戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】 作:ゼフィガルド
と思いましたが、本当にグラインドブレードをルビコン内で使えたら面白いんじゃないかと思ったりもしました。
話は過去に遡る。丁度、621がウォルターの手引きによって、ルビコンに密航した頃。事前に、この情報を掴んでいたハクティビスト集団『ブランチ』はコレを利用することにした。
「レイヴン。先日のステーション31襲撃により、惑星封鎖機構の包囲網に穴が出来ています。我々はこれを利用します」
惑星封鎖機構の軌道上拠点であり、ブランチのメンバーがここを叩いた為、ルビコンへの密航者は数を増やしていた。
モニタには密航者や正規とは言えないが、取引を経て入星して来た者達のリストが上がっていた。
「コールドコールか。相変わらずビジネスへの嗅覚は逸品だな」
裏社会の暗殺者として名を馳せている彼は、このルビコンに巻き起こる死の臭いを嗅ぎつけたのだろう。キングとしても相対したくはない独立傭兵だった。
「それと、スッラと六文銭もいるね。六文銭は無用の殺戮や破壊は好まない手合いだけど、スッラの方は場合によっては戦うことになるかもしれない」
シャルトルーズもスッラと戦場で相対したことがあった。第1世代強化人間と言う骨董品であるにも関わらず、死を振り撒く姿には老いを一つも感じさせなかった。それ所か、老獪さを蓄えてさらに厄介な相手になっていた。
彼らが激化するであろう、ルビコン内でのコーラル競争における強敵達を警戒する中、鋭い眼光を携えた男はリストを指差していた。皆が彼の指先を追うと、ノーザークと言うネームに当たった。
「アイツに10万Cをだまし取られている。もう、殺すしかない」
テンションは低いが、声色には本物の殺意が混じっていた。だが、一同は疑問を抱いた。
「何故、そんなことを?」
「ベイラムへの投資を持ち掛けられた。パイルバンカーの新型開発に寄与するから、一口どうだと言われて」
「どうして私を介さなかったんですか?」
オペレーターが責め立てているのを見て、レイヴンがシュンとなって口を閉ざした。ションボリしている彼を見かねたのか、キングが助け舟を出した。
「落ち着けよ。レイヴンが初めて自分のやりたいことをやったんだ。誰の口も挟まれたくないってのも分かるだろう?」
「私に口を挟んで欲しくないのが、レイヴンのやりたいことなんですか?」
「いや、そう言うことじゃなくてだな」
シャルトルーズに助けを求めたが、彼女は直ぐにリストの方に目を遣った。痴話喧嘩に興味はないらしい。なんなら、レイヴンも同じ様にリストを見に行こうとして、オペレーターに詰め寄られていた。
「まだ、話は終わってないですけれど」
「そうだな。惑星封鎖機構の包囲網に空いた穴を利用するんだったな」
「そっちじゃなくて。なんで、勝手に詐欺師に10万Cを渡したんですか?」
「いい加減にしろ! ルビコンに居るんだから、次見掛けたらボコボコにして引っ張って来るってことで良いじゃねぇか!」
あまりに話が進まないので、キングが切れた。発見次第制裁という方向でまとまった所で、ようやく本題に入った。
「失礼。このリストに居る傭兵だけではなく、私達は惑星封鎖機構にも目を付けられています。故に、一度レイヴンを死んだことにして裏方で動くことにします」
「死んだって。どういう風に?」
「彼の機体。『ナイトフォール』のアセンブルを組んだダミーを、グリッド135の付近に投棄。戦闘痕の不自然さを誤魔化す為に、この機体を運ぶ輸送機ごと落として貰います。そして、ダミーに付与しているライセンスを獲得して貰う」
密航者にとって、ルビコン内で仕事をする為のライセンスは垂涎物だろう。企業に所属している訳でもなく、足の付き難い独立傭兵の物なら尚更だ。
「ただ、あの付近は惑星封鎖機構のSGが哨戒しているぞ。アレを潜り抜けられるのか?」
「潜り抜けられるか。というよりも、潜り抜けられない程度の人間にライセンスを取って貰っても意味がありません」
惑星封鎖機構が用いている重武装ヘリに食い散らかされた機体は数知れない。これらを突破できるほどの人材でなければ、レイヴンを名乗って貰う意味が無いのだと彼女は言った。
一同はグリッド135に降り立った機体を見た。真っ先に声を上げたのはレイヴンだった。
「アイツは生き残る。間違いない」
奇しくも、その機体はレイヴンが使っているナイトフォールと頭部以外のフレームが合致していた。機体名は『LORDER 4』、パイロットはハンドラー・ウォルターの猟犬『C4-621』。
~~
乱入して来た機体『ナイトフォール』は、621が密航して来た時に使っていたフレームであったが、目を引いたのは武装だった。
背部の武装はAC乗り愛用の『SONGBIRDS』とデュアルミサイルの『BML-G1/P32DUO-03』。手にしているのは、アサルトライフル『RF-025 SCUDDER』。ここまでは珍しくはないが、もう片方の腕に装着されているのは『PB-033M ASHMEAD』。パイルバンカーだった。
「パイルバンカーだと?」
威力はお墨付だが、基本的に動いている相手に当てる武器ではない。精々、拠点防衛用の重MTなどには当たるかもしれないが、基本は設備などの固定物に向けて放つ物だ。
