戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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依頼25件目:謎の美少女傭兵「今、私のことバカにしましたね?」

 スッラは特定の拠点を持たない。ドックを間借りしては、各地を転々としているという典型的な独立傭兵としてのスタンスを取っていた。

 と、なれば困るのはメンテナンスである。間借りする場所において、必ずしも担当者がパーツの情報を共有している訳では無いのだ。

 

「ちょっと、ウチではアーキバスの修理パーツは置いてないんですよ」

「そうか」

 

 スッラが用いているACのフレームにはアーキバス製の物が使われている。強化人間の研究が進んでいることもあって、彼らが生産しているフレームは使い心地も良かった。

 アーキバスはルビコン内においても勢力を拡げてはいるが、全土には及んでいない。この不便さがどうにも引っ掛かっていた頃の話である。

 

「独立傭兵スッラ。貴方と取引がしたい」

 

 最初は冗談かと考えていた。

 傭兵支援システム『オールマインド』。戦闘技能シミュレーターやアリーナと言った仮想戦闘空間の提供など、寄る辺を持たない独立傭兵を相手に商売をしている、思想や信条を持たないシステム的な物だと考えていた為、この様な個人的な交渉を持ち掛けて来るとは思っていなかった

 

「取引内容は?」

「我々の計画『コーラルリリース』に加わって欲しい。これは、第1世代の強化手術を受けた貴方にしか出来ないことなのです」

「報酬は?」

「我々の依頼を優先的に手配します。そして、オールマインドが開発したフレームとパーツの全てを貸与します。これらは各社のフレームやパーツを分析し、内部構造を流用している為、どの施設でもサービスが受けられます」

 

 他社との共有化。と言えば、聞こえは良いが無断で行っているとなれば、商標権や著作権の侵害をしているということだが、彼には興味のないことだった。

 

「引き受けよう。試しに幾つかパーツを借りたい。どんな物がある?」

「オススメは『44-141 JVLN ALPHA』デトネイティングバズーカです。強化人間の反射神経に合わせたレスポンスの調整をしており、なおかつ直撃補正に優れています」

 

 カタログスペックは悪くない。ただ、アーキバスのフレームを使っていることから分かる通り。スッラは軽量~中量の機体を運用している為、このバズーカの重量はどうにも引っ掛かった。

 

「この取り付けている銃剣を外せ。少しでも重量を減らす工夫をしろ」

「お言葉ですが。バズーカにおける総弾数の少なさをカバーする画期的なアイデアであり」

「バズーカで刺突するバカが何処にいる。他の武器は?」

 

 画期的なアイデアと言えば聞こえは良いが、大抵の場合。誰もやっていないということは、思いついたが誰もやる程の価値を見出さなかったということである。

 特に、バズーカの設計思想については大豊やメリニット社が試行錯誤し尽くしている。軽量化、大型化という選択はあれど、近接武器を取り付けると言う選択が無かったのは、実用的ではないと判断されたからだ。

 

「では、ご期待に添えまして。近接用の武器として『44-143 HMMR』プラズマスロアーは如何でしょうか?」

「何だ、この武器は。俺は曲芸師ではないんだぞ」

 

 かなり特異な軌跡を描く為、使いこなせば強くはあるのだろう。戦場でこんな物を振り回す暇があれば、という話だが。

 

「では、我社が誇る傑作にして決戦兵器。『44-142 KRSV』。通称、カラサヴァは如何でしょうか?」

 

 先程のデトネイティングバズーカを更に上回る脅威の重量。積載上限以前に、そもそも通常のACが持つのも困難な品物だった。

 何よりも、プラズマライフルとレーザーライフルを併設しただけのあまりにも前衛的な見た目をしていた。

 

「お前達が言うコーラルリリースと言うのはコメディ映画のタイトルか?」

「まだまだ、人類が我々の思想に追いつける日は遠いようですね」

 

 フゥ。と無機質ながらもやけに人間臭い溜息を吐かれたので、若干イラっとしながらも、この中では比較的使える『44-141 JVLN ALPHA』を選んだ。

 また、武器の設計思想はトンチキながらもフレームの開発は、他者の規格を流用しまくっていた為、非常に扱いやすい物だった。

 

「『MIND ALPHA』シリーズか。こちらの方は良いな。アーキバスの物よりも更に肌に馴染む。武器も同じ様に作ればよかったものを」

「武器はフレームよりも替えが利きやすいので、似た様な物を作ってもコストパフォーマンスが悪いと判断しました」

 

 フレームを変えれば挙動も変化し、勝手も悪くなる。だが、武器は重量が大きく変わったり武器種が違う物でなければ、扱いに大きな変化は訪れない。

 

