戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼132件目:お友達

 衛星砲内部。ブランチのメンバーはモニタに映る質量兵器を観測していた。

 『パラス』。巨大な隕石を武装化しただけの無骨な兵器であり、だからこそ退けるのが非常に難しい。不幸中の幸いがあるとすれば、落下速度が緩やかなことだった。

 

「オーバーチャージ装填完了。キング、射手は貴方に任せます。突入角度をずらして、パラスのルビコン突入を阻止してください」

 

 惑星封鎖機構の部隊を消し去る程の威力を持つ砲台が今は心許なく感じた。

 外せば、今日にいたるまでの積み上げが全て無意味となる。だが、引き金に指を掛けるキングに緊張は見当たらなかった。

 

「行け」

 

 限界を超えたチャージから放たれた砲撃は、強襲艦すら飲み込む程の威力を放っていた。表面の武装部分を破壊し、巨大な質量を押し動かそうとしている。

 あらゆる計器が警告音を発していたが、セーフティが作動して強制的にシステムが閉じようとするのをキング以外の3人が押し止めていた。

 

「どうせ、このステーションは捨てるんです! 施設内の電力を全部砲撃に回して下さい!」

 

 オペレーターの指示の下、空調の電力すら切り、文字通り一撃に全てを託していた。ジェネレーターの酷使により、施設内の温度が上昇していく。

 

「あと少し……!」

 

 砲身が熱に堪えかねて、溶け始めていた。軌道は逸れている。後、少しで完全に軌道が逸れる。この場にいる者達が願っている中、轟音と共に衝撃が襲った。何が起きたかは直ぐに分かった。

 

「ジェネレーターが限界を迎えたんだ! 畜生!」

「ここまで来て……!」

 

 シャルトルーズとキングが悪態を吐く。足りなかった、後悔しても自分達にはもう打つ手がない。母艦は破壊され、残った機体も戦闘が行える状態ではない。次の一手など、到底思い浮かばない中。フロイトだけが他人事のように言った。

 

「後は、ルビコンに残った連中に任せれば良い」

 

 現在、ルビコンに投入されている企業連合の戦力で件の兵器に対処できるとは思えなかった。……そう、企業連合の戦力には。

 

「そうか。アレを奪うことが出来れば」

 

 ブランチ・レイヴンを始めとした4人は直ぐに思い当たった。自分達はあの質量兵器よりも更に強大な兵器を知っている。問題は、入手することが出来るか。ということだが。

 

「彼女達はそう言うことは得意だろう。何せ、アレだけ惑星封鎖機構やアーキバスの物を奪って来たからな。機体もテクノロジーも……そして、連中の心までもな」

 

 コンバット・ハイが継続しているフロイトの戯言は無視され、ブランチの面々は復旧作業に当り始めた。

 

~~

 

 コールドコールを撃破したペイター達はスキャンを掛けながら艦内を進んでいると、とある一室に大量の反応があることに気付いた。シャッターによって入り口が阻まれているのを見て、イグアスが察した。

 

「こりゃ、ウォッチポイント・アルファでもあった手法だ。閉じ込めて圧殺するって手法だ、機体反応の中にライガーテイルもあった」

「それと大量のコーラルと高熱源反応も。……何かがあったら、この船諸共、我々を葬るつもりだったとしたら。直ぐに助けに入らなければ!」

「やめておけ。シャッターをぶち破った時の流れ弾で、コーラル貯蔵タンクにでも誘爆すれば、皆が死ぬ」

 

 逸る1317を嗜めるようにしてコールドコールが呟いた。実際、スキャンで大量に確認されたコーラル貯蔵タンクをどうにかしなければ、ほんの僅かなミスで自分達はこの艦と運命を共にすることになるのだ。……何なら、何もしなくても既に進み始めているかもしれない。

 仲間がすぐ傍で戦っているというのに助けられないもどかしさに歯噛みしていると、隣にいるペイターがヘルメット越しに凄い笑みを浮かべていた。

 

「へぇ、コーラルが沢山」

「……何か、考えがあるのか?」

 

 友人がこの様な笑みを浮かべるときは大抵碌でもないことを考えているし、何ならさっき自分が被害に遭ったばかりだった。すると、彼はHM型の腕を掲げ、天井を指差していた。

 

「連中。どうやら、表にいる虫達のことが好きな様ですし。折角ですから、ご馳走をしてあげようと思いまして」

 

