戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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 次回辺りでミッシングリンクが完結しそうです。大体、こんな感じで三章以前は進んでいた感じということで一つ。


ノーザークで辿るミッシングリンク 7

 ルビコンに存在する大半のグリッドは放棄され、荒れ果てているが、グリッド086の機能の大半は保全されていた。

 

【これは、シンダー・カーラが収める【RaD】が技術者集団である為だと思われます。彼らが自主的にメンテをしているのでしょう】

 

 ドーザーは無法者だという考えが一般的であるが、生産的な一面もあるらしい。多分、この集団だけだろうが。

 

「ようこそ! ビジター! 死ね!!!」

【オホホホ。ウホーッ! アキャッ!!】

【この人達に製品を任せることが果てしなく不安ですが】

『ドーザーとバナナの区別がつきませんねぇ』

 

 ドーザー達の技量自体は大したことが無い為、ノーザークも敢えて指示を飛ばすようなことも無く、個人的な感想を漏らす程度に留まっていた。奇しくも、エアと似たような所感を抱いていた。

 

「ヒャーッ!!」

 

 高低差の激しい構造物をまるでアトラクションの様に楽しみながら、奥へ奥へと進んで行く。本来ならば侵入者を阻むギミックも、彼女にとってはアスレチック程度の認識でしかないらしい。

 解放感溢れるエリアを進んで行くと、屋内のエリアに入った。潜んでいたMT達を蹴り飛ばしながら進んでいると、溶鉄が流れる炉が目に着いた。

 

【モンキー。それは、溶鉱炉と呼ばれる物です。鉄を加工しやすくする為の設備です】

「中はどうなっているのかな?」

『放っておきなさい。危ないですよ』

 

 ノーザークの注意も聞かずに覗き込んで見れば、中にはグズグズに溶けかけているACがあった。直ぐにエアは残骸からログを取った。

 

【どうやら、このACはドーザーの方達にリンチを食らって殺された様ですね。幾ら陽気に見えても、所詮は無法者ということでしょう。にしても、この方は何故こんな所に?】

『おや? 621。そのログデータは……』

「なんか知っているの?」

 

 機体が入手したログを見た、ノーザークには何か心当たりがあるらしく、少し考え込んだ後、手を叩いた。

 

『思い出しました! この方、私のことを追いかけていた借金取りですよ! なんで、こんな所に?』

「カーラ―! この人、何でこんな所に居たの―!」

『最近、ウチに来た鼠から取り立てしようとしていたらしいよ。今もウチにいるけれど、暇なら探してみな!』

 

 任務の為に来たのだから、暇な訳がない。

 しかし、ここにいるのは好奇心旺盛な少女である。借金取りの仇を討つつもりは毛頭ないにしても、お題を出されたら嬉々として乗るタイプだった。

 

「何処にいるのかなー!」

『止めなさい! ソイツがAC乗りだったりしたら、無駄に弾薬や耐久を消耗させられるんですよ!? さっさと、目的地に向かいなさい!』

 

 ノーザークの指示は至極真っ当な物だった。これに関しては、出費が嵩むという切実な理由もあるのだが、そんなことを気にする気は無さそうだった。

 

【そうするだろうと思って、周囲にスキャンを掛けて起きました。溶鉱炉横の配管の中に空間が広がっています。……誰かが隠れるには十分な位に】

 

 ため息交じりであったが、エアにサポートされ溶鉱炉横の配管の中を進んで行く。すると、不思議なスペースに出た。

 

【なんかいる】

 

 エアよりも先にバナナが反応した。すかさず、スキャンを掛けると。彼の予感を証明するようにACの反応があった。

 

「クソッたれ!!」

 

 姿を現したのは、BAWSから出ている『BASHO』フレームで構成されたACであったが、所々が損耗していたり、塗装も剥げた状態にあった。

 破れかぶれで、廃材を手に襲い掛かって来たが敵う訳もなく。瞬く間に無力化された。

 

「と、投降する! 命だけは!!」

 

 武装を解除して中からパイロットが降りて来た。全身が痩せこけており、ルビコンの貧困に呑まれた様子が伺えた。

 どうして、こんな所に? そもそも、この男は一体誰なのか? エア達が疑問を浮かべていると、意外な所から答えが返って来た。

 

【トーマスだ!!】

「トーマス?」

『ちょっと待って下さい。聞き覚えのある名前ですね』

 

 ノーザークが通信機の向こうで検索を掛けると、何かしらがヒットしたらしい。

 

