戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼131件目:レイヴン

 ケレス甲板部では激闘が繰り広げられていた。相手はたった1機。

 数が有利と言うだけではなく、このルビコンで多数の戦場で大きな爪跡を残したバルテウスの改修機、それに加えてベテランパイロットが操るAC多数にアイビスシリーズの1機を投入しているにも関わらず、ケイト・マークソンはこれら全てを跳ね除けていた。

 

「化け物め!!」

 

 レッドが叫ぶ。ケイト・マークソンの機体は今までの無人機やドローン機にさえ見られない奇妙な造詣をしていた。

 上半身と下半身に1機ずつ用いられており、背面のブースターだけではなく脚部の各所からも大量のブーストを吹かすことであり得ない速度と機動を実現していた。あのバルテウスにすら追い付いている。

 これだけ奇怪な機体でありながら武装自体はオールレンジと言う程ではなく、AC並にスマートにまとまっていた。ただし、火力は明らかに常軌を逸していた。

 

「どうしたんですか。オリジナルの私よりも優れているのを見せつけるのでは無かったのですか?」

 

 オールマインド・バルテウスが展開したパルスバリアが一瞬で剥がされ、6連バーストで吐き出されようとした所で、ケイトの機体にパルス・ミサイルが襲い掛かった。

 

「また、俺の援護が必要か?」

「オキーフ、礼を言います」

 

 反撃に転じようとした際、オールマインドは自らのデータに映った物を見て驚愕していた。ケイトの機体の脚部と思っていた場所から、グレネードランチャーを構えた腕が出現していたのだから。

 

「2機を組み合わせていると言ったでしょう?」

 

 人間の反射神経ならば直撃は避けられなかったが、AI特有の超反応とバルテウスの機動力を持ってして、ようやく回避が出来た。しかし、肩部のパルスキャノンは吹き飛ばされていた。

 

「早すぎる……!」

 

 メーテルリンクはミサイルを放ちながら、歯噛みしていた。繰り広げられる高速戦闘について行ける機体は少ない。カーマンライン付近ということもあり、ブースト量的な問題は踏み倒せるにしても速度に関してはどうしようもない。

 特にベイラムの機体は空中戦をあまり得意としておらず、こういった場所では固定砲台めいた動きしか出来ないのも痛かった。

 では、他の元・ヴェスパー部隊長が付いて行けているかと言われたら、これもまた微妙な所だった。速度に特化したオキーフのバレンフラワーとHAL826を用いているスネイルは兎も角、スウィンバーンも攻撃を避けながら、発射感覚の長いミサイルを放つ位しか出来なかった。

 

「(当たり前だが。機動戦が出来る者が、態々出来ない者に合わせる理由もない。このままでは一方的に嬲られるだけだ)閣下!」

「ベイラムの部隊は下がって、入り口の確保を!」

 

 スネイルも同じことを考えていたのか、直ぐに命令が出された。G6レッドの指揮の下、ベイラム部隊が甲板から船内へと逆戻りして行く。

 多少、間の抜けた光景であったが、居ても撃破されるだけとなれば下げるのは賢明な判断とも言えた。そもそも、戦場があまりに特異な状況であるということもあったが。……同時に分かってしまったこともあった。

 

「(我々では、恐らく。ケイト・マークソンに勝てない)」

 

 機体性能も操作技量も鑑みて、オキーフは結論付けていた。状況を打開するために何が必要かと考えた場合に必要な物。に関しては、即座に答えは出た。

 

「ふん! 我々程度で良い気になるなよ! 貴様など! レイヴンが加勢にくれば、一溜りも無いわ!!」

 

 スウィンバーンが自らを鼓舞する為に叫んでいたが、内容はあまりに情けない物であり……現実には即していた。

 

「それまで貴方達が耐えられたら。ですがね」

 

 そんな彼の強がりを踏み潰す様に、ケイト・マークソンも淡々と述べた。彼女の機体が放った6連バーストが、HAL826の『IB-C03W4:NGI 028』をコーラルシールドごと消し飛ばしていた。

 

~~

 

 ケレス機関部。ジェネレーターのオーバーロードを防ぐためにブルートゥが停止作業に当たっている中、周囲では大量のタレットが出現していた。

 狙いは彼らではない。部屋内に大量に設置されたコーラル貯蔵タンクへと向けられていた。

 

「不味い!」

 

