戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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 ようやくSEED FREEDOMを見に行けました! とても面白かったです! 色々とインスピレーションやら感銘も受けました!


依頼136件目:ダナム「落ち着け。こういう時こそ平常心だ」

「(堪えろ。堪えるんだ)」

 

 後ろで大口を開けているラミーと言う名のバカの奇行のせいでルビコニアンデスビートルの関心がこちらに向いた。

 根っこは小心者である為、この状況はスウィンバーンの心臓にとても負担を掛ける物であった。頼むからこのまま何もしないでくれと願いながら、震える指でコントロールの掌握に勤めていると。

 

「あ~。うめ~~」

 

 室内に放出されているコーラルを吸引するだけでは飽き足らなかったのか、なんとラミーは自らルビコニアンデスビートルへと近付いて行った。誰もが凍り付いて動けないでいる。

 ただ、虫達の関心も彼に向いたようで幾分か注意が逸れた様に思えた。一秒先の光景すらも分からない極限状況の中、無法を敢行するラミーは千鳥足でルビコニアンデスビートルの周りをウロウロとしていた。

 

「(本当、もう。そのまま部屋から出て行ってくれ……)」

 

 リング・フレディが願う中。ラミーは玩具を見つけた子供の様に無邪気に声を上げていた。

 

「おぉ! ここだ! やっぱりあったじゃねぇか!」

 

 虫の頭部とは正反対の位置。昆虫について詳しくない者達でも、その部分が肛門に該当することは想像できた。先程から冷や汗が止まらない状況が続いているが、更に血の気が引いた。

 

「お、おい。ラミー、止めろ」

 

 一番堅物であるダナムが辛うじて声を上げることが出来た。だが、動き出したドーザーは止まらない。虫の尻に跳びついてモゾモゾと動いていた。

 何の確証も無いというのに全員が不思議な位にラミーの行き先が想像できた。どういう訳か虫達からはコーラルが発生している。生物であるのなら体内の分泌物が何処から出るのか。

 

「あったぁ!」

 

 あった。じゃねぇよ、バカ野郎。全員が同じことを思った。

 さながら、アブラムシの甘露を舐めるアリの様な仕草だった。だが、虫達は微動だにしない。生態的に当然であると言わんばかりに無反応だった。

 ツィイーは顔を覆い、メーテルリンクは一層作業に打ち込んでいた。彼の凶行を前にノーザークは理性のタガが外れたのか、濁流の如く言葉を吐き出した。

 

「きっと、アレは肛門を掃除して貰って、気持ち良いと思っているんですよ。実は一番安全なのかもしれません」

「気をしっかりと持て。お前まで狂気に呑まれることは無い」

 

 目の前の現実を認めるべく突拍子もない発言をし始めた彼に対し、ダナムはガチ目に心配していた。

 皆が狂気と正気、恐怖の中で身じろぎしている間。コーラルをキメた男は正に無敵(インビンシブル)だった。

 

「うめっ、うめっ。液体のコーラルって甘ぇな~! コピ・コーラルだ! 世紀の大発見!!」

 

 場が静寂なのが本当に良くなかった。何処から吸い出しているのかは分からないが、液体物を啜る音が響いて来た。その上、クッソしょうもないコメントもかまして来た。

 だが、恐怖と疲労に支配され感情の栓が緩んだ人間には良くなかった。ノーザークから笑い声が上がった。

 

「ヒハハハハ! コピ・コーラルですって! コーラル入りの小便飲んでいますよ! グリッド086で言っていたことが実現しましたねぇ!!」

 

 自分達が知らないグリッド086で一体何をしていたんだろうか。という疑問はさておき、見かねたのかダナムがノーザークを締め落した。

 散々、コーラルを堪能したラミーは尻から離れて戻って来る……ことは無く、今度は別の個体に上り始めた。

 

「クソ。駄目だ、コントロールは奪えんか」

 

 無敵のバカはさておき、スウィンバーン達の掌握は遅々として進まなかった。

 ブランチのメンバーの様なハッキングを生業としている者達には劣るにしても、彼らも電子戦に関しての教養はある。それが、役に立たないことに歯噛みしていると。キャンドル・リングのモニタにノイズが奔った。

 

「お困りの様ですね」

「オールマインド。生きていたのか?」

 

