戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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 前話の方に少し修正を入れています。何処の部分が変わったかを探してみるのも面白いかもしれません。


依頼15件目:ペイター「俺、なんかやっちゃいました?」

 アーキバス社ブリーフィングルーム。同社の精鋭である強化人間部隊の隊長である、ヴェスパー達は顔を突き合わせていた。司会進行を務めるのは、いつも通りV.Ⅱのスネイルだ。

 

「現在、ルビコン内における惑星封鎖機構は各勢力から徐々にではありますが、力を削がれて行っています」

 

 豊富な資源と人材を有するアーキバス社の各地での作戦。あるいはベイラムも同様にして、物量による襲撃で惑星封鎖機構に少なくない損傷を与えていた。そして、彼らに再起を許さないのがドーザーを始めとした回収者達だった。

 

「先日の我社の広報がよく効いています。我々の接収量が多少減ることは気になりますが、作業に掛かるコストの削減と考えれば十分に見合います」

 

 彼らは襲撃後に押し入っては、惑星封鎖機構が運び出せなかった資源を奪っていく。そして、何よりも動きが速い。

 企業は慎重を期する為、戦闘が行われている近くに回収艇を持っていく様な真似は出来ないが、ドーザーや独立傭兵。あるいは、ルビコン解放戦線の連中は戦闘が起きていても待機しているのだ。

 

「でも、スネイル閣下。本来、アーキバスが得られるハズだった戦果を持っていかれるのは由々しき問題です。彼らも撃破対象に含めるべきでは?」

「そうしたいのは山々だが」

 

 V.Ⅵのメーテルリンクが提案したが、スクリーンに映し出されたのは作戦行動中の映像だった。アーキバスの作戦を聞きつけたのか、基地の周辺にはMTを始めとした回収部隊(スカベンジャー)が集まっていた。

 これだけでもアーキバスの作戦行動に多大な支障が出ると言うのに、彼らを代表する様にして前に出たACが暗号通信を入れて来た。

 

「私は、企業の不法搾取と惑星封鎖機構の不法占拠に断固として反対する! もしも、我々を攻撃するというのなら抵抗を辞さない!! それに君達は私に恩義があるはずだ!!」

 

 作戦前にそんな損耗は避けたいに決まっている。つまり、自分達にゴミ漁りをさせろという盗人猛々しい精神の持ち主だった。

 上層部に打診した結果、余計な戦闘を避ける事と回収コストの削減ということで、この乞食達の交渉を呑み込まざるを得なかった。

 

「流石はアーキバスだ! これも我々との仲を取り持つ為の融資と思ってくれ! そして、私の雄姿を覚えていて欲しい! ノーザーク! ノーザークとビタープロミスをよろしくお願いします!!」

「死ね! カス!!」

 

 通信を受けていたパイロットは堪らず中指を突き立てていた。映像はそこで終わっている。……ちなみに、この作戦終了後。該当基地はケツの毛まで引き千切られんばかりに略奪された。

 

「この男は……先日、V.Ⅳがレイヴンの任務に随伴させた独立傭兵ですよね? 味を占めていませんか?」

 

 メーテルリンクの指摘にV.Ⅳであるラスティは肩を竦めた。言葉にはしなかった物の、彼女の視線には『お前のせいだぞ』という、恨みがましい物が多分に含まれていた。

 

「誤解なき様にいうと、戦友に随伴させるべきだと言ったのは上層部の意見だ。私は窓口をしただけに過ぎない」

「メーテル。これは、V.Ⅳの責任ではありません。上層部の失策です。我々の消耗は抑えられていますが、同時に得られるリターンも減っている」

 

 当初は惑星封鎖機構との激戦を予定していたが、略奪に成功する者達が出ると我も続けと言わんばかりに先走り、戦場の塵へと消えていくという事態も頻発していた。

 碌な機体を用意できなければ当然の帰結であったが、成功談は人の制動を簡単に破壊していた。

 

「では、スネイル。今後はどうするつもりだい?」

 

 このまま惑星封鎖機構を撃退できたとしてもベイラムとの対峙が待っている。先を見据えるべきだという、ホーキンスの提案にスネイルは深く頷いた。

 

「今後の作戦を行う上で、惑星封鎖機構の強襲艦隊は是非とも鹵獲したい。故に、彼らが母港として使っている『バートラム旧宇宙港』を攻略します」

 

 先日まで、アーキバスが星外の窓口に使っていた場所であり、現在はルビコンにおける橋頭堡となっている。ここから発艦された強襲艦隊によって、勢力図は塗り替えられていったのだ。

 

「でしたら、その任務。このV.Ⅷペイターにお任せください!」

 

 ビシっと手を上げたのはヴェスパー部隊末席のペイターだった。

 一番の若輩でありながらも、対惑星封鎖機構においては結果を残しており、上昇志向の強さから自薦していた。だが、スネイルは首を振った。

 

「駄目です。この場所は、今までの基地とは比べ物にならない位に戦力が置かれているでしょう。加えて、新兵器が配備されたという報告も入って来ています。貴重なヴェスパー部隊を当てる訳には行きません」

「だからこそのヴェスパーです。連中の重要拠点を壊滅させるのは、ヴェスパーであるべきなのです!」

 

