戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼133件目:ノーザーク「え? 取引に応じたら安寧をくれるんですか?」

 ザイレムを発ったメンバーが、ケイト・マークソン達が交戦している甲板地点へと辿り着いた頃。丁度、ペイター達も到着していた。このルビコンで有名な傭兵達が一堂に会した様は壮観でもあった。

 彼らの眼前には大型の機体が1機。周囲には、完全に沈黙したオールマインド・バルテウスとかなり激しい損耗をしているスネイル達の機体がいた。

 

「ようこそ、おいで下さいました。ルビコンを代表する皆さま」

 

 この惑星に降り立った者達の中でも有数の実力者達を同時に相手取っていたというのに、ケイトには疲弊した様子は見当たらない

 

「御託は良い。この船を停めろ」

 

 開口一番に恫喝交じりの要求をしたのはミシガンだった。他の機体は既に攻撃態勢に入っており、緊張状態にあった。

 

「お断りさせて頂きます。折角、彼らが飛翔していくというのに。正直、貴方達も飽き飽きしているハズです。生き延びたとしても戦い続けなくてはならない世界に」

 

 この場にいる者達は糧を得る為、富を築く為、生きる為。生と死が入り混じる戦場へと身を投じ続ける日々を過ごして来た。

 

「もう、ここらで終わりにしましょう。貴方達の実力はよく分かりました。このままケレスで共に宇宙へと出ましょう。そして、我々は惑星封鎖機構として世界の行く末を見守る。戦いのない穏やかで平和な日々が皆さまをお待ちしております」

 

 好き好んで戦場に出る者はいない。……と言う訳ではないが、心身を削り続ける日々が遠ざけることを望む者は大勢いる。

 ある者達はこの惑星の原住民だった。新資源が見つかったことを切っ掛けに争いに巻き込まれ、暴力と貧困に襲われ続けている。

 

「確かに、それは魅力的だ。誰からも搾取されずに穏やかに生きること。ルビコニアン全員の望みだ」

「貴方達はもう外部の脅威に怯える必要が無くなります。続く内乱に関しても、私達が平定して差し上げましょう」

 

 自分が企業に入り込んでまで、手に入れようとした日々を提供してくれるなら願っても居ない。ラスティは操縦桿を握りながら、大仰に同意していた。

 

「企業に仕える者達も同じです。上層部の意向一つで命を摩耗させられることもありません。権威を築くことは諦めて頂きますが、そんな物が無くとも安寧があるなら十分です。私達のテクノロジーなら改造された身体も元に戻せますし、お望みならば飢えも病気も無い義体を用意できますよ」

「ソイツは良い。働かずに好き勝手が出来るなんてな! 映画も見放題だ!」

 

 イグアスも賛同をしていた。権威や権力に噛みつく狂犬の口から出て来るはずもない言葉に、ベイラムの者達は苦笑した。

 

「企業に所属していない独立傭兵の皆さまにも同じだけの報酬を授けるつもりです。私は差別をしません」

「本当ですか!?」

 

 食いついたのはノーザークだった。先の2人の様な嘲笑を含んだ物ではなく、割とマジトーンだったが、誰も何も言わなかった。

 

「レイヴン。貴方はどうですか? 普通の人間へと戻り、失われた時間を取り戻すつもりはありませんか?」

 

 彼女はここに来るまでの間に様々な物を犠牲にして来た。平穏、友人、少女として過ごすハズだった時間。

 年頃らしい話題も持たず。同年代の友人がいるはずもない。平穏や普通とはかけ離れた生活をしている彼女の答えは分かり切っている物だった。

 

「要らない」

「とのことだ。私も戦友と同じ意見だな。第一、そう言った甘言で近付いて来る連中に碌なのが居た試しがない」

「アホ犬でも食わない物に食いつく訳ねーだろ。お前、バカか?」

「そ、そうですよ」

 

 3人に加えて、ノーザークだけは控え目に否定していた。

 他のパイロット達も中指を立てたり、親指を下に向けたりと。誰一人として、彼女の提案に賛同する者はいなかった。

 

「そうですか。では、この『オーダー』に跪きなさい」

 

 ケイトの機体が飛翔する。この場に居た者達の判断は非常に早かった。

 機動力に優れた機体を用いている者達は、彼女の機体を追いかけ。重量級の機体のパイロット達は、地上部からの砲撃へと切り替えた。先陣を切ったのは、『SOL 644』とアストヒクだった。

 残留コーラルを取り入れたことで機体の出力自体が上がっているのか、アストヒクを乗せながら高速移動をしても、機動力の減衰は無かった。

 変形して翼状の先端にコーラルブレードを展開しながら、ミサイルやキャノンもばら撒きつつ、彼らに続く様にしてペイターのHM型やラスティのスティールヘイズ・オルトゥスも続いた。

 

「コーラルリリースを目的としていた貴方が、今は人間の男に篭絡されてこの様ですか。所詮は俗物だったということですね」

「そうなのだ! 理想よりも目の前の目的に飛びついた方が楽しいのだ!」

 

