戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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 ミルクトゥースが立体化するかもしれない。素敵な告知だ……ご友人……。


1周年記念:『彼女の夏休み』 3

「皆さんが抵抗さえしなければ、いつも通りの日常に戻れます」

 

 数人が機内へと侵入して来た。彼らの手には武器が握られており、自分達の優位性を誇示していた。誰もが抵抗もせずに大人しくシートに座っているのを見て、テロリスト側も満足していた。

 

「皆さまは行儀が良い。私達も誰も殺さずに済むというのなら、それに越したことはありませんから」

 

 慇懃無礼な口を利くリーダー格と思しき男は乗客を吟味する様に見回った後、レイヴンの前で立ち止まった。

 

「お嬢さんには私達と一緒に付いて来て貰いたい」

「え?」

 

 ツィイーや皆に戦慄が走るが当の本人には怯えた様子もなかった。ウォルターが立ち上がった。

 

「待て。人質にするなら、俺にしろ」

「孫想いのお爺ちゃんだ。だが、貴様はいらん。乗客の皆さんは前方の席に寄って貰いましょう」

 

 乗客たちは前方へと移動させられ、後方にテロリスト達が占拠する形になった。

 一方、人質に取られたレイヴンはと言えば、流石にタブレットで引き続きアニメを見る程、暢気でも無かったがテロリスト達の方をジッと見ていた。

 

「ねぇ、おじさん」

「どうかしましたか?」

「なんで、あのおハゲのおじさんのことをそんなに気にしているの?」

 

 彼らに動揺が走った。助命関係のことを言われるのではないかと思っていただけに、全く予想だにしないことを指摘されたのが引っ掛かったらしい。だが、リーダー格の男は冷静だった。

 

「私はハゲが許せません。毛が無い人間は醜い! 髪の毛は頭部の下着とも言えます。あのスキンヘッドの男は言い換えてみれば、頭部全裸男です。恥を知れ!!!」

「ブホッ」

 

 前方に移動していたペイターが噴出していた。こんな雰囲気の中で真面目にそんなことを言われたので、ツボに入った連中が肩を震わせていた。

 一方、謂れのない非難を受けたスキンヘッドの男は肩を落としていた。まさか、ハゲと言うだけでここまで言われるとは思っていなかったのだろう。

 

「でも、あの人も好きでハゲになった訳じゃないかもしれないし」

「ウィッグにせよ、何にせよ誤魔化す方法があったにも関わらず大衆に素肌を見せびらかすことを選んだのは、あの男です」

 

 一体、どれだけハゲに恨みがあればここまで罵詈雑言を思いつくのだろう。

 そんな、緊張感のないやり取りをしているとリーダー格の男が装備していた無線が鳴った。

 

『例の集団に見つかった! うわ!』

 

 悲鳴を最後に通信が途切れた。テロリスト達に動揺が走った一瞬、ペイターを始めとした者達が一斉に席を立った。機内を駆ける。

 

「クソッ!」

 

 拳銃の引き金が引かれるよりも早く、六文銭のカラテが突き刺さった。パイロットスーツを貫通し、臓器に思い衝撃が響く。

 一方、ペイターもスマートに踵落しをキメて相手の頭部を激しく揺さぶり、1317も相手に組み付いて、締め落していた。

 

「死ね!!」

 

 シートに座っている乗客に対して発砲する者もいたが、エアが身を挺して庇っていた。最高級の義体は携行兵器如きでは傷一つも付かない。

 だが、一部の者の動きは違った。エア達に守られず、離れた場所に居たスキンヘッドの男を拉致して船外へと脱出する者もいた。リーダー格の男も同じ様にレイヴンを人質に取って、船外に留めていた機体に乗り込んだ。そして、直ぐに広域通信を入れた。

 

『見ろ! 私は人質を取っている! 私に攻撃を加えれば、どうなるか。分かっているだろうな!!』

『こっちにいるハゲもだ!』

 

 スキンヘッドの男は怯えていた。一方、レイヴンの方はと言えば機体内のモニタに表示されているデータを見て、ポツリと呟いた。

 

「あ、フロイトとお兄さん」

 

 外に留めていた機体の内、パイロットが帰還していない物はあっと言う間に撃墜されていた。やって来た機体はレイヴンも見たことがある物だった。

 ベイラム社製のパーツとアーキバス社製のパーツを組み合わせた独立傭兵めいたアセンブルをしているが、実際に乗っているのは元・ヴェスパー部隊長であり、ランカー1位の男の愛機『ロック・スミス』。

 殆どが作業用のフレームで組まれているが、類まれなる操縦技術と立ち回りで他者を寄せ付けない、レイヴンにとっても馴染みの深い『ナイトフォール』。

 

