる。無理。そんな雰囲気は一つもない。……いや、一か八か。頼るべき物に思い当たった。
「キェエエエエエエエ!!!」
喉が張り裂けんばかりに猿叫を上げ、ビタープロミスが向かった先はヴォルタやリングフレディの元では無かった。目の前で暴れているルビコニアンデスビートルの背中へと張り付いたのだ。
「何やってんだアイツ……」
修羅場に慣れているヴォルタがエクドロモイやLC達に砲撃をお見舞いし、リング・フレディもキャンドルリングの軽快な機動を活かして翻弄している中、ノーザークは誰にも予想できない行動をとっていた。
当然、背中に乗られたルビコニアンデスビートルは暴れる。ノーザークにとっての敵味方関係なく、跳ね飛ばして周囲に破壊を振り撒いていた。
「エイシャァアアア!!」
「ヒィイイイイ!」
ノーザークは振り落とされない様にしがみ付いていた。
しかし、それが功を奏した。ルビコニアンデスビートルは自らに向けて攻撃を放つ訳にもいかず、周りも手が出せないでいる。結果的にノーザークはこの戦場でもっとも安全な場所へと移動していた。
最初は恐怖に陥っていた彼であったが、自らの安全を確保する勘には人一倍優れている男である。この場に居ても振り回されるだけだということに気付いた彼は……調子に乗った。
「ふはははは! やれぇい! 惑星封鎖機構を蹴散らせぇ!!」
勢いよく命じているが、虫に言葉が通じるはずもない。彼は振り回されながらもミサイルや銃弾を放つ非常に厄介な存在となりながら、ザイレムの上層街区で敵味方問わずに被害をばら撒いていた。
~~
ツィイー達の様な非戦闘員と僅かばかりの待機員達を残すばかりとなったベイラム基地に、緊急アラートが響いた。
ウォルターが周囲の情報を観測した所、多数のLCや無人機達が接近している様だった。ツィイーが息を呑んだ。
「後続まで完全に潰すつもり。だよね」
「この事を用心して、基地にはG3が残ってくれてはいるが」
迫り来る反応は多数。残存戦力で対応できるとは思えなかった。ツィイーが走り出す。彼女が向かった格納庫は騒がしくなっていた。
「こんな時の為に、私が残っています! 連中がここを叩きに来ることも予想の範囲内です!」
それでも、混乱を来していないのはG3五花海がいることも大きかった。そんな彼に、ツィイーが駆け寄った。
「私も出撃する! これでもアリーナのランカーなんだ! そこらの奴よりは強いよ!」
「……BAWSのBASHOフレーム一式があります! 動かせますか!」
「問題ない!」
五花海も多少迷ったが、ツィイーがランカーであるという事実も考慮して、出撃を許可した。臨時に組まれた機体に乗り込む。
今まで、出撃しては大破を繰り返し、ロクな成果も上げられない彼女ではあったが、座して死ぬことだけは良しとしなかった。
「良いですか。我々の役目は防衛です。決して、追い打ちなどはしない様に!」
「了解!!」
戦場から身を遠ざけたと思っていたが、この惑星はルビコン。何時でも死は隣にある。震える手を抑え込んで、彼女も出撃した。
外では既に交戦が始まっていた。設置砲台が火を噴き、空からはレーザーやミサイルが降り注ぐ。恐怖に飲み込まれそうになる自身を鼓舞するようにして、ツィイーは叫んだ。
「この惑星からッ!! 出て行けぇ!!」
アサルトブーストを吹かして接近した先。ベイラムのMTに止めを刺そうとしていたエクドロモイに対し、左腕部の近接武装『PB-033M ASHMEAD』パイルバンカーを打ち込んだ。
コックピットが射出されて間もなく、爆散した。倒れたMTを引き起こそうとして、視界が反転した。自分が加速を付けたHM型からシールドバッシュを受けたと気付いた時には、バズーカの砲口が自分を狙っていた。
もしも、彼女がただの少女ならば思考から何まで全てを奪われている間に、命を刈り取られていたことだろう。だが、彼女は戦士だった。
「!!」
無理な態勢の中、クイックブーストを吹かして直撃を回避した。その際、『HML-G2/P19MLT-04』ハンドミサイルを放つ。
容易くミサイルの誘導は切られてしまったが、一瞬の硬直を狙って背部兵装の『SB-033M MORLEY』スプレッドバズーカを浴びせた。
これらを防ぐためにHM型はシールドを構え、堅牢な盾に砲撃は防がれてしまったが、衝撃を受け止める為に一瞬動きが止まった。その隙に、彼女はパイルバンカーを振り被っていた。
「いっけぇ!!」
シールドを貫き、HM型の胴体を貫通した。先と同じ様にコックピットが射出された後、爆散した。
「……すげぇ」
目の前で立て続けに2機もの機体を撃破した現場を見て、助けられたMTのパイロットは感嘆の声を漏らしていた。
だが、2機撃退した所で敵の数は遥かに多い。滞空していたLC達が攻撃をしようとした所で、彼らに向けて攻撃が飛んで来た。友軍が助けに来てくれたのかと思いきや、レーダーに記す反応は違っていた。
「……独立、傭兵?」
ベイラムの基地外。そこには多数のACやMT、中には作業用メカと思しき物までが向かって来るのが見えた。
「おー! ベイラムに恩を売るチャンスって通信。アレマジだったのか!」
「空でドンパチしていようが、関係ねぇ!」
控え目に言ってみすぼらしく小汚い連中ばかりだったが、中には多少の装備を整えているのか。4門ガトリングACで駆けつけている者までいた。
何が起きているのかとツィイーが困惑していると、五花海から通信が入って来た。
「どうやら、猟犬部隊(ハウンズ)の彼が呼び寄せていたみたいですね。ベイラムに恩を売るチャンスだとでも吹聴していたのでしょうか」
「え?」
一体、いつそんなことをしていたと言うのか。……どちらにせよ、戦力が増えたことは喜ばしいことだった。ツィイーが声高に言う。
「ほら! 皆、行くよ! 恩を売りたい奴は売れ! アイツらが気に喰わない連中はぶん殴ってやれ! 上の方だけじゃなく、こっちでもドンパチしてやるよ!」
元々、ノリが良い連中である。ツィイーの激励に呼応し、オープンチャンネルからは野太い返事が入り乱れていた。……そして、少し遅れてから老齢の声が響く。
「まるで、アイツを見ている様だ」
ツィイーの張り切りぶりに、ウォルターは思わず苦笑いを浮かべていた。