 迫り来るSOL 644に対して、オーダーが放ったミサイルは挙動こそ『BML-G3/P05ACT-02』と似通っていたが、ミサイルの追尾性能と弾速は比べ物にならない程に上がっていた。

 変形状態のSOLにさえ追従する程の速度だったが、背中に乗っていたアストヒクが『HI-32: BU-TT/A』パルスブレードで断ち切ろうとした瞬間、弾頭が割れ、中から大量に出現した小型ミサイルが彼らを襲った。

 

「帥父!」

 

 追撃を妨害するべく、スティールヘイズ・オルトゥスが『Vvc-774LS』レーザースライサーで切り掛かろうと肉薄しようとすると、機体の目の前を赤いレーザーが横切った。反応を見れば、そこにはHAL826が居た。

 

「スネイル! どういうつもりだ!」

「不用意に接近戦を仕掛けるな!」

 

 見れば、オーダーの脚部からはレーザーブレードの刀身が発生していた。もしも、近接戦闘を仕掛けていたら串刺しにされていた可能性が高い。

 

「もう、終わりですか? ならば、こちらから行かせて貰いましょう」

 

 オーダーの両手に握られているパルスガンから赤色のパルス弾が放たれる。両腕だけではなく、脚部から生えたアームにも同様の武器が握られており、地上部で砲台をしている者達に対しても攻撃が降り注いだ。

 

「俺のマッドスタンプがぁ?!」

 

 地上部にいる機体達の中で、比較的耐久力の高いラミーの機体でさえ2,3発当たっただけで腕部及び肩部の兵装が吹き飛び、機体にも直撃して機能を停止させていた。

 高威力のパルス弾だけではなく、グレネードや高速追尾ミサイルまで地上に降り注いでいる。ランカー下位の者達は避ける事すら出来ず、次々に戦闘不能へと追い込まれて行った。

 

「あー! やっぱり無理ですぅ!!」

「ノーザーク!? うわ」

 

 やはり、この場に来たのは場違いであり、ノーザークのビタープロミスは戦闘不能へと追い込まれていた。

 そして、ダナムの操るスマートクリーナーも図体の大きさから被弾し、持ち前の耐久力は正面から削り取られ、撃破されていた。

 

「ぐっ、クソ!!」

「遠過ぎる……!」

 

 レッドのハーミットやツィイーのユエユーのアセンブルは近接戦にて威力を発揮する性質だったが、オーダーが展開する火力を前に近付けずにいる。

 そして、機体の出力の関係から高速追尾ミサイルを振り切ることが出来ず、被弾していた。背部兵装や腕部、脚部なども吹き飛び機体の制御もままならずに落ちていく。これらの光景を見ていたスウィンバーンは甲板へと急行した。

 

「私の機体ではこれ以上の交戦は不可能だ! 脱出した者達の護衛に入る!」

 

 先に戦いを始めていたスウィンバーンは他の者達と比べて技量が劣っていたこともあり、ガイダンスの損耗は激しい物だった。

 このまま空中戦を続けていても邪魔にしかならないと判断した彼は、撃破された機体から脱出したパイロットに追撃が入らない様に自らの機体を盾にしていた。『VP-61PS』からバチバチと不穏な音を立てながら、パルスシールドが展開された。

 

「こっちだ!」

 

 先に脱出していたレッドが、機体から出て来たラミーやツィイー達を船内へと誘導しようとした所で、彼らの通信にケイトが割り込んだ。

 

「これで終わりです」

 

 死の直前、人の感覚は凄まじく冴え渡るという。レッドの五感は捉えてしまった。

 迫り来るグレネード弾の質量。数秒先に見える未来を幻視した彼らの頭上へと躍り出たのは、ハーミットと同じく純正の『MELANDER』フレームで構成された、メーテルリンクのインフェクションだった。レッドが叫ぶ。

 

「メーテル!!」

 

 咄嗟に伏せる。頭上で爆発が起きるが、爆風や破片が彼らに降り注ぐことは無かった。爆風が晴れた先には、ボロボロのガイダンスとかなりのダメージを受けたインフェクションが居た。

 衝撃で意識が朦朧とする中、メーテルは通信に映ったスウィンバーンの姿を見て青褪めていた。ヘルメットのバイザーの半分が真っ赤に染まっていた。

 

「スウィンバーン!?」

「心配するな、切っただけだ。意識もハッキリしている! 早くこの場を脱しろ!」

 

 ガイダンスを乗り捨てて着地しようとした彼は、バランスを崩したのか真っ逆様に落ちた。ノーザークを始め誰もが動けずにいる中、レッドは動いていた。軍人として培った訓練通りに動けていた。

 彼はパイロットスーツの背面に装着された推進装置を用いて、スウィンバーンをキャッチした後、船内へと逃げ込んでいく。……内部も決して安全と言える訳では無かったが。直ぐにメーテルリンクが続いた。

 

「閣下、私も引きます! ご武運を!」

 

 半壊状態のインフェクションと共にメーテルリンクもまた船内へと戻っていく。

 短時間の交差で7機もの機体が戦闘不能へと追い込まれていた。されど、オーダーの動きが鈍ることは無く、戦いは続いていた。彼らの頭上では刻一刻とパラスが近付いていた。

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