『ありました。アリーナランク26位に名前を連ねていた方です。失踪届けが出ていた様ですが、そんな彼がどうしてここに?』

 

 アリーナランク26位。つまり、このルビコンにおいてトップ30に入る程の手練れということである。

 

「頼む。見逃してくれ。俺はもう何もしたくないんだ……」

 

 そんな男が見る影もない程、憔悴していた。珍しいことではない。

 ルビコンでは生きる気力も希望も何もかもを奪い取ってしまう出来事に溢れている。こんな所に隠れ住んでいた所で衰弱死するのがオチだろうが、助ける理由はない。彼を放置していこうとした矢先のことである、コックピットでバナナが暴れていた。

 

【アイツ! 会う!】

【知り合いの様ですしね。モンキー、どうしますか?】

「良いよ!」

 

 コックピットを開けると、バナナはタラップも使わずに降りて行く。そんな彼の姿を見て、トーマスは涙ぐんでいた。

 

「嘘だろ? バナナ!? お前、生きていたのか!?」

【早く、食い物出せ】

 

 両者の温度差は風邪を引きそうなレベルだったが、トーマスはポケットから干からびた何かを渡していた。バナナは直ぐに口に放り込んだ。

 

【まっず】

「お前が生きているってことは、モンキーの奴も。生きているんだよな? おーい! モンキー! 俺だよ! トーマスだよ! 居るんだろ!?」

 

 声を張り上げているが、声色の中に戸惑いと不安が見て取れた。621には、その正体がしっかりと聞き取れていた。

 

【アイツがあんなに操縦上手い訳が無いよな。そもそも、アイツの機体のアセンブルじゃない。アレだけのフレームや武器を稼げるほどの腕前がアイツにある訳がない。いや、でも。ひょっとして……】

「ノーザーク。私、どうしたら?」

『代わりなさい。……トーマス殿、残念ながら本来のモンキー・ゴートは死亡しています。私達が確認しました』

 

 トーマスの顔がそれほどショックでもなさそうだったのは、理由を察していたからだろう。やはりか。とでも言いたげだった。

 

「バナナだけが運よく助かったってことか。……じゃあ、アンタ達は?」

『ただの独立傭兵です。さて、誤解は解けましたが。どうしますか?』

 

 ここでくたばるか。あるいは、何かしらの道を探すか。

 取れる選択肢は殆ど無い。だが、彼はかつてアリーナランク26位に身を置いていたほどの人間だ。

 

「なら、俺から情報を買わないか。バナナのこと、知りたくないか? ソイツはちょっと特殊なんだ。そのデータも持っている」

 

 この状況をビズに繋げようとしていた。興味が無い情報ではない。ずっと付き従っている、この猿は未だに謎が多い。

 

『モンキー。どうしますか? 欲しいというのなら、情報代は貴方の報酬から引いておきますが』

「欲しい欲しい」

 

 ノータイムだった。提示された額を支払うと、バナナに関する情報が送られて来た。621には理解するのも困難な話だったが、エア達は興味深そうにデータに目を通していた。

 

【やはり、そう言うことでしたか】

「どういうこと?」

【依頼完遂後に報告をします。まずは、最奥部へと向かいましょう】

『ふむ。意外と私はツイているのかもしれません』

 

 エアとノーザークの反応が何を意味しているかは分からなかったが、ひと先ずは任務に戻ることにした。去り際に、トーマスに質問を投げかけた。

 

「おじさんはこれからどうするの?」

「ヘヘッ。そうだな。タネ銭もゲットできたし、何とか生き延びて見せるさ。ありがとよ、バナナ」

【ア”-イ!】

 

 配管を抜けて、元の屋内エリアに戻って来た。先程までの会話は全て聞かれていたのか、全域放送からカーラの声が聞こえた。

 

『面白い縁を持っているね。予想はしていたけれど、やっぱりアンタら密航者か。一攫千金でも夢見に来たのかい?』

『はい。美辞麗句は言いませんとも。私は金が好きです! 儲けに来ました!』

 

 なんら恥じることも無く、堂々と言い放った。理念も何もない俗物でしかない意見であったが、カーラは笑っていた。

 

『良いね。そういう考えで来ては、トーマスみたいに縮こまって野垂れ死ぬ奴ばっかりだったけれど、アンタらは特別みたいだ。来な、とっておきで歓迎してやるよ』

 

