戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼18件目:彼もいっぱいいっぱいなんです

「以上が、旧宇宙港の作戦中に起きた話だ」

 

 アーキバス社ブリーフィングルームにて、ペイターと共に帰還したラスティは事の顛末を話した。内容を聞いていた誰もが戸惑いを隠せない中、それでも事態の把握に努めようとしたスウィンバーンが恐る恐る挙手した。

 

「質問だ。その巨大ミールワームだったか? これは惑星封鎖機構とは関係のない物なのか?」

「分からない。ただ、惑星封鎖機構が所有していたと思われるIA-02『アイスワーム』を攻撃していた所を見るに、彼らが制御出来ている物ではないと判断している」

 

 IA-02『アイスワーム』。かつて、ルビコンにてコーラルの調査、研究、運用を行っていた『技研』が作り上げた兵器であり、半世紀も前に製造されたというのに現代でも運用されている所から、彼らの技術力と狂気が垣間見えた。

 ……が、あくまでこちらは卓越した技術力の結晶でしかない。この場にいる者達の関心は、未知の巨大生物へと向けられていた。

 

「質問です。例の巨大ミールワーム……少し言いにくいですね。何か呼称は無いのでしょうか? 脅威度の実感の為にも付けた方が良いかと」

 

 メーテルリンクの意見も一理あった。虫退治、と言っても現場を知らない上層部には、脅威が伝わらないだろう。と言っても、元はミールワーム。たかが、ルビコニアンの栄養源に対しての名前なんてパッと思い浮かばない。

 

「では、C型有機兵器などはどうだろうか?」

 

 パイロットとしての技巧を持っていても、ネーミングセンスなんて物を修得している奴は誰も居ない。スウィンバーンの提案する、地味でありながら書類的にも問題無さそうな名前で決まろうとした所。ビシッと手を上げている男が1人。勿論、ペイターである。

 

「スウィンバーンさん。それじゃあ、如何にも十把一絡げの兵器みたいじゃないですか。上層部に脅威が全然伝わりません!! その名前だと、精々歩み寄って来て爆発する虫程度に思われますよ!」

「それも十分脅威じゃないか?」

 

 一つも、話を聞く気が無いペイターはデュアルネイチャーに収めた1匹と1機の激闘の様子を再生した。頭突きを食らわせたり、ビームを吐いたりと。まるで現実感のない映像だった。

 

「良いですか、皆さん。技研はですね。半世紀も前に活動しておきながら、我々の先を行く技術力を所有していた者達です。このIA-02を見て下さい。全身を覆う装甲、ビームを物ともしないバリア。我々のACで対抗できますか?」

 

 全員が首を振った。少なくともACの何倍、何十倍もある機体に対して有効打を与える兵器など想像も付かなかった。

 

「いや、名前を弄するより、この映像を見せたらいいんじゃないかな?」

「ホーキンスさん! 連中がこの映像を信じますか!? 精々、旧時代の映画のワンシーンを切り抜いた程度にしか思いませんよ!」

 

 目上の者に対するデフォルト不敬をキメながら、実際言っていることは頷く所もあった。やはり、この映像は見ただけで実感を伴う物ではない。

 やたらと喧伝して会議を引き延ばしているペイターにイラっとしたのか、メーテルリンクが眉をしかめながら問うた。

 

「では、V.Ⅷには提案が?」

「はい! 間近で見た私には分かるのです。やつはルビコンの怒りを背負った破壊神。そう、ルビコニアンデスワームなのです!!!」

 

 会議室に長らくの沈黙が訪れた。ペイターの熱の入り様とは裏腹に氷点下まで冷めた空気の中、拍手を送る者がいた。今まで、一言も発していなかったスネイルである。

 

「いやぁ、素晴らしい。何時からアーキバス社は映画事業を始めたんですか?」

「あの、閣下?」

 

 彼は笑顔を浮かべていた。しかし、メーテルリンクを始めとしたヴェスパー達は知っている。これはマジでキレているときの状態だということを。

 ちなみに、この会議は上層部を初め役員達にも見られているのだが、もはやそんなことも気にせず、スネイルは捲し立てた。

 

「未開惑星ルビコン3! 辺境の地に降り立った私達を迎えたのは、鋼鉄の巨体を持つIA-02アイスワームと惑星(ほし)の怒りを体現するルビコニアンデスワーム! 果たして、企業は立ち向かうことが出来るのか! 同時上映! アーキ坊やとベイ太郎の夏休み!!」