「ならば、何故武器の開発を?」

「我々は武器開発において各社の意見を参考にしました。特に興味深かったのが、メリニット社の開発会議です」

 

 社の武器開発会議と言えば、かなり重要度の高い物だが、どうにかして入手していたらしく、その一連の流れが再生された。

 

「どいつもコイツも『SONGBIRDS』! 何故だ! 何故、『EARSHOT』と『DIZZY』の売り上げがこんなにも悪い!!」

 

 この社はバズーカを始めとして、火薬に対して特に強いこだわりのある会社だった。鳴り物入りで売り出した自信作がからっきし……なんてのは兵器だけではなく、一般の会社でも往々にしてあり得ることである。

 

「上の方も『SONGBIRDS』のラインを増やせとばっかり! お、俺達にあんな媚び媚び兵装を……!」

「そ、そうじゃ。ワシだって重量を6000ぽっちに増やしただけで、☆1の荒しに…」

「傭兵レビューサイトを見ても、☆4以上が付くのは『SONGBIRDS』ばかり! 『同社がようやく独りよがりを止めて、顧客と向き合った傑作品』って……。俺達のロマンに救いは、救いはねぇのか…」

 

 スッラは映像を切った。とりあえず、非常に良くない開発者達の影響を受けていることは大いに理解した。

 

「で、依頼はなんだ?」

「まず、ウォッチポイントに出向き……」

 

 先程までのコントはひと段落し、非常にまじめな会話に戻った。以後、スッラはオールマインドの下で暗躍することとなる。

 

~~

 

 中央氷原、ヨルゲン燃料基地。コーラルの採掘と輸送を行っている場所であると同時に、アーキバス社が惑星封鎖機構から鹵獲したMTやLCへの機種転換も行われていた。話を聞きつけたペイターと1317も621に同行していた。

 基地内では戦闘に向けた動作の習熟訓練も行われており、思わず1317も溜息を漏らしていた。

 

「凄いな。俺だってLCに乗ってから習熟するまで時間が掛かったというのに。これが強化人間の適応力なのか?」

「彼らが行けるなら私だって」

「お前に配備する分はないぞ」

 

 ペイターがLCに目を輝かせていると、潜もった声で注意して来る青年がいた。フィーカの入ったカップを片手に現れたのは、V.Ⅲのオキーフだった。

 

「オキーフさん! どうも!」

「本当にハンドラー・ウォルターの所にいるんだな。そちらに居るのが、噂のレイヴンと……」

「1317だ。彼女のマネジメントを承っている」

「そうか。お前を通して話をすればいいのか。にしても、本当に少女とはな」

 

 テンションは低くあるが、それでも驚いた様子はあった。ルビコンの企業だけではなく惑星封鎖機構をも翻弄している鴉(レイヴン)の正体が、こんな少女とは。実際に目にするまでは俄かに信じ難かった。

 そんな彼女はジィっとオキーフの方を見ていた。正確に言えば、彼が持っているカップを見ていた。

 

「それ美味しいの?」

「フィーカを飲んだことがないのか?」

「うん」

「少しだけ飲んでみるか?」

「わぁ。ありがとう!」

 

 差し出されたカップを手に取り、暑さに驚きながらも少しだけ啜った。……口に合わなかったのか、顔の中央に皺が寄っていた。

 

「苦ぁい!」

 

 口直しをする様に、ポケットから取り出したミールワームに赤い粉を塗して咥えていた。スゥッと吸い込むと、ワームが痙攣する様子はキモイながらも、ルビコンにおいては見慣れた光景であった。

 

「もっと、マシな物で口直しをしろ」

 

 オキーフが差し出したのはレーションの残りだろうか。ウォルターが購入しているよりも少しだけ上等な物であり、円形の焼き菓子……クッキーだった。

 受け取ったレイヴンは手にした後、覗き込んだり叩いたりして。ようやく食物だと分かって齧りついた。

 

「うめっ…」

 

 同じ様な反応を示すミールワームなら豪快に食らいつくと言うのに、クッキーの量を理解した彼女は齧るのではなく、舐め溶かす様に食べていた。いじらしいと言えば聞こえは良いが、彼女の普段の生活が垣間見えた。

 

「ペイター。解放戦線から子供を引っ張って来た訳じゃないだろうな?」

「紛うこと無くレイヴンです。そして、私の友人です! でしょう!?」

「うめっ……」

 

 ペイターが同意を求めて視線を送ったが、レイヴンにとって彼への関心はクッキー以下だった。ショックを受けている彼を他所に、オキーフは説明を続けた。

 