 多数のMTの中に重四脚MTも混じった集団を撃破すると、巨大な隔壁が開いた。奥へと続く1本道であり、何かが待ち受けていることは予想できた。

 機体の修繕や弾薬の補給を行える補給シェルパが届くかと一瞬期待してみると、先の任務で見た物よりは小型の物が届いた。

 

『貴方の腕前なら、そんな大型の物も必要ないでしょう』

「ありがと~」

【廉価モデルの様です。APや弾薬を30%程度は補充してくれるようですが】

【あるだけマシ】

 

 APは兎も角、弾薬は結構使ったので30%程度の補給では心もとない物があったが、何もなかったころに比べれば随分とマシだった。

 補充を終えた先の空間には熱気が籠っていた。先程の溶鉱炉付近で感じた物と似通っていた。何故なら、目の前には機体と言う形を取った溶鉱炉とも言えるものが存在していたからだ。

 

『コイツはスマートクリーナー。デスルンバとか言ってい奴もいたね』

 

 両腕に取り付けられている赤熱した巨大な破砕機を叩きつけようと、猛スピードで接近して来た。AC数機分の体躯を持つ相手に対してQBを吹かして回避しようとしても効果は薄い。故に、621は前方に突っ込んでいた。

 

「あっつ」

 

 機体の中央部分には、正に溶鉱炉とも言える口が開いていた。AC越しでも熱が伝わって来る。その内部に向けて、躊躇うこと無くジマーマンをぶっ放した。

 高温の内部では鉛玉も融かされてしまうことだろうが、少なくとも衝撃とダメージは通る筈だ。ただし、巨体に相応しいタフネスの持ち主だったが。

 

【モンキー。懐に潜り込むのは危険です。上部から攻めるべきです】

 

 エアがスキャンを掛けた所、排熱の為かスマートクリーナーの頭頂部にも開口部が存在していた。加えて、両腕の破砕機の稼働部を考えると、彼女の提案は非常に合理的な物だった。

 

「駄目。ずっと、熱いの無理」

【確かに。この熱気を放つ相手に長期戦は、貴方も機体も持ちませんよね。それに……】

 

 スマートクリーナーの攻撃は周囲の地面を赤熱化させ、存在するだけでAPを削るフィールドを作り出していた。

 もしも、空中戦が得意な四脚で来ていれば、楽も出来たのだろうが泣き言を言っても始まらない。軽量機体では分が悪い相手だ。

 

【アチ―!!】

 

 全身に体毛が生えているバナナには、これ以上ない程辛い状況だった。

 一撃でも貰えば、機体ごと中身がオシャカになりかねない中で621は攻め続けていた。機体の傍に破砕機が叩きつけられようと、執拗に開口部から内部に向けて散弾を叩きつけていた。

 ギリギリの攻防は結実し、スマートクリーナーにも一定の損傷が見て取れるようになると、再び全域放送が入った。

 

『やるね。でも、スマートクリーナーはここからが面白いんだよ。ほら、お返ししてやりな!!』

 

 煙突の様に伸びる背面の開口部から溶け掛った鉄が大量に吐き出された。あちらこちらに不規則に降り注ぐ様子はさながら、噴火の様でもあった。

 

【行動パターンが変わりました。距離を取って……】

「ここで決める」

 

 エアの提言を無視して、621はスマートクリーナーの頭上へと飛翔した。

 すると、彼女はアサルトブーストを吹かして突っこんだ。迫りくる高熱化した鉄塊を、彼女は蹴り返していた。煙突部分から伸びた開口部に鉄塊が押し込まれると同時に、彼女は内部へと戻すようにジマーマンの引き金を引いた。

 吐き出そうとしたスクラップと吐き出したスクラップが内部でぶつかり合い、傷つけあう。高温に耐える内部機構を持つスマートクリーナーもかき回されては堪った物ではなく、今までの戦闘に蓄積していた内部の損傷も相まって溶鉄が漏れだし、損傷があちらこちらに伝播していく。

 

「いっけぇ!」

 

 装填したショットガンシェルをもう一度ぶち込む。内部に溜まっていた物へ、最後の一押しとなったのか。スマートクリーナーは大爆発を引き起こして、機能を停止させた。直後に、通信が入った。

 

『不幸とは言わないよ。面白い出会いだった。屋上のカーゴランチャーを使わせて欲しいんだって? 改めて、話を聞こうじゃないか』

 

 最初に交渉を持ち掛けた時は取り付く島もなかったが、一連の侵入を通して『面白い人間』と認められた為か、改めて『RaD』の頭領シンダー・カーラとの対話の機会を得たのであった。

 

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