戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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「え?」

 

 防戦を強いられているブランチのメンバーに1つの通信が届いた。それは、衛星砲へと突入し制圧・奪取に成功した旨を告げる物であり、同時に。

 

「ブランチ母艦! 一部分だけ緊急脱出します!!」」

「シャルトルーズ!! 何処でも良い! 巻き込まれない様に避難しろ!!」

「キング! アンタも巻き込まれるんじゃないよ!!」

 

 猛攻撃を受けていたブランチの母艦は幾つかのブロックにパージし、その内の一つが全速力で離脱していく。

 同時に、先程まで抵抗を続けていたアンバーオックスとアスタークラウンもまたあらぬ方向へとアサルトブーストを吹かしていた。この動きに気付かない惑星封鎖機構の面々ではない。

 

「巨大な熱源反応を確認! 退避!!」

 

 この部隊を率いていた男の判断はかなり早かった。しかし、それでもなお間に合わなかった。彼らの機体を莫大なエネルギーの奔流が飲み込んだ。

 

~~

 

『ブランチ母艦へと襲撃を掛けていた戦力の大半が焼失。衛星砲……、グリッド086屋上で見た時は精密な狙撃砲だと思っていましたが』

 

 フロイトを撃破したレイヴン達は衛星砲のコントロールを掌握していた。

 今の攻撃は威力に比重を置いた物だったが、こんな物に狙われていたと考えると、生きた心地がしなかった。

 

「もしも、使われていたら。ザイレムの機関部を狙われて終わっていただろうな」

 

 この砲台の精度がどれほどの物かは、レイヴン達も知っている。宇宙から見れば豆粒ほどでしかないACを射貫く精密な射撃を放って来るのだから。

 暫く、この脅威に震えていると通信が入って来た。相手はブランチのメンバーからであり、先の射撃は上手く行っていたらしい。

 

「レイヴン。メッセージの方は受け取りました。ですが、伝えなければならないことがあります。まずは報告を」

 

 オペレーターに促され、ブランチ・レイヴンは被害状況の報告を始めていた。自身の機体は大破し、レイヴンのアイビスシリーズも大破した。今後の作戦を考えれば、エースの2人が現場に急行できないのはあまりに痛手であった。

 

「そうですか。621のアイビスシリーズが破壊されたことはあまりに痛手ですね。こちらも母艦の機能を殆ど喪失しています。アンバーオックスとアスタークラウンも戦闘続行は不可能です。……加えて、2つ。問題が」

 

 彼女からの説明が続く。件の質量兵器『パラス』がルビコンへと向かったこと。そして、それよりも更に巨大な戦艦もまた降下して行ったということを。

 

『ちょっと待って下さい。あの質量をルビコンに!? そんなことをすれば何が起きるか!!』

「アレだけの質量が地表へとぶつかれば、惑星全体の被害は避けられないことでしょう。衛星砲でも砕くのは難しいでしょうね……」

 

 惑星封鎖機構の部隊を壊滅させるほどの威力を持っているとしても、相手が巨大な隕石ともなれば何処まで砕けるかは疑問だった。だが、何もしない理由にはならない。

 

「621、俺はここで衛星砲を限界まで使うつもりだ。お前はどうする? 行った所で、出来ることなど殆どありはしないが」

「行く手段があるの?」

「俺のナイトフォールのフレームは殆ど作業用ACの物で構成されている。これは、ミッションで使い潰すことを前提としたアセンブルだ。だから、母艦には幾つか予備機がある」

 

 レイヴン。と呼ばれ、惑星封鎖機構からも脅威と認識される男が、どうして作業用ACを使っていたのかという疑問が解消された。彼にとってはACを含めて道具に過ぎないのだ。

 

「使って良いの?」

「お前もレイヴンだからな。俺達の母艦が来るまで寝ていろ。体力の回復に励め。本番はこれからだ」

 

 エアとブランチ・レイヴンが作業をしている間。彼女に出来ることは少なく、静かに目を閉じていた。

 

~~

 

 ルビコンに巨大な質量が近付いている。ということは、ケレスに突入しているスネイル達にも伝わっていた。加えて、この巨大な艦船に大量のコーラルが積まれていること、自爆を前提として運用されていることも報告されていた。

 

「い、イカレている……」

 

 スウィンバーンも絶句する外なかった。コストも損失も度外視した、確実に自分達を消す為だけの作戦。どれほど潤沢な資源があれば、この様な作戦が行えると言うのか。

 

「ならば、この先にいる首謀者に力づくでも聞き出しますか」

 

 スネイル達はケレスの最奥部に居た。ジェネレーターの制圧はミシガン達の部隊に任せ、自分達は本丸狙いで来た。

 戦力的にもHAL826を始めとして、オキーフ、スウィンバーン、レッド、メーテルリンクとレッドガン部隊の面々と申し分のない物だった。

 ゲートは何の妨害も無くあっさりと開いた。甲板に佇む大型の機体は人の形をしてはいたが、フレームの情報は一切見当たらない。各自に通信が入る。

 

「ようこそ、おいで下さいました。貴方達は幸運です。このルビコンの羽化を目に出来るのですから」

 

 彼女の妄言に付き合う気はないと言わんばかりに。スネイルはチャージを終えた『IB-C03W1:WLT 011』コーラル照射装置を放っていた。

 コーラル群知能に干渉したことによる照射は並大抵の物なら消し飛ばしてしまうが、ケイトの機体に命中する前に消し飛んでいた。

 

