戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼22件目:風 評 被 害

 多重ダム。ルビコン解放戦線のみならず、ルビコニアン達のインフラを担っている重要拠点であり、ベイラムグループも襲撃を試みた物の、少女が起こした癇癪によって失敗に終わっている。

 

「皆! 覚悟をキメろぉ!!」

 

 同志達を鼓舞して先頭に立っているのは、インデックス・ダナムだ。

 清廉で士気も高い烈士ではあるが、パイロットとしての才能はからっきし。であるにも関わらず、事故によってベイラムのレッドガンが追い返された功績を被せられた為、今もダムの防衛に就いていた。が、実力を伴っている訳では無かったので、当たり前の様に蹴散らされていた。

 

「助けてくれぇぇえええ!!」

「来るんじゃなかった! こんな防衛!!」

 

 攻め込んで来た独立傭兵の強さに、ルビコン解放戦線の兵士達が駆るMT達が紙屑の様に吹っ飛ばされていた。士気を挫かれたのか、戦う前から脱出している兵士も少なくはなかった。

 

「これで。例の傭兵が来るの?」

 

 中型バズーカ『MAJESTIC』と双身式のレーザーライフル『VE-66LRB』を両手に握り、肩には拡散レーザーキャノン『VP-60LCD』と大型のグレネードキャノン『EARSHOT』という、火薬庫と言わんばかりの重量武器を積載し、浮遊型タンクと言う極めて珍しい脚部を持つAC『アンバーオックス』を駆る、女性傭兵『シャルトルーズ』は僚機に尋ねた。

 

「奴がルビコン解放戦線と懇意であることは有名だ。必ず来る」

 

 アンバーオックスに負けない程の巨大な機影『アスタークラウン』を支えるのは、ベイラム社の4脚『LG-033M VERRILL』だ。手には同社製のリニアライフル『LR-037 HARRIS』とバーストハンドガン『MA-E-211 SAMPU』が握られており、手持ちの火器は控えめな物ばかりであったが、目を引くのは背中に積載されている巨大な3門レーザー砲だ。

 アーキバス社が機体に掛かる負荷を殆ど考慮せずに作った『VE-60LCA』だ。MTは愚かACですら一撃で粉砕する程の威力を誇っている、アーキバス先進開発局によって生み出された怪物である。

 

「MTは殆ど逃走しているし、残っているのはBAWS社製のAC1機だけ」

「おまけにアセンブルも機体に沿っていない」

 

 アリーナ上位に名を連ねるのにふさわしい火薬庫のコンビに対して、インデックス・ダナムのバーンピカクスの構成は貧弱その物だった。

 手にはバーストマシンガン『MA-E-210 ETSUJIN』と小型バズーカ『LITTLE GEM』。いずれも軽量の武器であるが、フレームは純正のBASHOシリーズ。背部に積載されているのは、オールマインドの講習を受ければ貰えるパーティカルミサイル『BML-G1/P01VTC-04』だった。……ちなみに、搭載しているFCSもジェネレーターも作業用クラスである。

 

「有り合わせで、作った感が凄いわね」

 

 シャルトルーズの指摘は尤もだった。フレームは射撃武器に使うには向いておらず、軽量の武器を持っているのも背部に重量武器を積む為ではなく、資金的に廉価である小型武器しか用意できなかったのだろう。

 

「黙れ! 企業の悪銭で私腹を肥やす走狗共が! 貴様らが、レイヴン殿と同じ独立傭兵など片腹痛い!」

「……レイヴン。か」

 

 勇気1つで突っ込むダナムだったが、武装から練度に至るまで、ありとあらゆる差は覆せるわけもなく、アサルトブーストからの蹴りだけで大破に追い込まれていた。

 

「貴様ら、何が目的だ…」

 

 ダナムは朦朧とした意識のまま、機体から脱出していた。同時に理解した。彼らは明らかに手加減していると。真っ当に仕事に当たっていれば、自分ごとバーンピカクスを焼き払っていたハズである。

 

「殺す程でもないからな。さぁ、お目当ての傭兵が……うん?」

 

 と言いかけて、キングはもう一度レーダーを見た。識別名レイヴンと呼ばれる機体の反応はある。問題は、周囲に3機ほどACが随伴していることだ。

 

「ランク7位のディープダウン、ランク8位のミルクトゥース。ランク16位のデュアルネイチャー。そして、件の機体ね」

 

 1機で来いとは言っていないし、こっちだって2機で任務に当たっているのだから文句を言うつもりはなかったが、これほど手勢を引き連れて来るとは思っていなかった。

 交戦距離まで近づいて来たディープダウンこと、G2ナイルが開戦を告げる様に口を開いた。

 

「騙して悪いが。と、言うつもりはないぞ。そちらも2機で来ているのだからな」

「ランカー上位らしいですが、貴方達が居なくなれば、私は自動的に繰り上がる訳です。ここで消えて貰います」

「自分から、新しいご友人に会いに行くのも良い物ですね。共に断頭台へ行進と行こうではありませんか!」

「いっぱいいる!!」

 

 好き勝手に喋りまくる彼らに秩序だったモノは見えなかった。特に最後の機体から流れて来た声は少女の物であり。戦場には到底そぐわない物だった。

 

「噂には聞いていたが、本当だったか」

 

 アスタークラウンの背部に積載された3門のレーザー砲が閃き、周囲を薙ぎ払う。ナイルが叫んだ。

 