 瞬間。他の3人も何をするかを察した。

 大量のコーラル。投棄するにしても処分するにしても多大なコストが掛かるが、これらをまとめて解決する方法を見つけ出していた。直ぐにHM型とヘッドブリンガーは天井のぶち抜き作業に走った。

 

「坊や達の柔軟さには驚かされる」

「これはな。イルブリードのミミズバーガーを参考にしているんだ。そうに違いねぇ!」

「なるほどな」

 

 かなり雑な相槌を打ちながら、コールドコールは常識外れと合理性が一体となった奇妙な行動を観察していた。

 

~~

 

「うん?」

 

 真っ先に変化に気付いたのはナイルだった。室内の天井の一部が凹み、ぶち抜かれた。すると、彼らも見知った2機。HM型とヘッドブリンガーが降りて来た。

 

「ヒュッー。えらい賑やかですね、まるでパーティ会場だ!」

「V.Ⅷ! 部屋には扉から入るとは、アーキバスで教わらなかったか!」

「すいません。でも、ちょっと招待したい奴らが居まして。彼らにとって、この部屋の扉は小さすぎるんでね」

 

 ミシガンのジョーク交じりの叱責にペイターも軽口で返す。すると、穴の空いた天井から、ガサガサとルビコニアンデスビートル達が押し入って来た。

 彼らは襲い掛かって来るタレットや砲台には微塵の興味も示さず、樹液に群がる甲虫の様にコーラル貯蔵タンクを吸い始めた。

 

「まさか、こんな処分方法があったとは……」

 

 ナイルとしても盲点だった。多少の攻撃でもビクともしない容器は直ぐ近くに存在していたのだ。彼らのことを排除するべき障害と考えている間には、到底思い浮かばない発想だった。

 

「いや、ペイター君! 思い切ったことをしたね! ファインプレーだよ!」

「ほ、ホーキンスさん……」

「乙女みたいにときめくな」

 

 ホーキンスからの賞賛を受け取ったペイターの表情は、いつもの小憎らしい物ではなく、ちょっと乙女チックになっているのが微妙にキモかった。

 ルビコニアンデスビートルが貯蔵タンクに覆い被さるのでタレットの攻撃は阻まれていた。そして、彼らはご馳走に夢中だった。……即ち、ブルートゥは全力でジェネレーターへの干渉を行うことが出来た。

 

『待たせたな。ブルートゥス!!』

「行きましょう。ご友人!!」

 

 この部隊に加わってから、プログラムへの介入にも慣れた物だった

 ウォッチポイント・アルファで作られた物よりも改良されていたが関係は無い。室内に満ちるコーラルもあり感覚が拡がっていく様な気がした。

 すると、彼の視界には不可思議な光景が広がっていた。まるでプログラム全体が迷路の様に見えた。そして、自分はこれらを俯瞰している。

 

『お前もこちら側に来たか』

 

 隣には赤くボンヤリした光があった。姿と言えるほどの物ではないが、誰であるかは分かる。

 迷路の様に入り組んだプログラムでも俯瞰出来てしまえば、潜り抜けるのは簡単だった。カウンターシステムを嘲笑い、行き止まりを選ぶことは無い。己の意思が迷宮を駆け抜けていった先、光が広がっていた。……目の前には、正常な状態に戻ったケレスのジェネレーターがあった。

 

「よくやった!」

 

 通信にミシガンの賞賛が響いた。自分達を沈める障害を排除し、窮地を切り抜けたのだ。室内にいるルビコニアンデスビートル達の気が変わらない内に天井の空けた穴から皆が脱出していく。

 ブルートゥも一息吐いていると通信が入って来た。相手はペイターからだった。

 

「貴方の窮地を助けたんですよ。何か一言あっても良いんじゃないんですか?」

 

 いつもならばにべもなく切り捨てる所ではあった。しかし、彼の救援のお陰で窮地を切り抜けることが出来た。だから、とても素直に言葉が出て来た。

 

「ありがとうございます。ご友人」

「……え? 今なんて!?」

 

 ペイターにとっては想像も出来ない反応だったらしく、通信機の向こうで催促されもしたがブルートゥはフフフと返すだけだった。彼らの遣り取りを聞いていたナイルは苦笑する外なかった。

 

「全く。ここまで来てようやくか」

 

 それは、猟犬部隊(ハウンズ)の最も古い外様として彼らを見て来たナイルだからこそ、湧いて来る感情でもあった。

 船外へと出る。甲板の一部には既に大量の機体が集まっており、決戦の場は一目瞭然だった。彼らはブーストを吹かして、現場へと急いだ。……カーマンライン近くにはパラスが迫りつつあった。

 

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