「まさか、私にこんな物が通じるとでも? 私、貴方達よりは遥かにコーラルに詳しいんですよ?」

「いや、おかしいぞ。本当に貴様がコーラルに詳しいなら、何故惑星封鎖機構の面々は同エネルギーによる攻撃を無力化できていない?」

 

 スウィンバーンの指摘通り、コーラルを用いた攻撃は惑星封鎖機構の面々にも多大な被害を及ぼしていた。

 もしも、彼女がコーラルについて本当に熟知しているというのなら何かしらの対策は施していたハズだ。

 

「だって、無力化したらコーラルの動きを観察できないではありませんか」

「……待て。だったら、貴様。わざと部下に教えていないのか?」

「はい。教えたとしてもこの機体以外には実践できませんがね」

 

 レッドの怒りに対し、彼女はまるで悪びれた様子もなく言ってのけた。

 隊長として部下の命を預かる者として、到底彼女のスタンスは容認できるものでは無かった。

 

「随分とお喋りだな。余裕か?」

「コーラルの偉大さを知らずして死ぬのはあまりに不憫だと思いまして。全ての布石は整った。後はミールワームが惑星を脱し、この宇宙全てに平和(ミール)と秩序が訪れる。全てはコーラルの導き通り」

 

 こうして時間稼ぎをしている間にも別動隊には負担が掛かり、自分達も船と命運を共にしかねない。

 彼女が大して危機感も見せないのは、本体が別所に待機させてあるのか、あるいはこのまま散っても問題ないという意思の表明か。

 

「随分とコーラルに入れ込んでいますね。惑星の秩序を保つ者として、相応しくない執着の様に思えますが」

「この日の為に作った物ですからね。こうして、説明しているのは貴方達への感謝も含めてのことなのです。バカみたいに争って、散々撒き散らしてくれたおかげで、あの子達もあそこまで成長出来ましたから」

 

 遥か遠方。バスキュラープラントの先端はカーマンラインへと届こうとしていた。ここまで来れば後は爆発的に延びて行くばかりだろう。

 

「他人の自慢程退屈な物はありません。用が無ければ、どいて貰えますか? 目的もない会話ばかりを繰り広げて。これならば、あなたのデッドコピーの方がよほど面白い話をする」

 

 スネイルもいい加減に引き延ばされるのを嫌ったのか、臨戦態勢に入った。相手は見たこともない造形をしている。

 HAL826と同じく全身真っ赤なカラーリング。ブースターから出ている粒子を見るに、コーラル製のジェネレーターを用いているのだろう。だとすれば、ひょっとしてIBシリーズの機体なのかもしれない。

 

「流石。V.Ⅱ、私がオリジナルより優れていることはよく御存知の様で」

 

 上空から飛来したオールマインド・バルテウスから大量のパルス弾と複合エネルギー弾が放たれた。しかし、ケイトの機体はパイロットの負荷をまるで無視した機動を行い、全ての攻撃を回避していた。

 

「おさがりの機体で満足する辺り、非常に浅ましい。デッドコピーだから仕方ありませんか」

「上品ぶっていますが、貴方の機体もIB-04とIB-05を組み合わせただけの物ではありませんか。既存品を組み合わせた程度でマウントを取る貴方の方が幼稚だと思いませんか?」

「どっちも低レベルな争いだとは思うが……」

 

 親子喧嘩とも言える光景に、メーテルリンクが苦言を呈した。しかし、口論のレベルが低くとも両機体が怪物じみた物であることには間違いない。何よりもオールマインドから聞き捨てならないことを聞いた。

 

「待て。アイビスシリーズを2機?」

「丁度良い。どちらが優れているかを見せて上げましょう。お仲間との協力位はハンデとして認めて上げますよ」

 

 ケイトとしてもオールマインドの存在は許せないのか、スネイルの疑問に答えることも無く戦闘態勢に入った。

 アイビスシリーズを2機組み合わせる。等、聞いたことが無い。そもそも、これらの機体を加工できる存在がいるとは思えない。もしも、居るとするならば。

 

「(ケイトと呼ばれる存在は。もしや、コーラル。いや、技研の関係者なのか?)」

 

 オキーフの脳裏に推測が過ったが、戦闘においては必要のない情報だった。大型の機体でありながら無限とも思えるブースト容量で延々と宙に浮きながら、オールマインド・バルテウスに見せつけるようにして、両手に構えたキャノンの引き金を引く。

 すると、赤色の電磁弾が6連バーストで放たれた。パルスガンのネックであるオーバーヒートによるクールタイムも存在しないが如く、単騎、単一の武器で弾幕が形成されていた。

 

「(こんなの。見たことが…!)」

 

 メーテルリンクはかつてパルスガンを使用していたことがあるが、こんな性能の物は見たことが無かった。連射性能に長ける分、照準はばらけやすくオーバーヒートもしやすい。

 しかし、ケイトの機体が放つパルスガンの弾道は実弾の様に安定しながら、連射性能は据え置き。更には凄まじく威力が向上していることも分かった。構えたシールドが数発で吹き飛ばされていたのだから。

 

「降参は無駄です。抵抗しなさい」

 

 まるで、余興と言わんばかりに。ケイトはスネイル達の相手をしていた。

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