戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】   作:ゼフィガルド

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オールマインドTSイグアス概念……どういうことだ(堂島の龍風


依頼29件目:エゴサーの王子

 アイスワームおよびルビコニアンデスワーム討伐作戦。

 コーラルを目指す企業やウォルターにとっての障害ともなる脅威の排除に関しては、一時的とは言え互いの手を取る必要があった。

 だが、ルビコン内におけるコーラル競争でアーキバスに後れを取っているベイラムとしては、何とかして出し抜きたい所だった。

 

「作戦の指揮をアーキバスに渡せ?」

「我々は討伐後も見据えて動かねばならない。ここで奴らに指導権をくれてやる代りに、強襲艦隊については折半することになった」

 

 ミシガンは上層部からの通告を聞いて、眉間に青筋を浮かべていた。彼らは現場所か、競争相手すら見えていない。

 

「連中に指揮権を渡すということは、優先的にこちらが使い潰されることになるんだぞ!? 人的資源の損失が直ぐに補填出来るとでも思っているのか!?」

「その点は心配ない。先日、『SG-027 ZIMMERMAN』の構造の簡易化に成功した。従来の物より性能は落ちるが、生産性は飛躍的に上がる」

 

 モニタに表示されたカタログスペック的には『威力』や『衝撃値』を始めとして、一回り性能は落ちていたが、コスト面では二回りほど下がっていた。如何に、この武器の設計思想が優れているかということの証左とはなった。

 

「素晴らしい! これで、『ZIMMERMAN』の配備が進みます!」

 

 歓喜の声を上げたのは、ミシガンに同行していたG6のレッドだった。

 自分達に期待通りの称賛を送る彼の存在に気を良くしたのか、通信越しから笑い声が聞こえて来た

 

「惑星封鎖機構から壁を奪還した件と言い、昨今の君の活躍は目覚ましい。賞与については色を付けておこう」

「ありがとうございます!」

「うむ、精進したまえ。ミシガン、彼の直向きさは素晴らしい」

 

 レッドを褒め称える様に見えて、抗議してばかりの自分を揶揄しているのだろう。それでも、声を上げねばならなかった。

 

「幾ら『ZIMMERMAN』を生産した所で、それらを使う兵士がいなければ何の意味も無い! もう一度考え直せ! 討伐作戦の指揮は何としてもベイラムが主導で行うべきだ!!」

「ミシガン、お前は大局を見据えるべきだ。この戦いが終われば、再びアーキバスと競争に入る。その際、強襲艦隊と言う足があるか無いかで趨勢は大きく変わって来る。連中にこれ以上、先んじられては堪らないからな」

 

 手を取り合っている。とは言え、一時的な物に過ぎない。作戦が完了すれば、競争相手に戻るのだから少しでも手札は増やしておきたいのだろう。

 だが、それは向こうも一緒だ。強襲艦隊を折半した。ということは、逆に言えば指揮権には折半するだけの価値があると言うことだ。アーキバスはこの重要性に気付いている

 

「今回の作戦は、アーキバスだけではなく、オーバードレールキャノンの開発元であるRaDと最強の独立傭兵レイヴンを抱えるハンドラー・ウォルターとも共同で行う。くれぐれも、我社の威信を損ねることの無いようにな」

「……ハンドラー・ウォルター。ということは、これを機に奴らの下に居るナイルを取り戻すつもりはないのか?」

「交渉中だ。だが、今回の様な事態があった時、ベイラムの人間が居ればことは進めやすい。彼の扱いも丁重な物だ。無理に急いて、この合同作戦で亀裂を入れる訳にもいくまい」

 

 交渉を進めているという話など、ウォルターから一度も聞いたことがない。

 自分の参謀として口出しをするベイラムの古株を追いやり、同時に象徴と化しているレイヴン達に恩を売れる。ともなれば、取り戻す必然性が見当たらない。

 これ以上の会話をするつもりはないと言わんばかりに通信が切られた。ミシガンは拳を固く握りしめていた。

 

「G6! 連中に媚びを売る様な真似をするな! 現場との乖離が進む!」

「ハッ!」

 

 切れのいい返事はしていたが、不承不承と言った様子が伝わって来た。入隊当初の畏敬に満ちた眼差しは存在していなかった。

 

~~

 

「621。アイスワームとルビコニアンデスワームの討伐作戦についてだが、こればっかりは現地での話し合いで行う」

「なんで?」

 

 いつも通りの元気を取り戻した彼女は、コーラルを塗したミールワームを咥えていた。尻の部分から息を吹き込むと、ミールワームの口吻側から赤い煙がポフっと吐き出された。

 

「スッラ達のことがある。奴らは、企業や俺達の活動を妨害している。コーラルを入手されると都合が悪いのだろう」

「通信が傍受される可能性を考えてのことか」

 