 スネイルやメーテルリンクが溜息をつき、スウィンバーンが鼻で嗤い、ラスティが考え込むような仕草を見せている中、彼を宥めたのはV.Ⅴのホーキンスだった。

 

「ペイター君。功を焦る気持ちは分かるが、君は十分に成果を出している。後は実を取ろう。さっきも言っていたけれど、私達は今後を見据える時に入っている。君の活力は、その時に残しておいて欲しい」

 

 今後の展望を見据えた上で、彼への労りと期待を示すことで納得させようとしていたが、どうにも不満に思うことがあるらしい。

 

「何処を聞いてもレイヴン! レイヴン! 偶にノーザーク! レイヴンはまだ納得できるのです。だが、あのカスが話題に上がっているのが気に食わない!」

「あの映像のパイロット、君だったのね」

 

 気持ちは分からなくもなかった。レイヴンならまだいい。アーキバスグループにとっては壁越えの際に重要な一手にもなり、ラスティとの仲も良いことから今後も付き合いを考えていく相手ではあったからだ。

 

「ペイター。貴様は、副官としてホーキンスを見習った方が良い。彼こそはヴェスパー部隊の理想的な人材です。温和で人格者! 作戦遂行能力も高い!」

「いやぁ、そこまで言われると照れちゃうなぁ」

 

 ホーキンスは照れているが、スネイルとしてはイラッとしていることもあったので、当てつけがてらの注意だった。

 メーテルリンクに続き、スウィンバーンが気まずそうにしながら、ペイターにクールダウンするようなジェスチャーを見せているが、そこは現代っ子で共感性皆無の男。ヒートアップからの失言は避けられなかった。

 

「だが、ホーキンスさんには相手を見る目がない! 何故なら、アーキバスの展望占いに使われている男を立てているんだから」

「ばっ」

「………………展望占い?」

 

 ホーキンスは理解しているのか、本気でペイターの口を防ごうとしていたが、唯一事情を知らない当事者であるスネイルは眉間に皺を寄せながら、ジロリとラスティの方を見た。

 メーテルリンクも知っているのか、出来るだけ角を立てない様に首を小さく振っている中、ラスティは明朗快活に説明を始めた。

 

「上層部と一部ではやっている陰口でね。スネイルの生え際の広くなり方と、アーキバスの展望を掛けているのさ」

 

 スネイルは自らの額を触った。強化人間手術とは別に、日々の業務によるストレスから生え際が後退しているのは本人も滅茶苦茶気にしていることであり、それをアーキバスの展望に見立てていると。スネイルは額に青筋を浮かべながら、静かに言った。

 

「ペイター。貴様は追放だ。ヴェスパーの面汚しめ。そんなに言うなら、貴様1人で襲撃して来い」

 

~~

 

「と、言う訳で戦友。君の所でウチのペイターを預かって欲しい」

「ここは託児所じゃないんだぞ……」

 

 ルビコン解放戦線と言い、アーキバスと言いアホしかいないのと。

 ウォルターはルビコンに来てから何度目になるか分からない頭痛を体験していた。背後では件の人物達が朗らかに話し合っていた。

 

「レイヴン。そのミキサーは一体?」

「ヴォルタが作ってくれた!」

「なるほど。消化吸収を早める為に使うんだな」

 

 しかし、ミキサーに投入されたのはミールワームとコーラルだった。

 回転する刃が彼らを切り刻み、肉片とコーラルが攪拌された赤色の液体は血肉を連想させた。

 

「うめっ、うめっ」

「これを飲めば、私もレイヴンの様になれるんだな」

「やめろバカ!」

 

 何の躊躇いもなくやろうとしたので、流石に1317が止めに入った。ナイルは見守っているだけだった。

 

「早速、戦友と打ち解けているようで嬉しいよ。ついでに、彼を僚機として出撃させて件の作戦を遂行して欲しい」

「初めから、そっちの用件だけを寄こせ」

 

 惑星封鎖機構が運用する強襲艦隊の母港。アーキバスにとっては重要な作戦であり、用意された報酬も相当な物だった。

 

「私も付近のハーロフ通信基地を攻撃して、連中の増援を阻止する。……と言っても、通信妨害は一時的な物だ。こちらの作戦が終わり次第、直ぐに加勢に向かう」

「ラスティさんが居れば百人力ですよ!」

「3人で300人力!!」

 

 一つもIQを感じさせない会話をしているが、ACの操縦技術に関しては飛びぬけているので、本当に人格と比例しない物だとはつくづく思っていた。

 

「分かった。この任務、引き受けよう」

「幸運を」

 

 通信が切れた。何時の間にか、この場も大所帯になっていたが、ナイルは一つの懸念を口にした。

 

「V.Ⅷ。この作戦が終われば、お前は元の古巣に戻るんだよな?」

「戻れるに決まっているじゃないですか。その時は、私は勇敢で勇壮な『ブレイブ・ペイター』として返り咲くのです。『ブレイブ・ペイター』。うぅ、良い響きだ!!」

「ブレイブ・ペイター! ブレイブ・ペイター!」

 

 621は語感が気に入ったのか頻りに口にしていたが、褒め称える意図は含まれていなかった。そもそも、口から赤い煙が出ている時点であまり正気でないことは察するべきだったが。聞こえないのは承知だが、脳内でエアの声が響いた。

 

『レイヴン。様子のおかしい人です』

 

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