『ほぅ。久しぶりだな』

 

 ロック・スミスの行動は早かった。レイヴンが捕らわれている機体を直ぐに特定して、肉薄した。彼女はこれから何が起きるか分かっていた為、頭部を庇いながら機体にしがみついていたが、操縦している男は戸惑うばかりで。

 

『そぅら!』

 

 かつて、アーキバスの基地から脱走する際、V.Ⅳのラスティすら気絶させた程の、パイロット狙いの攻撃。さながら、臓器を揺さぶる様に内部へと衝撃をスタックさせる彼の得意技だった。

 コックピット内に衝撃が走り回り、あまりのGにリーダー格の男は何をする余裕もなく、あったと言う間に気絶させられた。

 

「あぅ……」

 

 強化人間としての施術を受けているレイヴンでさえも衝撃で頭がフラフラしていた。それだけ激しい攻撃だったが、パイロットの生け捕りと人質の救出を同時に達成していた。

 一方、ナイトフォールの方も敵機を行動不能にしようとした所で、反撃を食らいそうになったので避けようとしたが。

 

『レイヴン!!』

 

 彼の呼びかけに答える形でレイヴンは直ぐに意識を取り直し、リーダー格の男を避けて機体を動かした。先程まで居た地点にバズーカ弾が通過した。

 直ぐにナイトフォールは機体を潰したが、瞬間。敵機から脱出ポッドが放たれた。一先ず、人質の救助を優先する為に沈黙した機体のハッチを開けた時のことである。

 

「た、助けてくれ。俺は、アイツにやれって言われていたんだ」

『……やられた』

 

 中に居たのはスキンヘッドの男ではなかった。テロリストの男が両手を上げて、降伏宣言をしていた。

 

~~

 

「レイヴンが言っていた内通者は奴のことだったのか」

 

 先程のテロリスト達を確保し、レイヴンを旅客機へと送り届けた後、ブランチ・レイヴンが事情を説明していた。

 

「俺達は奴の名がパッチであること位しか分からない。彼女にも事情聴取に協力して貰っているが」

 

 先程、確保したリーダー格の男は頑として口を割らなかった。これは忠義を誓っているという訳ではなく、単純に用済みとなったらどの様な扱いを受けるかと言うことを把握しているが故だろう。

 

「私から情報を得たければ、まずは安全を確保することから……」

「あのハゲのおじさん。物凄く強いんだってさ」

 

 が、そんな交渉術を無条件で突き破って来る相手にはどうしようもなかった。彼女からもたらされた情報に反応したのは、ジークムントだった。

 

「強い? どういうことだ?」

「……あー、ブランチ・レイヴンよ。気のせいでなければ、ヴェスパー部隊長1番隊長が居る様に思えるのだがね」

 

 スウィンバーンが困惑しながら聞いた。ジークムントと名乗っているが、凄く見覚えのある男が、見覚えのあるテンションでレイヴンと接していたからだ。

 

「ジークムントもブランチの一員だ。流石に元の名前を名乗る訳には行かないので偽名を使っているが……」

 

 機体からしてあまり隠す気が無さそうだった。 一方、レイヴン達による事情聴取は順調に進んでいた。

 

「緑色の粒子? 後、全然見たことが無い機体を使うんだってさ」

「なるほど。そんな男が、最近はルビコンで何かをしようと企んでいたのか。そこにレイヴンも……これは何かあるに違いないな」

 

 事件を取り締まるべき立場にいる人間が喜色を隠しきれずにいたが、ペイターがカラカラと笑っていた。

 

「ブランチ・レイヴンさん。先日のルビコンの事件と言い、実は惑星ルビコンに迷惑を掛けるのが趣味なんですか?」

「……そういう趣味はない」

 

 皮肉たっぷりだった。彼らの会話を傍で聞いている連中は夏休みの旅行が平穏な物になる可能性が消えたことを嘆き、同乗していたコダカはこれから繰り広げられるかもしれない未知の展開にテンションが上がっていた。

 

「こ、これは。僕の脚本を超えたイルブリード以上の物語が繰り広げられるかもしれない!! 生の感動が!!」

 

 実は、コッソリと先程のテロの一部始終も碌が出来る限りは録画していた為、この非常時の出来事を糧にしようとしていた。同行しているスタッフ達にも困惑が広がる中、主演に連れて来られた女性はひたすらにゲンナリしていた。

 

「はぁ……。絶対、碌でもないことになりますね」

 

 やがて、ブランチの母艦も合流し、一同を乗せた旅客機はルビコンの航路を行く。……彼らより先に1基のポッドが降り立とうとしていた。

 

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