「V.Ⅱ。落ち着こう。な?」

 

 普段はソリの合わないラスティでさえ諫めるほどの狂乱ぶりだった。こんな奇想天外の事態ばかりで、彼も限界間際だったらしい。

 

「いやぁ、見事なナレーションですね!」

「ペイター君はちょっと黙ってて。ほら、スネイル」

 

 流石にホーキンスも不味いと思ったのか、ペイターを黙らせつつ、スネイルに水を勧めていた。渡されたグラスの中身を飲み干した後、幾らか冷静さを取り戻したスネイルは改めて口を開いた。

 

「ふぅ。この際、あの巨大虫の呼称はルビコニアンデスワームでも良いとして。問題は、あの二つの脅威をどうするかです」

 

 行動の意図が読めないデスワームの方は兎も角、何かしらプログラミングされたIA-02の方には目的があるはずだ。

 

「彼らが向かった先は集積コーラル。我々、アーキバスを始めとした企業の目的地でもあります」

「閣下、そうなると。あの兵器の方はコーラルを防衛する為に先んじて向かった。ということになるんでしょうか?」

 

 自分達がコーラルを手に入れる為には、あの怪物を排除しなくてはならない。と考えると、メーテルを始めとした一同の気は重くなるばかりだった。

 

「そう考えるのが自然でしょう。ルビコニアンデスワームの方は単純にコーラルのある方へと向かっています。ルビコニアンふつうワー……ゴホン。ミールワームがコーラルへと向かって行く性質があるのは既に分かっていることですから」

 

 全員がスネイルの言い間違いを指摘せずに真剣に話を聞いていた。流石にペイターもそう言った状況でないこと位は分かるらしい。

 

「では、スネイル。この2つが互いに潰し合うのを待機して、残った方を討伐する。と言う形で行くのかい?」

 

 互いに消耗し合った所で、残された方を潰す。古来より使われている定石とも言える戦略であったが、スネイルは首を振った。

 

「一番望ましい形ではあるが、デスワームがどういった風に動くか想像できない以上、我々でどうにかするプランを考えなくてはならない。現状、ベイラムと手を結ぶ方向で動いています」

 

 流石に、ベイラムも単独でどうにか出来るという風には考えていなかった。一時休戦、ひと先ず互いに矛を収める方向で行くらしい。

 だが、撃破に成功すれば再び競争が始まる為、互いが負う負担については議論と吟味を重ねる必要があった。

 

「スネイル。戦友にも声をかけた方が良いか?」

「……認めたくはありませんが、あのバカ犬は戦力としては確かですからね。それに、飼い主も油断なりません」

 

 ハンドラー・ウォルター。IA-02の情報を提供した存在であり、RaDの頭領であるシンダー・カーラとも繋がりがあり、G2と惑星封鎖機構のエージェントも抱え込んでおり、何よりもレイヴンと言う最強の手駒の飼い主でもある。

 

「えぇい、忌々しい。私の顔にミールワームを乗せたり、コーラルを吐き掛けて来たアホの癖に」

 

 スウィンバーンが苦い思い出を払う様にポリポリと顔を搔いていた。だが、IA-02とルビコニアンデスワームを打ち破るとすれば、彼女らの力が必要だという予感は全員に共通していた。スネイルが声を上げる。

 

「V.Ⅷペイター。今回の宇宙港襲撃の件、見事でした。引き続き、ヴェスパーでの活躍をと言いたいのですが、貴方に新たな任務を与えます」

「任務? それは一体?」

「ハンドラー・ウォルター。彼らの下へと潜り込み、我々との橋渡しになりなさい。任期はIA-02とデスワームの撃破まで」

「え? あの。ペイターに任せて大丈夫なんですか? それならば、V.Ⅳであるラスティさんの方が……」

 

 メーテルが至極真っ当な提案をしようとした所で、ホーキンスが自らの口に手を当てるジェスチャーを見せた。彼に倣い、口を閉じた所。ペイターは喜色満面と言った具合に頷いていた。

 

「分かりました! V.Ⅷペイター! この大役を遂行してみせます!」

「はい。貴方には期待していますよ」

 

 スネイルは笑顔と共に彼を送り出した。それから、十数分後のことである。非常に珍しいことに、滅多に会議に参加しないV.Ⅲのオキーフが入って来た。

 

