戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼137件目:戦いの終わり

 先に撃破された者達が奔走したことにより、状況が変わったことは皆が直ぐに察した。ケレスと言う障害を退けることが出来れば、この戦いはレイヴン達の勝利と言っても良い。

 

「他の連中も逃げ帰りました。貴方も尻尾を撒いて逃げたらどうですか?」

 

 こちらの有利が分かるやスネイルの口から痛罵が飛び出た。しかし、彼女の判断は早かった。

 

「船内に保管していたコーラルタンクは潰され、ケレスも鹵獲される始末。参りました。戦略的に見ても私の負けはゆるぎない事実です」

 

 嫌にあっさりと認めていた。すると、彼女は包囲を突破するべく機体からパルス波を放った後、甲板に向けて急降下を始めた。

 たった1機で支援射撃を行っていたヴォルタからすれば予想外だった。キャノンヘッド目掛けて、オーダーがバーストパルスガンをばら撒いた。

 

「特攻じゃねぇこと位は分かる」

 

 だが、一度死にかけたことがあるヴォルタは冷静だった。彼は直ぐにパルスアーマーを展開し、返す一撃として『SG-027 ZIMMERMAN』の引き金を引いた。吐き出された散弾はオーダーに命中することは無かった。

 ケイトはヴォルタには目もくれずに船内へと戻っていく。彼女の目的を察した面々もまた船内へと再突入する中、イグアスはヴォルタの後ろにピッタリと付いていた。

 

「なんだ。俺のお守が必要か?」

「必要なのはテメェの方だろ。俺が参加できなかっただけで死に掛けていたんだからな。後はもう、くたばり掛けを葬るだけだ。さっさとシバいて帰るぞ」

 

 今回の戦いでも、互いの機体の特徴から同じ戦線に立つことは難しいと思われていたが、結局合流しているのだから不思議な物だった。

 しかし、自分達は何処へと向かうべきなのかと全員が悩んでいる中、ペイターは直ぐに

 

「正直、今からコントロールルームに行っても遅いと思うんですよね。これだけの巨体、急に動きは変えられませんから」

 

 ケレスに起きた変化の大きさがどれほどの物かは分からなかったが、今から変更を加えた所で間に合う気はしなかった。

 だが、この場には頭の回転が早い者も多い。何処に向かったかを察した者達も居たが、ペイターの勿体ぶった言い方を汲み取ったナイルが促した。

 

「ペイター。心当たりはあるのか?」

「ありますとも! ナイル参謀。さっき、ブルートゥ達が居た部屋を覚えていますか?」

 

 機関室。この船の動力でもあり、大量のコーラル貯蔵タンクが積まれていた爆薬庫みたいになっていた場所であるが、ルビコニアンデスビートルを招き入れたことにより、ルビコンを燃やす程の火薬は堅牢な生体貯蔵庫へと収納された。

 

「大方、あの機体を用いて機関室をオーバーロードさせて、艦内にいるルビコニアンデスビートルごと爆破するつもりでしょう。自爆とは、如何にもAIが取る下策らしい」

「おい! ハゲ! 私のセリフ取るな!」

「こんな状況でも悪口が飛び出るんだな……」

「ペイター。そんな言い方しちゃ駄目」

 

 この場を取り仕切りたかったペイターとしてはセリフを奪われたことはトサカに来たのか、咄嗟に禁じられていた暴言が飛び出していた。

 それを友人と少女によって咎められるという最終決戦の場には到底ふさわしくない光景が繰り広げられていたが、オキーフも苦笑いしていた。

 

「やはり、人間は良い物だ」

「なんだ! 今更、気付いたのか! お前と言い、ヴェスパー部隊長はペイター以外、神経質過ぎる! もっと、バカになれ! 手本は幾らでも転がっているぞ!」

「知っている。ハウンズで散々見た」

 

 ミシガンも何処となく上機嫌な様に思えた。船内を進んでいると、いたるところにルビコニアンデスビートルがジィっとしていた。こちらを見ても襲い掛かって来る訳でもない。

 

『何を考えているかは分かりませんが、穏やかな様子は伝わってきますね』

「多分、お腹いっぱいなんだよ」

『これだけコーラルが充満していればな。しかも、この船自体はバスキュラープラントから遠のいているのだから、穏やかにもなるだろうよ』

「戦場の隙間に出来た小さな休憩所。なのかもしれませんね」

 