 タレットから放たれた銃弾をナイルはディープダウンで受け止めていた。壁面、天井、床、あらゆる場所から出て来る砲台が貯蔵ダンクへと砲口を向ける中、突如として動きが鈍った。

 

『ブルートゥス! 俺はコイツらの動きを鈍らせる! 停止作業にはお前だけで当たれ!!』

「了解です。ご友人!」

 

 大量に出て来るタレットを一度に全て停止させることは出来ず、カエサルが出来ることがあるとすれば出現と攻撃を遅らせる位だった。直ぐに事態を察したミシガンの号令が飛んだ。

 

「室内を3分割して担当しろ! 間違っても、貯蔵タンクに当てるなよ! このルビコン諸共惑星封鎖機構を道連れにしたいなら話も別だがな!」

「怖いねぇ。こんなにプレッシャーの掛かる任務、ペイター君のお守以来だよ」

 

 自分達の誤射一つで全てが消し飛ぶという極限のプレッシャー下にあるというのに、ホーキンスの口から出て来た軽口に、ナイルは思わず笑ってしまった。

 

「どうして。ペイターがお前を慕うかがよく分かるよ」

「可愛いでしょ? ああいう、手の掛かる子が好きなんだよね。矯正は無理だったけれど」

「可哀想なお友達。きっと、今も彼は保護者の気も知らずに好き勝手していることでしょう。同行したご友人が無事だと良いのですが」

 

 実際に彼の懸念は的中しており、艦内の別所では友情のサッカー(おまえ、ボールな!)が繰り広げられていた。

 そして、彼もまた。カエサルのサポート抜きでオーバーロードの適切な処置が求められていた。ハードウェアとソフトウェア、友人達によって紡いで来た物の全てが求められる局面だった。

 

「(カーラ、ご友人。貴方達から受け取った物全て、ここで発揮してみせましょう)」

 

~~

 

 戦場では大きな変化が起きていた。上空から落ちて来たカプセルから機体が1機。このルビコンではよく見られる作業用フレームだけで構成された機体の両腕には、2丁の『SG-027 ZIMMERMAN』が握られていた。

 空中で態勢を整え、ザイレムへと着地すると同時に駆け出す。企業連合の通信が一色に染まった。

 

「レイヴンだ! レイヴンが帰還したぞ!!」

 

 ルビコニアンデスビートルと惑星封鎖機構の攻撃により消沈していた士気が一斉に盛り返された。事態の変化は収まらない。

 ザイレム付近に新たに現れた強襲艦隊から次々とACやMTが発艦しては、企業連合の援護を始めていく。中にはLCやアーキバスカラーのMTすら見られた。……そして、未だにルビコニアンデスビートルの上で中継を続けている男は叫んでいた。

 

「ありがとうございます! ご覧ください! 今や、ルビコンの主戦場はこの灼けた空の上となっております! さぁ、我々全員で勝ち馬に乗ろうじゃないですか!」

 

 ノーザークの実況は大言壮語ではなく、本当にルビコンに残っている残存勢力を全て持って来たのではないかと言う位に次々と機体がザイレムへと降り立って行く。

 幾ら強力なルビコニアンデスビートルやパイロットの技量が優れている惑星封鎖機構とは言え、数の暴力を覆せるほどでは無かった。

 

『なんか。凄いことになっていますね』

 

 決戦に違わぬ様相にエアが多少の困惑を浮かべる中。レイヴンの近くへと降り立って来る機体があった。スティールヘイズ・オルトゥスだ。

 

「あ。ラスティ!」

「戦友。君がここに来たということは、そう言うことだろう。……色々と言いたいことはある。だが、今ばかりは魔術師を倣って言わせてくれ。ここまで、私達を連れて来てくれたこと。本当に感謝している。さぁ、戦友! 共に行こう!」

 

 ザイレムで戦闘をしていた者達が集まって来る。これだけ大量の独立傭兵が暴れ散らかしているなら、ザイレムの防衛は彼らに任せようという捨て身にも近しい作戦だった。その中には、先程まで実況を担当していたノーザークの姿もあった。

 

「こうなりゃ、私は何処までも付いて行きますよ! そして、自伝を出すんです! ルビコンで起きたことの顛末を綴って!」

「俺の活躍も忘れんなよ!」

 

