戦え! 超強化生命体傭兵レイヴンちゃん!【本編完結】 作:ゼフィガルド
そして、誤字報告の方もありがとうございます! 書いている途中気付かないまま投稿していることもあるので、指摘助かります!!
RaDが秘匿するグリッドにて作戦会議は行われることになった。各勢力、少人数で訪れ、武器や通信機・盗聴器の類を隠し持っていないかも検査された後、ようやく通される。
ウォルター達が会場に辿り着いた時には、既にアーキバスとベイラムの者達も訪れていた。彼らの姿を見て真っ先に声を上げたのは、G6のレッドだった。
「その少女はまさか……」
「『C4-621』。お前達がレイヴンと呼んでいる存在だ」
「やっほー! ラスティ―! イグアス! スウィンバーン!」
レッドには目もくれず、621は3人に手を振っていた。
ラスティは笑顔のまま手を振り返し、スウィンバーンも遠慮がちに手を振っていた。イグアスは目を見開いていた。
「おい。まさか、こんなガキが!?」
「ワンワン」
いつぞやアホ犬呼ばわりされたことを根に持っているのか、彼女は舌をダラーっと出して鳴き真似をしていた。そんな彼女の口をそっと閉じさせたのはラスティ……ではなく、スウィンバーンだった。
「人前で舌を出すな。はしたない」
「うん」
「思ったより、スウィンバーン君とも仲が良いようだ」
「この少女が、本当に……?」
この光景を微笑ましく見守っていたのは、V.Ⅴのホーキンスだった。一方、V.Ⅵのメーテルリンクは怪訝な視線を向けていた。
「本当だ。彼女が戦友だ。間違える訳もない」
ヴェスパー部隊と和やかな空気が繰り広げられているのを見て、今一つ会話の切り出し方が分からないイグアスは、G3の五花海に脇腹を突かれていた。
「ヴォルタの事と言い、何か言うべきことがあるでしょう」
「は? なんで、俺が?」
「そうですか。じゃあ、私の方から声を掛けますね」
かつて、ベイラムの経済圏を混迷に陥れた彼の話術は、人の心に入り込むことを得手としている。彼女の関心が自分に向いた。
「貴方は?」
「始めまして。私、レッドガン部隊のG3『五花海』と申します。先日はヴォルタとイグアスがお世話になりました。改めて、お礼申し上げます」
流麗な挨拶を交わし、手を差し出した。621は何の疑いもなく彼の手を握ると、首を傾げた。
「どうかされましたか」
「誰かに似ている気がする……」
「ほぅ、それは貴方と私に縁があるということですよ。ちなみにどのお方と似ているのですか?」
彼女がどの様な反応をしようとも、話題を拡げる為の会話パターンを用意していたのだろう。レイヴンの人間関係についても調べており、誰の名前を出されても直ぐに反応できるつもりではいたが。
「あ、そうだ! ノーザークだ! ノーザークに似ている!」
「……ハハハ。彼はとても精力的で挑戦家ですからね。私と似通った部分もあるのでしょう」
ラスティとスウィンバーンが笑いを堪え、五花海は冷や汗を流していた。
このルビコンにおいてノーザークはカスの代名詞でもあり、詐欺師であるという本質的な部分が符合する。と言い当てられたのなら、彼女に対する認識も改めねばならなかった。
「ウォルター! G13の嗅覚は相変わらずだな!」
「ミシガン。お前も来ていたのか」
拉致されたG2と身を引いたG4を除けば、レッドガン部隊が勢揃いしていた。対するヴェスパー部隊は、V.Ⅲ以上が誰も出席していなかった。
「なんだ。お前らの所は下位ナンバーしか来ていないのか? 人手が足りねぇんだな!」
「生憎、閣下達はお忙しい。斜陽企業の人間ほど暇ではない」
イグアスの挑発に対して、メーテルリンクも同じ様に返した。一触即発の空気を感じ取ったのか、ホーキンスと五花梅が間に入った。
「メーテルリンク君。少し落ち着こう。私達は話し合いに来たんだ」
「イグアスも落ち着きなさい。今作戦はアーキバスが指揮を執るのですから、相応の準備と根回しが必要なのでしょう」
暫し、互いに睨み合っていたが共同作戦を行うと言うには余りにも不穏な空気だった。少しでも油断すれば、後ろから撃たれかねない。
『レイヴン。本当に、こんな調子で作戦を実施できるのでしょうか?』
「ラスティ―、ラスティ―」
「ご友人。彼と戯れるのは、会議が終わった後です」
「待ち遠しいな。所で、彼は一体?」
「ブルートゥ!」
一方で睨み合いが続く中、ラスティとブルートゥが621を間に挟んで親交を深めているのは何ともシュールな光景でもあった。
各陣営の会合に当り、様々な反応が噴出している中。それらを収める様に一喝したのはミシガンだった。
「ここは懇親会の会場ではない! 俺達は愉快な虫取りに出かける為に集まっているんだ! ウォルター! さっさと本題に入れ!」
「分かった。既にカーラも待機している。先に進むぞ」
色々と思う所はあれど駄弁っている程、暇でもない。改めて会議場所へと足を運ぶと、カーラが待ち受けていた。
「これで全員だね。よし、じゃあ早速本題に入らせて貰おうか」
簡素な机と椅子が並んでいるだけの殺風景な場所であったが、一同はカーラから配られたアナログなプリントに目を通していた。
「まず、第1の脅威。IA-02、アイスワームの多重コーラル防御壁についての話をしよう」
プライマリシールドとセカンダリシールドの2枚からなる鉄壁。そして、体躯を覆う重装甲。ACの火器ではまるで歯が立たない相手だ。説明を受けた時点で、メーテルリンクが手を挙げた。