 エアやレイヴン、カエサルやブルートゥにも虫達の考えていることはよく分からない。だが、敵意らしい敵意は感じなかった。

 そして、スネイルの予想通り。機関室へと向かうとオーダーと機関室のジェネレーターが繋がれていた。室内で休んでいたルビコニアンデスビートル達も敵意を察したのか、立ち上った。

 

「それでは、皆さま」

 

 オーバーロードの為に準備に入った所だったらしくジェネレーターから異音が鳴り始めた。迷っている暇はない。残っている者達全員で突っ込んだ。

 

「G4! G5! 行くぞ! G2はG13の子守を命じる!」

「オキーフ。ラスティ。私の機体はオーダーと相性が悪い。ここはV.Ⅷの援護に徹しましょう」

「了解した」

 

 彼らに襲い掛かって来るのは、この決戦が始まって以来何度も見て来たルビコニアンデスビートル達だった。

 最初に躍り出たのはミシガンのライガーテイルが率いるキャノンヘッドとヘッド・ブリンガーだった。

 

「―――!」

 

 もはや鳴き声を上げることも無く、虫達の体からはコーラルミサイルが放たれた。ライガーテイルはこれらを避けた後、1匹の背中に飛び乗り、甲殻の隙間に向けて『DF-GA-08 HU-BEN』ガトリングガンを吐き出していた。

 振り払うべく暴れ始めた所で、ヴォルタのキャノンヘッドが『DF-GR-07 GOU-CHEN』グレネードの引き金を引いた。虫退治は一度経験していたこともあり、関節部分への狙いは芸術的とさえ言えた。

 だが、倒れる直前に放たれたコーラル弾が迫り来る中、間に割って入ったのは『SI-27:SU-R8』パルスシールドを展開したヘッド・ブリンガーだった。

 

「やるじゃねぇか」

「当たり前だろ? おい、アホ犬! さっさと先に行け!」

「ありがとー!」

 

 立ちふさがっていた虫が処理されたかと思いきや、今度は複数引きが立ち塞がって来た。レイヴン達の進行を阻むようにして現れた者達に対処するのは痩身の3機。

 

「落ちろ……!」

 

 チャージを終えた『VE-60LCB』レーザーキャノンが火を噴いた。一撃でルビコニアンデスビートルの関節が破壊され、バランスを崩した個体が躓いた。

 その巨体を乗り越えて進もうとした所にHAL826とスティールヘイズ・オルトゥスが躍り出る。

 

「スネイル! 戦友に良い恰好を見せようと張り切り過ぎるんじゃないぞ!」

「貴方こそ。精々、失望されない程度には仕事をこなして下さい」

 

 かつては憎み合っていた者同士だが、自分達を繋いだ1人の少女を想う気持ちは同じだったのか。彼女が進むべき道を切り開かんとするコンビネーションは凄まじかった。

 スネイルのHAL826が擦れ違い様にコーラルブレードで一撃を入れた後、断ち切れなかった部分はラスティのスティールヘイズ・オルトゥスがレーザースライサーで追撃を入れて切断して、後続のルビコニアンデスビートル達の動きをも封じていた。

 

「さぁ、戦友! 道は開いたぞ!」

「後は任せましたよ」

「うん!」

 

 ジェネレーターまであと少し。並び立つ機体はいずれも見慣れた物だった。

 

「思えば、お前らとは随分長い付き合いになった気がするよ」

 

 ベイラムの特徴をよく表した重量パーツを主体とした『ディープダウン』。

 搭乗者であるナイルは、この猟犬部隊(ハウンズ)に最も早く加わった男であり、レッドガン部隊の参謀を務めながらも、現場でも動ける彼の能力に助けられた局面は少なくはない。

 

「あんまり時間は経っていないハズなんだが」

「大切なのは時間じゃなくて質ですよ。質!」

 

 惑星封鎖機構から下り、パイロットの腕こそは頼りない物の。雑務やメンタル面、時には事態を打開する働きをしていた1317は、隣にいるパイロットに対して苦笑いを浮かべていた。