 ガラガラ声でビタープロミスをベシベシと叩くのは、ラミーのマッド・スタンプだった。

 このルビコンにおいては到底生き残れそうにないパイロット達であったが、どういった因果か。彼らは、今ここにいる。

 

「レイヴン。行こう! あの巨大な艦船を落としに!」

「どうやって、そのデカブツを運ぶんだ?」

「俺達のタンク型も向かうのはしんどいけどな」

 

 損傷したスマートクリーナー内で意気揚々と叫ぶダナムに、リング・フレディとヴォルタが冷静な指摘を入れた。

 かつて、己の考えに固執していた彼らが企業と言う枠組みを超えて、共に戦っている。というのは数奇な話だった。

 

「待て。同志ツィイーからも連絡が入って来ている。今、G3と共に強襲艦で此方へと向かって来たと」

「ならば、それを使って我々も向かおうとしよう。少しでも戦力は必要なハズだ」

 

 六文銭がツィイーからの連絡を受け取り、ミドル・フラットウェルが判断を下す。この場においてルビコン解放戦線を率いて来た帥叔の判断は早く、義を持って戦に挑む六文銭はこの上なく昂っていた。

 間もなくして、ザイレムの脇にピッタリと1隻の強襲艦が付いて来た。甲板にはツィイーのユエユーとG3の鯉龍が乗っていた。

 

「うわ。多!」

「これは……ヴォルタやリング・フレディみたいなタンク型だけを乗せて、我々は普通に向かった方が良さそうですね」

 

 本来なら2人共、本拠地で留守番をする位にはAC戦に向いていない者達ではある。しかし、今が立つ時なのだと。身を引き続けた二人はついに表へとやって来た。

 強襲艦隊も多くを乗せられる訳ではなく、キャンドル・リングやキャノンヘッドが乗せられていく中、ザイレム内部から煤を付けたスッラのエンタングルが姿を現し、アストヒクを下げた『SOL 644』が降りて来た。

 

「俺も出る。中の方まで独立傭兵が詰めかけていい迷惑だ。動きづらい」

「では、ここにいる者達で向かうとしよう。……レイヴン、エア。お前達には感謝しても、感謝しきれない」

「そうなのだ! ……行きましょう。そして、コーラルと共に在る未来をめざしましょう。のだ」

『セリアさん。その喋り方癖になりました?』

 

 折角、決戦の場に赴くというのに旧世代の音声ソフトを用いていた弊害からか、特徴的な喋り方の癖がついてしまったらしい。

 いずれもコーラルに運命を翻弄され、ルビコンへと還る定めにあった者達が、こうしてトンチキに巻き込まれる程度には日常へと身を置くようになっていた。

 甲板の上では独立傭兵のほかにも潜伏していたルビコン解放戦線の者達や、逃げ果せたシュナイダー関係者もいたのか、激しい攻防が繰り広げられている。

 大豊社製の装備で身を固めた機体は両肩部の『DF-GA-09 SHAO-WEI』ガトリングガン、両腕に『DF-GA-08 HU-BEN』ガトリングガンから盛大に弾丸を吐き出していた。

 

「おぉ! 俺と同じ様な機体構成の奴もいるな! いいぞぉー! やっちまえ! 弾薬代はノーザークが出してくれるってよ!」

「え?」

 

 自分と似た様な機体アセンブルを見つけたラミーは気を良くしたのか、テキトーなことを抜かしていた。唐突に振られたノーザークは困惑した。

 一方、『MA-J-200 RANSETSU-RF』で的確に相手を打ち抜きながら、『BML-G1/P07VTC-1』垂直12連ミサイルを降らしていく機体もいる。

 ……無名、有名問わずして集った多数の戦力。作戦的な面では不安も残る所ではあるが。

 

『ビジター! よく帰って来たね!』

「カーラ! そっちは大丈夫?」

『問題ないよ。チャティとバカ共が騒いでくれているからね。こっちのことは気にしなくていい! あのいけ好かない連中に、ビジターのとびっきりを見せて来てやりな!』

「うん!」

 

 多少の逡巡を振り払う様なお膳立てをされた。なら、迷う必要はない。レイヴンはレーダーに映ったケレスの反応を見ながら叫んだ。

 

「皆! 行くよ!」

 

 一斉に返事が返って来た。全員がザイレムを発つ。ルビコンに舞い降りたパイロット達は一様に決戦の場へと赴いた。

 

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