「これに関しては閣下から言伝を預かっています。プライマリシールドを突破する方法は用意すると」
「ほぅ、どんな手段が?」
「こちらです」
彼女が渡したデータはバックドアやウィルスなどが含まれていないかが確認された後、モニタに表示された。映し出されたのは背部兵装のデータだった。
「『VE-60SNA』スタンニードルランチャー。着弾箇所で強力な放電を行い、電気干渉によってコーラル防御壁を無効化する。か。アーキバス先進局は面白い物を作るね。確かに、これならプライマリシールドを無効化出来るね」
俄かにベイラムに緊張が走った。アイスワームにも通じるだけの兵装が開発されたということは、ACやMTにぶち込まれたら一溜りも無い程の兵器を所有しているとアピールされていたからだ。
「セカンダリシールドの方は?」
淡々と作戦会議の進行を促す五花海からは、動揺の類は一切感じさせなかった。彼らの腹芸には興味がないのか、カーラも続ける。
「ソイツに関してはコイツの出番さ」
モニタに表示されたのは、RaD謹製のオーバードレールキャノンだった。バートラム旧宇宙港の待機電力を回せば威力は足りると言うことらしい。
「問題は命中精度だね。この中で射手として自信がある者は?」
「私が出よう。腕に自信はある」
何の迷いもなくラスティが立候補した為、比較的速やかに決まった。……だが、一つだけ問題があるとすれば。
「では、スタンニードルランチャーを当てに行くのは誰になるんだ?」
「私がやるー!」
スウィンバーンの質問に対して、レイヴンが即答した。実際、他の者達も彼女が適任だと考えていたらしく、誰も声を上げなかった。
「よし、アイスワームの方の段取りは決まった。そして、もう一つの問題だ。このルビコニアンデスワームについてだ」
技研の防衛兵器と肩を並べる、イレギュラーな存在。バカでかいミールワーム。というだけではなく、どういう訳かコーラルを介した攻撃を行える冗談みたいな生命体だった。
「こっちはあの化け物みたいな防壁がある訳でもねぇんだろ? だったら、ひたすら攻撃すりゃ良いだろ」
イグアスの提案は乱暴な物だったが、実際にバートラム宇宙港に現れた時も通常兵器が通ることは確認されているので有効手段の様には思えた。
「デカいってコトは、それだけ攻撃が致命傷になりにくいんだよ。アンタら、虫に嚙まれた程度で死ぬか?」
「病原菌持ちなら。と言いたいけれど、そう言った話ではないよね」
「いいや、そう言う話さ。アタシらはとびっきりの病原菌を用意したのさ」
ホーキンスはジョークがてらに言ったつもりだったが、カーラの目は本気だった。スッとブルートゥが前に出た。
「私が、その病原菌を担当します」
モニタに表示されたのはオーバードレールキャノンとは別の規格外の兵器。汎用性も合理性も捨てて、ただ破砕の一つのみを追求した工具が映し出されていた。
「開発コードは『デロリアン』。名前は『グラインドブレード』だ」
6基の大型チェーンソーを回転させながら相手に突っ込んでミンチにするという、文字通り『轢き潰す(グラインド)』ことを目的としている武器だった。ここで皆が抱いた疑問を、ミシガンが口にした。
「だが、所詮はACに載せられるサイズだ。あの巨体に効果があるのか?」
「ある。バートラム宇宙港で散乱した奴の破片や、先日。ヨルゲン燃料基地に現れた際のデータを取って確信した。やつの体内には大量のコーラルが循環している。ソイツに火を付けてやるのさ」
コーラルが可燃性であることは皆も知っている通りだが、引火させて爆殺するつもりであるなら、幾つかの疑問が生じる。ウォルターが挙手をした。
「質問だ。1つ、この作戦においてグラインドブレードを用いる理由は? 通常火器による引火は望めないのか?」
「通常の火器だと表皮に阻まれる。おっと、同じ個所を攻撃し続けるなんて言わないでくれよ。あんな巨体、少しでも動けば狙いは全てズレるからな。だから、この兵器によって一気にコーラルが循環している中央部分まで突き進んで焼かなきゃならない」
「そうか。では2つ目だ。この作戦を実施するブルートゥの安全はどうなる?」
1つ目の質問よりも更に鋭い形相で問うた。コーラルに引火をさせれば、本人は無事で済むはずがない。ましてや、アレだけの巨体に秘められた含有量はどれ程の物になるか。
「その為に、ミルクトゥースはブースターを特殊な物に換えている。計算上なら、この推力があれば逃げ切れるはずだ」
あくまで机上の理論でしかない。決死とも言える役割だが、ブルートゥは特段抗議をするつもりも無さそうだった。
「ルビコン最大級の脅威を2種同時討伐か。戦友が居たとしても、かつてない程の難易度になりそうだ」
「だけど、これを突破しないとアタシ達はコーラルに辿り着けない。今だけの同盟さ」
「作戦の指揮はアーキバスで行うとして。現場での監督は俺がやろう」
上から指示を飛ばす役と併せて現場を統率する役としては、ミシガンは打って付けだった。
「チームの区分けや担当も含めて、もう少し話し合いたいけれど。少し休憩を入れようか。喋り疲れたよ」
卓上に温い水が入った紙コップが置かれた。各員、薬物などの混入がされていないかを確認して、何も入っていないのが分かるや飲み干した。会議は一つ小休止を挟むこととなる。