戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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 皆さま、こちらではお久しぶりです。夏休みとっくに過ぎて冬休みも終わって、正月も明けていますが、こちらも再開して行きたいと思います!


1周年記念:『彼女の夏休み』 12

「ねぇ、エア。この子達は何処に羽を仕舞っていたのかな?」

 

 レイヴンが出撃するより前のことである。特に何かしらのアクションもしないルビコニアンカイコと一方的に遊びながら、彼女は問うた。

 

「仕舞っていた。と言いますと?」

「だって、つい最近まで毛が生えていただけなのに、羽なんてどこにもなかった。ルビコニアンデスビートル達もそうだったけれど」

 

 ミールワームから毛が生えたり、羽が生えたり。遺伝子の設計図を嘲笑うが如き変化はコーラルと新資源が起こした奇跡とでも言えるか、生物に対する冒涜とも言えるか。

 

「レイヴン。彼らは羽などを仕舞っていた訳ではありません。自分で作ったのです。そう、彼らの肉体はそういう変化が起きるようにできているのです」

 

 生物の『変態』については詳しく説明してもレイヴンではきっと理解できないだろう。なので、出来るだけ柔らかく納得できそうな方向で説明した。ただ、あまりにもふわっとしていたので。

 

「じゃあ、私も羽欲しい」

「残念ながら、人間の体はそうできていないのです」

「コーラル沢山吸っても?」

「もう、大分吸ってきていますよね?」

 

 最近はめっきり吸っていないが、アレだけ吸っていたのに健康や知能に特に問題がない辺り、彼女は相当頑強なのかもしれない。

 

「だってさ」

 

ルビコニアンカイコのブニブニとした胴体を突いても、特に何の反応も無かった。にしても、彼女がそんなことを尋ねて来るのも珍しい気がした。

 

「翅が欲しい。ということは、レイヴンも飛んでみたいのですか?」

「ううん。この子と御揃いにしてみたくて」

 

 ウィッグから生えた耳がピコピコと動いていた。虫なんて、年頃の少女からすれば嫌悪の対象でしかないが、彼女にとっては今まで命を紡いできた食糧であり、遊び相手でもある為、とても距離は近しかった。

 

「こんな素敵な耳を貰っているんですから、きっと認めているハズですよ。所で、この耳は貴方の意思で動かしているのですか?」

「多分。嬉しいことがあると動く」

 

 一応、害はないらしいが長期的に見れば何が起きるかは分からないが、彼女が気に行っているので外す様に言ったりすることも出来ない。

 それに、今となってはエアも人間らしい感情や損得も計算できるので、こういった考え方も出来る様になっていた。

 

「(注意して、距離を取られたりするのは嫌ですね……)」

 

 困ったらスウィンバーンかウォルターに言って諫めて貰う所だが、生憎二人がいない。いるとすれば、先程から距離を取って慈愛の眼差しを向けて来るドルマヤンと彼を怪訝な目で見ているセリア位だ。

 

「ルビコンと共にある姿を体現している……」

「嘘なのだ。もしも、そうならサムはルビコンをどういう目で見ているのだ」

 

 到底、注意してくれそうな雰囲気は無かった。他にそういう役目を引き受けてくれそうな人間は近くにおらず、彼女の訴えが代弁されることも無く。レイヴンはジークムントことフロイトと共に出撃した。

 

~~

 

【2人共、見つけたよ】

 

 事態が動くまで待機していたレイヴン達にカーラの通信が入った。出していた探索用ドローンが別の入り口を発見できたのだろう。フロイトが聞き返した。

 

「何処にある?」

【ここから少し離れた場所に偽装された搬入口を見つけた。とは言え、ワザと見つけさせた可能性もある。ビジター、何か聞こえるかい?】

「何も」

 

 先程までは、搭乗者と思しき人間の後悔と悲嘆が聞こえていたと言うのに、何も聞こえなくなったということは意識が落ちたか、最悪……という可能性もある。

 

【あのいけ好かない女のパシリに興味が無いことはないけれど、スッラを失うのは手痛い。回収して来てくれよ】

「分かった!」

『レイヴン。気を付けて行きましょう』

 

 カーラから送られて来た座標に移動すると、破壊されたドローンの残骸が転がっていた。しかし、入り口は解放されている。

 

「誘い込まれているな。見た所、閉所での戦闘になりそうだ。増援を貰っても意味は薄いだろう。私達2人だけで行こう」

 

 フロイトの言い分に頷き、2機はケイト・ファクトリーへと侵入した。スキャンをすると、幾つもの反応があった。タレットだ。

 通常ならばAC乗りを始末するには心許ない兵器であるが、閉所ならば動きも制限されるので十分に使いようはあった。相手が凡百であるのならば。

 