「今はコーラル輸送の為の準備を進めている。監視塔から連絡は入っていないが、そろそろ例の奴らが来るんじゃないかとは思っている」

「質問だ。コーラルを破壊することのメリットはあるのか? そんなことをして得をする奴らに心当たりは?」

 

 オキーフは暫く押し黙っていた。心当たりを探しているのだろうが、やがて彼は首を横に振った。

 

「思い浮かばない。今、ベイラムが事を構えるとは思えないしルビコン解放戦線は破壊する位なら奪取していくだろう。だから、破壊することのメリットが全く思い浮かばない。余程、コーラルを入手して欲しくないと考えている連中でも居たら話は別だが」

「オキーフ先輩はそう言った情報について、何かご存じではないのですか?」

 

 ショックから立ち直ったペイターが質問をした。ヴェスパー部隊の隊長同士であり、オキーフが情報部出身であることを知っての質問だったが、やはり彼は首を横に振るばかりだった。

 

「分らない。そもそも、この惑星に入ってくる奴の大半はコーラルを目指してのハズで……」

 

 とまで言いかけて、基地内に警報が鳴り響いた。到着してほぼ間もなくだったことを考えると、間一髪で間に合ったということだ。

 

「ペイター! 我々は避難するぞ! レイヴン! 任せたぞ!」

「んぐっ。分かった!」

 

 半分ほど食べていたクッキーを急いで飲み込んで、彼女は機体に乗り込んだ。オキーフもハンガーへと向かい、機種転換をしていた者達も実戦用の武器へと持ち替えていた。

 彼らが戦闘配備を行っている中、単身乗り込んで来たACは一つの武器を両手で構えていた。その銃口にはレーザーライフルの青い輝きとプラズマライフルの紫色の輝きが混じっていた。

 

「吹き飛べ」

 

 レーザーが地上部へと照射されると同時にプラズマによる爆破が付随して発生した。MTやLC、コーラルを運ぼうとしていた輸送機を破壊しながら、青紫の破壊の奔流は止まらない。

 

「何だこれは!?」

 

 コーラルの貯蔵タンクを破壊し、予備の輸送機をも破壊して建物をも抉りとっていた。吐き出される破壊の波が収まると、人間の挙動と見紛わんばかりの滑らかさで跋扈する機体が1機。

 

「コイツ!!」

「脱出レバーを引け!」

 

 習熟途中のLCであったが、MTよりも遥かに優れた機動で襲撃者に向かう兵士もいたが、オキーフがオープンチャンネルで叫んだ。

 瞬間、LCに衝撃が走った。一体何を食らったのか呆気に取られていると、回転している何かが機体にめり込んでいることが分かった。姿勢と思考を同時に崩される瞬間に脱出レバーを引くと、無人になったLCに砲弾が直撃した。

 曲芸と見紛わんばかりの動きだったが、いずれの所作にも洗練された技術と殺意が籠っていた。この傭兵の正体を、レイヴンは知っている。

 

「スッラ!」

「ウォルターの猟犬か。生憎、お前の相手をしている暇はないんでな」

 

 彼女に目もくれず、スッラは次々とコーラルの貯蔵タンクや輸送機を襲い始めた。レイヴンもまたアサルトブーストを吹かして、彼へと猛接近していた。

 

 

~~

 

「1317! 何処に行くつもりだ!」

 

 非戦闘員は基地内のシェルターへと逃げ込んでいたが、1317を追いかけるようにしてペイターも飛び出していた。

 

「先程、避難している際に見えた! この基地のハンガーにはLCがある! アレならば、俺も動かせる!」

「無茶をするな! レイヴンに任せておけ!」

 

 ペイターの言うことは最もだった。機体も持って来ていない自分達に何が出来る訳もないが、1317は彼の道理を否定した。

 

「相手が他の奴なら、そうしたさ。だが、奴が相手なら話は別だ。……アイツはレイヴンの何かを狂わせる」

「どういうことですか?」

「以前、大型ミサイルの発射護衛任務と言うのがあって、レイヴンがアイツと相対したことがあった。……帰還したアイツの手が震えていた」

 

 ペイターも思わず言葉を失った。どんな戦場でも、遊ぶように舞う彼女がそんな反応を見せるとは俄かに信じ難かった。

 

「あの傭兵は、何者なんです?」

「分からない。ただ、嫌な予感がする。お前も力を貸してくれ」

「当然です。私はレイヴンの友人ですから!」

 

 この男の状況も考えない発言も時には、頼りになるのだなと思いながら、彼らはハンガーに並んだLCの前に立っていた。

 

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