戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼124件目:ときめきルビコニアル

 護衛の任務に就いているキングとシャルトルーズの活躍は獅子奮迅と言わんばかりの物だった。

 機動力に劣る彼らは、持ち前の火力で迫り来るLCやエクドロモイ達を撃破していたのだから。こういった戦いになることを想定していたのか、母艦には幾らかコンテナがぶら下げられており、中には有象無象の兵器が詰め込まれていた。

 

「ブランチの大盤振る舞いだ!! 受け取れ!!」

 

 実弾武器から爆発武器。手持ちの武器に収まらず、背部兵装まで換装して、撃ち続ける。反動でアスタークラウンのアーム『AR-011 MELANDER』が千切れ飛ぶ。

 しかし、コンテナの中には予備のアームも収納されていた。新しいパーツに付け替え、再び撃ち続ける。

 

「何時まで見てんだ! さっさと帰りな!」

 

 シャルトルーズもまた同様に次から次へと新しい武器を取り換えては使用していた。彼女の機体アンバーオックスはアーキバス製の重ジェネレーター『VE-20C』を積んでいる。

 故にアスタークラウンとは違い、彼女は主に光学兵器を乱射していた。銃身がオーバーヒートを起こしている間は、別のレーザー兵器を用いて張る弾幕は下手をすれば、LCやエクドロモイ達に確かな負担を与えていた。

 

「コード31B。指示を要求する。被害は無視の出来ない物になり始めている」

 

 しかし、惑星封鎖機構の攻撃もまたブランチの母艦に被害を与えていた。

 艦内では誘爆などを防ぐために既にブロックの切り外しやシャッターなども降りている。

 

「ここはレイヴンの止まり木です。何としてでも、持たせます。キング、シャルトルーズ。死守を!」

 

~~

 

 レイヴン達の母艦が必死の抵抗をしている中、衛星砲内部での戦いも動き出そうとしていた。

 ロック・スミス、A.NULとナイトフォールの3機による戦闘は互いに決定打に欠けていたが、ここに来て機体に蓄積していたダメージが噴出した。

 

「ぐっ!?」

 

 オービットによる縦横無尽の攻撃を避け続け、攻撃も繰り出していたナイトフォールの脚部の関節部分が摩耗していたことにより、一瞬動きが遅れてしまった。

 

「作業用機体にしては頑張った。と言った所か」

 

 その隙を逃すフロイトではない。動きが止まった一瞬に即座に合わせ、ナイトフォールの脚部にオービット達が照射を浴びせた。

 部位破損による爆破とスタッガーを避ける為、敢えてブランチ・レイヴンは脚部を自切した。宇宙空間なので即座に行動が不能となる訳ではないが、バランスを大きく欠いた状態では、機動が著しく損なわれることは避けられない。

 

【621、仕掛けるぞ】

「分かった」

 

 このまま長引けば、自分が足手まといになることを悟ったブランチ・レイヴンは勝負に出た。彼に合わせるようにして、レイヴンもまたオービットの包囲攻撃を掻い潜りながら、フロイトに向かう。

 

「あまりに分かりやすい」

 

 勝負を焦った動き。と言う物を、フロイトは幾度となく見て来た。態々、応える必要もないと言わんばかりに彼は引き撃ちを始めた。

 衛星砲内部が広いとまでは言わなくとも、ACがアサルトブーストを吹かしただけで端まで行ける程、狭くもない。

 

「鍵職人(ロック・スミス)風情が! 逃げられると思うなよ!!」

 

 引き撃ちをするフロイトに肉薄するブランチ・レイヴンは鬼気迫る物があった。必要最低限の挙動だけでオービットやコーラルキャノンによる攻撃を避け、それでも回避し切れない分の攻撃で背部兵装が吹き飛んだりもした。

 彼の後方からはA.NULがピッタリと付いて来て前方に沸くオービットを落としながら、ナイトフォールの進行を維持していた。

 

「(息も合っている。だが、そのナイトフォールに登録されているジェネレーターとブースターを鑑みれば、お前のアサルトブーストはここで切れる)」

 

 フロイトもまた逃げ回っていただけではない。彼の中には蓄積されたデータにより、機体の挙動を概ね把握することが出来た。

 ブーストの管理等も当然出来た為、ナイトフォールの推進が切れた瞬間を狙って返り討ちに転じようとした、瞬間。

 