 ナイルも頷いた。通信を使えば何処からか情報が漏れる可能性がある。

 今回の作戦は、潰されたら不味い物が多数存在する。例えば、現場に着いた後でオーバードレールキャノンが破壊されれば、作戦の遂行は不可能となる。

 それだけではなく、カーラから渡されたというルビコニアンデスワーム用の兵器も取り扱いに慎重さを求められる。

 

「レイヴンを連れて行っても大丈夫なのか? 今後のことを考えて、危害を加えられる可能性もあるんじゃ?」

 

 1317の心配も最もだった。味方に付けば心強い存在だとしても、この作戦が終われば再び敵対する可能性がある。ならば、予め葬っておくと言う選択は十分に考えられた。

 

「もしくは、作戦を記したペーパーをアナログに配りに行く。という方法でもよいのでは?」

「駄目だ。それでは作戦の解釈に齟齬が発生する可能性がある」

 

 ペイターの意見もアイデアとしては出たのだろうが、作戦の解釈に齟齬が発生すると言うのは非常に不味い。やはり、これらを防ぐには会合する必要があった。となれば、レイヴンの安全確保は必須だった。だが、ペイターは眉間に皺を寄せたままだった。

 

「これは失礼な質問になると思うのだが。レイヴンは作戦を理解できるのか?」

「問題ない。仮に621が理解できなくとも、傍に理解者がいる。ブルートゥ、エアは何と言っている?」

『はい、ウォルター。問題ありません』

「問題ないとのことです。ご友人の肯定が心強い限りです」

 

 エアと言う名前を出されて、事情を知らない者達は周囲を見回したが、思い当る様な人間の姿は見当たらない。

 

「その、エアと言う者は何処にいるんだ?」

「お前達の目には見えないが確実にいる。これは俺も存在を確認している。どうやら、ブルートゥや621の様に旧型の強化人間にしか感知できない存在と言うことらしい」

 

ナイルと1317が感知できないのは当然として、強化人間であるペイターも最新式の世代なので、やはり彼も認知は出来ていなかった。

 

「奇妙な存在も居る者です。エア、ですから彼女? になるんですかね。ちなみに私達のことをどう思っているんですか?」

 

 これは、皆も多少なりとも気になった。姿は見えないが621の傍にいるとして、彼女には自分達がどの様に見えているのだろうかと。

 

『ナイルはウォルターに比肩する思慮深さが見えます。この集団には欠かせない存在だと考えています』

「ふむ、そう言われると面映ゆいな」

 

 現状、外様としては尤も付き合いが長い自分がこの様に評価されていると知れば、悪い気もしなかった。続いて、1317も興味深そうにしていたので返事をした。

 

『S-1317は惑星封鎖機構員として秩序立った存在です。敵対している組織の一員ではありましたが、今はレイヴンのことを思い遣ってくれる良き友人だと考えております』

 

 返答に困ったのか、S-1317は気恥ずかしそうに視線を逸らした。ここまで立て続けに良い評価が並んだので、ペイターも胸を張っていた。

 

「して。エア殿、私の評価は?」

『非常に自己中心的な考えの持ち主で共感性が乏しく、パイロットとしては素晴らしいですが、人間性はお世辞にも褒められる物では無いかと』

「この野郎!! 面貸せ!!」

「あわあわ」

 

 エアの所在が分からなかった為、621をガクガクし始めた所で全員に止められた。……そう言う所だぞ、と言葉にはしなかった物の皆が思っていた。

 

「人は図星であればある程怒りが抑えられなくなる物です。可哀想なお友達です……」

「じゃあ、コイツの評価はどうなんだ! 私よりも遥かにダメっぽいだろう!」

 

 いよいよ、自分より下の人間を求め始めた時点で色々とアレだったが、ブルートゥに関しての評価は歯切れが悪かった。

 

『彼に関しては、私もよく分からないのです。出会った当初は煩かったのですが、今は穏やかとでも言うのでしょうか……』

「人は寂しくなれば独り言ちることも増えます。今は素敵な友人達に囲まれていますからね。もう、十分なのです」

「私も―」

 

 人間性については言及されなかったが、621と手を取り合って即興のダンスもどきを披露している時点で、エアからの評価も悪くないだろうことは察せられた。

……つまり、自分は彼女の評価ヒエラルキーでは最下層に位置しているということだが。

 

「嘘だ―! 嘘だー!」

「ヴェスパーだけではなくここでも一番下か」

 

 誤解なき様に言うと、そもそもヴェスパー部隊隊長を務める時点で相当なエリートであるが、ペイターには色々と引っ掛かることがあるのか抗議は続けながらも、ウォルター達は作戦会議が行われる会場へと向かっていた。

 

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