 鹵獲したHM型を我が物の様に扱い、どんな状況でも己のスタンスを貫き続けるペイターは、こんな状況においてもふてぶてしかった。

 

「その通りです。では、仕上げと行きましょうか!」

『ブルートゥス! 今回はもうプログラミングもハッキングも要らんぞ! ぶっ潰してやれ!』

 

 狂人として追われ、誰に理解されることもない孤独を抱えていた歩み寄った少女が居た。彼女もまた正道や常識からは掛け離れた存在であったが、気づけば皆の中にいた。

 そして、自らの中に眠っていた友人とも引き合わせてくれた。この出会いには感謝しかない。オーダーが6連バーストパルスガンを放って来るが、ミルクトゥースの堅牢さに阻まれた。

 そして、ブルートゥは仲直りした友人からの贈り物である『WR-0555 ATTACHE』重機関銃の引き金を引いた。動けないオーダーの装甲へと銃弾が突き刺さる。

 

「止めなさい! 不完全な状態でも暴発する可能性はあります。今なら、ちゃんと正式に解除を」

「知るか」

 

 ディープダウンの両手に構えた『LR-037 HARRIS』レールガンのチャージは終えており、弾速と威力の増した一撃が、損耗していたオーダーの装甲を貫いた。

 しかし、敢えて攻撃を受けることで、油断を誘っていたのか。近付いて来た彼らに対して、グレネード弾が放たれた。煙が晴れると、そこにはシールドを構えているHM型が居た。

 

「メーテルリンクと言い、三門芝居が好きな人らが多いですねぇ。しょうもない芝居に対する幕引きをお願いします」

「分かった。それじゃあ」

「い、嫌だ! まだ、コーラルの行く末を!」

 

 2丁の『SG-027 ZIMMERMAN』の引き金が引かれ、オーダーの装甲は食い破られ、ジェネレーターにも被弾したのか。赤い爆発を巻き起こした後、動かなくなった。……繋いでいた機関部と誘爆することは無かった。

 

~~

 

「ほら。見て見なよ」

 

 カーマンライン付近から落とされた面々は地上部から、ホーキンスを始めとした者達は手持ちの高性能スコープで、バスキュラープラントの様子を観察していた。

 ザイレムの船首に取り付けられた巨大なチェーンソーが建物へと食い込みガリガリと削られて行く。それでも倒させまいと、ルビコニアンデスビートル達が殺到していたが、もはや手遅れだった。

 切り取られたバスキュラープラントの部分は崩れ落ち、カーマンラインから落ちていく。しがみ付いていた虫達は飛び立つ様子も無かった。

 倒れた先は氷原の対岸にある大陸であり、やがて地面へと激突するかと思われた瞬間、彼らは一斉に羽ばたいた。一部は、間に合わずに倒壊した建造物に巻き込まれて圧死していたが、多くは着地に成功して……何処かへと向かって行った。

 

「なんと強かな」

「だが、ルビコンのコーラルは殆ど奴らに持って行かれたということか」

 

 六文銭が感心する一方、フラットウェルは難しい顔をしていた。ルビコンで生きていく上でコーラルは欠かせない物だった。それらを無くしては、今後の自分達の生き方に関わって来る。

 

「いや、これで良いのだ。ルビコンはコーラルと共に在るべきだ。この星で生まれて、生きていく彼らと共に在るのなら言うことはあるまい」

「そうなのだ! 爆発してコーラルが死ぬよりはずっといいのだ!」

「うわ。貴方、そんな義体に入っていたんですか。きめぇ」

 

 ドルマヤンが満足そうにうなずき、セリアも同意する中。彼女の義体を見たG3五花海は素直な感想を漏らしていた。

 

「コーラルリリースもオジャンだ。さて、俺はどうするべきか」

 

 これだけのコーラルが虫達によって持ち去られたら、企業としても争う理由は無くなることだろう。戦いを生業とするスッラも次の立ち振る舞いを考えていた。

 こうして、ルビコンで一番長い1日は終わりを迎えようとしていた。結果を見れば、惑星封鎖機構も企業連合も得る物は何一つとしてなく、ルビコニアンデスビートル達がでっぷりと肥えるだけで終わっていた。

 

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