「いっけぇ!!」

「!?」

 

 そこで、フロイトは信じられない物を見た。彼の背後にピッタリと着いて来ていたA.NULがナイトフォールをブーストキックで蹴り飛ばしたのだ。足りなかった、ロック・スミスとの距離が強制的に埋められた。

 

「終わりだ…!」

「全く! 何処まで、私を楽しませてくれる!」

 

 機体への損傷、そのまま爆散しかねない可能性。そもそも、狙った所に飛ばせる技量など。いずれも常識からは考えられない戦法であったが、この場では限りなく有効に機能していた。

 今まで行って来た任務の中で、かつてない程に濃厚な死の予感が過る。瞬間、彼の視界の中に在る物が全てスローに見えた。1秒が永遠にも引き延ばされんばかりの感覚に、フロイトは笑みを浮かべていた。

 

「見えるぞ」

 

 ナイトフォールが振り被った左腕部の『PB-033M ASHMEAD』に杭が装填されていた。このままでは、ロック・スミスは貫かれてしまうだろう。

 振り返ったばかりなので一瞬で機体を動かすのは難しい。ブーストも兼ねて背部オービットが展開されていることも含め、彼の笑みは獰猛な物になった。

 

「見えるぞ!! レイヴン!!」

 

 それはどちらに向けて叫んだ物かは定かではない。フロイトはパイルバンカーの一撃を避けようとせず、むしろ逆に突っ込んで行った。

 懐に入ってしまえば打ち込むことも出来ないと踏んでのことだったが、ブランチ・レイヴンもまた歴戦の猛者である。彼は瞬時に胴体ではなく、ロック・スミスの巨大な背部兵装に向けて打ち込んだ。

 

【―――!!】

『この悲鳴は!』

「いっつぁ…」

 

 多数のコーラルを含んだオービットが収納された巨大兵装が破壊されたことにより、発生した紅蓮の爆発は周囲を覆っていた。

 エアとレイヴンも思考を中断せざるを得ない程の爆発であり、声なき声に揺さぶられていた故、反応が出来なかった。

 

【そうか。こういった弱点もあるのか】

 

 明滅する意識の中、嫌になる程に確かに聞こえた声があった。対応も許さない速度で、コーラルブレードの刃が迫っていた。

 

「621!!」

 

 先の爆発を至近距離で浴びた為か、半壊状態のナイトフォールがA.NULを蹴飛ばした、瞬間。彼の機体に紅い刃が走った。

 

「まずは、1機」

 

 寸断されたナイトフォールは爆発した。目の前のロック・スミスは巨大な背部兵装を自切した為か、ベイラム社製のACの様な見た目になっていた。

 周囲のオービット達も宙を漂うばかりで、どうやら巨大な背部兵装は収納とコントロールを兼ねた場所でもあったらしい。機体の特徴を失ってもなお、フロイトの闘志は消えていなかった。

 

『レイヴン! チャンスです! 今の、ロック・スミスが相手ならば!』

「ここで!」

 

 相手の武装は至ってシンプルな物で、近接用兵装と射撃兵装が1つずつ。変形機構も無ければ特殊なギミックも、それ所かACが持っている様なエクスパンションすらない。

 だというのに、フロイトはレイヴンと渡り合っていた。距離を取る隙も与えない程の近接戦。A.NULには脚部にコーラルブレードを発振させる装置もあり、相手の意識の間隙を狙って繰り出すも避けられる。

 

「懐かしい気分だ。惑星封鎖機構、アーキバス。いや、それ以前の戦う姿を取り戻した気さえする! スネイルやラスティがお前に関心を惹かれるのも分かるぞ! この高揚する気分は! もはや、恋だ!!」

「……恋?」

『彼は精神の均衡を欠いています。耳を貸さないで下さい』

 

 不利に追い込まれても、まるで諦める気配も無ければ撤退する様子も見せない。V.Ⅰであれば、態勢を立て直す為に引くことも考えただろう。

 しかし、今の彼はただのフロイトだった。戦いの中で己を見出し続けて来た男は、今まさに極致へと向かっていた。

 

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