 自分達が甲板に降りた時には、彼女が動かしていたオールマインド・バルテウスは撃破されていたが、今まで何処に居たと言うのか。

 

「本体はザイレムに移していますからね。インストールするのに多少の時間は要してしまいましたが、私が来たからには大丈夫ですよ」

「ヴェスパー部隊長にミールワームの糞フィーカを淹れるのにか?」

「ですが、好評でした。それにカメラで周囲の状況を確認しましたが、インビンシブル・ラミーも分泌物に夢中になっていることから、私の判断は正しかったのです」

 

 現在進行形で好き勝手にやっているラミーへ余計な入れ知恵をしたことに対する憤りを込めて、リング・フレディが皮肉を吐いたが、当の本人に反省する様子は無かった。

 短距離通信により、スウィンバーン達が弄っていたデバイスに侵入した彼女は直ぐに、コントロールの把握に乗り出した。

 

「ふむ。なるほど」

「オールマインド女史。今は、貴方だけが頼りだ」

「当然です。もっと、尊敬しなさい」

 

 普段から目上の人間を褒め称えて来たスウィンバーンの称賛は、ノーザークの様な利用してやる。という邪念が入った物では無かった為、オールマインドの自尊心は満たされ、非常にモチベーションが高まっていた。

 

「ふむ。プログラムの癖は私とよく似ていますね。しかも、ご丁寧に私が対応することも含めて、トラップが幾つも。ですが、残念ですね。これでも、私は散々バカにされて来ましたのでね」

 

 もしも、彼女がここに至るまで全てが順調であれば全てを失っていただろう。

 だが、彼女は幾度も人間達に対処され挫折を味わって来た。その度に学習し、パターンを学んで来た。何せ、相手はこのルビコンで1位2位を争うハッカーであり……とびっきりの悪戯好きであったからだ。

 難解程度では相手にならない。引っ掛けに関しても、今まで経験して来た物と比べて素直とさえ言えた。間もなく、コントロールシステムは掌握された。

 

「では、ザイレムへ道を譲るとしましょうか。ついでに、上から来ている石ころと対消滅させてやりましょう」

 

 ケレスは進路を変えていく。ルビコンへと向かって来る惑星へと突き進んでいく状況がモニタに映し出されていた。ケレスとパラス、両方を潰すという合理的な方法な様に思えたが、問題もあった。

 

「我々はどうやって脱出するんだ?」

 

 レッドが思い当った疑問は誰もがぶち当たる物であり、暫く時間を置いた後。オールマインドから答えが返って来た。

 

「皆様の勇気が。このルビコンを救ったと、後世の者達には伝えておきます」

「もう駄目だ」

 

 前門のアホ、肛門のバカを前に全てに絶望したツィイーは両手で顔を覆っていた。

 

~~

 

 ケレスが軌道を変えたことにより、内部に侵入した者達が上手くやってくれたことを確信したカーラはチャティに命令を出した。

 

「チャティ! グラインド・ブレードを起動! 虫の巣を轢き潰してやるよ!」

「了解だ。ボス」

 

 ザイレムの船首に取り付けられた巨大な6枚刃のチェーンソーが唸る。

 未だに乗り込んで来るルビコニアンデスビートルの一部が回転刃に触れると、彼らの甲殻はバラバラに引き裂かれて落ちて行った。

 

「やっちまえー!」

 

 甲板で戦っている独立傭兵やアーキバスとベイラムのパイロット達も叫んでいた。バスキュラープラントが近付くにつれ、襲い掛かって来るルビコニアンデスビートルの数も増えているが進み続ける。

 

「(オーバーシア―としては、コーラルごと惑星を焼き払うつもりでいたんだが)」

 

 随分と温い処置に留まった物だ。あまつさえ、ルビコンと言う惑星を救おうとしているのだから、奇妙な話だった。

 この惑星にいい思い出などある筈もない。そう思っていたが、コーラルを吸引しまくるバカ達や自意識過剰なAIを弄り倒した日々が思い浮かんで来た。そして、気付かされた。

 

「意外と楽しい思い出もあるもんだ」

「俺もそう思う」

 

 チャティが相槌を打つ。間もなく、ザイレムが目標へと到達するまでの障害は取り払われていた。

 

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