「キング、シャルトルーズ。お待たせしました」
「遅かったじゃないか。3VS4で少しはマシになるか」
ここまでアリーナのランカーが大量に投入される戦いも珍しいだろう。実際、戦場は乱戦めいた有様になっていた。
シャルトルーズを守る様にして動く、ナイトフォールが乱入して来たこともあって、621達は本丸に攻撃が出来ずにいた。
「貴方がレイヴンですね。よくも、これだけの風評被害を食らわせてくれましたね。おかげでブランチはヤク中支部だとか、散々な謂れ様です」
『レイヴン。ブランチは4人からなる傭兵組織で、惑星封鎖機構に対する攻撃行為などで有名な者達です』
「なんと、惑星封鎖機構に攻撃を。これはコーラルを摂取して、勇気を湧き立たせないと出来ない行為です」
621の代りにブルートゥがエアに返事をしていた。実際、4人だけで惑星封鎖機構に喧嘩を吹っ掛けるのは、コーラルでもキメていないと無理な位の狂気的な行動ではある。
「コーラルでもキメていないと出来ないことやっているんですから、ヤク中集団で良いじゃないですか。上等でしょ」
売り言葉に買い言葉。諫めるなんて言葉が辞書から欠落しているペイターに恨み言を吐けば、一切反省の意図が見られない返事をされるのは順当な流れだった。
「頭に来ました。借り物の翼、今ここで返して貰います」
621の中に様々な感情が去来する。レイヴン。このルビコンにて得た、自分の名前。返せと言われて、返すつもりもない。そんな常套句を吐いていた奴がいたような気がする……。と、思い出して彼の口癖を真似た。
「何故、借りた物を返す必要があるの!?」
ペイター達が黙ったのは、彼女がここまで語気を強める所を殆ど見たことがなかった為であるが、ブランチのメンバーが黙った理由は一つ。今まで、黙っていた男が目を覚ます瞬間を察したからだ。
「お前も!! ノーザークか!!」
ミルクトゥースのフレイムスロワーを避け、チェーンソーをパイルバンカーで弾き飛ばして、機体を踏みつけて飛翔する。
「馬鹿め! 隙だらけだ!」
攻撃後の挙動を狙ったペイターがパルスブレードを振りかぶれば、腕ごとパイルバンカーで吹き飛ばした後、蹴り飛ばしていた。
『レイヴン。近接戦は避けて下さい! 一撃でやられます!』
621の機体は軽量級である為、目の前の機体が用いているパイルバンカーの一撃は致命傷になりかねない。故に距離を取っての射撃戦に持ち込むのが合理的とは言えたが。
「貴方もレイヴンなのね!」
「お前はノーザークだ!」
まるで噛み合っていない会話を交わしながら、2機は白兵戦を繰り広げていた。パイルバンカーの攻撃を機体制御でよけながら、同時に蹴りを放つが避けられる。至近距離でライフルを撃ち込まれて、621の機体の頭部が吹き飛んだ。
だが、返す一撃で放った重ショットガンが相手の背部武装に命中した。誘爆を避けるためにパージし、互いにクロスレンジでの熾烈なやり取りが行われている。
「駄目ね。この距離で援護をすれば、レイヴンにも当たる」
パイルバンカーを持つ相手に至近距離で戦う。というのは、この場においては却って生存率の高い選択であった。何せ、見つめ合うと死ぬとまで言われている動く火薬庫であるアンバーオックスがフレンドリファイヤを恐れて援護が出来ずにいるのだから。
だとすれば、先程まで自分を襲って来ていた相手に狙いを切り替えようとして、互いに腕が吹き飛ばされ頭が取れ掛けた状態になりながら、ペイターとブルートゥはお互いの弾き飛ばされた武器を手に、シャルトルーズに襲い掛かっていた。
「死ねぇえええええええええ!!」
デュアルネイチャーは片腕でチェーンソーを起動させるが、彼の軽量機体ではしっかりと握りしめて扱うことが出来ず、振り回される形になっていた。
ミルクトゥースが握っていたパルスブレードはと言えば、逆に軽すぎてペンチアームではしっかりと固定が出来ずにフラフラと揺れていた。本人達ですら何処へ向かうか分からない攻撃を、シャルトルーズが予想できる訳もなく。
「こ、こいつら。狂って……」
チェーンソーはアンバーオックスとミルクトゥースを切り刻み、パルスブレードはデュアルネイチャーとアンバーオックスを切り裂き、アンバーオックスの爆発はデュアルネイチャーとミルクトゥースを巻き込んだ。
「シャルトルーズ!」
ディープダウンを戦闘不能に追い込んだキングは、直ぐに彼女の救出に向かった。大破した機体達から、ヨロヨロとパイロットが這いずりだしていた。
「アンタら! 味方を巻き込むなんてどういう神経をしているのよ!!」
「私が手を掛けた訳ではない! むしろ、コイツが突っ込んで来たのだ!」
「ご友人。貴方も知るべきです、世には可哀想なお友達がいると言うことを」
先程までの遣り取りはどうしたのか、戦場とはかけ離れたコントを繰り広げている様子を見て、キングは安堵の息を漏らしていた。直後、ナイルから通信が入った。
「どうする。お互いの生存の為に、一旦銃を降ろさないか?」
このまま、自分がレイヴンの援護に行くことは出来ただろうが、その場合。生存したシャルトルーズの身が案じられた。そして、アスタークラウンの手持ち武器も残弾は僅かとなっていた。
「分かった。一時休戦といこうか」
残すは互いの大将のみ。もはや、ダムの防衛など口実でしかなく、ブランチの試験は間もなく終わりを迎えようとしていた。