「今、V.Ⅷが上機嫌で出て行ったが、会議には参加させなくて良いのか?」

「かまいません。しばらく、奴の喧しい声を聴かなくていいと思うと清々します」

 

 やっぱり、追放じゃないか。全員が同じ感想を抱いたが、会議が取り乱されることが無くなるメリットを考えたら、誰も突っ込む者はいなかった。

 

~~

 

「という訳で、これからお世話になります!」

 

 帰れ。と、いう言葉がウォルターの喉元までせり上がっていたが、今後の作戦を考えれば、アーキバスからの人員を無下に扱う訳にもいかなかった。

 G2も1317も同じ様に顔をしかめたが、唯一上機嫌な621はペイターの肩をポンポンと叩いていた。

 

「よろしくね!」

「こちらこそ! もう、我々は盟友だからな!」

『あなた、さっきの作戦行動中にレイヴンを裏切ろうとしましたよね?』

 

 621以外に聞こえないエアの声には怒りが滲んでいた。作戦終了後、各機の通話ログを覗いた彼女は、ペイターの交渉内容を知っていた。

 

「ベイラムとアーキバス。それから、惑星封鎖機構の人員も取り込むとは、一種の亡命先にもなっているな」

 

 ナイルは、ベイラム社が敢えて自分をここに残している可能性も考えていた。G1であるミシガンの威光を削ぎ、ウォルター達の窓口にもなると考えれば、彼らが返還交渉を行わないことも腑に落ちた。

 

「足は引っ張るなよ。俺達にはやるべきことがあるのだから」

「そういうことだ。ウォルター、それと。ビジター共」

 

 通信相手はRaDの頭領シンダー・カーラだった。ウォルターと既知の間柄でもあり、ルビコンにおける多様な事情に精通している彼女は当然の様に、IA-02についても知っていた。

 

「俺も惑星封鎖機構員として一度だけIA-02を見たことはあるが、通常の火器で対抗できる相手ではないぞ。幾らMTやACを突っ込ませても死人が増えるだけだ」

「拾い物でも脅威は知っているみたいだね。実際、コーラルを利用したリアクティブシールドは大抵の兵器を弾いちまう。だけど、コイツなら話は別だ」

 

 画面に表示されたのは兵器の設計図であったが、ウォルターを始めとした面々は驚いていたが、621は首を傾げるばかりだった。

 

「なにこれ?」

「オーバードレールキャノン。早い話が超強力なレールガンって所さ」

『直撃させれば、かつてレイヴンが倒したシースパイダーも一撃で破壊出来るほどの代物です。どうして、彼女はこんな物を?』

 

 何かしらの使用用途があったのかもしれないし、笑いを重要視している彼女のことだ。ひょっとして、趣味がてらに作っていたのかもしれない。

 

「IA-02はどうにか出来るかもしれないが、デスワームの方は?」

「あっちはデカいだけのミールワームだろ? だったら、そっちは通常の火器で何とかしてくれ」

 

 装甲で覆われている訳でもないし、実際アイスワームに攻撃を食らった時は派手に肉片と体液をばら撒いていた。質量さえぶつければ、通常の火器でも打倒できる可能性はありそうだった。……その間に、どれだけ抵抗され犠牲者が出るかは分からなかったが。

 

「まずは、オーバードレールキャノンの方からだな。俺達に何かできることは?」

「その件についての依頼だ。実はこの代物、とあるクズ野郎に取られちまってね。それは奪い返して来て欲しいんだ」

 

 彼女が示した先はグリッド012。ジャンカー・コヨーテスや特定のドーザー達が陣取っている訳でもない、半ば廃棄された場所だった。

 

「全く。人の物を取るなんて、とんでもないクズ野郎ですね。私とレイヴンでボコボコにしてやりましょう! ソイツの名前は?」

『どうして、この人は誰かを糾弾したり責めたりする時ばかり活き活きしているのでしょうか?』

「オーネスト・ブルートゥ。それと、行くならビジター1機で行きな。あんな入り組んだ場所に数機で向かったら、あっと言う間に絡めとられるよ」

 

 早速、功績を打ち立てようと思っていたが出鼻をくじかれたペイターはしょんぼりしていた。ウォルターは任務を受諾すると、621に命じた。

 

「先の宇宙港の襲撃、ご苦労だった。今は休め」

「うん!」

 

 ウォルターに促された彼女は、回収したデスワームの破片を齧りなら恍惚とした表情を浮かべていた。

 




 次回。ついにご友人登場です。
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