「惑星封鎖機構の無人機でも投入されると思ったが、流石に前大戦で使い果たしたか?」

 

 フロイトのロック・スミスとレイヴンのHAL826がタレットの攻撃を回避して、次々と破壊して行く。彼らにしたら、前座にすらならない。……不意に彼らに通信が入って来た。

 

【ようこそ、おいで下さいました。ブランチ所属ジークムント、レイヴン。貴方達を歓迎します】

「随分と余裕だな。新作のお披露目がしたくて仕方がないか?」

 

 余裕綽々なケイトに対して、フロイトもまた軽口を叩いた。この施設の奥には、組み立て途中の機体があるというのはドローンの映像からも知っていた。

 

【分かりますか? やはり、貴方を手放したのは惜しかった。よろしければ、私の手の内に戻って来ませんか?】

「断る。私は今の生活が気に行っているのでね」

 

 話している間、タレットや無人機と遭遇することは無かった。どうやら、相手はとっておきで迎え撃ちたいらしい。

 

『ケイト。貴方の目的は何ですか? 新資源を用いて何をするつもりですか?』

【研究の裾野は広がっていますが、まずやりたいことがありますので。エア、貴方にとっても悪い話ではないと思いますよ】

『え?』

「どうしたの?」

 

 義体を用いていない時のエアの声は、レイヴンや一部の者にしか聞こえないが、ケイトの提案からしてフロイトも概ね会話の逆算をしていた。

 

【セリア共々、玩具を使って人間になったつもりのようですが、本物になりたくはありませんか?】

『何を考えているんですか?』

【所詮、我々はコーラルの潮流に生じたノイズでしかありません。ですが、気になりませんか? 我々の変化が不可逆な物ではなく、可変な物になればどうなるのか。ようやく、触媒を見つけたのですよ】

 

 開けた空間に出た。そこには1機のACが居た。スッラの愛機である『MIND-α』がいた。直ぐにスキャンを掛けてみれば、スッラの愛機とは異なったデータが吐き出された。

 

「スッラの機体を鹵獲して運用している、だけではないな。何か手を加えたか?」

【どうぞ、ご自身で確認して下さい】

 

 ケイトの機体が駆ける。現ルビコンにおける最強の2人を前に、アイビスシリーズでも無い機体を用いた所で勝てる可能性はない。

 機体から排出される緑色の粒子を見るに、ジェネレーターには例の新資源かあるいは例の機体から複製した物か抜き取った物を使っているのだろう。だが、変化はそれだけではなかった。

 

「(動きが良い。というより、しなやか過ぎる……)」

 

 ACは荒事に用いられる兵器でもあるが、機械である以上。同時に精密品でもある。強度や可動域等、絶妙なバランスの上で成り立っているハズだが、ケイトの機体はそんな物を凌駕した動きを見せていた。

 

「人間みたい」

 

 ルビコンで多数の機体の動きを見て来たレイヴンの率直な感想だった。すると、ケイトが拍手をしていた。

 

【オールマインドは人体感覚の延長と言っていましたが、私からすればまだまだです。彼女の稚拙な機体を私が完成させたのです】

「人の成果物を奪っておいて、随分と誇らしげだな」

 

 フロイトが『Vvc-770LB』レーザーブレードを振るうが、その前に極められて、左腕を折られようとした直前のことである。

 彼はレーザーブレードの出力を変えて、ケイトの機体の表面装甲を切り裂いた。と、同時に左腕が折られ、ガシャンと音を立てて地面に落ちた。だが、当のフロイトは感嘆の声を上げた。

 

「驚いた。見たこともない造詣だな」

『レイヴン、アレは』

 

 表面装甲を切り裂かれた『MIND-α』の下には紅い模様が見えた。ただ、レイヴンとエアには直ぐに正体が分かった。

 

「繭……」

【はい。まずは、慣らしですね】

 

 コーラルを主食としていた生物から取った物なのだから相性は良いだろう。だが、まさか兵器の素材に使うとは思わなかった。

 

『(コレを使って、我々だけの専用兵器を? いや、それだけとは思えない)』

 

 自分達にしか動かせない兵器など幾らでもある。無人機なんかもそうだし、態々これだけの為に騒ぎを起こしたのはどうにも腑に落ちない所があった。何よりも自分に交渉を持ちかけて来たことが気になった。

 

「(本物とは。触媒とは?)」

 

 恐らく、この『MIND-α』は副産物でしかないのだろう。何を考えているかは倒した後にでも問い詰めれば良い、エアはレイヴンと共に相手を正眼に見据えていた。

 

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