「お前達にチームワークなど期待せん! 好き勝手にやれ!!」

「勿論です!!」

 

 辛うじて、ペイターは指揮に収まるにしても他2名が言うことを聞いて、合わせられるかどうかは疑問だった。故に、ナイルは最初から彼らの統制を投げ出していた。まず、飛び出したのは功を狙いに行ったペイターだった。

 

「私もやる!」

「ご同行しますよ!!」

 

 続いて、レイヴンとブルートゥも飛び出した。重量級2機の射線に突っ込んでも全く怯む様子が無いのは、先日のカタフラクト戦で見た再現だった。

 だが、特務少尉と違いランキング5位は冷静だった。タンクに見合わない軽快さで跳び上がると、まるで4脚型の様にフワフワと空中を漂っていた。

 

「揃いも揃って。調教師(ハンドラー)の躾はどうなっているの?」

「無い!!」

 

 3機に向けてグレネードキャノンを放つ。レイヴンとペイターが軽快に回避する中、ブルートゥは被弾も気にせず突っ込んで来た。

 

「激しいアプローチです。ミルクトゥースも揺れています。しかし、心地の良い触れ合いです」

 

 アホみたいに剛性が高いため、グレネードを食らっても機体が大きく損傷する、ということはなかった。その間にペイターは彼の背後に回って、アサルトブーストを吹かしていた。

 

「では、好きなだけ触れて貰いましょう!」

 

 ミルクトゥースを前面に突き出しながら突っ込む、僚機バリアを使って突っ込んでいた。裏切りとかそう言うレベルじゃない非道ぶりに、シャルトルーズも引いていた。

 

「仲が悪いのね」

「ですが、私は彼に感謝をしています。友人は選ぶべきだと、身をもって教えてくれたのですから」

「感謝してくださいよ!」

 

 皮肉が皮肉として機能していない。ただ、ブルートゥもされるがままという訳ではなく、前面にチェーンソーとファイアスロワーを展開していた。

 そして、デュアルネイチャーのアサルトブーストをカタパルトの様に扱って、ミルクトゥースもアサルトブーストを使ったので信じられない速度で打ち出された。当然、背面に居たデュアルネイチャーを焼いていた。

 

「ッチ!」

「クソ! 味方を焼くとは!!」

 

 こんな常識外れの攻め方をして来る連中は見たことがない。しかし、至近距離まで近づいて来たなら拡散レーザーキャノンで焼き払えば良いと考えていた所で、影が覆い被さった。

 

「ダメ―」

 

 重ショットガンが火を噴き、拡散レーザーキャノンが破損する。と同時に、チェーンソーを構えたミルクトゥースが迫り来る。

 

~~

 

「アイツら! 俺1人で相手をしろと言うのか!」

 

 まさか、3機全員で向かうとは思っていなかった。ナイルは1機でキングの相手を強いられていた。アリーナでも中堅より上に居るとは言え、3位が相手では分が悪い。それでも、彼が渡り合えている理由があるとすれば。

 

「自社製品の癖は良く把握している。ということか」

「なんたって、そいつはミシガンが無理矢理開発させたものだからな」

 

 アスタークラウンの脚部である4脚『LG-033M VERRILL』はナイルとしても思い出深い物があった。彼の友人が恫喝にも近い形で開発させたこと、要望を通す為にミシガンがテストパイロットを務め、仮想敵として自分が何度も相手をしたこと。

 恐らく、このルビコン内において。最も、この脚部を持つACと戦った経験があるパイロットだと、ナイルは自負していた。

 

「参謀にしては良い腕だ。だから、お前がベイラムに居ないことは本当に惜しい損失だ」

 

 4脚で空中戦を展開しながら『VE-61PSA』でシールドを張りつつ丁寧に機体制御を崩して来る。もしも、制御不能(スタッガー)状態に陥った時にアンバーオックスの火力が加わると考えると、ゾッとした。

 ナイルも相手の制御を崩そうとミサイルを張るが、ことごとくが撃ち落とされ、あるいはシールドに防がれていた。

 

「お前達の目的は何だ。レイヴンの確保か?」

 

 このダムを制圧することは、彼らの戦力を持ってすれば難しいことではない。だが、アーキバスがこれだけの過剰戦力を投入するとは思えなかった。

 彼ら自身が依頼を選んだと言えば、納得は出来なくはないが傭兵としての風評にも関わって来るので、やはり適切とは言い難かった。

 

「レイヴンか。お前達は、その名前についてどれだけ知っている?」

 

 ペイター、ブルートゥ、1317。そして、エアですら知らないことだが、唯一ナイルだけは聞いていた。レイヴンと言う名義が借り受けた物であることを。

 

「むしろ、お前達は何を知っている?」

「そうか。何も知らずに使っているのか」

 

 ディープダウンのコックピット内にアラート音が響く。新たな反応がこちらに向かっていた。

 

「貴様らは一体」

「俺達は止まり木だ。このルビコンを飛び立っていく、翼の」

 

 新たな機影の姿が全員の視界に入る。オープンチャンネルからオペレーターと思しき女性の声が聞こえて来た。

 

「レイヴンはどなたですか? ドーザーレベルのアホのヤク中という風評についてを問い合わせたいのですが」

 

 若干、声に怒りを滲ませながら、現れたAC『ナイトフォール』はチェーンソーを構えていたミルクトゥースを蹴り飛ばしていた。

 

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